市民のまちづくり活動
| 全国環境再生医シンポジウムで、グラウンドワーク三島を視察 |
2005/6/21
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●2005年6月12日(日)、「第2回全国環境再生医シンポジウム in 三島・長泉」が開催された。
環境再生医とは、NPO法人自然環境復元協会が創設した資格で、「自然環境の再生のため、現状を診察(調査・診断)し、処方(対策の計画)を立て、治療(施術・施工)を行い、さらにはケアー(維持管理)を行う自然環境の“専門医”すなわち環境再生に技能や見識を持って携わる専門家」(以上、NPO法人自然環境復元協会ホームページより引用)を認定したものである。
全国環境再生医シンポジウムは、全国の環境再生医の交流を図るとともに、広く市民への環境再生の啓発を行うために開催されている。初回となった昨年は、埼玉県の入間市で開催された。
第2回となる今回は、市民主体の環境改善活動で実績をあげてきた、NPO法人グラウンドワーク三島がホストとなり、静岡県の三島市において開催された。
NPO法人自然環境復元協会ホームページ
●筆者は、以前から、グラウンドワーク三島を視察に訪れたいと思っていた。
昨年度、入間市の「元気な入間」まちづくり推進市民組織準備会の活動をお手伝いする機会に恵まれたが、今年6月、推進市民組織は、「まちづくりサポートネット元気な入間」(以下、まちサポネット)という名称で正式発足した。元気な入間の活動に、足を半分突っ込んだような格好になっている筆者は、まちサポネットの研修の一環として、グラウンドワーク三島への視察を提案していた。
まちサポネットは、市民活動団体をネットワークしながら、入間市のまちづくりをサポートしていく市民組織である。環境改善という特定の分野とは言え、市民、企業、行政をコーディネートしながら、公園整備や水辺再生を行ってきたグラウンドワーク三島のノウハウは、まちサポネットとしても、大いに学ぶところがあると考えた。
それが、まちサポネットのメンバーである木内勝司さんが、NPO法人自然環境復元協会の理事で、昨年の全国環境再生医シンポジウムではホストを務めており、その第2回をグラウンドワーク三島がホストとなって行うという偶然が重なり、今回の視察の実現となった。
筆者は、木内さん以下4名のメンバーとともに、「入間組」の一員として乗り込んだ。(東京ランポの仕事ではないため、自費参加です。念のため。)
●筆者は、シンポジウムが行われた6月12日(日)そのものは、他の仕事が入っていたため参加できなかったのであるが、プレ・イベントとして前日11日(土)の午後に行われた、水辺ビオトープ見学会に参加できた。マイクロバスに乗っての見学地めぐりには、江戸川大学の先生に率いられた学生たちをはじめ、20数名が参加した。
まず、長伏小学校のビオトープを見学した。中庭にあるこのビオトープは、かつては人工芝が敷かれていたところにできた。古くなった人工芝を天然芝に張り替える計画があったが、従来から飼育小屋もなく、子どもたちが生き物に触れられる場所がほしいと考えていたPTAや学校は、ビオトープをつくることにしたのである。グラウンドワーク三島は、ビオトープについての勉強会や設計のワークショップ、施工のコーディネートなどで協力した。そうして、父母、児童、教職員をはじめ、約300人が参加しての手作りのビオトープが完成。「ゆめトープ」と名付けられた。
2000年の完成以降、児童やPTAの入れ替わり、教員の異動などがありつつも、ビオトープの管理を引き継いで今日に至っている。筆者らが見学したときには、どこからかやって来たカモが2羽くつろいでいた。田んぼになっている箇所には、田植えを控えて稲が運び込んであった。全校児童におにぎりが行き渡るくらいの収穫を見込んでいるという。ビオトープに流す水は雨水を利用しており、校舎の軒下を雨どいが雨水タンクまで伝っているのが見られた。
●次いで、今年3月に完成したばかりの、隣の函南(かんなみ)町にある、さくら保育園のビオトープを見学した。市内の高校でビオトープをつくった際、たまたまその作業を通りすがりで見かけた園長が、保育園の隣にあった空き地をビオトープにすることを思いついたのがきっかけという。保育園からの依頼は初めてであったグラウンドワーク三島は、保育園におけるビオトープの意味を考えた結果、虫や魚ではなくまずは園児が集まってくることが大事としたうえで、園児たちが遊べるものにすることとした。こちらは井戸を掘って水を供給し、子どもが遊べる木製の汽車遊具も置いた。
何度かの週末を施工日に当てたが、回数を追うごとに参加者が増え、最終日は割り振る仕事がないほどの人出であったという。手が空いた人はご飯の炊き出しなどに回り、楽しい作業となったそうである。「遊子(ゆうし)・トープ」と名付けられたビオトープの隅には、長く記憶にとどめるよう、協力した団体や企業名の入った看板が立てられている。
●3つめは、ビオトープが整備されるかはこれから決まる、という三島測候所に立ち寄った。観測作業の機械化により、小規模の観測場で対応できることとなったため、測候所が廃止されることになった。しかし、富士山の目視確認などを行い地域のシンボルであった測候所への愛着と、跡地が民間に売却されればマンションになるという懸念から、地域住民が「三島測候所を保存する会」をつくり、署名運動などを行なっている。
グラウンドワーク三島も関わり、単なる反対運動だけではダメということで、具体的な活用アイデアもまとめている。測候所が蓄積してきた膨大な気象データを活かさない手はないということで、測候所の建物は気象や環境に関する教育の拠点施設とし、周囲にはビオトープなどを備えた空間を整備するというものである。また、地域でとれた農産物やお土産を売るような場所も備えたいという。
●最後は、ゴミだらけになっていた川を、住民による清掃によってホタルが飛ぶまでに再生し、グラウンドワーク三島の代名詞ともなっている源兵衛川を見学した。見学した場所は、下流にあたる温水池で、コンクリート護岸となっていたのをはぎとって、水辺に近付けるようになった。池の周囲は遊歩道になっていて、ウォーキングや犬の散歩をする人たちも目にする。池に面した東屋から水面を覗き込むと、水は澄んでいて底がよく見える。水辺の植物に詳しい参加者の説明で、ガマ、ヨシ、マコモといった水を浄化し魚の住処にもなる、葉が高く伸びる植物の見分け方などを学びながら見学した。
その後、湧水の枯渇と環境悪化によって絶滅しながら、グラウンドワーク三島が復元したミシマバイカモ(三島梅花藻)の見られる湧水公園に立ち寄って、見学会は終了した。
●見学会後は、場所をグラウンドワーク三島の事務所がある建物のホールに移して、事務局長の渡辺豊博さんのお話を聞いた。
土曜日には、静岡県立大学の非常勤講師として、非営利組織マネジメントのNPO概論を教えているという渡辺さんは、この日も昼間は静岡市で教鞭をとっていた。そんな「県立」大学で教える渡辺さんだが、話はいきなり行政の体質の批判から始まった。
だが、その言葉は、市民主体の環境改善活動に、むしろ行政を参加させてきたという実績があるからこそ言えるものである。グラウンドワーク三島の有名な合言葉は、「右手にスコップ、左手に缶ビール」である。スコップは、議論より実践が大切ということを意味し、小さくてもよいから具体的な答えを残そうということ。缶ビールは、せっかく集まったのだから、飲みながらコミュニケーションをとろうということである。
渡辺さんの話は、経験に裏打ちされたノウハウに満ちている。例えば、会議では、大きな声で長く話した人には、言った分だけ責任をとってもらう。会議後の飲み会に連れて行き、口説き落とすのである。発言のない人も、人の発言を聞いていると、言いたいことがたまってくる。それをうまく吐き出させて、様々な意見の「中庸」のところに収斂させるのがポイントなのだという。
また、プロジェクトに取り組むときには、「パートナーシップ相関図」というマトリクスを作成する。縦軸に必要な資材など、横軸に参加する主体を書き、誰にどんなものを提供してもらうかを、ジグソーパズルのように埋めていく。市民と企業と行政の三者が参加しないものはグラウンドワークとは言えないため、必ずこれらの主体が参加するようにコーディネートしていくという。
そのようにして取り組んだプロジェクトは、これまでに34にのぼる。それらの活動は、いくつかが常に同時並行で進んでおり、年を追うごとに数が増えているという。それぞれ担当者が決まっており、月に1回のスタッフ会議で意思決定や進捗報告を行う。コアスタッフは12名おり、ほとんどは青年会議所の出身者で、三島のまちづくりのリーダーばかりである。
最近は、このスタッフ会議を視察する人が多いという。20〜30名が参加する2時間半くらいの会議で、20〜30項目を扱うスピーディーな議事だが、前向きな姿勢であるから可能なのだという。例えば、市内の全中学生に河川清掃を経験させるとしたらどうするか?答えは、PTA会長をやればよいとなる。そういうわけで、コアスタッフ全員は、PTA会長経験者である。また、活動は楽しくなければ続かない。スタッフ会議では、20〜30回は笑う箇所があるという。
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グラウンドワーク三島・事務局長の渡辺豊博さん(左)と
ビオトープ見学会を案内してくださった加藤正之さん(右)
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●そんなグラウンドワーク三島だが、取り組み姿勢は真剣だ。公園にせよビオトープにせよ、ものをつくることは地獄の始まりという。行政がこれらをつくりたがらないのは、管理費がかかることがわかっているからである。グラウンドワーク三島が関わってつくった以上、後は知らないでは済まされない。学校なり市民団体なりが管理を続けていくよう、コーディネートしつづけなくてはならない。もしできなければ悪口を言われることになるが、悪口はNPOにとっては大きな痛手と心得ている。そのくらいの覚悟を持って取り組んでいるのでる。
そのようなリスクに挑む姿勢は、最近ではコミュニティ・ビジネスによるまちづくりを志向するものになっている。実は、現在グラウンドワーク三島の事務所が入っている建物は、三島市が中心市街地活性化の関係で建設したものであるが、この建物に入居するとともに、マネジメントも請け負っている。1階は事務所とホール、2階はレストラン、3階はパソコン教室が入っている。この建物のマネジメントにしても、赤字を出すことになれば責任を問われる。グラウンドワーク三島は来年で15周年を迎えるが、本家イギリスからも視察に訪れるほどの実績を活かし、グラウンドワークの全国研修センターを構えていくという。そして、環境改善活動で地域を活性化させる事例になることを目指している。
グラウンドワーク三島は、行政に対しても参加させているという気構えであるが、訪れる人たちに対しても同様である。環境改善の事例を見に来たいのなら三島に来ればよい。そして来たなら、うなぎを食べて、酒を飲んで、お金を落として言ってくれ。「環境コミュニティ・ビジネス」と呼ぶビジネスモデルが、少しずつその姿を現わしつつある。今後は、東アジアにもグラウンドワークを広めていきたいという、グラウンドワーク三島のビジョンは、とても前向きで魅力に満ちている。
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グラウンドワーク三島の事務所が
入り、マネジメントもしている建物
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●この後、参加者全員で楽しく交流懇親会となった。2階のレストランから食事やお酒が運ばれ、皆でグラウンドワーク三島の施設管理ビジネスにも貢献した。食事の内容も、1人3,000円でお腹いっぱい飲み放題の、お得な内容であった。また、この日は市内でホタル祭りが開かれており、環境再生の恩恵を市民が大切にしていることを知ることができた。
講義中は豪胆な渡辺さんであったが、お酒を飲みながら改めてお話してみると、とても気配りがあり聞き上手な人であることがわかった。スタッフ会議も放っておくと際限なく盛り上がってしまうため、ブレーキをかけるのが大切という話であった。総合的な視点で活動をマネジメントするリーダーの存在が、NPOではとても重要であることを改めて感じた。
筆者は、東京ランポのなかでは、新しいノウハウやネットワークを開発して、対価のある仕事を開拓してきた方だと思うが、東京ランポの基本的な財政構造の問題(大口会員からの支援額の減少)で、1〜2年のうちには退職せざるを得なくなりつつある。リーダーのビジョンなきNPOでは、スタッフがシビアな結果をもろにかぶる。
ただ、今回、念願のグラウンドワーク三島の視察がかない、ビジョンと行動力こそNPOにとって大切なことを実感し、具体的に地域を変えていける可能性を知ることができた。そんな三島でもらった「元気」をもとに、今後の活動にも踏み出していきたい。
NPO法人グラウンドワーク三島ホームページ
※ 「『元気な入間』が推進市民組織の立ち上げへ 準備会が終了」もご覧ください。
(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)
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