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まちづくりニュース

市民参加・協働のまちづくり
市民と専門家が対話する会議手法の創造に向けて
2005/1/5


●東京ランポの仕事ではないのだが、ファシリテーターを生業の1つとしている筆者は、この1月から3月にかけて、あるワークショップのお手伝いをすることになった。
 「市民参加研究会」が笹川平和財団の助成を受けて行う「市民が考える脳死・臓器移植−専門家との対話を通じて−」というワークショップである。

●「市民参加研究会」とは、若松征男・東京電機大学理工学部教授が代表を務める研究者集団である。科学技術社会学を専門にする若松教授は、80年代よりヨーロッパで行われてきた、科学技術に関する市民協議の手法である「コンセンサス会議」を日本で実験的に行うなど、これまでも科学技術の政策形成・決定への市民参加を実践的に研究してきた。
 筆者は、2003年に若松教授らが実施した「三番瀬の未来を考えるシナリオ・ワークショップ」にもファシリテーターとして関わったことがあり、今回もお手伝いする機会に恵まれた。(今回は、東京ランポスタッフの深田祐子にも、ファシリテーターの一員として参加してもらうことになった。)

●1997年に臓器移植法が成立し、いままた脳死者からの臓器移植をさらに促進することを目指して、臓器摘出の条件をゆるめる法改正が議論されているなかで、今回のワークショップは行われる。
 このワークショップは、一般から公募した15名の「市民パネル」が、移植医、移植コーディネーター、移植経験者、科学史家、倫理学者、法律家などの専門家(当事者を含む)と対話する形で進められる。専門家から情報提供を受け、また専門家に質問や意見をぶつけながら、市民として脳死・臓器移植への考えを深めていく。
 「ディープ・ダイアローグ(深い対話)」と名付けられた今回の手法は、従来の「コンセンサス会議」で市民と専門家との対話の時間が十分に設けられていなかった点が、改良されている。
 最終的には、「脳死・臓器移植の是非についての答え」を出すのではなく、「いま脳死・臓器移植について社会が考えるべきこと」を提案して、今後の国会や省庁、医学界ほかでの議論に影響を与えようというねらいがある。
 1月から3月までの土曜日4回にわたって実施される。詳しくは、下記のホームページをご覧いただきたい。筆者からの紹介が遅くなり、あいにく1月7日(金)で「市民パネル」の応募は締切となるが、傍聴も可能(要申込)であり、ご関心のある方はご応募いただきたい。
 若松征男教授ホームページ 市民が考える脳死・臓器移植−専門家との対話を通じて−

●筆者の本来のテーマは、自治体における市民参加であるが、科学技術への市民参加の重要性も理解しているつもりである。自治体への市民参加には、市民にとっての公共権力や共有財産を有する自治体を、構成員である市民が「ガバナンス(統治)」する意味がある。同様に、私たちの生活に恩恵をもたらす基本にありながら、それゆえに空気のような当たり前の存在となっている「科学技術」そのものについて、それを社会でどう活かすかという「ガバナンス」も必要なのである。
 現代社会は、科学技術の発達と社会制度の整備によって支えられているが、1つひとつの知識が高度化していて、各分野のエキスパートにしか理解できなくなっている面がある。そこで、専門家と対話することを通して、市民が「科学技術」について考えられる機会を設けることが、重要になってくるのである。

●自治体の現場でも、審議会などで専門家と市民が討議する機会が一般化してきた。しかし、審議会等では、両者はともに委員という同等の立場であり、「同等」ゆえに、市民が専門家の学識によって「言いくるめられる」ことも起こっている。筆者が実際に見聞したなかにも、最終的には市民が専門家に遠慮してしまうケース、市民が専門家の「威光」に追随してしまうケースもあった。
 審議会等は、専門的見地からの意見を得ることを目的にしていることも多いため、そこに市民が入った場合、「同等」の立場になるのはやむを得ない面もあるが、最近では、全員が公募市民で構成される会議もあるように、市民同士で出した結論を得ることが目的となる場合も増えている。そういった場合、専門家は飽くまでサポート役に徹して、複数の専門家から市民が考える素材を提供してもらい、市民同士が議論するという枠組みを整える必要がある。今回のワークショップで採用されるのは、まさにそんな枠組みである。

●最後にもう一点。筆者が若松教授を大変尊敬するのは、単なる市民参加の批評家的研究や、審議会等の学識委員として市民と接した経験だけで、ものを言うのでないところである。学術的なプロジェクトとして、自ら会議を設定して実践するなかで、手法の確立を図ろうとする姿勢である。
 現在行われている、「市民参加」と名の付く会議のほとんどは、自治体が主催するものである。いわば「行政」というブランドに頼って(市民としても、そのブランドに安心・満足して)、市民を召集しているのである。民間の立場で市民参加の会議をゼロから立ち上げるのは、相当な労力が必要なことであり、それに真摯に取り組まれている姿勢に、大変共感している。
 若松教授がこれまで実践されてきた「コンセンサス会議」や「シナリオ・ワークショップ」は、自治体における市民参加の会議にも十分に応用できるものであり、本ホームページの読者の皆さんのお役に立つものであると考える。

 若松征男・東京電機大学理工学部教授のホームページ

「専門家と対話するワークショップの技法的な感想」「『市民討議会』をきっかけに参加手法について考えたこと」「地球温暖化問題で討議制意見調査の試み」もご覧ください。

(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)

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