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事業報告


都市計画関連のまちづくり 次世代都市構想研究会
第8回次世代都市構想研究会 議事要旨


日時:2002年12月21日(土) 14:30〜17:00  会場:東京ランポ事務所・地下会議室
参加者(13名):蔵方博史、K、佐藤節子、〆野啓子、白藤一博、田中友章、野田哲平、松宮綾子【一般】
          伊藤久雄、佐々木貴子、庄嶋孝広、辻利夫、早川淳【理事、スタッフ】
必読テキスト:『ローカルな法秩序−法と交錯する共同性』(阿部昌樹) 剄草書房 但し、第1章、第3章の3と4、第4章の3と4、第5章のみ

テーマ:ローカルルールの形成をめざして 京都市マンション紛争から考える
ローカルな法秩序 第1、3章  報告者:早川 淳(東京ランポ理事)
 法を、人間を超越した絶対的なものでなく、道具的に捉えると、得られる効果次第で法を使ったり使わなかったりする。マンション建設反対運動の戦略も、法的−非法的、規範援用的−規範形成的という2つの軸で4タイプに分類でき、法以外の手段があることがわかる。
 訴訟か裁判外かを問わず、法を使う場合も、裁判所だけでなく、各主体が法解釈をしながら法を動員する。今日では、既存の法の利用にとどまらず、住民運動が、必要とされる法を、条例という形式で新たに創出することまで行われている。
 また、法には、私人間の利害対立を私人と行政の紛争に転化させる、紛争変容装置としての機能がある。堤町の事例でも、開発許可が出されていたことで、開発審査会への審査請求が行われ、行政との紛争に転化できた。一方で、建設大臣決裁が示したように、請求人適格がないのを理由に、行政処分の正当性が問われないというパラドキシカルな面もある。
 もっとも、堤町の場合、開発審査請求は退けられたものの、請求を行ったことが圧力となって、マンション業者の譲歩を引き出す結果になったと言え、法が道具的であることがわかる。

ローカルな法秩序 第4、5章  報告者:蔵方 博史(都市計画コンサルタント)
 笹屋町においては、町家に住まうというのがローカルなルールであり、ワンルーム・マンション建設計画がきっかけとなって、反対運動が起こった。運動は、対策委員会 ⇒ まちづくり憲章 ⇒ 建築協定 ⇒ 地区計画、という展開をたどった。
 1点目の検討課題は、まちを守るというような共同的実践の動機づけが、どのように形成・共有・維持されるかである。笹屋町では、町内行事を通して涵養されていた「地域の物語」が動機づけを形成した。また、まちづくり憲章を作るなかで、地域社会のメンバーとしてのアイデンティティ(「わたし達」)が自覚され、動機づけが共有された。そして、憲章に盛り込まれた積極的責務を、共同的実践として各自が履行することで、動機づけが維持された。
 2点目の検討課題は、ローカルなルールが法的なものになった場合に、住民の意識がどう変わるかである。笹屋町では、まちづくり憲章にとどまらず、法的拘束力を持つ建築協定や地区計画もできた。しかし、地区計画など「法の語り」のなかでは、「わたし達」とそれ以外との区別がなくなり、全員が自由を制約される客体となる。共同的実践への努力が途絶えないためには、ローカルなルールが法的なものになった後も、「地域の物語」を育み続けることである。
 法秩序とは、特定の地域のみに妥当する法的制約が、地域住民ら当事者のやりとりのなかで確定されていくという意味で、全国一律のものでなく、ローカルなものでしかあり得ない。

参加者同士の議論
日本のまちづくり法体系の問題点
・都市計画法も建築基準法もゆるゆるで、いろいろなものが建てられてしまう。建築基準法では、住宅の「用途」を住宅、長屋、共同住宅と3つ定めているだけだが、共同住宅と言っても範囲が広く、「形式」まで定めなくてはいろいろなものが建つ。もっと細かく規定していれば、紛争は起こりようもない。一方で、基準法が、地域に根ざした建築や住まい方を殺した例も多い。地域独自の「形式」は、コミュニティボードで決められるようにしておけばよい。
・日本は、法律で定めていることが多すぎる。官僚は、一部の地域でしか使えないものでも、法律で規定しないと気がすまない。例えば、容積率移転も歴史的建造物を守る仕組みとして、東京駅駅舎で使われる分にはよいが、他では単なる容積率の取引のために悪用されかねない。ローカルルールを生かすには、法律の規律密度を下げて、条例に委任することが必要だろう。
・国立のマンション判決でも、形のうえでは、訴えの利益を認められた原告が3人だけとなっているように、原告適格の条件が厳しい。事業者に都合のよい点はどんどん緩和されるのに、住民を守る点は旧態依然としていることも、日本のまちづくり法の問題点である。
国立のマンション判決で認められたローカルルール

・12月18日の判決は、「大学通り」の景観という、住民が70年にわたってつくり上げてきたローカルルールを、それを取り決めた何の文書もないにもかかわらず認めたという意味で画期的であった。住民が積極的に働きかけて生み出した付加価値であるかどうかが、ローカルルールとなるかどうかのメルクマールと言えそうだ。
・専門家が計画してつくった景観ではなく、住民が長い間積み重ねてきたことが価値を生んだ。
・「大学通り」の景観を守り、マンション建設に反対する署名の存在が、いわば陪審員制度のような役割を果たした。議会への5万人署名、市長への7万人署名、そして改めて11万人集めての都知事への署名などが、不利な状況からの地区計画制定や、今回の判決にもつながった。その背景には、市内の数々のマンション紛争で敗れた人たちの願いが結集されたことがある。
「地域の物語」をつくっていくには
・今回のテキストは京都が舞台であるが、やはり京都だったからこそ、様々な形でのローカルルールを形成できた面があるのではないか。京都人は、まちに対するプライドが高く、地蔵盆などで町内のつながりを保っており、住民が負担して建てた学校を通した結びつきも強い。
・ただ、京都だから「地域の物語」が持てたとしてしまうと、他の地域はどうしようもなくなる。東京の住宅地などでは、よいきっかけとは言えないが、マンション建設などが起爆剤となって「地域の物語」が始まるということが現実ではないか。
・マンション紛争などが「地域の物語」のきっかけとなるのは、やはり不幸なことであるので、紛争を予防するような形で「地域の物語」をつくっていくことが望ましい。
・バスツアーのときと合わせて、神楽坂を2回ほど見学したが、古いまちではあるが、「地域の物語」が地域全体のものになっていないような印象を受けた。府中に住んで長いが、まだ新住民扱いである。駅前のマンション建設などで騒ぐのは、いつも新住民である。
・現状では、「地域の物語」がないところがほとんどである。ローカルルールを築いていくためにも、どうやって多くの地域が「地域の物語」を生み出していけるかを考える必要がある。

(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)
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