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まちづくりニュース

市民参加・協働のまちづくり
大月まちづくりワークショップの概要と感想
2004/8/13


●8月8日、山梨県東部に位置する大月市にて、大月駅周辺整備事業をテーマにしたワークショップが行われた。大月短期大学地域づくりゼミナールと大月市都市整備課大月駅周辺準備推進室の共催形式だった。

●大月駅周辺整備というが、大まかに3つの計画を総称したものとなっている。まず、南口再開発。富士登山の玄関口として栄えた駅前だが、中心商店街の衰退振りは多聞に漏れない。また、道幅が狭すぎるため、駅前では路線バスやタクシーによる事故の恐れも絶えない。ここを区画整理事業として、商店街の再開発と国道20号を含む道路の拡幅をしようということだ。2点目に南北自由通路と駅舎の橋上化。大月駅はJR、私鉄の富士急行線ともに北口は無く、東京方面からの観光客も多い岩殿山と南口商店街の隔絶や、北口住民の移動の大変さ(商店街・市役所など公共施設は全て南側)はかねてより指摘されていた。3点目は、その北口にある工場跡地を含む開発問題だ。多摩都市モノレールの橋脚造成などで知られる大手コンクリート会社の移転に伴う跡地を、大月市が買収するかどうかという問題を含めて南北自由通路開設にも併せた北口の再開発が問題となる。この複合する3つの再開発を併せて大月駅周辺整備事業としている。当然ながら地権者もいれば営業中の商店もあり、市財政の逼迫と補助金の削減といった資金面など、クリアしなければならない問題は大きいものがある。

●駅周辺整備計画自体は、道路の拡幅問題と併せ昭和50年代後半からあったようだ。しかし、地権者との交渉や計画をどの規模にするかで議論百出し一切まとまらず、行政もサジを投げて先送りを重ねてきたのが実情だという。また大月市では、特急で新宿まで1時間という距離、甲府や富士五湖への玄関口という交通の要衝にありながら、過疎化が進み住みにくいといった住民側の行政不信が根強く広がっている。某ビジネス誌では、衰退都市ランキング全国8位という有難くない選定も受けている。また、行政への市民参加の場面も乏しいものだった。そこへ、市役所側が本腰を入れて計画の練り直しに入ったことと、市立の大月短期大学の中に「地域づくりゼミナール」という市民と学生、教授陣が大月のまちづくりをフラットに研究する場所が生まれたことが、今回のワークショップ開催に繋がっている。

●実際のプログラムだが、最初に駅周辺を歩いて観察し(1時間半)、その後屋内に移って周辺整備事業の説明を受ける。(1時間弱)最後に、グループごとに意見を出し合ってまとめる(2時間半)といった段取りで行われた。参加者は多少の入れ替わりもあったものの、50名を上回る人数となった。

●13時に大月駅前に集合すると、まずは大月駅周辺の街中観察である。当日はうだるような暑さで、年齢の違う参加者同士がお互いの体調を気遣う場面がそこかしこで見られた。5グループに分かれて駅周辺の「活かしたいところ」「変えたいところ」「気になるところ」に着目し、グループごとに20枚のデジカメ撮影。メンバーは、知り合いや同年代の人を避けて構成し、主催者側が微調整。南口のホテル屋上では4枚程度、北口の東京電力屋上でも同程度。残りはその間の行き来でお互いに指摘しあっての撮影。また、南口から北口への移動ルートは、企画側から班ごとに指定されて別々に移動した。この間、気になった建物や路地、植物などを撮影していくわけだが、限られた枚数をどのように使うか参加者が自分たちで考えていかなければならない。寄り道と意見交換を重ねながら、グループごとに楽しみながらのまちあるきとなった。

●2時30分からは、大月短期大学に場所を移して意見集約の作業を行った。主催団体の説明や講師の紹介、開催に至る経緯について、大月短大地域づくりゼミから長谷川教授と、短大事務局の担当者が行った。続いて、大月青年会議所主催の再開発シンポジウムの抄録ビデオを30分ほど視聴。大月駅周辺準備推進室中村室長による説明が大半で、ビデオ視聴後、質問にも答えながら中村室長が補足説明を行った。

●前半にかなりアクティブなプログラム(=まちあるき)があったとは言え、このあたりは人が入れ替わり硬い説明を重ねているため、若干空気が重い。もう少し参加者側に体なり手なりを動かせる作業や、アイスブレイクが必要に感じた。

●以下、中村室長の話を抜粋。
「5月の市広報に再開発について意見募集と載せたが、19件しか反応が無かった。私は県庁から出向してきているが、他地域の区画整理事業に比べても反応が乏しすぎる」
「従来の行政手法としては広報で市民の意見も聞いたということで、平成17年度から10ヵ年程度で、工場跡地買収を含むならば事業費ベースで数百億規模となる事業を進めて行くことになる。このため今年度中に国や県に事業申請を掛けるというスピーディーな展開になってくる。大月のような小さな地方都市にとっては極めて大きな判断となるが、市民側からの反応が無ければ、これで進んでいくことになるだろう。」
「推進室としては、現状の一般市民レベルでの意識と、行政の手続きとの乖離に苦慮している。個人的には、住民側に意識をしっかり持ってもらった上で、事業費規模もある程度に抑えた『大月の身の丈にあった』『市のシンボルと成り得るしっかりとした顔づくり』が必要だと思っている」
「9月議会には、この周辺整備事業についてどのように進めて行くか、プロセスについての大きな意思を示して下さい、とお願いすることになるだろう。私は県職員から出向の人間であるが、大月に住む人それぞれが、本当の意味で当事者意識を持って考えてほしい。議会の動向にも注視していてほしい」
「NPOなど新しい市民活動は、行政のライバルだと思っている。良きライバルと持ち上げるほど、こちら側に余裕は無いが、地域づくりゼミや関心ある市民の方々にも、是非「自分たちのまちは自分たちで創っていくものだ」ということを伝えていってもらいたい。後から悔やむことは、負けではないか。ただの要望や批判に止まらず、私どもの用意した案を上回る素晴らしい事業案が、市民参加で生まれてくることを期待している」

●中村室長の話に続いて、情報工房代表の山浦晴男氏をファシリテーターに意見抽出ワークショップを行った。前半の街中観察と同じグループに、室内作業からの参加者が1、2名ずつ参加して各グループは8、9人程度に。参加者の中でグループファシリテーターを決め、相互の自己紹介後に作業開始。4cm×12cm程度のラベルに、40字から50字で意見を書いていく時間を設定。大月駅周辺の活性化の必要策、現在の魅力、まちの全体像、問題や不安などについて記述。書いたものを一人一枚ずつ読み、模造紙の上に置いていく。この際、自分が並べるときには、意見が近いラベルの横に、クリップを挟んで設置する。デジカメで撮影した写真が現像されて戻ってきているので、ラベルの意見グループの近いところに写真を置きながら、全体でディスカッションを重ねる。このとき決まり事として、相手と違う意見は表明できるが、批判は一切行わない。最終的にグループでまとめたところでラベル裏面を剥がして、貼り付けてまとめる。出来上がったものは、各グループごとに見学をする。

●このワークショップのミソは、実はここで出された多様な意見を模式図化するコスモス法(KJ法主任研究員だった山浦氏が独自に開発)で、9月2日には山浦氏が各グループがまとめたものを元に、デザイン化した模式図を持ってきてワークショップを行うことまえでは決定済み。それ以後については9月議会の動向によって継続的なものになるかが決まる。

●ということで、各グループの話し合いやまとめの際に、ファシリテーターである山浦氏の積極的な促しや関与、指導は少なかったように思う。まとめ方についても現在の段階では、それほどグラフィカルなものでもない。今回のワークショップは、KJ法で言うところの「加乗減除方式」による意見集約と合意形成のための手法のあくまで一環で、これ以外に数度のワークショップやアンケートを併せたプログラムで住民参加を行っていくものである。そういった形式は一般のまちづくりワークショップとは異なり、KJ法の第一人者でしかできないものだが、山浦氏と別個にアクティブなファシリテーターがスクラムを組むと、一層面白いワークショップになるようにも思えた。それでも、ワークショップ初参加の多い会場は、自分の意見が残ることと、言いっ放しでは無く議論し合えるシステムに並々ならぬ好感を持ったようだ。終了後の一般参加者は現段階の模造紙等のまとめ方にも満足しているようだった。満足感を引き出せたということは、ワークショップの成功と言えるように思う。

●最後に全体的感想を。当日は短大学生や、都市計画を専攻する大学生から、大月都民、在住の芸術家、大月商店組合関係者、青年会議所役員など、幅広い年代と職業の方が50名ほど参加していた。かなりタイトな時間設定だったものの、参加者の反応も概ね良好のようだった。中村推進室長はかなり市民を煽っていたが、これだけ思いがある市民が集まって作業を行ったのは、大月市では異例とのこと。ワークショップ参加者のなかには、「何やっても無駄だ。借金が増えるだけだ」「行政がやることは全て無駄だ。何もしないのに限る」という意見の方も数名いた(自説をプリントしてきて、参加者全員に配った参加者もいた)のだが、終了時には「ほかの市民の意見を聞けて良かった。もっと聞いてみたい」との声に変わっていたのは好材料だろう。
 ただ、かねてから行政不信と市民軽視との不満は聞いていたものの、ワークショップでは様々な場面で参加者から不満を聞くこととなった。旧来の大月市の取り組みが、実際に市民軽視だったかそうでないか、という問題の設定よりはむしろ、住民側に広く根強くマイナスイメージが蔓延っているという現実が、事業を進める上での急所となりそうだ。一方で確実に、市民側も自治意識を持った、批判に止まらない言動が求められている。本日参加してこなかった多くの市民の心を融解していく作業も、手順を追って進めていかなければならないと痛感した。言わば、市民と行政双方のリハビリテーションを、数百億の金額が動く区画整理事業で行えるのか、ショック療法と成り得るか、抱える問題は易しいものではない。しかし、駅前と中心市街地の再開発という、住民が誰しも意識しやすい「まちの顔づくり」を丁寧に進めることが出来たなら、その効用は諸領域に広がる価値を生み出すことだろう。今後も継続的に注目していきたいワークショップだった。

(都留市まちづくり・市民活動支援センター非常勤研究員 柳沢 拓哉 ※東京ランポ会員)

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