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都市計画関連のまちづくり 制度−法令・条例・用途地域などの動き
杉並区まちづくり条例(2002年12月公布)は、地区計画等の原案の申し出の処理、まちづくりルールの登録、まちづくり協議会の認定を処理する第三者機関として、都市計画審議会にまちづくり専門部会を設置している。こうしたまちづくり条例で規定する第三者機関は、まちづくり市民会議(国分寺市)、まちづくり委員会(狛江市)、まちづくり審議会(大磯町)などの名称で新たに設置されるのが通例で、既設の都市計画審議会の専門部会方式は杉並区が初の事例として、その運用が注目されていた。 まちづくり専門部会は都市計画審議会委員と専門委員によって構成され(都市計画審議会条例第7条第2項)、2003年5月に発足し、審議会委員3名と市民公募による専門委員3名の、計6名が部会委員となっている。以来、現在まで2年半の間で部会が開催されたのは4回。3回目までの実績は、まちづくり協議会の認定で、2団体が認定されている。第4回目は去る9月27日に開催され、初めて住民からの地区計画案の申し出を扱った。 この地区計画案は、区が提案した三井上高井戸グラウンド跡地の三井不動産による大規模住宅計画に関する地区計画への対案として出されたものである。三井不動産の計画は、所有する約8.4ヘクタールの敷地に6階建てマンション6棟650戸、戸建て50戸の住宅を建設し、そのために現在、第1種低層住居専用地域になっている敷地の用途を第1種中高層住居専用地域に変更するというものである。区は要望を受けて用途地域変更に必要な地区計画の策定を行い、9月1日に「高井戸東1丁目地区計画原案」を公告縦覧した。 昨年12月、計画が明らかになってから、周辺住民はグラウンド一帯が広域避難場所であること、貴重な緑がまとまっていること、高さ・容積の緩和による住環境への影響などから現状の保全・活用を求めてきた。この間、三井不動産は12月19日と1月30日、5月22日の3回の説明会、区は2月12日「三井グラウンド周辺まちづくり」住民説明会を開催。6月1日に区は都市計画審議会に地区計画の素案を提示し、7月15、16日に地元説明会を実施した。周辺住民は、8月9日にまちづくり条例の地区計画の原案の申し出制度を使って「三井グランドを核にした浜田山・高井戸地区の地区計画のあり方」を提出したが、行政に書類不備で受理されず、改めて、8月31日に『「三井グランド」を核にした浜田山・高井戸地区の地区計画』を、197人の住民の署名で提案した。 まちづくり専門部会は9月27日、この地区計画の原案を提案者の住民の意見聴取も含めて検討し、2時間ほどの審議により、「三井のほか広範な地権者の合意を得ていない」「実現性がない」ということで不採用とした。三井不動産が地権者として出席し、「同意できない」と発言したことが、部会委員の多数に「実現性がない」と印象づけたようだ。9月27日付けで、杉並区長に都市計画審議会会長名でだされた専門部会の答申は、次のように不採用の理由を述べている。「地区計画等の原案の申出については、計画についての住民参加や合意形成が不十分であり、地区計画等の原案として取り扱うことはできないので採用しないものとします」。 まちづくり条例では申し出の要件は、「地区計画等の種類、名称、位置、区域及び内容を記載した書面並びに規則で定める書類」を「規則で定める30名以上の居住者等の署名」で提出すると規定しているだけである。申し出の採用基準はとくに規定せず、専門部会の裁量によっており、個々の事例の判断を積み重ねて採用基準をルール化していくという制度設計と考えられる。その点で、今回のように規定に従い30名以上で申し出た住民側に対し、専門部会が1回の審議で「広範な地権者の合意を得ていない」「実現性がない」として不採用としたことの問題は大きいように思われる。 今回、区が策定、提案した地区計画は地権者1人の緩和型地区計画という違法ではないにしても、地区計画の趣旨を歪めた提案だが、緩和型の地区計画を策定するときに、その地区の周辺住民が話し合える場がルール化されていないことに問題があることは、各地の事例で指摘されている。まちづくり条例案の検討を行なった「杉並区まちづくり条例案に関する懇談会」委員の一人は、専門部会には、こうした緩和型地区計画の課題に柔軟に対応することを期待していたという。懇談会の「中間まとめ」には、「専門部会の果たす役割としては、区民等の発意による案の審議の方法に加えて、開発の初期段階における協議の場の設定や公共事業における事業主体と地域住民が対立した場合の調整を行なうこともありえます。」と書かれている。 その問題意識から考えて、専門部会について、条例は前述の3つの事項を処理するとだけ規定し、「協議、調整ができる」方向で処理の方法・ルールなどつくっていくことを、専門部会にゆだねていると受け取れる。懇談会委員の一人は、「専門部会を提案した趣旨は、申し出という住民の発意をもとに現地調査をするなどして、住民との協議、共同作業のうえで地域住民の意向を生かした地区計画案にしていくという機能を期待していた。そのため専門部会の運用手続などをかっちりと定めずにフリーハンドをもたせて、フットワークを軽くしようとしたのだが、ここまでを見る限り、専門部会は形式的な運用に終始し、住民提案の門戸を大きく狭めたといえる」として、まちづくり条例は、根幹のところで機能不全になっているという。 今回、住民側は話し合いの場をつくりたいとして協議会の設置を要望したが、専門部会は協議方式を認めなかったという。専門部会は30名以上の署名があれば、申し出は受理するが、地区計画原案の内容の如何を問わず、広範な合意形成があるかどうかで、原案として採用するかどうか判断したことになる。これは、実質的に条例上の申し出の30名以上の要件に、さらに「地区計画内の住民の広範な合意形成」という要件を新たに付加したことを意味する。審議の入り口で、広範な合意形成というハードルをおくなら、やはり3分の2なり、4分の3といった「広範さ」を客観的な数値で示すことにしないと、申し出側は署名集めができなくなる。住民発意、住民参加のまちづくりを広げるという申し出制度の趣旨、条例の趣旨に反するといえるのではないだろうか。 こうした専門部会の運用になった、もう一つの要因として考えられるのが、まちづくり条例の申し出制度の規定で、都市計画法16条3項の「地区計画の案の内容となるべき事項」を、条例でわざわざ「以下、地区計画等の原案」と定義したことである。これを「地区計画等の素案」と規定しておけば、専門部会での処理の仕方にも柔軟な対応ができたのではないか。都市計画法21条の2の「都市計画決定の提案」では、「素案の提出」となっているので、条例で「案の内容となるべき事項を素案の形で、区長に申し出ることができる」とすることは可能だったと思われる。 *都市計画法第16条第3項 (東京ランポ事務局長・辻 利夫) |
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