市民参加・協働のまちづくり
| ワーキングシンポ参加を変える『学び』で変える開催 |
2004/3/15
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・2004年3月12日(金)午前10時〜午後4時30分、三茶しゃれなあどホールにて、(財)世田谷区都市整備公社まちづくりセンター主催の「〜意義ある参加の実現に向けて〜まちづくり・ワーキングシンポジウム 参加を変える『学び』で変える」が開催された。
行政職員、専門家(プランナーなど)、世田谷区内の住民、区外の住民が、バランスよく参加した。全国から100人くらいが申込み、当日はそれよりは少なかったと思われるが、多くの人たちが参加した。筆者も参加した。
・世田谷のまちづくりセンターは、1992年、ちょうど一回り前の申年に開設された。世田谷区では、このまちセンでの取り組みをはじめ、様々な住民参加に取り組んできたが、参加の質への批判も聞かれるようになってきた。住民は意見が十分に反映されないことに不満を抱き、専門家は十分でない手続きで結論が安易に出されていると感じ、行政職員は住民と行政が対等に議論できているのか疑問に思う、などである。しかし、参加の現状について、十分に検証されているとは言えない。
そこで、(1)これまでの住民参加の問題点の共通認識をつくること、(2)その問題点を解決する方向性の糸口を見出すこと、を目的として、今回のシンポジウムが開催された。
なお、住民参加にも、協働と呼ばれるものや、住民発意で行われるものなど様々あるが、今回は、行政が呼びかける形で行われるものだけがテーマとされた。
・今回の問題提起にあたり、まちセンでは、住民参加に携わってきた人たちへのヒアリングをもとに、これまでよりステップアップした参加のあり方として、「学び」をキーワードとした「“参加”の成長図」を提示した。これは、行政、専門家、住民それぞれからの投げかけをもとに、三者間のコミュニケーションが生まれ、それが「学び」となって、スパイラルしながら、様々な成果が得られるというものである。
また、「住民参加の実施プロセス」を4段階に整理して提示した。第1段階:発意、準備、呼びかけ、第2段階:背景や課題、問題構造の共通理解、第3段階:アイデア創出、合意形成、意思決定、第4段階:実施、行動、である。
6組のパネラーは、この4段階に沿ってテーマを与えられ、午前中に問題提起を行った。そして、午後は、参加者がその6つのテーマに分かれてワークショップを行い、テーマごとに「意義ある住民参加を実現するための3ヶ条」を文章化した。
・石塚雅明さん((株)石塚計画デザイン事務所)は、上記の第1段階に関わるテーマとして、「1.誰と地域のことを語ればよいか?」を担当した。コミュニティ構成員が多様化、高齢化するなかで、必要な顔ぶれに参加してもらえるのか。また、加入率の低い町内会や高級マンションなど人が集まらないケースでは、コミュニティ再編も必要ではないか、との問題提起がなされた。
朝比奈ゆりさん(まちづくりセンター職員)は、第2段階に関わるテーマとして、「2.考える素材をだれがどのように出すか?」を担当した。住民参加によってできたものが本当によいものか?との批判があるが、情報提供が不十分なまま結論が求められており、住民の生活実感が十分に反映されていないからではないか、との問題提起がなされた。
奥村玄さん((株)農村・都市計画研究所)は、第2〜3段階にまたがるテーマとして、「3.いきいきとした発見や創造のプロセスをつくるには?」を担当した。これまでの参加は、レールの上で動かされているとの意見もあり、いかに発見や発酵のプロセスを入れられるか。また、プログラムを並べただけのワークショップも多く、創造的な結果にジャンプさせるにはどうしたらよいか、との問題提起がなされた。
高野文彰さん(高野ランドスケープ・プランニング(株))は、第3〜4段階にまたがるテーマとして、「4.どうすれば魅力的なデザインが可能か?」を担当した。みんなで参加してつくっても、よくないものはよくない。デザイナーは、やりすぎるのもよくないが、参加者が言葉にできない要求を汲み取ったり、参加者が想像できない部分を提示したりすることも重要ではないか、との問題提起がなされた。
岡村泰之さん&米山真理子さん夫妻(岡村泰之建築設計事務所)は、上記の4段階全体を住民の立場から考える、「5.住民力を生かすには?」を担当した。住民と一口に言ってもいろいろな立場や専門の人がおり、どんなスタンスで参加するのかはっきりしないといけないのではないか。また、楽しく参加することが大切ではないか、との問題提起がなされた。
稲垣豊さん(世田谷区職員、まちセン派遣)は、上記の4段階全体を行政の立場から考える、「6.住民参加にのぞむ行政担当者の心得は?」を担当した。行政職員も、全体の奉仕者という制約があったり、上司の命令に従うことが必要だったりするが、法律・条例などに従って行動するだけでなく、自分の意思が大切ではないか、との問題提起がなされた。
・午後のワークショップの結果、各グループが考えた、「意義ある住民参加を実現するための3ヶ条」は、以下の通りである。
1.誰と地域のことを語ればよいか?
●地域で思いをもった人と思いをもった人を探す人の 気軽なお見合いの「場」と「きっかけ」を地域に
●参加はできるだけ早い時期から 具体の計画づくりの段階では遅い
●広域計画の参加は 実は日常生活に密接に関係する重要な課題 広く多様な呼びかけと参加の場づくりのトライを
2.考える素材をだれがどのように出すか?
●ゆるやかな段階の素材を! ナマの素材、住民語で…(筆者注:全文は記録できず。)
●腹を割って向かい合って素材を吟味する 主体により異なる→学び合いが必要
●時間をかけて、人を育てる
3.いきいきとした発見や創造のプロセスをつくるには?
●時間をかけて互いを知り合い共通認識づくりから始める⇒波及効果のある共通体験・記憶を通じた「3+1の動機づけ」(筆者注:3=行政、専門家、住民、1=三者に共通)
●自由な意見の出し方を保証する場づくり⇒意見が変わってもOK!
●ゆうゆう・ギリギリ・緩急自在のプロセス 創造の瞬間は人によって違う
4.どうすれば魅力的なデザインが可能か?
●もっとデザインを現場で学ぶ
●専門家を住民が選べるしくみをつくる
●続けられることが大切(筆者注:できて以降のことも考えて、という意味)
5.住民力を生かすには?
●ちょっとしたことが言える、対話ができる場や機会をつくろう
●やれる方向で技術的・法規的・客観的な情報提供
●関心のある人をしっかり見つけて育てよう
6.住民参加にのぞむ行政担当者の心得は?
●【行政職員の心得】区職員は自分の住んでいるところでのまちづくり活動を通して 生活者の立場で考えられる心を持つこと
●【行政職員の心得】住民参加で出た提案を実現するために できることできないことのみちすじを区が見せること
●【行政職員の心得 地域住民の心得】行政も区民もお互い変わっていくこと
・筆者は、「3.いきいきとした発見や創造のプロセスをつくるには?」のワークショップに参加した。10数名の参加者は、行政職員と専門家(プランナーなど)が半々くらい、公園のプレイリーダー2名、ディベロッパー社員1名だった。問題提起者の奥村さんのテーマ設定に従い、「行政、専門家、住民の三者の創造的な関係づくりの方法」と「参加が創造的な成果にジャンプする方法」について議論した。
筆者は、自分自身の経験から、「創造へのジャンプ」の前提として、(1)いろいろな意見があることを知り、議論するなかで自分の意見が変わってもよいこと、(2)関係者同士が時間をかけて信頼関係を築き、立場の違いはあってもチームとして問題に取り組むこと、を述べた。奥村さんや他の参加者からも、賛同の意見が寄せられ、3ヶ条にも反映された。
また、奥村さんからの問いかけで、参加者各自が、どんなときに創造的になれるかを語った。ゆったりしているときと答える人もいれば、追い詰められたときと答える人もいた。その結果、創造的な成果を出すためにどれくらいの時間をかければよいかは一概には言えず、「緩急自在」なプロセスが必要との結論になった。
・「学び」というキーワードで、住民参加のステップアップの方向性を探った今回のシンポジウムであったが、画期的な成果を得られたかは、多少疑問である。パネラーのなかにも、今回の成果となった3ヶ条は、従来とそれほど代わり映えがしないと総括する人もいた。また、シンポジウムの進め方についてであるが、典型的な具体例をいくつか示して分析する方がよかったのではないか。パネラー、参加者とも、もちろん自身の経験に基づいて発言していたのだろうが、具体例があまり出なかったため、発言の根拠が漠然としていて、抽象的な議論に終始したように思う。
筆者が思うに、ここ10年くらいの住民参加の経験から、「理想の住民参加の姿」は、住民参加に携わるそれぞれの人たちには意識されてきている。今回のシンポジウムで、それをみんなで共有できたということには意味があるだろうが、「やっぱり理想はこうだよね」と確認するにとどまっていて、では具体的にどうすればよいのかまでは示せなかったのだと思う。筆者がよく使う言い方をすれば、(1)問題点と(2)めざすべき姿はわかっているが、そのギャップを埋める(3)解決策まではわかっていない段階である。
・やや話が飛躍するかもしれないが、筆者は、今回のシンポジウムでの議論を聞いていて、「理想の住民参加の姿」は、ドイツの社会哲学者のハーバーマスが唱える討議倫理学、つまり「全ての参加者が対等の立場に立ち、全員の利益を念頭に置いて自由に議論する理想的なコミュニケーションが必要」という考え方に、ますます近づいていると感じた。そして、ハーバーマスのこのような考え方が、「理想」としては正しくても「現実」に可能なのかと批判されてきたように、住民参加の現場でも「理想はわかっちゃいるけど現実にはどうすりゃいいの」という段階になっているのだと思う。
ハーバーマスの考えは、最近、行政一般や都市計画などにおける住民参加を研究する学者の間でも人気がある。そのような研究では、近年、ワークショップなどの参加手法が発展してきたことが前提にされているわけだが、実のところ、現場(行政、専門家、住民)では、その参加手法が、まだまだ未熟なために悩んでいるのである。
回りくどい言い方になってしまったが、筆者は今回のシンポジウムで、「理想の住民参加の姿はみんな同じなんだな」と確認するとともに、現場に携わる人間として、その「理想」に少しでも近づくような「現実」の参加手法を編み出していくことの必要性と使命感を自覚した次第である。そういうわけで(何だかんだ言ったが)、筆者にとっては、収穫のあるシンポジウムとなった。
※ハーバーマス的な理想を、現実の参加手法に活かす試みは、岩波新書の近刊『市民の政治学−討議デモクラシーとは何か−』(篠原一)でも、討議制意見調査やコンセンサス会議などが紹介されている。筆者も、(独)科学技術振興機構が実施したシナリオ・ワークショップ(予め提示された複数の将来像を出発点として、各案のメリット・デメリットなどを検討しながら、改めて将来像を構築していく手法)など、(東京ランポの仕事ではないが)そのような試みにファシリテーター(ワークショップの進行役)として参加している。
※ 「市民参加のガイドラインを考えるシンポジウム開催」もご覧ください。
(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)
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