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まちづくりニュース

市民参加・協働のまちづくり
[書評]市民会議と地域創造
2005/7/4


●自治体の意思形成(条例や計画の策定、施策の検証など)の過程で設けられる市民参加の会議としては、審議会、委員会、協議会といったものが一般的であった。近年では、自治会連合会や商工会といった既成団体の肩書きを持つ市民だけでなく、公募で希望者を市民委員として採用するケースも増えている。
 しかし、委員構成を多少柔軟にしたとしても、運営方法については従来と変わらず、事務局(行政)が準備したタタキ台をもとに審議して、答申も事務局が委員の発言を編集して作成するというケースが普通である。また、市民委員の数は決して多くないため、価値観の多様化した市民意見を把握するのに十分でないことや、せっかくやる気を持って手を挙げている市民に参加をあきらめてもらう事態にもなっている。
 行政にとっても未知の公共課題が増大しているほか、そもそも公共課題を解決するには市民自身の取り組みが不可欠であることに、行政も市民もいまさらながら気づくなか、市民の力がもっと発揮されるような会議が必要とされている。そういった会議は、数としてはまだまだであるが、全国の自治体で多様なバリエーションを生み出しながら確実に増えつつある。
 そのような、一見すると統一性のない会議方式に一定の共通点を見出し、「市民会議」という新しいコンセプトで括って、初めてまとまった形で世に問うたのが、佐藤徹・高崎経済大学地域政策学科専任講師による『市民会議と地域創造 市民が変わり行政が変わると地域も変わる!』(ぎょうせい 2005年3月31日発行 2,190円+税)である。

●実は、従来の審議会等とは異なる方式の会議について、1つのジャンルとして確立する試みは、評者も行ってきた1人であった。但し、評者の場合は、審議会等における公募委員の採用というテーマから出発したこともあり、審議会等が公募委員のほかに学識経験者や団体代表・推薦者を必ず入れるという特徴と比較して、全員または大半を公募市民で構成するような会議を「公募市民会議」と呼んできた。もちろん、運営方法の違いといった特徴も踏まえてのことであるが、まずは外見的なところに着目したのである。
 しかし、そうすると、公募市民の割合は半分くらい(大半とは言えない)であるが、ワークショップ的に意見を出す・整理するとか、委員が自ら答申を書くといった、運営面での委員の自主性が高いケースは、審議会等なのか公募市民会議なのか不明瞭という問題があった。その点で、佐藤さんのように、市民の自主的な運営という点により着目して、「市民会議」というジャンルで括る方が、わかりやすい整理であると言える。評者も今後は、「市民会議」を使わせていただこうと思う。
 ただ、本書では、「市民会議」と対比するものを、「審議会等」ではなく「審議会」としている。14ページの図にあるように、「位置づけ」の点で、審議会は「法律や条例に基づく首長の附属機関」、市民会議は「要綱等で設置される任意団体」となっている。これは、法形式に着目した分類の仕方であるが、法律や条例で設置されるのでない協議会や検討会のなかにも、運営面では審議会と変わらないものもある。評者としては、下図のように、法形式ではなく、委員(メンバー)構成と運営方法の両面で区別して、「市民会議」に対比されるのは「審議会等」が適切であると考える。

審議会等と市民会議の違い(庄嶋の整理)

●佐藤さんは、6ページで、市民会議の定義を「地域的公共的課題の解決に向けて、行政と協力・連携して、市民が主体的・継続的に活動を行う中間的な組織または場の総称」であるとしている。
 そのうえで、(1)合意形成機能(市民同士が議論し、利害調整して、合意形成を図る)、(2)協働促進機能(様々な主体が出会うことで、協働する礎を生む)、(3)自治力向上機能(行政にお任せではなく、市民自ら問題解決に取り組む)といった機能があると整理している。評者が上述した、「市民の力がもっと発揮されるような会議」とは、まさにこういった機能を持つ会議のことである。
 佐藤さんは、このように共通の特徴を整理したうえで、45ページで、多様なバリエーションを持つ市民会議の類型化を行っている。(1)分野(包括的/個別的)、(2)期限(期間限定/常設)、(3)エリア(全市レベル/行政区レベル/コミュニティレベル)の3つの基準を組み合わせて、現実に存在する7類型を導いている。
 評者などは、早くから「目的」(本書で言う「期限」に近い)をもとに、条例や計画などに期間限定で取り組む「単一目的型」と、そういった単一目的を持たずに常設されて調査・提案などを行う「常設型」という区別は提示してきたが、「分野」や「エリア」という基準までは考えていなかった。
 むしろ、コミュニティレベルの会議などは、公募方式の会議だけでは不十分な、地域への広がりを補完するものとして、「自治的なコミュニティ組織」などと呼んで、全く異なるフレームで捉えてきた。しかし、佐藤さんは、「エリア」という基準を設けることで、市民会議の1つのバリエーションとして取り込んでしまったわけである。
 3つの基準を使うことで、一見すると統一性のなかった会議同士を、同じ市民会議のジャンルのなかで類型化したのは、本書の最大の功績の1つと言えよう。

●本書は、市民会議を体系的に扱った最初の本として、十分に使命を果たしたものになっている。
 第1章には、上記の市民会議の定義や3つの機能のことがまとめられている。特に、5ページの「市民・行政・市民会議の三者の関係」の図を説明する記述のなかで、市民会議を「市民セクターと行政セクターの中間に位置」する「架け橋やコーディネーター」と位置づけ、「市町村でさえ、まだまだ身近な存在とは言いがたい」一般市民と行政の「ギャップを埋める」ものとした捉え方は、大胆でとてもユニークである。
 第2章は、上記の3つの基準による7類型のほか、市民会議の歴史を記述するという、これまた貴重な仕事がなされている。
 第3章は、佐藤さんがアドバイザーとして実際に携わった、「たかさき市民参加推進会議」の実践過程が、ドキュメンタリータッチで描かれている。大和市自治基本条例をつくる会のような、なかなか他では真似できない先端例と異なり、標準的な市民会議の姿を記録したものと言え、初めて市民会議に取り組む市民や職員にとって、参考にしやすい内容であろう。そのときどきの市民や職員の思いや悩みも散りばめられ、実際に取り組んだことのある人にとっては、共感できる箇所も少なくないであろう。
 第4章は、会議の設置に向けた「フレームデザイン」と、会議を実際に進めるうえでの「プロセスデザイン」が、条例や計画などに取り組むタイプの市民会議を例に整理されている。佐藤さんは、前職は豊中市職員として、実際に市民会議の設計・運営に長く携わっていたため、ファシリテーターを生業としている評者から見ても、現場の機微をよく踏まえた、実践的な内容になっている。
 第5章は、市民会議がきちんと機能して、本書タイトルにある「地域創造」につながるためのポイントが論じてあり、市民会議の可能性を考えるうえで面白い。また、これまで市民参加が手薄であった、評価段階における市民会議の検討が、試験的に行われており、今後の佐藤さんの研究の展開にも注目したいところである。

●正直言うと、「市民会議」は評者も力を入れて研究してきたテーマで、他の出版社から本書と類似のテーマでの出版の打診もされていたため、「先を越された」という思いもないではない。しかし、3つの基準による7類型をはじめ、「市民会議」というジャンルを明確に確立した佐藤さんに、発明の一日の長があったというほかない。また、評者が全く手をつけていなかった、市民会議の歴史を説き起こした点など、評者としても大変勉強になった。
 佐藤さんには、2005年3月23日(水)に、高崎経済大学附属地域政策研究センターの研究会講師(演題は「公募型市民会議の現状と課題」)として評者を呼んでいただき、対面を果たした。また、本書の草稿をいただき、事前にコメントさせていただいたところ、いくつかの箇所で参考にしていただけたようである。研究者というスタンスだけでなく、ファシリテーターやアドバイザーとして、実際に市民会議の設計や運営に携わっている評者としても、市民や職員の皆さんによいテキストを紹介できるようになったことを喜んでいる。
 実際、現在ファシリテーターとして関わっている、相模原市の「さがみはらパートナーシップ市民委員会」の準備会(30数名の公募市民が参加)でも、学習会のなかで本書の内容を活用したり、準備会を運営するメンバーに読んでもらったりしている。相模原市の市民委員会は、「さがみはらパートナーシップ推進指針」の検証や新たなパートナーシップの制度提案などを行うことを目指して、市民主体で立ち上げる組織であるが、他自治体の事例との比較のなかで、市民会議一般の特徴や自分たちの組織の位置取りを理解するのに、本書は役立っている。
 当面、市民会議に取り組む市民や職員にとってのバイブルとなるのは間違いないので、ぜひそれぞれの現場で活用されることをオススメしたい。

●なお、評者は、上記の相模原市の市民委員会準備会には、ファシリテーターとしてだけでなく、学習会の講師など専門家的な立場でも関わっているが、2005年6月22日(水)の第4回準備会で、本書の市民会議の7類型を参考にして学習会を行っているので、本書の活用法の一例として掲載しておきたい。
  さがみはらパートナーシップ市民委員会を考えるためのABC

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「[書評]まとまらない意見をまとめる合意形成の技術」[書評]市民参加条例をつくろう」[書評]まちに森をつくって住む」「[書評]市民自治の憲法理論 <憲法記念日に読む一冊>」ご覧ください。

(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)

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