まちづくり支援 東京ランポ 東京ランポは、市民主体のまちづくりを支援する非営利団体です。
http://www.la-npo.org/
ホーム | ランポを知る | ランポの活動・主張 | ランポに参加する | ランポに依頼する | そのほか
まちづくりニュース

市民参加・協働のまちづくり
市民参加のガイドラインを考えるシンポジウム開催
2004/12/9


●2004年11月29日(月)午後2〜6時、東新宿のフィオーレ東京地下1Fローズルームにて、特定非営利活動法人PI-Forum主催の「市民参加のガイドラインを考えるシンポジウム」が開催された。

●PI-Forumは、合意形成に関心のある研究者、実務家有志により、2002年6月に設立された団体で、「Public Involvement(行政が政策決定過程に市民の参画を進めること)」、「Partnership Incubation(パートナーシップを育む環境をつくること)」、「Public Initiative(市民一人一人が積極的に発議・提案していくこと)」の3つの「PI」が名称に込められている。
 筆者は、2002年3月2日に、科学技術振興事業団の第1回「開かれた政策形成支援システムの開発」ワークショップで、PI-Forum理事長である石川雄章さん(元建設省、高知県理事)と共に講師として招かれたことがある。その後、PI-Forumがアメリカから専門家を招いての「コンセンサス・ビルディング国際トレーニングセミナー」(2003年3月27、28日)も受講した。

●この日のシンポジウムは、市民参加のガイドライン(指針)に必要な要件を、公共政策の現場の経験を通して探ることが目的であった。「市民参加のガイドライン」とは、この日の配布資料から考察すると、自治基本条例や市民参加条例などの条例をはじめ、要綱や指針等、市民参加の手続を規定したガイドライン全般を指すようである。
 それらのガイドラインが備えるべきポイントを、現場の経験や東京大学とタイアップしてのアンケート調査などを通して、「PI-Forumが考える『市民参加ガイドライン』の重要なポイント」(以下、「重要なポイント」)としてまとめることが、当面の目標となっているようである。この日は、その「ドラフトv.01」が公表された。(2005年夏には、その「重要なポイント」を活かした「指針のプロトタイプ」を提示する予定であるという。)

●「重要なポイント」では、「コア・バリュー(根幹となる価値)」として、次の3つが示されている。
  ・政策に多様なニーズが適切に反映されるべきである
  ・コンセンサス(win-win)を目指すべきである
  ・政策の立案・執行過程が公正であるべきである
 また、これら3つのコア・バリューを実現するポイントとして、「具現化のポイント」が5つ示されている。
 1.高い参加のレベル
  ⇒ ・高いレベルの参加によって多様なニーズがより確実にかつ適切に反映されやすくなる
    ・多様なニーズを調整する過程でコンセンサス(win-win)に近づくことができる
    ・コンセンサスを形成する過程で、一方的な裁量による意思決定が排除され、公正さが高まる
 2.幅広い参加の範囲
  ⇒ 多様なニーズを探しだし反映できる
 3.目的の共有
  ⇒ 共通の目的を持てれば、コンセンサス(win-win)を目指すことができる
 4.実質的な対話
  ⇒ 本当のニーズ(利害・関心)を相互調整することで、コンセンサス(win-win)を目指すことができる
 5.プロセスの信頼
  ⇒ 政策立案・執行のプロセスの公正さ

●ここで何度も出てくる「コンセンサス(win-win)」というのは、交渉学や紛争管理論などで用いられている概念である。つまり、人の「主張」に表れていることとその人の本当の「利害・関心」は一致するものではなく、「主張」の背後にある「利害・関心」のレベルを調整することで、いずれもが納得するコンセンサス(win-win)の可能性が生まれるというものである。
 この日の例を使えば、図書館で本を読んでいる2人の人が、一方は「窓を開ける」、他方が「窓を閉める」という対立する「主張」を持っているが、両者の「利害・関心」のレベルを見ると、一方は「暑い」、他方は「風で本がめくれるのがイヤ」と思っているだけで、「エアコンをつける」ことによって、両者ともwinになる解決策が得られる、ということである。
 筆者も、ワークショップのファシリテーターを務める機会が多いが、この「win-winアプローチ」を、ファシリテーションの技術にうまく組み込むことが、現在の関心の1つである。その意味でも、このポイントは関心のあるところである。

●「2.幅広い参加の範囲」で述べられた、ステークホルダーは一様ではない、という考え方も、筆者の従来の考えと一致するところである。つまり、意思決定にまで関わりたい(Involved)と思っている人もいれば、とりあえず情報だけは得たい(Informed)、認知していればよい(Aware)という人もおり、それぞれへのアプローチの仕方は異なるのである。会場とのやりとりのなかでの、サイレント・マジョリティにどう働きかけるのかという議論にも通じるが、会議の委員になりたい人を募集するだけでなく、利害・関心のある人のところに出向いて話を聞くなどの、様々な手法を組み合わせることが必要なのである。
 また、「5.プロセスの信頼」であるが、多くの人が参加する場合ほど、どのような目的があり、どのような手順で進めるのかを、みんなで共有しておくことは、大変重要である。筆者がワークショップをする際に最も心掛けている点の1つも、そのワークショップがどんな目的・役割を持っているのか、その目的にたどり着くまでのプロセスがどうなっていて今日はどの時点にあるのか、そして今日行う作業はどのような手順で進めるのか、といったことを冒頭できちんと確認して、参加者に理解してもらうことである。
 この日のパネリストの1人であった、熊本市市民協働課の方が、自治基本条例づくりの全員公募型の会議(116名)が、目的の共有がうまくできていなかったことや、プロセスを示さずに進め、時間管理もうまくいかなかったことなどのために、空中分解してしまった話を、正直に実感を持って話されていたが、PI-Forumが示した「重要なポイント」が、大変大切な点を指摘していることの証左である。

●ここまでの紹介からもわかる通り、PI-Forumの言う「市民参加のガイドライン」というのは、従来の市民参加条例や要綱、指針といった、市民参加の対象となる事業や市民参加の手法の種類を列挙したものというより、市民参加を行ううえでの手法的・技術的な側面に着目したマニュアルを志向しているという印象がある。その意味で、条例、要綱、指針といった、(広い意味での)法の形をとるのは難しいかもしれないが、市民参加のマニュアル、手引書といた形にはなるかもしれない。
 いずれにせよ、今後の展開にも注目したい。

●なお、この日は、福岡県の「空港PI」、岐阜県の「社会資本整備指針」、三鷹市の「みたか市民プラン21会議」の事例が、各担当職員から最初に紹介された。その後、PI-Forumより「重要なポイント ドラフトv.01」の説明があり、先の事例報告の3人に熊本市職員を加えた4人の自治体職員と、大学研究者2人(うち1人は、東京ランポ理事でもある、小泉秀樹・東大工学部助教授)によるパネルディスカッションが行われ、モデレーターをPI-Forum副理事長の城山英明・東大法学部助教授が務めた。会場からの質問・意見は、主催側より示された7つのテーマに沿って、付箋紙に書き出す形で集められた。
 このシンポジウムの構成については、筆者は若干苦言がある。まず、事例報告の内容であるが、福岡県のものは、現在計画中のものでまだ何の結果も出ていないため、何も検証できなかったこと、岐阜県のものは、具体例となった「道路PI」は市町村レベルのもので、県職員の話では迫力がなかったことなど、事例としては不適切であったと思われる。思い切って、PI外環沿線協議会や三番瀬円卓会議など、課題が多く残ったPI事例を取り上げてほしかった。
 また、パネルディスカッションであるが、7つものテーマを扱うには時間が十分ではなく、それぞれがあまり深まらずに終わってしまった。会場からの意見も、KJ法的に付箋紙をグルーピングしてしまったため、個々の意見の面白さがぼやけて、抽象的で大して面白みのない意見の形で取り上げられることになってしまった。市民参加の手法に取り組む会であればこそ、もっと進行面での工夫が期待されるところである。

●そんななかでも、パネリストの発言のなかで、参考になったものを紹介しておきたい。
サイレント・マジョリティへの働きかけ
<小泉(東大工学部)> サイレント・マジョリティなんていない。みんな何らかの利害がある。
<三鷹市> 何が課題かが伝わらないと、市民も関心の持ちようがない。
<福岡県> 意見を聞きに行った先のNPOで、別のNPOを紹介してもらい、広がっていった。
指針をつくることの意味
<小泉> 制度がないと、合意形成のためのお金も技術もつかない。都市計画法でマスタープラン策定が規定されたことで、コンサルが手探りで参加の技術を高めた。
<三鷹市> 行政内部で言えば、企画課は参加・協働の重要性がわかっているが、実際に事業を行っている現場の認識はそうではない。三鷹でもそう。
<熊本市> 参加と聞くと、決定の権限まで市民に付与すると誤解してしまう職員がいることが、指針づくりに抵抗がある原因。
本当に合意は形成できるのか、どこまでやればコンセンサスと言えるのか
<小泉> 時間や予算の制約もあり、合意に至れないケースも出てくる。しかし、それまでの議論は決してムダではない。検討されている案の支持状況は、議論されるなかで変わる。また、誰が最終的な意思決定をするのかを、最初の段階で明確にしておくことが大切。討議する段階と決定する段階は分けて考える。
<岐阜県> 1人でも反対者がいれば、原点に立ち返ってやる。当事者がはっきりしていることが、合意するうえでは重要。関係のない人がいると進まない。
<熊本市> 合意に至らなかったケースもあるが、それまでサイレント・マジョリティだった人が、実践する市民へと変わっていくなどの変化もあった。
その他
<三鷹市> 行政が素案を示す段階からの市民参加では、素案のマイナス面ばかりが目立つ。素案前からの参加であれば、プラス面を市民と行政が共有できる。

●最後に、これは、筆者が付箋紙に書いて出したことであるが(一人だけの意見だったため、議題には取り上げられなかった)、「その市民参加が成功したと判断する基準は何か」という根本的な点も、「市民参加のガイドライン」をつくるうえでは明らかにしておく必要があろう。
 PI-Forumの関心は、合意形成という点にあるので、主張の対立を解消してwin-winの結論に到達するというのが、基準の1つにはなってこよう。あと筆者としては、「参加」した市民が、その結果として出来上がったものを実際に支えるよう「協働」できるか(計画であれば、その実行の一端を市民が担えるか)、ということであると考える。

 特定非営利活動法人PI-Forumホームページ

「ワーキングシンポ参加を変える『学び』で変える開催」もご覧ください。

(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)

[ ページの先頭に戻る | ホームに戻る ] ( 更新)
まちづくり支援・東京ランポ copyright(C) Tokyo LA-NPO 2003 All Rights Reserved.
当サイトに掲載された記事・写真・図表等の無断転載を禁止します。詳しくは「このサイトについて」をご覧ください。