市民参加・協働のまちづくり
| 宗像市で市民参画・協働・コミュニティ活動の推進条例が成立 |
2005/9/8
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●2005年8月30日(火)、宗像市(福岡)で「宗像市市民参画、協働及びコミュニティ活動の推進に関する条例」が成立した。
2000年の分権改革以降、住民自治による自治体運営を保障する条例として、「市民参加条例」「協働条例」の制定が全国で増えている。「市民参加」(自治体の意思形成に市民が参加すること)と「協働」(自治体とNPOなど団体同士が協力すること)は、別々に条例化されるのが一般的であるが、狛江市(東京)が「狛江市の市民参加と市民協働の推進に関する基本条例」、下関市(山口)が「下関市市民協働参画条例」で両者を一体化した条例を制定した例がある。宗像市の条例は、「市民参画(参加)」「協働」に加えて、「コミュニティ」までも一体化した全国初のケースである。
宗像市では、1997年に「コミュニティ基本構想」を策定して、小学校区ごとの「コミュニティ」への再編に取り組んできた。第1段階として、組織づくり(コミュニティ運営協議会)と拠点施設の設置(コミュニティ・センター)が行われ、第2段階では、子ども会や老人クラブなど各種団体に出している補助金を一本化して「コミュニティ」に出すことになっている。このような、すでに取り組んできたコミュニティ運営協議会やコミュニティ・センターについても、今回成立した条例に規定されている。
以下では、宗像市経営企画課の井上賢司さんからの情報提供をもとに、条例成立の経過と条例の内容について紹介したい。
●宗像市の条例づくりの動きについては、以前のニュース(2004年8月26日)で紹介した。
条例案を策定する機関として、学識経験者2名、各種団体5名、公募3名の計10名で構成される、「宗像市市民参画条例検討審議会」が設置され、2004年3月から2005年5月まで、本会議25回(うち2回は市民と意見交換する出前審議会)、グループ会議12回(総則・市民参画7回、協働・コミュニティ5回)にわたり検討を行ってきた。2005年3〜4月にかけての1ヶ月間には、条例案のパブリック・コメントも行っている。
他自治体の場合、策定機関が答申(提言)した条例案をもとに、行政が最終的な修正を行って議会に提出するが、宗像市では、市民と行政の信頼関係を重視して、原則として行政による修正は行っていないという。その分、審議会のなかで、法令等との関係や市議会の状況等も説明したうえで、委員と事務局で徹底的に議論したという。
そうして、5月9日の第25回審議会で答申された条例案は、早くも6月3日には市議会(第2回定例会)に提案されている。
●市議会に舞台を移した条例案であるが、審査を付託された総務常任委員会は、「前文について検討が必要な箇所があること」「市の施策の柱と位置付けられているコミュニティを、市民参画や協働と条例で一体化した理由が明確でないこと」の2点から、いったん継続審査としていた。
それが、市議会が閉会中の7、8月に総務常任委員会で、審議会の会長・副会長を参考人招致するなどして検討した結果、8月19日、前文の4箇所と施行期日を定めた附則第1項を修正して、賛成多数で可決された。継続審査となった2つ目の点である、「コミュニティを一体化する理由」については、なお疑問があるとの反対意見も出ていた。
そして、8月30日、再開した市議会(第3回定例会)の開会日に、総務常任委員会での修正案(その他の部分は原案)が本会議でも賛成多数で可決され、「市民参画(参加)」「協働」「コミュニティ」の3つを一体化した全国初の条例が成立した。
賛成討論のうち、1名からは、条例案の策定過程が市民の手づくりであることを評価する意見が聞かれた。もう1名は、市の中心施策であるコミュニティだけで独立の条例とすることが本来は望ましいとしたうえで、新たに設けられるコミュニティ基本構想に関する審議会の結果次第ではコミュニティのみでの条例化もある、との執行部答弁を得たことから賛成したとの意見であった。反対討論の1名は、市民参画についてはよいが、協働については行財政改革の延長との意見であった。
●成立した条例については、下記のページをご覧いただきたい。
宗像市市民参画、協働及びコミュニティ活動の推進に関する条例
原案と修正案(成立した条例)は、下記で対比してある。提案理由は、前文に関しては、「条例制定の趣旨や基本原則などを記す前文をよりわかりやすい表現に改めるため」、附則第1項に関しては、「条例施行までに適当な周知期間が必要であるため」である。
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原案
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修正案
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前文
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地方分権から地域主権へのうねりを住民自治の営みの中で現実のものにすることができるか、地域社会の主権者としての私たちの力量が問われる時代でもあります。
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地方分権から地域分権への流れを、宗像らしい住民自治というかたちで実現させることができるか、地域分権の担い手としての私たちの力量が問われる時代でもあります。
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まちづくりの仕事に主体的にかかわっていくことは私たちの権利であることを確認するとともに、これまでのように行政頼みや他人任せにすることはやめて、自分たちが担い手となって取り組もうという宣言です。
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まちづくりの仕事に主体的にかかわっていくことは私たちの権利であることを確認するとともに、行政や他の市民と力を合わせながら、自分たちが担い手となって取り組もうという宣言です。
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この条例に魂を入れることができるかどうかは、私たち市民の発言と実践いかんにかかっています。
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この条例に魂を入れるためには、私たち市民が自らの責任において発言し、実践することが肝心です。
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立場の違うものがともに手を携え、智恵を出し、一緒に汗を流すことによって共通の目的を達成する。そのことを私たちの先達は「もやい(催合い)」という言葉で表現してきました。この条例が、その理念において同じものを目指しているという意味で、市民から通称「もやい条例」と親しみとともに呼ばれ、日々の市民の暮らしの中に根づいていくことを願っています。
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市民の日々の暮らしの中に、この条例の理念と手法がしっかりと根づいていくことを願ってやみません。
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附則
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(施行期日)
1 この条例は、平成17年11月1日から施行する。
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(施行期日)
1 この条例は、平成18年1月1日から施行する。
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他自治体の例を見ても、多摩市(東京)や大和市(神奈川)では自治基本条例案が市議会で修正可決されており、自治体運営の基本に関わる条例をめぐっては、市民参加による条例案の策定が、議会に緊張感を与え、存在感を発揮させる機会をつくっている。
宗像市の場合は、直接には法的な効果はないとされる前文の修正ではあるが、審議会で検討した市民の状況認識である「行政頼みや他人任せ」の部分や、「もやい条例」という通称をつけるアイデアが削除されたことは、参加した市民と市議会との認識の違いが表れた点であると言えよう。
●宗像市の条例の特徴は、冒頭で触れたように、「市民参画(参加)」「協働」「コミュニティ」が一体化している点にある。下記の目次のように、それぞれで1章ずつを構成している。
目次
前文
第1章 総則(第1条−第6条)
第2章 市民参画
第1節 通則(第7条)
第2節 実施機関が実施主体で行う市民参画(第8条−第14条)
第3節 市民が請求する市民参画(第15条−第21条)
第4節 住民投票(第22条−第28条)
第3章 協働(第29条−第35条)
第4章 コミュニティ活動の推進(第36条−第44条)
第5章 宗像市市民参画等推進審議会(第45条)
第6章 雑則(第46章)
附則
もっとも、ボリューム的には、「市民参画」だけで全体のほぼ半分に当たる22条分を占める格好となっている。他自治体の例を見ても、「市民参加」は「協働」に比べて、規定される手法の数が多いうえ、手続きなど規定の内容も細かいことから、ボリュームが大きくなる傾向にある。
●ただでさえボリュームが大きくなりがちな「市民参加」に、同じ自治体運営の原則に関わることとは言え、「協働」など他の要素を合わせて一本の条例で定めてしまうことについては、高橋秀行・岩手県立大学教授が『市民参加条例をつくろう』(公人社)で否定的な見解を示している。それぞれの規定が不十分なものにとどまる可能性が大きいためである。
ただ、宗像市の場合は、高橋教授が実効性のある市民参加条例をつくるうえでポイントに挙げた、「マッチング・ルール」(どの行政活動のときにどの参加手法が採用されるかという対応関係の基準)については満たしている(第8条)。
また、市民参画の手法を次の2つに分けたのは、性格の上で正確な分類であるだけでなく、見やすさの点でもうまい整理だと言える。
第2節 実施機関が実施主体で行う市民参画
・附属機関等の設置 ・市民意見提出手続 ・市民説明会 ・市民ワークショップ
第3節 市民が請求する市民参画
・市民政策提案手続
後から条例をつくる自治体は、他自治体の例を踏まえることができるのが、大きなメリットであるが、宗像市の場合も、上記の「マッチング・ルール」をはじめ、他自治体のよいところに学んだり、上記の市民参画手法の分類のように、他自治体と共通する手法ではあるものの、その並べ方を工夫したりしたことがうかがえる。
●一方、他自治体のアイデアを、熟慮のうえ異なる形でとり入れたのが、「市民が請求する市民参画」とされた「市民政策提案手続」である。市民500人以上の署名があれば、市に政策提案できる制度であり、福岡で新聞が大きく報じてきたのもこの点であった。第15条から第21条にわたり、詳細に規定されている。
この「市民政策提案手続」は、和光市(埼玉)が「和光市市民参加条例」で初めて導入した制度である。和光市の場合は、わずか10人以上の署名で市に提案できることになっており、人数だけを見れば、500人以上というのは厳しい条件であるように見える。
しかし、和光市の場合は、行政(条文上は「市の機関」)が受け入れられるかどうかを検討して回答するのに対し、宗像市の場合は、条例第45条により設置される「市民参画等推進審議会」が関与する形になっている。まず署名を集める前に、当該提案が対象事項に該当するかどうかを行政(条文上は「実施機関」)が審査することになっているが、該当しないと回答された場合には、不服申立てを行い、推進審議会に審査してもらうことができる。
また、提案された政策は、提案者が希望すれば、「市民政策提案市民検討会」を開催し、広く市民に検討してもらうことができるが、希望しない場合は、推進審議会に諮問しなければならないことになっている。このように、500人以上という決して手軽ではない条件をクリアする代わりに、提案の扱いが行政だけで判断されるのではなく、他の市民の意見や第三者機関も関与しながら決定する手続きがとられることになっている。
●さらに、「住民投票」については、「先進的」とされる「常設型」をあえて選択しなかった。
住民投票には大きく分けて、2つのタイプがある。1つは、「地方自治法」に規定のある、有権者50分の1以上の署名をもって条例制定を請求する「直接請求」の手続きに則った「直接請求型」である。この場合、当該案件に関する住民投票を行うための条例案を提出しなくてはならないうえ、その条例案が議会で可決されないと住民投票は実施されない。もう1つは、自治体が独自に条例で定める必要があるが、条例で規定した以上の署名数を満たして住民投票を請求すれば、必ず住民投票を行わなくてはならない「常設型」である。必ず行うことになるので、請求に必要な署名数は、有権者の「3分の1以上」(例えば、高浜市住民投票条例、大和市自治基本条例)というように、高いハードルを設けるのが普通である。
宗像市の場合は、審議会での議論の結果、あえて「常設型」はとらなかったうえ、請求に必要な署名数も、有権者の「3分の1以上」とした。安易に住民投票に持ち込むのではなく、まずは様々な市民参画の手法を使って、市民と徹底的に議論をする行政運営を行うべきで、市民の意見が大きく分かれて高度に政治問題化した場合にのみ行うというように、住民投票をいわば「伝家の宝刀」として位置付けたからである。
●どこかの自治体が導入済の、いわば「先進的」と言われる制度を、後から条例をつくる自治体が、自分のところの条例に「移植」するのは簡単なことである。むしろ、「先進的」とされる制度をあえて導入しないことや、あるいは、「先進的」とされる制度をさらに自分たちなりにアレンジして導入することは容易ではない。
条例づくりにあたっては、地域の特性をどのように出すかが、最も難しい課題であると言えるが、自分たちにふさわしい「市民参画」のあり方を考え抜き、「コミュニティ」に自分たちの自治体らしさを見出した宗像市で、条例施行後にどのような自治体運営が行われていくのか注目していきたい。
宗像市ホームページ 宗像市市民参画条例検討審議会
※ 「宗像市の市民参画条例策定とコミュニティ構想」もご覧ください。
(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)
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