市民参加・協働のまちづくり
| 和光市市民参加条例、施行後1年の運用状況 |
2005/3/16
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●和光市市民参加条例(2004年1月1日施行)が施行されて1年が経過した。以前のニュースでご紹介した、『市民参加条例をつくろう』(高橋秀行 公人社 2004年6月10日発行 1,500円+税)でも、最先端の市民参加条例の1つと評価されており、特に市民からの提案を制度化した「市民政策提案手続」は、全国初のユニークな制度である。
2004年10月24日(日)には、和光市中央公民館で、和光市市民参加条例制定1周年記念フォーラム「考えよう!市民参加のまちづくり」が開催され、東京ランポ理事長の佐々木貴子も、パネル・ディスカッションのパネリストとして参加した。104名の来場者も、事務局からの設問に、該当する選択肢の番号札を上げて答える、旗上げアンケート方式が取り入れられ、「参加している市民の意見だけで、市民の意思を代表していると思うか?」「市民参加で得られた結果に対して、市長や市議会が異なる判断をしてよいと思うか?」といった興味深い問いへの回答をめぐって、活発なディスカッションが行われた。
そのときの縁もあって、2005年3月14日(月)・15日(火)、和光市職員向けにワークショップ研修の講師を務める機会に恵まれた。そこで、せっかく和光市を訪れた機会に、市民参加条例が施行されて約1年の運用状況について、市民まちづくり推進課に取材した。
●和光市市民参加条例では、第7条(市民参加の方法)に、市民政策提案手続、パブリック・コメント手続、公聴会手続、審議会等手続、その他の市民参加の方法の5つが明記されている。また、第3章は、住民投票の条文である。
以下では、これらの市民参加の制度が、この1年でどう使われたのかを見てみたい。
●まず、市民参加条例に基づく住民投票の請求(その案件を住民投票に付すための条例制定の請求)が1件行われている。地方自治法では、市議会と市長の選挙権を有する者の50分の1以上の連署で、条例の制定を請求することができるが、市民参加条例では、住民投票(に付すための条例制定の)の請求を、1,000人以上の連署でできるよう緩和してある。
住民投票の請求がされたのは、総合体育館建設凍結の是非に関するものであった。総合体育館の建設をめぐっては、1994年に6,103人の連署による建設の請願が市議会で採択されたり、2003年には業者への設計委託料も市議会で可決されたりするなど、建設の方向に向かってきた一方、アンケートの内容・手続きが十分でなかったために、2003年に市議会の議決(賛成多数)で一時的に建設への動きが凍結されるなど紆余曲折があった。それが、2003年12月に市議会でこんどは凍結解除が可決された(1票差)のだが、震災時の避難場所となる小中学校の体育館の耐震化を優先すべきといった主張を掲げる市民から、建設凍結の是非を住民投票に付す条例制定の請求が行われたのであった。
3,310人の署名が有効と認められ(署名総数は3,613人)、2005年1月19日に請求が受理された。2月3日、臨時に召集された市議会には、条例案に反対という市長の意見が付けられて条例案が付議され、2月7日、請求代表者の意見陳述の後に議決され、賛成10・反対11のまたもや1票差で条例案は否決された。
住民投票を請求した市民らは、他の事業との優先度を比較して建設の「凍結」の是非を問うための投票が、建設そのものに賛成か反対かを問う投票であるかのように議論がすり替えられたと、市長や市議会の対応を批判している。市民参加条例の規定に則り、市民の請求→市長の意見→議会の議決という手続きを踏んだのであるが、請求した市民にとっては、住民投票の実施に至らなかった結果に不満が残る格好となった。
なお、請求代表者が、市民参加条例のもとになった「(仮称)和光市市民参加条例案」を提言した、公募市民15人による「和光市まちづくり市民会議」の委員だった人物で、現在も、市民参加条例に基づく「市民参加推進会議」の委員でもある人物ということで、今後の推進会議での条例の運用状況や見直しに関する議論への影響も予想される。
●次に、原則として公募により選任される者を含めるとされた、審議会等手続である。公募委員を採用している審議会等は、条例施行の時点で12であったのに対し、施行後には、新たに13の審議会等で公募委員が採用されており(2004年12月1日現在のデータ)、倍増したことになる。また、2004年3月1日現在で延べ人数51人、実人数43人であった公募委員総数も、2005年3月1日現在で延べ人数69人、実人数60人となっている。
但し、公募に応じる応募者数については、条例施行後に選任した15の審議会等について見ると、定員をある程度(7〜10人)上回るものが3つある一方で、定員に達しなかったものが5つ、定員と同数だったものが3つあるなど、公募に応じる市民を増やし、多彩な人材を集めるという課題はあるようである。また、公募委員の兼職状況を見ると、3つが2人、2つが6人、任期数を見ても、3期が4人、2期が12人など、特定の市民に偏っている面も見られる。しかし、こういったデータが常備され、このような分析をできること自体は、市民参加条例の効果と言えるだろう。
公募委員を採用したことによる効果であるが、議論が活性化したり、職業的な専門性を活かした発言が聞かれたり、資料の事前配布といった会議運営の改善提案があったりと、様々な貢献があるようである。一方で、ほとんど発言が見られない公募委員もいるとのことで、今後、採用方法や採用基準の見直しも必要ではないかとの話であった。
また、会議の公開に関して、傍聴に来れば誰が発言したかわかるのに、会議録では発言した委員名が記載されていないことを課題と認識しているとのことで、今後、委員名が記載される方向に働きかけていきたいとのことであった。
●パブリック・コメント手続については、2005年2月末現在で、市民参加条例に基づいて6件が実施されている。対象は、条例が3件、計画が3件となっている。但し、提出者数はまだ低調で、多いもので6人、全く提出者のなかったものもある。今後は、該当テーマに取り組んでいるような団体に、積極的に働きかけるような努力も求められるであろう。
その他の市民参加の方法として、条文には明記されていないが、『和光市市民参加条例の手引−より住みやすいまちを目指して−』に例示されている、アンケートについては、ホームページで確認することができる。条例施行後の2004年度では3件が行われている。ただ、2003年度でも6件行われており、従来から現在並みに実施されていたとのことである。
この条例の目玉であり、満18歳以上の市内に住所を有する者10人以上の連署をもってできるとされている、市民政策提案手続については、まだいまのところ活用例はない。市民の提案を制度的に保障した全国初のものであり、大いに注目されるところであるので、市による一層の周知とともに、市民活動団体などにも積極的な活用を期待したい。
また、市の機関が開催できるとされている、公聴会手続についても、実施例はない。
●今回、筆者が和光市を訪れることになった理由である、ワークショップについては、条文には明記されていないが、その他の市民参加の方法として、『手引き』に例示がある。すでに、総合振興計画や地域福祉計画、総合体育館の設計や古民家の活用などで実施されており、研修のなかでも担当職員から、実施するなかで見えてきた質問が活発に寄せられた。
全庁的に見ると、ソフトの部署で取り組まれている(体育館や古民家も、担当は生涯学習課)一方で、ハードの部署はまだ乗り気でないようである。また、ワークショップへの職員の関わり方も様々で、業者にお任せというものもあれば、業者に運営させるのは無責任と市民から反発を受け、職員がファシリテーターをやることになったものもあるという。
筆者は、運営側がどんな陣容を整えられるかは、予算の関係もあるので、議論の内容に賛否を表明したり、結論に誘導したりしないといったことを守れるのなら、職員がファシリテーターを務めることは問題ないと思っている。また、業者に委託した場合でも、事業責任は市にある以上、業者に任せきるのも問題であると思う。そのため、研修では、職員にワークショップの企画・運営を少しでもマスターしてもらうとともに、業者に委託した際の仕事の質をチェックできる目を養ってほしいと思っている。
●以上のように、市民参加条例施行後の和光市の1年を振り返ってみると、新しい展開も生まれてきて、一定の成果をあげつつも、制度として整えられた条例に、さらなる実体を伴わせることも課題であることがわかる。今回の研修には、ほとんどの課から受講者を出してもらったが、やはり市民参加に身近な職員とそうでない職員との間では、市民参加の理解も経験も差が大きい。「なぜ市民参加が必要か」という課題の演習に取り組んでもらったときも、「そもそも必要なのかなあ」とか「市民参加条例ができたからだよね」という声も聞こえてきたが、それが正直なところであろうと思う。
市民参加の旗振り役になる課が、事業課に働きかける姿は、市民参加を掲げる多くの自治体で見られることであり、和光市でもしばらくは、市民まちづくり推進課が主導していくしかない。制度化された手法を実際に使うための、具体的なノウハウを習得できるよう、研修とともに、少しずつでも実践する現場を増やして、職員が市民参加の必要性や面白さを体得していくことが重要であろう。
和光市ホームページ 市民参加のまちづくり
※ 「カレッジランポ『市民参加条例の検証』に各地から52名が参加」もご覧ください。
(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)
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