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まちづくりニュース

市民参加・協働のまちづくり
平塚市自治基本条例骨子の元市民委員向け説明会開催
2005/11/3


●2005年10月29日(土)午前10〜12時、ひらつか市民活動センターにて、自治基本条例骨子説明会《元市民委員会の委員さん向け》が開催された。筆者は、元市民委員から取材依頼を受け、傍聴した。

●平塚市の自治基本条例づくりは、2004年春より本格化していた。
 公募市民58名(発足時)による「平塚市自治基本条例を考える市民委員会」が発足し、並行して職員による「自治基本条例策定検討職員プロジェクトチーム」も行われてきた。市民委員会は2005年7月まで32回、職員PTも2005年6月まで40回を数えた。
 市民委員会と職員PTの検討結果を受けて、「平塚市自治基本条例策定委員会」(学識経験者3名、市内各種団体3名、市民委員会4名)でさらに8回の検討が行われ、2005年7月25日に「平塚市自治基本条例提言書」が市長に提出された。
 提言書は、8月にパブリックコメントにかけられ、52名から112件の意見が寄せられた。 このパブリックコメントの結果も踏まえて、行政が法律との整合等も図ったうえで、議会に上程する条例案のもとになるものとして作成したのが「条例骨子」である。
 条例骨子は、2005年11月18日(金)までの期間、パブリックコメントにかけられるのと合わせて、11月4〜6日の間、市内の東西南北4地区で地域説明会が実施される。また、それとは別に、元市民委員会の委員向けに開催されたのが、今回の説明会であった。

●今回、筆者に取材依頼があった際、元市民委員より聞かれたのは、条例骨子が提言書からあまりにかけ離れているという、憤りの声であった。
 策定委員会が出した提言書については、専門的な視点からの修正はあったものの、市民委員会での検討結果を尊重するという学識委員の考えもあり、市民委員会提案と大きく変わるものではなかった。
 では、行政が手を加えた条例骨子に対して、元市民委員たちはどのような感想を持ったのか。この日参加した、約20名の元市民委員の発言から読み取りたい。

●この日の説明会では、まず、平塚市まちづくり政策室の室長より、条例骨子の説明が行われ、提言書からの変更理由についても説明があった。
 説明内容は、パブリックコメントの対象文書である「平塚市自治基本条例骨子」の資料に示されたものと重なるため、ここで詳細には触れない。但し、「条例骨子をまとめるに当たっての基本的な考え方」とされた7項目は重要であるため、以下に掲載する。
1 提言書の自治基本条例に盛り込みたい内容を尊重することを基本に、より多くの市民の意見を反映します。
2 自治基本条例は、「市民が幸せに暮らせるまちの実現」を目指し、この達成に必要な自治の仕組みや考え方を規定します。
3 自治基本条例は、平塚市の条例体系の最上位に位置する条例として規定します。
4 現行法令(憲法及び法律)に抵触しない規定とします。
5 基本条例であることを踏まえ、個別具体的な内容や政策的な内容は必要最小限にとどめ、具体的な内容等は他の個別条例、計画等で規定することを基本とします。
6 「まちづくりの方向性等」を規定し、平塚市の他の条例や計画等が導き出せる条例体系(計画体系)の整備を目指します。
7 市民の権利ととともに責務についても規定するため、この点に留意して、新たな自治の基本となるルールを定めるものとします。
 平塚市ホームページ 「平塚市自治基本条例骨子」ができました。ご意見をお寄せください。

●行政からの条例骨子の説明に続き、元市民委員からの意見、質問がとられた。当初は、少人数のグループに分かれて行われる予定であったが、グループワークが主体であった市民委員会の進め方に対して、全体で議論を行う時間が十分でなかったとの不満が、元市民委員から聞かれたため、全体でのやりとりとなった。
 なお、この日の進行は、市民委員会のときと同様、大久手計画工房が務めている。

●条例骨子に対し、元市民委員から最も多く聞かれた感想は、文章が整理されすぎていて、市民の思いが薄まってしまった、というものであった。
 具体的には、「条例をゼロからつくるというので参加した。最初は何もわからなかったが、皆さんについていけるようにがんばった。人間味のある提言書になったと思っていたが、骨子になってきれいになりすぎた。頭がいい人が書いた感じだ」「見事に交通整理されてしまった。骨子はよそよそしい。平塚市の香りはどこにあるのか」といった意見が出た。
 それに対し、法制に詳しい室長代理からは、「(自治基本条例とは言え)法律を通らなくてはならないため、交通整理した」「起承転結を意識した条文とした」「その結果、どこでも(平塚でなくても)使えるものになってしまった部分はあるかも」との回答がなされた。

●市民委員会が平塚市らしさを出した点としては、関東大震災や平塚大空襲などの歴史に由来する「安全・平和」への思いがあり、「【4.まちづくり】−(1)安心・安全で平和なまちづくり」には、「自然災害等の予防対策、事後対策」「爆発物等の製造、持ち込みの禁止」「安全・平和に関する情報の収集・提供、意義の普及」といった文言がある。また、「子どもの権利」について、「子どもの権利条約」にも言及して、「個人として意思が尊重され(る)」としている。
 しかし、「安全・平和」に関しては、記述が具体的すぎて他の項目とのバランスがとれないとの理由で、記述を簡素化している(この修正点だけは、提言書へのパブリックコメントで同様の意見があったことが紹介されている)。元市民委員からは、米軍の軍事展開が現実のものとなったとき、抽象的な表現では歯止めがきかないため具体的な記述にしたとの反論が聞かれた。
 「子どもの権利」に関しても、個人としての尊重といったことは、「市民の権利」で記述しているため、あえて繰り返さないことにしたという。元市民委員会としては、子どもの人権が無視されがちであるから、あえて明示的に記述したのではなかっただろうか。同様に、「市民の定義」であえて言及してあった「国籍、年齢にかかわらず」の文言も、書かなくても明確との理由で削除されている。

●このように見てくると、上に掲載した「条例骨子をまとめるに当たっての基本的な考え方」の7項目のなかでも、特に「5 基本条例であることを踏まえ、個別具体的な内容や政策的な内容は必要最小限にとどめ、具体的な内容等は他の個別条例、計画等で規定することを基本とします。」が、最も強い基準として働いていることがわかる。
 しかし、元市民委員にとっては、そうして削られた個別具体的な表現にこそ、自分たちの思いが表現されていた、ということではないかと思う。説明会終了後、「肉と血が削ぎ落とされて骨だけになったから『骨子』とはよく言ったものだ」と皮肉をこめて語った人がいたが、多くの元市民委員にとっても同じような思いなのかもしれない。
 また、具体的な内容等は個別条例や計画等で規定するという点についても、条例骨子の表現では個別条例等を誘導できないのではないかとの懸念の声も出た。あくまで骨子であるため、条例案では表現が変わるのかもしれないが、大和市自治基本条例のように、条文で明確に「別に条例で定める」と個別条例に委任した方が、実効性の点でも望ましい(大和市では、自治基本条例で示した市民参加条例と住民投票条例の策定に取り組んでいる)。

●今回、元市民委員向けの説明会を傍聴してみての筆者の率直な感想は、元市民委員と行政にとって、お互いの考えが分かち合えた、大変よい場であったのではないかということである。2時間という限られた時間ではあったが、元市民委員から多岐にわたる重要な意見が出され、行政も提言書の修正点について考えを述べることができた。
 問題は、市民委員会提案をもとにして策定委員会から投げられた提言書を、いきなり条例骨子という形で打ち返して、「意見があればパブリックコメントで言ってください」とするのではなく、行政と市民委員会との間で、提言書の記述の内容を対話の形で確認するプロセスがあってもよかったのではないかということだ(その意味で、市民委員会が終了と同時に解散したことが問題だった、と言う元市民委員もいる)。
 そうすれば、条例骨子という形ではなく、市民らしい表現をもっと活かした「条例素案」を、パブリックコメントの対象にできたであろう。また、大幅に赤ペンの入ったものを示されたことで、元市民委員が自分たちの作業を否定されたような気分になり、行政への不信感を抱いてしまったとしたら、市全体の今後のためにもならない。
 なかには、市民主体で自治基本条例を検証評価する「市民自治推進委員会の設置」のように、議会の上位に位置づくものになるなどの理由で全削除されたり、4年を超えない期間ごとに「条例の見直し」を行うとの規定のように、法的安定性を損なうということで全削除されたりした箇所もある。
 しかし、これらの条文のねらいは、元市民委員が発言したように、「これで条例が完成したとは思えないから、今後も見直しが必要だ」ということなのである。予め対話の場を持っていれば、市長の諮問機関でよいから検証機関を設けたり、4年と明記しないまでも見直し項目を入れたりするなど、全削除することは避けられたはずである。

●もっとも、これは筆者の分析であるが、行政としては、策定委員会で専門的な修正がしっかり行われ、もっと「完成度の高い」提言書が示されると思っていたのではないか。それが、市民参加に理解のある学識委員を当ててしまったため、市民委員会提案を最大限尊重した提言書になるという誤算が生じたのではなかろうか。
 さらに言うと、市民委員会の正式名称が「平塚市自治基本条例を考える市民委員会」となっているように、あくまで自治基本条例がどうあるべきかを「考える」だけで、市民委員が条文を「つくる」と言い出したのは想定外であったのではないか。市民委員会が「考えた」だけであれば、条文は行政が「つくって」、策定委員会からお墨付きをもらえればよかったのである。
 ところが、策定委員会提言書が、条文形式の市民委員会提案をもとにしたために、「余計な部分」を削って、当初は予定していなかった「条例骨子」という形でパブリックコメントをすることになったのではないかと考える。
 このあたりは、行政に確認をとったとしても、真実が聞けるかわからない点であるため、あくまで筆者の推測によるものである。

●平塚市の市民委員会をたびたび傍聴してきて、公募市民を中心に構成される市民会議の難しい面をいろいろと発見できた。市民会議では、市民が主導的に運営しようとするため、行政が想定していた成果物やスケジュールの通りにはならず、行政が予め依頼していたファシリテーターの業務内容でさえ、市民が後から変更することが当然ということである。
 筆者も現在、相模原市パートナーシップ市民委員会準備会、四街道市市民参加条例市民委員会といった市民会議のファシリテーターを務めているが、市民のコアメンバーによる運営会や幹事会と相談しながら対応している。市民参加に携わる行政やコンサルタント業者には、ますます柔軟性が求められるようになっている。
 また、以前から指摘しているように、平塚市の市民委員会の場合、運営組織である世話人会に、プログラム設定などの権限が十分に付与されていなかったために、会議の進捗を遅らせ、コンサルタント業者をうまく活用できなかった。このことが結果として、十分に議論する時間を確保できなかったという、市民委員全体への不満にはね返った。
 今回の説明会で行政も指摘していたところであるが、市民委員会の結論が一本に絞れなかった箇所もあり、行政に修正の余地を与えてしまった面がある。筆者は、6月30日(木)に行われた、第31回市民委員会を傍聴したのが最後であったが、最終回の1回前だというのに、文案のできていない箇所があって議題が当日変更になるといった慌しい状況だった。
 そのときの席で、市民委員会の運営方法への不満を述べ、「市民委員会の結論に反対する」と明言した委員もおり、後日、元市民委員3名の連名で、市民委員会の活動を非難する声明も出されている(「自治基本条例を考える市民委員会の活動を終えて 全員公募という参加を売りにしただけなのか」 2005.10.25 +α平塚市民情報誌No20に収録)。

●いずれにせよ、今回の説明会の最後に話があったように、行政としては条例骨子のまま動かないとは考えていないとのことであるので、今後、地域説明会やパブリックコメントを受けて、条例案がどのように修正されていくのか、引き続き注目したい。

 平塚市ホームページ 自治基本条例のホームページ

「第6回平塚市自治基本条例市民委員会開催」「第9回平塚市自治基本条例市民委員会開催」「第13回平塚市自治基本条例市民委員会開催」「第17回平塚市自治基本条例市民委員会開催」「第22回平塚市自治基本条例市民委員会開催」もご覧ください。

(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)

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