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まちづくりニュース

市民参加・協働のまちづくり
様々な会議の議決要件から考える「民主的な決定」
2005/7/28


※ この文章は、『季刊まちぽっと5号』(2005年8月発刊)「これに注目! Think Pot」に収録した「民主的な決定ってどんなもの? 様々な会議に見る議決要件」の原文です。「Think Pot」ではQ&A形式のやさしい表現に直してありますが、より詳しくお知りになりたい方は、原文もぜひご覧ください。

●日本では、小学校の学級会以来、多数決で物事を決める教育を受けてきている。社会の制度でも多数決を採用しているものが多い。一方で、自治体への市民参加の場面では、多数決での決定は「合意形成」としては不十分で、全会一致が望ましいとの考え方もある。

●郵政民営化法案の審議は、国会を二分する状況となった。国会は二院制で、衆議院、参議院の両院で、それぞれ出席議員の過半数で議決する必要がある(日本国憲法56条)。半数を1名でも上回れば、ほとんど同数の反対者がいても決まってしまうわけだ。但し、過半数以外で議決が行われる例として、参議院で否決された法案を、衆議院が出席議員の3分の2以上で再び可決すれば法律として成立するといったものがある(日本国憲法59条)。両院で結論が異なった場合は、より慎重な議決要件が適用されることがわかる。
 なお、衆議院が可決したのと異なる法案を参議院が可決した後、衆議院が参議院で可決された法案を可決するといった場合は、両院で異なる結論とはならないことから、通常の過半数でよい。そのようなケースとして、NPO法人を制度化した1998年の特定非営利活動促進法がある。衆議院でいったん「市民活動促進法」として可決されたものの、参議院で「市民活動」という言葉への反発があり、「特定非営利活動」という言葉に改めて可決され、衆議院でも同案が可決された。また、1997年の臓器移植法も一例。脳死を例外なく人の死とする法案が衆議院で可決された後、ドナーの事前の意思表示を前提に臓器移植の場合に限って脳死を人の死とする法案が参議院で可決され、衆議院でも同案が可決された。

●地方議会においても、条例や予算に関する通常の議決は、出席議員の過半数で行われる(地方自治法116条)。こちらも、過半数以外で議決が行われる例がある。例えば、首長には一種の「拒否権」が認められており、議会の議決に異議がある場合は、議会に再議を求めることができ、議会は出席議員の3分の2以上で再び議決すれば条例や予算が成立するというものである(地方自治法176条)。また、首長の不信任は、3分の2以上の議員の出席のもと、4分の3以上での議決が必要となる(地方自治法178条)。国会が「国権の最高機関」であるのと異なり、地方自治では首長の権限が大きいため、議会が首長と異なる判断をする場合は、議決要件が厳しくなるわけである。
 他に「拒否権」があることで有名なのは、国内の政治からは離れるが、日本政府が常任理事国入りを目指している、国際連合の安全保障理事会である。現在は常任理事国5ヵ国と非常任理事国(任期2年)10ヵ国の計15ヵ国で成り立っていて、過半数よりも1つ多い9ヵ国の賛成で決定されるが、常任理事国には「拒否権」があり、1ヵ国でも反対すると決定できない。これは、60年前の第2次世界大戦が生んだ新しい国際秩序として、戦勝国に有利な地位を与えたことに由来している。

●話を国内に戻すが、国会にしても地方議会にしても、議長は議決に加わることができないことになっている。但し、議長を除く議員が全く半数に割れて議決できない場合は、議長が決定できることになっている(日本国憲法56条、地方自治法116条)。本会議だけでなく委員会についても同様で、地方議会の委員会については議会条例で、委員長について同様の規定がある。
 市民参加に関わりの深いところで、可否同数に割れて委員長が最終的に決定した事例としては、2004年9〜10月に審議された大和市自治基本条例がある。公募市民を中心とした32名による「大和市自治基本条例をつくる会」が、市内各所での約60回の市民との意見交換会を経て素案をつくり、それをもとにした条例案を市長が議会に提出した。しかし、総務常任委員会での審議の際に、条例案の重要な4箇所を修正した案が2委員から提出され、3対3の可否同数(1名が採決前に退席)、最後は委員長により修正案を可決する決定が行われた。本会議でも修正案が可決され、現在の大和市自治基本条例となっている。本当に僅差となったときは、議長や委員長の席を占めているかどうかが大きな意味を持つ。

●国会において過半数で議決しないものの代表例は、実は他にある。戦後60年を迎えて機運が高まり出した憲法改正に関する議決である。憲法改正は、衆参各院の総議員の3分の2以上の賛成で国会が発議し、国民投票で過半数の賛成を得る必要があると憲法に定めてある(日本国憲法96条)。しかし、国民投票を行うための法律ができていないため、例えば、国民投票による過半数と言っても、その分母は投票者総数、有権者総数、はたまた白票などの無効票を除いた有効投票総数なのか、といったことが未定である。ただ、いずれにせよ、通常の法律の改廃が、制定の場合と同様、衆参両院の過半数で行われるのに比べ、最高法規である憲法については、改正するのが難しいように定めてある。
 実は、現在、自治体で制定が増えている、「自治体の憲法」と言われる自治基本条例でも、同様のアイデアが示されている。三鷹市で市民が自主的に試案づくりを行ってきた「自治基本条例をつくるみたか市民の会」の試案では、施行後2年以内に住民投票を行って自治基本条例の存続を問うとか、改廃には議会の議決だけでなく住民投票で過半数の賛成を得る必要があるとしている(第3次試案3条)。いまのところ、改廃の要件に、議会の3分の2以上の賛成が必要であるとか、住民投票での過半数の賛成が必要であると定めた実例はないが、今後出てこないとも限らない。しかし、たとえ自治基本条例とは言え、通常の過半数による議決より厳しい条件を求めることについては、専門家の間でも地方自治法に抵触するとの否定的な見解もある。

●さて、政治からは離れるが、多数決ではなく全会一致を要件としている代表的な制度としては、日本のものではないが、アメリカの刑事・民事裁判における陪審制がある。無作為抽出で選ばれた12名の陪審員が有罪か無罪かについて話し合う。ヘンリー・フォンダ主演の1957年の映画『十二人の怒れる男』でも有名になったように、陪審員の結論は12名の全会一致で決まることになっている(一部の州が10名以上の多数決としていることを除く)。決まらない場合は、検察は再び起訴することができる。全会一致をとり入れているのは、人間の人生を左右する重要な決定をより慎重に行うため、徹底した議論が行われるようにとの意図が見える。但し、2005年6月に行われたマイケル・ジャクソン氏の少年への性的虐待罪をめぐる裁判で、陪審員が無罪評決をしたことへは、マスコミや米国民の批判も大きかった。全会一致とは言え、「心証」に流されやすいことの問題点も指摘されている。
 一方、日本で2009年5月までに導入が決まっている裁判員制度は、刑事事件における有罪・無罪と量刑を決めるものであるが、全会一致ではなく多数決を取り入れている。無作為抽出で市民から選ばれた6名の裁判員と3名の裁判官によって構成されるのが原則で、評決は過半数によって行われる。但し、(裁判員が6名という原則的なケースの場合)3名の裁判官のうち少なくとも1名が多数側に加わっている必要がある。

●全会一致の是非を考えるうえで参考になるものに、聖書学者の故・山本七平氏が日本文化を言い表した「空気」の文化というものがある。本当は反対であっても、場を壊すのは悪いという配慮から同調するといった「空気」が働くというものだ。
 再び政治の話に戻るが、自民党の最高意思決定機関である総務会は、国会に提出される法案の了承などを行っているが、結党以来、ずっと全会一致で決定することを守ってきた。それが、今回の郵政民営化法案の決定にあたっては、初めて全会一致ではなく多数決を採用したことで話題になった。これまでは、反対者が事前に退席するなどの方法で、全会一致の形を守ることで党内にしこりを残さないようにしてきたわけである。これも「空気」を大切にした考え方の1つに違いない。

●いよいよ市民参加の話になるが、どのように決定するのがよいのかについては、近年日本でも知られるようになってきた、新しい民主主義の考え方である「討議デモクラシー」のなかにも、2つの異なる考え方がある。
 ドイツの理論社会学者であるハーバーマスに代表される「熟議民主主義」の場合、支配や強制のない状況で議論することができれば、自分の意見を主張するだけでなく、他人の意見も考慮に入れることで、互いが当初の意見を修正しながら合意に達することが可能であると考える。日本でも、ワークショップをはじめとする市民参加の効果を、「熟議民主主義」の観点から説明する人は多い。
 一方で、フランスの哲学者であるデリダの「脱構築」の思想を応用した「闘技民主主義」の場合、合意できるはずと考えることは、合意に加わらない者を排除することにつながると考える。むしろ、多数を形成しなかった者の存在をそのまま認めることは、異なる決定があり得たという可能性を抱えることで、ある決定がうまくいかなかった場合にも新たな解決の選択肢を得やすいと考える。

●現実の市民参加の場面。市民が公募委員として参加することが増えてきた、自治体の審議会等では、規則や要綱に過半数で議決すると記載されているのが一般的である。しかも、それは委員自身が議論して決めるわけではなく、予め行政の事務局によって準備され、第1回会議でいきなり示されて了承を求められるのが一般的である。
 それに対して、公募市民を中心に構成される市民会議では、市民自らが検討したうえで、異なる議決要件を置くことが増えている。1999〜2001年に三鷹市で基本構想見直しと第三次基本計画策定への市民提言づくりを行った「みたか市民プラン21会議」では、全員合意を原則としながらも、迅速な決定等を要する場合は、出席者の3分の2以上で議決できるとしていた(基本ルール 5.意見集約方法)。過半数では、僅差で議決した場合には市民の意見が大きく2つに分かれていることになる。一定多数の市民が賛成したと言える基準として、3分の2以上にするというのは1つのアイデアである。このような議決要件を設ける市民会議は他にも出てきている。
 また、常設の市民会議として、自主的な調査・検討に基づく市長への提言や、市民の視点での市予算編成などを行っている「志木市民委員会」では、積極的に少数意見も併記していく形をとっている。
 ほぼ同数の反対者を残す可能性のある過半数でも、不本意ながら合意に従わせる恐れのある全会一致でもなく、一定の多数意見の存在を前提とする3分の2以上といった議決要件を置いたり、少数意見を尊重したりするといったことは、選挙のような代表性の審査を受けていない公募市民を主体とする市民参加の会議においては、妥当な姿勢と言えるかもしれない。

『季刊まちぽっと5号』(2005年8月発刊)の「これに注目! Think Pot」に「民主的な決定ってどんなもの? 様々な会議に見る議決要件」を収録しています。合わせてご覧ください。

(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)

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