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まちづくりニュース

市民参加・協働のまちづくり
高知のまちづくりを見てみいや(2)−コミュニティ計画
2004/4/9


・2004年1月29日(木)〜2月1日(日)、高知市を訪れる機会があった。そもそもは、高知市職員と高知市市民活動サポートセンター職員を対象にした、ワークショップ研修の講師で行ったのだが、せっかくの機会であるので、高知市のまちづくりの動きを取材してきた。

・高知市には、コミュニティ計画というものがある。もともと1971年度に市内の下知地区が国(自治省)のモデルコミュニティ地区に指定されたことなどから、コミュニティカルテの作成やコミュニティ施設建設計画等を進めてきた。その後、1990年度に改定された高知市総合計画に「コミュニティ計画」が盛り込まれ、総合計画と相互補完する居住地区(コミュニティ)の計画として位置づけられた。さらに、2003年に制定された「まちづくり一緒にやろうや条例(正式名称:高知市市民と行政のパートナーシップのまちづくり条例)」で規定されるに至って、コミュニティ計画は市の条例に根拠を持つ制度となった。

・コミュニティ計画は、概ね小学校区を単位とした35のコミュニティごとに策定されることになった。コミュニティ計画のもとになる「コミュニティ計画案」の策定の舞台は、各コミュニティで結成された「コミュニティ計画策定市民会議」であった。会員は公募され、人数も確定的なものではなく、出入り自由とされた。町内会連合会の協力で参加募集チラシが全戸配布されたほか、マスコミや市の広報紙でも募集がなされた。現在までに25地区で計画が策定され、1,000人を超える市民が参加した。また、計画案の策定には、庁内公募した市職員106人も「まちづくりパートナー」としてボランティア参加した。
 策定にあたっては、ワークショップ形式がとられ、街角ウォッチングやアンケート調査による現状把握を踏まえて、課題を解決するための方策を検討し、方策の実施時期や役割分担も含めてプランニングした。

・コミュニティ計画策定市民会議でつくられた計画案は、庁内検討を経て、行政計画としてのコミュニティ計画となった。計画に盛り込まれた事業は、各年度で予算がつけられ実施に移されている。
 それらの事業のうち、市民が実施を担うものについては、新たに「コミュニティ計画推進市民会議」が結成されて取り組むことになった。現在までに19地区で推進市民会議ができ、防災まちづくり、公園づくり、地域環境美化、史跡コースやハイキングコースづくり、地域イベントの開催などを行っている。
 今回は、31日(土)に、2つの推進市民会議に取材させていただいた。

・まず午前中に訪れたのは、高知市内を流れる鏡川をさかのぼったところにある「行川(なめがわ)地区」。市中心部から車で30分程度しか離れていないが、そこは豊かな自然に恵まれた山あいの地区である。
 お話をしてくださったのは、行川地区コミュニティ計画推進市民会議代表の川ア重幸さん。この日の待ち合わせ場所だった公民館で館長を務めるほか、地域の様々な役職についている方である。

・お話を伺う前に、まずは推進市民会議の活動の成果を見せていただくことになった。
 公民館のすぐ横にあるのが「行川なかよし公園」。なんと住民が土地を提供し、遊具も住民が手作りした公園だ。自然に恵まれた土地柄ゆえ、子どもの遊び場には事欠かない。しかし、あるとき子どもたちが、遊具のある公園がほしいと言ったことから、大人たちが一念発起。都市計画区域ではないため、都市計画に従った整備費はつかない。ならば自分たちで土地も遊具も揃えようと、地域の人たちが力を出し合ったのだ。
 また、戦国時代に山城のあった城山に付ける遊歩道と展望台も、住民が地道に整備を続けている。展望台となる場所にも連れて行っていただいたが、霞まなければ太平洋まで見渡せる眺望のよさである。また、春には、斜面いっぱいに咲くつつじの花見も楽しめる。行川は「交流人口」による地域おこしを目指しており、都会の人々が自然体験や田舎生活を楽しめる場とすることがコミュニティ計画の柱である。貸し農園もすでに実施している。

・川アさんのご自宅に場所を移してからは、行川地区の特性などについて伺った。
 行川地区には、7つの公民館区の部落会が含まれる。推進市民会議の会員は、PTA、子ども会、交通安全会議、小中学校の父母の会などの人たちであるが、「行川なかよし公園」の造成をはじめ、声をかけると会員かどうかにかかわらず参加してくれるという。それは、道で出会えば声を掛け合うような人のつながりが息づき、子どもが在校かどうかにかかわらず全世帯が小中学校のPTAに入っているという行川の地域性に支えられたものである。そもそも公園づくりなどは、コミュニティ計画に盛り込まれていることではないが、そういったことが自然発生することが可能な土地柄なのである。
 それゆえ、行川地区にあっては、様々な地域組織は、人が横断的に関わっていることもあり、別々の組織ではなく1つの大きな組織のようである。そして、推進市民会議もその1つの部門という感覚であるため、会員かどうかにかかわらず住民が参加してくれる。行川地区の場合、もともと地域コミュニティの実体のあるところに、コミュニティ計画の活動もうまく取り込まれた格好のようである。

川アさん(右)のご自宅の離れ(?)にて。大変な趣味人の川アさんは、
油絵、木工などを行い、露天風呂やこの離れまで自作してしまった。

・午後になって訪ねたのは、やはり市中心部から車で30分くらい、但しこんどは海に面した「浦戸地区」である。『よさこい節』の「御畳瀬(みませ)見せましょ 浦戸をあけて 月の名所は桂浜」で歌われているのがまさにここで、坂本龍馬像で有名な桂浜もこの地区に含まれる。
 
お付き合いいただいたのは、浦戸地区コミュニティ計画推進市民会議代表の徳廣賢一さん、事務局長の土岐威さんのお2人。徳廣さん(建築士)が、昔から地域活動をしていた流れで関わることになったのに対し、土岐さん(酒販店経営)は、コミュニティ計画策定の公募チラシを見て参加したということで、対照的なお2人でもある。

・浦戸地区のコミュニティ計画の柱は、「地区防災」と「ふれあい健康づくり事業」であるが、いずれも地区の特徴を反映したテーマである。
 まず、浦戸地区は、太平洋に面していて、気候もよく食にも恵まれているが、地震に際しての津波の危険があり、住民の危機意識も高い。そのため、コミュニティ計画でも防災対策が重要課題となっており、ソフト対策についてはすぐに取り組む課題とされている。これに基づき、地域を挙げての防災訓練の実施や、浦戸地区津波防災検討会を立ち上げての「津波防災マスタープラン」づくりが行われた。これらは、他地区の推進市民会議での防災の取り組みのモデルにもなっている。
 一方、この地区には、愛着を持って古くから住む人も多いが、近年は若い人たちが雇用や住居の不足などで少なくなっているという状況がある。そこで、どんな人でも元気に暮らせるまちにしたいと、「ふれあい健康づくり」をテーマにした活動を、年間1つ取り上げて取り組んでいる。これまでに、地区運動会での車椅子を使った種目の採用、ロング巻き寿司づくり大会の開催、健康車椅子ウォークラリーなどを実施。今年は、8月7日に行う「浦戸まつり」の復活に向けて活動しており、盆踊りの歌も自作するそうだ。施設整備などは行政が行えばよいが、「心」の健康は住民自身で作り出していくとのことであった。

・お2人にとっては、推進市民会議の活動は、町内会やPTAのような固有の活動があるものとは、タイプが異なるものに映っているそうだ。会員には町内会やPTAなど各種団体の役員が多いそうだが、コミュニティ計画の実現という特定のテーマに関して、行政と協力しながら行うのがこの活動という意識である。
 お2人が、「われわれは、“まちづくり”ではなく“まつりずき”」とおっしゃるように、浦戸地区には祭好きの人が多く、考えるよりやってみようというところがあるらしい。推進市民会議の活動も、一定のテーマの枠内で毎年目標を変えながら、祭に取り組むような感じで行われているのかもしれない。

・このコミュニティ計画に関する取材は、東京ランポが今年度取り組んでいる「“自治的なコミュニティ組織”の運営実態調査」の一環で行った。そこには、コミュニティ計画というツールを通して、行政と協力しながら、その策定に参加し推進を担う、住民の自治的な活動の1つのタイプが見られた。
 と同時に、コミュニティ計画の策定にあたっては、広く公募が行われたように、東京ランポが行っている「公募市民に関する調査」にとっても興味深い事例である。これは、条例や総合計画といった全市的なテーマで公募が行われるケースではなく、コミュニティに関する部分で公募市民を活用するケースである。個々の地域の住民力をつけることが、自治の実体をつくるうえでは重要と考えられるが、単に既存の地域組織を活用するのでなく、現時点では地域活動に参加できていない人にも「きっかけ」を提供する意味で、コミュニティ政策においても公募という手法は重要なのだろう。

・さて、今回の取材は、筆者の独力で成り立ったものではない。高知市訪問のそもそものきっかけである研修講師の機会を提供してくださり、ここで紹介した「まちづくり一緒にやろうや条例」やコミュニティ計画を所管している、市民生活部まちづくり推進課の職員の皆さんのコーディネートがあってのことである。
 まちづくり推進課の職員は、2〜3人でペアを組んでいくつかのコミュニティを受け持ち、推進市民会議の活動のサポートをしている。推進市民会議の皆さんに、日頃の活動のなかでの職員の役割を尋ねたところ、その控えめでありながらもそつのないサポートの様子を教えてくださった。あくまで住民を主体にして、その活動がしやすいように、議事録の作成や資料の準備、課題の整理などをして陰で支える。そういった職員の役割に、推進市民会議の皆さんが大きな信頼を寄せていることが、大変よく伝わってきた。
 職員の皆さんも、住民の皆さんをサポートできることを、楽しんでいる様子だった。車で取材場所に連れて行っていただく道々、行川の名産の生姜をはじめ、ちょうど季節に入りだした文旦(柑橘類の果物)など、高知の特産品についていろいろと教えてもらった。実際に案内までしてもらい、おかげで、おいしいと評判の食品会社に寄っててんぷら(さつま揚げ)を買ったり、御畳瀬の漁家に寄って「めひかり」という旬の魚を買ったりできた。また、日頃、推進市民会議の夕方からの会合に出るときに夕食をとっているという、まちの食堂にも連れて行ってもらった。旅行ガイドなど比べものにならないほど、地域のことをよく知っていることに感心するとともに、そこここで地域の人たちと親しく話を交わす様子に、まちづくりで最も大切な人と人との信頼関係があるのを感じた。
 今回、わずかな期間の滞在が、大変充実したものになったのは、職員の皆さんのコーディネートのおかげである。この場を借りて改めて感謝申し上げたい。

・ちなみに、読者の皆さんはご存知だろうか。高知(こうち)という地名は、「う」にアクセントがあって、尻上がりのイントネーションで発音することを・・・。心地のよい土佐弁が耳から離れなくなり、家に帰ってからもしばらく土佐訛が抜けなかったのも、職員の皆さん、市民の皆さん、お店のおばちゃんに至るまで、今回お会いした方々の「人のよさ」が大変印象的だったからに違いない。ぜひ皆さんも、高知のまちづくりを見てみいや。

桂浜の坂本龍馬像前で筆者。

 高知市市民生活部まちづくり推進課ホームページ 高知市のコミュニティ計画

「高知のまちづくりを見てみいや(1)−条例とサポセン」もご覧ください。

(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)

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