まちづくり支援 東京ランポ 東京ランポは、市民主体のまちづくりを支援する非営利団体です。
http://www.la-npo.org/
ホーム | ランポを知る | ランポの活動・主張 | ランポに参加する | ランポに依頼する | そのほか
まちづくりニュース

市民参加・協働のまちづくり
高知のまちづくりを見てみいや(1)−条例とサポセン
2004/2/27


・2004年1月29日(木)〜2月1日(日)、高知市を訪れる機会があった。そもそもは、高知市職員と高知市市民活動サポートセンター職員を対象にした、ワークショップ研修の講師で行ったのだが、せっかくの機会であるので、高知市のまちづくりの動きを取材してきた。

・高知市には、2003年に制定・施行された「高知市市民と行政のパートナーシップのまちづくり条例」というものがある。ふるっているのは、この条例には、「まちづくり一緒にやろうや条例」という愛称があることだ。しかも、条例の前文は、土佐弁で書かれている(訳文付き)。
 なお、ここで言う「まちづくり」とは、都市計画系の狭い意味ではなく、条例にある「住みよいまち、豊かな地域社会をつくるための取組」全体のことである。

・また、高知市には、1999年に設置された、公設民営の市民活動サポートセンターがある(たかじょう庁舎2Fに入っている)。ここは、高知市の様々な分野の市民団体が一緒になって立ち上げた、NPO高知市民会議が受託運営している。このサポセンは、上記の条例によって、市民活動の拠点としての位置も得ている。

・今回は、NPO高知市民会議の事務局長としてサポセンの運営に関わり、「市民と行政のパートナーシップのまちづくり条例(仮称)案策定委員会」では委員長を務めた、内田洋子さんに取材する機会を得た。29日(木)にサポセン内を案内していただき、30日(金)にお話を伺うことができた。
 内田さんは、消費者運動や環境問題を本来のフィールドとしている。NPO高知市民会議の立ち上げに参加し、サポセンの事務局長を務めていたことから、条例案策定委員となり、委員長を務めることになった。

・条例案の策定委員会は、17名の委員からなり(市民委員11名、行政委員6名)、他にアドバイザーが2名(弁護士、まちづくり)、事務局は市民生活部まちづくり推進課が務めた。担当課の考えもあり、最初からワークショップ形式で行われた。とは言え、ファシリテーターは外から雇うのではなく、ワークショップを仕事にしている委員などが交替で務めた。各回の企画も、数人の委員とアドバイザーが世話人となって行ったので、委員主導の運営であったと言える。事務局は、控えめに事務作業を行うことに徹したという。
 驚きなのは、ワークショップの方法が、かなり丁寧に行われたことである。委員の意見を付箋(ポストイット)に書き出し、課題を整理したり、条例の骨格を構成するまでなら、他にも例がある。最後は、条例文(案)を起草委員会が作成して示すという方法だ。しかし、ここでは、条例文(案)の作成までが、文案をカードに分割して書き、それを並べ替えたり書き直したりして成文化する方法で行われている。名づけるなら、「文案モンタージュ」とでも言おうか。

・このように委員が手塩にかけてつくった条例素案と提言をもとに、現在の条例がつくられた。素案そのままとはいかない部分もあったが、情熱をこめてつくった土佐弁の前文をはじめ、肝心なところは入っているので、満足しているとのことであった。もとより、これで出来上がりというつもりはなく、「育てていく条例」と考えているそうだ。条例に基づき設置される「見守り委員会」が、実際の運用を見ながら、制度の足し引きを行っていくのだという。
 高知市の協働の現状についても、条例が目指す姿になるまでには距離があるとの評価だ。行政内で言えば、部局によって協働の姿勢の差が大きく、全体的にはまだまだ。市民団体の側も、対等な協働に耐えられるところは少なく、行政側が予算化しても応募がない場合もあるという。条例の本格運用が進んでいくなかで、条例の趣旨を知り、自分も協働の輪に入ってみようという市民が増えていくことを期待したい。

・一方、市民活動サポートセンターについても伺った。機能的には、会議室やフリースペース、印刷や製本ができる作業スペース、団体が私書箱として使えるメールボックス、情報掲示板やパソコンなど、他のサポセンと大差はない。但し、高知市のサポセンは、1999年という早い時期につくられており、内田さんもおっしゃるように、他所を参考にしたわけではないようだ。
 サポセンの管理業務以外には、次のようなものがある。自主事業や他の団体との共同事業における、ボランティア管理や会議準備などの事務局。県社協や市社協と連携しての、ボランティア希望者の斡旋。企業が社会貢献活動をする際の、関係団体とのコーディネート。市民団体からの相談は、意外と少ないという。関心を持った市民がきっかけを見つけられるよう、参加のためのチャートなども作成している。
 最大の利用者は行政で、特に県。他の市町村からの利用も多いが、肝心の高知市がそれほど活用できていないのだそうだ。

・しかし、何と言っても、このサポセンの特徴は、事務局の人材の充実ぶりではないだろうか。今回の高知市訪問のそもそもの目的であったワークショップ研修には、サポセン職員の皆さん(全員女性)にも参加していただいた。そこで、寸劇をつくるワークを行ったのであるが、お笑い芸人も顔負けのストーリーと熱演ぶりは、参加者一同の爆笑を誘った。
 もちろん、単におもしろい人たちということではなく、話し合いの場でのコミュニケーション能力、人に伝える表現力などが素晴らしい。サポセンでは、受託団体であるNPO高知市民会議の自前事業のほか、他団体との共同事業を数多く行っており、1人の職員がその事務局をいくつか掛け持ちしているそうだが、日頃の仕事ぶりが想像できる。
 どのように採用しているのか、内田さんに伺ったところ、何とNPO高知市民会議が試験をしているのだという。筆記ではNPOに関する知識、面接ではワークショップの技能なども問われるという。サポセンによっては、給与がパート並みという事情もあり、雇われている側も事務アルバイトの感覚だという例もある。それでは、専門的な相談に応じるところまでは対応できない。その点で、高知市のサポセンの人材の充実ぶりは光る。

・そう言えば、名刺を見返して気がついた。内田さんをはじめ、サポセン職員の皆さんの名刺には、「高知市市民活動サポートセンター」ではなく、「NPO高知市民会議」と書いてある。ああ、なるほど、彼らは、委託されたサポセン業務のためだけでなく、NPOとしての本来事業をするためにそこにいるのである。つまり、サポセンの事務局スペースは、NPO高知市民会議の事務所でもあるわけだ。
 何のことだか一見わからない読者もいると思われるが、これはすごいことである。他所のサポセンを受託するNPOには、契約上、サポセンのなかでは、あくまでサポセンの業務しかしてはいけないというものもある。そうなると、そのNPOは、別のところに事務所を構えなくてはならなかったり、サポセンを活用して収入を得ることができなかったりする。そして何より、サポセンの受託業務には全く創意工夫を発揮する余地がなく、行政の言いなりになるだけになってしまうのである。
 その点、NPO高知市民会議の場合は、サポセンを活用して、様々な事業を行い、収入も得ている。自主事業のほか、「事業企画コンテスト」で他の団体が提案した企画を、NPO高知市民会議が費用を持って一緒に行うなど、他のNPOがステップアップするためのパートナーにもなっている。これは、サポセンの委託料とは別に、2,000万円超の補助金があるからこそ成り立つ話でもあろうが、専門性のある職員を抱え、中間支援NPOとしての役割を果たすためには、当面はそのくらい必要なのかもしれない。
 ともかく、大切なのは、サポセンを受託している団体が、自律的に運営されていることである。最低限の職務をこなすだけなら、「庁舎内で一番遅くまで電気が点いている」ほど働かない。やはり、ミッションがあればこそであろう。「金を出しても口出すな」は言うほど容易ではないが、NPOと行政の対等な関係、ひいてはNPOの創意工夫の発揮のためには、必要なことなのである。

・ところで、内田さんをはじめ、NPO高知市民会議の職員の皆さんは、女性ばかりである。また、「まちづくり一緒にやろうや条例」を所管する、まちづくり推進課も、係長さんをはじめ、元気のある女性職員が目立った。
 土佐には昔から、「いごっそう」の男と「はちきん」の女がいるという。いずれも、芯の太い、豪快な人物を表す。最近では、「いごっそう」が少なくなってきたそうだが、どっこい「はちきん」のパワーは、まちづくりの舞台にあって、大いに発揮されているようだ。

 高知市市民生活部まちづくり推進課ホームページ
 
特定非営利活動法人NPO高知市民会議ホームページ

「高知のまちづくりを見てみいや(2)−コミュニティ計画」もご覧ください。

(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)

[ ページの先頭に戻る | ホームに戻る ] ( 更新)
まちづくり支援・東京ランポ copyright(C) Tokyo LA-NPO 2003 All Rights Reserved.
当サイトに掲載された記事・写真・図表等の無断転載を禁止します。詳しくは「このサイトについて」をご覧ください。