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まちづくりニュース

市民参加・協働のまちづくり
宗像市の市民参画条例策定とコミュニティ構想
2004/8/26


●筆者は福岡県の出身である。この夏に帰省した折に、福岡県下のいくつかの自治体の注目される動きを取材した。
 ここでは、福岡市と北九州市の中間に位置する、宗像(むなかた)市について、現在取り組まれている市民参画条例(仮称)の策定と、その条例の重要な柱でもあり、ここ数年取り組まれてきたコミュニティ構想に関する取材結果をお伝えしたい。
 宗像市を訪ねたのは、筆者の知人である、北九州市立大学法学部助教授の楢原真二さんが、現在進行中の宗像市市民参画条例検討審議会の委員を務めており、その奨めがあったことによる。
 取材は、2004年8月17日(火)午後4時〜6時30分、宗像市役所にて行った。お答えいただいたのは、企画調整部企画課企画係の井上賢司さんと市民部コミュニティ課整備係長の三好康之さんである。
 また、取材後には、この日開催された、第11回宗像市市民参画条例検討審議会も傍聴した。

●2003年4月より旧・宗像市と旧・玄海町が合併し、新・宗像市となった。新・宗像市の初代市長となった旧・宗像市長の公約に、市民参画条例(仮称)の策定が含まれていたことが、条例策定のきっかけである。
 宗像市は、北九州市と福岡市の2つの大都市の中間に位置するベッドタウンである。もともと市民の活動が活発な土地柄であり、大学教員の在住も多く、教育・文化水準が高い。また、あまり開発の進んでいない自然環境を好んで住む人が多いという。
 一方で、人件費率が全国的に見ても低い自治体で、人口のわりには職員数が少ない(人口93,000人に対し職員数480人。旧・宗像市では、人口80,000人に対し職員数370人)。他自治体では行政が行っているような保育所などのサービスを、行政が提供しておらず、庁内でも「行政が何でもやる」という雰囲気がないのだそうだ。

●市民参画条例(仮称)の策定は、2003年8月より始まった。審議会設置条例の議会審議のなかで、審議会の開始に先立って市民向けの学習会を行うことが議員提案された。それを受け、2003年12月の市広報と新聞折込チラシで、学習会の参加者が募集された。4回行われた学習会には、各回50人の延べ200人が参加した。
 2004年1月の市広報では、審議会の市民委員が公募された。学習会に出席し、論文を提出した9名から、公平を期して抽選で3名が選ばれた(男性1名、女性2名)。
 2004年3月4日の第1回審議会から、これまで10回の審議会を開催した(この取材日に第11回が開催された)。第6回は、市民との意見交換を主とする「出前審議会」とされた。
 当初は2004年7月に答申し、12月議会に条例案を提出する予定であった。しかし、もっと慎重に審議したいとの委員の声と2005年4月の大島村との合併を待つのがよいとの市の考えから、年内に答申、2005年6月の議会への条例提案に変更された。
 答申前にもう一度、出前審議会を開催し、3月ごろに、答申を受けて作成された条例案へのパブリックコメントを実施する予定である。なお、答申は、条文の形になった「素案」として示されることが、委員の間で確認済みである。
 市民参画条例(仮称)に期待される効果の1つは、この条例がきっかけで、市民参画や協働に関する啓発となることである。また、参加や協働において、行政の裁量が発生しないようにすることである。

●宗像市市民参画条例検討審議会の委員は、10名(男性6名、女性4名)である。学識経験者2名(市民参加と市民協働の専門家が1名ずつ)、各種団体5名、公募3名。会長は西日本新聞の元記者である男性で、副会長は子育て団体をやっている女性である。公募委員のなかには、学識者とも対等に渡り合えるような人もいるという。
 第7回までは自由討議であり、特に宗像市が重要施策として進めているコミュニティ構想について、多くの議論がなされたことが議事録からわかる。第8回からは、どのような項目を条文に盛り込むかを意識した審議に入ったようだ。事務局(行政)が整理した、他自治体における市民参加条例や協働条例の条文比較表などを参考に、委員各自が自由書式(なかには条文形式にした委員も)で提案したものから、事務局が項目を分類して、表に整理している。
 これまでの審議のなかで、市民参画条例(仮称)は、「市民参画」「協働」「コミュニティ」の3つの柱を持つことが確認されている。なかでも、「コミュニティ」をしっかり位置づけることが、宗像市の大きな特徴と認識されている。
 議題や進め方については、会長と事務局が相談して決めているが、委員の皆さんが活発な発言をするため、予定通りには行かないのが普通だという。なお、会長の方針で、傍聴者にも必ず発言機会を与えるようにしており、委員以外の市民からの熱心な意見も毎回寄せられている。

●この日は、第11回審議会もあり、傍聴できた。
 「市民参画」「協働」「コミュニティ」の3本柱を据えたうえで、前回は「市民参画」について盛り込むべき項目が決まったようだ。この日は、「市民参画」の項目のうち、「附属機関」と「パブリックコメント」が議題となった(議題であった「市民説明会」「市民投票」までは時間切れで行かなかった)。
 「附属機関」については、女性委員の割合や公募委員の割合を、具体的に数値で明記するかをめぐって議論が行われた。「パブリックコメント」については、どのくらいの期間実施するのか、といったことが話し合われた。
 いずれの議題も、各委員が持ち味を出しながら、活発な議論がなされた。会長が「プロセスこそ命」と述べたように、1つひとつ丁寧に検討がなされていると言える。
 ただ、心配なのは、市民参加条例や協働条例、あるいは自治基本条例は、後につくられるものほど、先につくられたものに盛り込まれた仕組みを、フルセットしながら策定される誘惑が働くことである。
 本来、参加にせよ協働にせよ自治にせよ、その自治体の地域性を抜きにしては語れないものであり、他の自治体が入れたから入れるという筋合いのものではない。仮に仕組みとしては備えるとしても、その程度(委員割合や期間などの数値)については、複数の仕組み同士の関係のなかから、その地域性を勘案しながら決めていく必要があろう。
 例えば、自治会への加入率が8割強という宗像市の地域性をどう見るのか。生活の身近なところに参加の仕組みがあるのだから、公募委員の割合は必ずしも多くなくてよい(5割をめざすべきという委員もいたが)とする考え方もあるのかもしれない。いや、そうは言っても、自治会に参加しづらさを感じている人も多いと考えるのであれば、公募で政策形成に参加できる道を広くとることも必要であろう。
 このように、自治会やコミュニティも含めた他の仕組みとの「バランス」を意識しながら、総合的に制度設計する視点も必要ではないかと思われた。

●次に、コミュニティ構想について紹介する。
 宗像市は、昭和30年代の鹿児島本線の電化や団地開発により、それまで2万人だった人口が8万人となり、新旧住民の混在が進んだ。その融和・交流と、近年の地域分権の考えから、1997年に「コミュニティ基本構想」が策定された。
 また、市内には、93の自治会(行政区)があるが、子どもの減少と高齢者の増加で、自治会単位では活動が成り立たなくなっている地域の実情がある。例えば、子どもの数が少なすぎて、子ども会がつくれない自治会もある。行政としても、地域の各種団体に縦割りで対応することにより、部署間の業務が重複する弊害が目立ってきていた。
 そこで、小学校区ごとのコミュニティ(地区)を単位とした取り組みに再編していく必要があったのだという。コミュニティは、旧・宗像市エリアに8つ、旧・玄海町エリアに4つある。いずれも、歴史的に形成されてきた区割りとなっている。

●コミュニティ基本構想の第1段階は、組織づくり(コミュニティ運営協議会)と拠点施設の設置(コミュニティセンター)であった。2000年よりモデル地区を3つ設けて、運営協議会の立ち上げに取り組んだ。現在は、旧・宗像市の8つの地区全てに運営協議会ができている。コミュニティセンターは、現在5つができている。
 コミュニティセンターには、係長級の職員が1名常駐して、地区の活動を支援している。センターで行われる行政サービスには、地区マスタープランの策定、住民への啓発活動、住民票の発行(自動交付機)や健康相談(嘱託の保健士が週1回)などがある。
 運営協議会の収入としては、コミュニティセンター管理運営の委託料として1,000万円が市から出ている。その7割は、事務局員の人件費に充てられている。その他、自治会からの負担金、貸館業務の使用料なども収入になる。2003年の地方自治法改正で導入された指定管理者に、運営協議会が移行していく予定である。
 コミュニティセンターの管理運営は、運営協議会の事務局が行っており、昼間は事務局長1名・事務局員2名、夜間は事務局員1名の体制である。なかには、昼間の事務局員が3名のところもある。事務局員は、公募で採用しており、事務局長は、地域の推薦のあった人が務めている。学校の先生、民間企業、市職員を経験した人などが多いという。
 南郷地区コミュニティ運営協議会会長が、市民参画条例検討審議会の委員を務めており、議事録から運営協議会の活動の様子を知ることができる。生活環境整備部会における町並み環境整備や災害対策、公民館部会における各種講座やスポーツ大会、青少年育成部会によるまつりやパトロール、健康福祉部会における世代間交流や健康づくり、地域づくり部会によるまつりや産業振興などに取り組んでいる。

●コミュニティ基本構想の第2段階は、2006年4月より、子ども会や老人クラブなど各種団体に出している補助金を一本化して、コミュニティに出すようにすることである。そうなった際には、コミュニティで補助金の配分を決めることになる。2005年度は、補助金一本化のための地域との協議を進めていく予定である。
 補助金のほかにも、コミュニティでやった方がよいものについては、「協働委託」という形で仕事を出していく。コミュニティセンターをはじめ、公園や公共施設の管理運営、健康づくり事業や福祉事業などがその対象である。
 宗像市では、自治会への加入率は8割超で、都会などに比べると高い。市への要望なども、個人からのものは受け付けず、自治会を通して行ってもらうことにしているという。
 それでも、課題としては、コミュニティの認知度はまだ低く、アンケート調査では10%程度しかないことである。担当の三好さんの話では、補助金の一本化などにより、住民に責任が降りかかるまでは、本格的には動き出さないのではないかという。
 また、NPOや個人がコミュニティに参加していけるよう保障することが大切であると考えているという。確かに、市民参画条例検討審議会の議事録にも、ボランティアで子育て支援をしている委員が、運営協議会の部会に入りたいと申し出たところ、相手にしてもらえなかったという体験が出ている。

●宗像市を取材していて面白いと感じたのは、全国的に見ても人件費率の低い自治体であるという特徴である。このような特徴は、福岡市のベッドタウンである大野城市、春日市、筑紫野市にも共通している。井上さんとの対話のなかで出てきた推論としては、恐らくベッドタウン化による急激な人口増により、都市基盤整備の優先度が高まり、お金を人件費に割くことができなかったからではないかと考えられる。
 宗像市では、市役所窓口もずっと民間委託してきたし、市民病院もない。保育所も全て民間である(旧・玄海町エリアに1つ公立保育所がある)。行財政改革のなかでも、民間委託する対象が、特別養護老人ホーム1館くらいしかなかったそうだ。埼玉県の志木市が、市民の有償ボランティアに市の業務を委託する「行政パートナー」を導入して注目を浴びているが、宗像市では全てすでにやってきたことである。
 しかし、井上さんは、志木市が市民も協力して市の財政的自立に取り組むため、行政パートナーを導入したことについては、感覚的にすんなり理解できるという。なぜなら、宗像市が、市民を信頼して市民自身でやるべきことをコミュニティに分権していくのと、発想が似ているからだ。もし志木市にしっかりした地縁組織があれば、志木市もコミュニティへの分権の形をとったのではないかという。

●1970年代に盛んだったコミュニティ政策が、市町村合併や自治基本条例の制定などの動きのなかで、いま再び注目を浴びるようになってきている。同じ福岡県内では、福岡市も、補助金の一本化に伴う小学校区単位の自治協議会設立を、今年の4月から始めた。東京でも、豊島区が、公共施設の管理運営を小学校区単位に再編した住民組織に任せる「地域区民ひろば構想」を進め、自治基本条例策定のなかでも大きなテーマとなっている。
 しかし、70年代以降の都市部における、既存の自治会等を再編する形での自治体内分権の試みは、成功を収めたとは言えない面がある。人材の固定化を打破すべくつくられた新たな住民組織も、結局は人材の固定化・高齢化などを生み、地域住民を広く巻き込むような活動が展開できていないとの指摘があるからだ。
 三鷹市で注目された、基本構想・基本計画づくりにおける、市内全域からの公募市民375名からなる「みたか市民プラン21会議」も、それまで進めてきた住民協議会の限界を突破するための新方式だったと言える。
 筆者は、自治体の全域レベルでの公募による市民会議を研究テーマの1つとしているが、この全域における公募という方法は、地域における住民組織から「こぼれ落ちる」市民に参加の場を保障する仕組みであると言ってよい。「こぼれ落ちる」市民が多い都市部で、新たな自治体内分権の試みが成功するのかは、注目されるところである。
 そのようななか、自治会への加入率が8割超ということで、数字上は「こぼれ落ちる」市民が少ない宗像市の場合はどうなるのか。大きな注目をしていきたいところである。

 宗像市ホームページ 宗像市市民参画条例検討審議会
 宗像市ホームページ 「コミュニティ」ってなあ〜に?

「宗像市で市民参画・協働・コミュニティ活動の推進条例が成立」もご覧ください。

(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)

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