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市民参加・協働のまちづくり 大規模公募市民会議調査 最近の「大規模型」公募市民会議の動向 大規模公募市民会議に関するプレ調査 2002年3月 2002年1月26日(土)、埼玉県志木市において、志木市民委員会の「デビュープレゼンテーション」が開催された。志木市長、市議会議長、市選出の県議会議員の来賓挨拶に続き、「最近の公募市民会議の動向から見た志木市民委員会の可能性」という演題で基調講演を務めさせていただいた。 志木市はこれまでにも、都市マス・住宅マスの素案を作った「21市民まちづくり会議」(39人全員公募)や、環境基本計画の素案を作った「志木市環境市民会議」(26人全員公募)といった公募市民会議の実績がある。今回の志木市民委員会は、新市長のもとで「市民が創る市民の志木市」の実現を目指し、2001年11月に252人の公募市民で発足したものである。 委員の任期は2年であるが、会議自体は常設される。9部会に分かれて、市政について調査研究し、市長に提言を行うことを目的としている。ただ、市民が自主的に運営を行っており、また条例・計画案の作成といった明確な目的もないことから、会議の目的や役割自体を市民が決める余地がある。 発足直後は、平成14年度予算編成に向けた市の事業の見直しを、行政の依頼を受けて行った。しかし、行政によって生み出された市民委員会を、改めて市民の手で生み直し、今後の方向性を探るため、「デビュープレゼンテーション」の開催となったのであった。 東京ランポでは、2000年度に市民公募委員制度の調査と提案を行い、報告書『市民参加の新しい扉を開く』を発行した。そこでは、従来の審議会方式の会議で採用された公募委員が、主な調査対象であった。しかし、その後、志木市民委員会のような、「大規模型」公募市民会議の登場が目立つようになってきた。ここでは、今回の基調講演で話した内容をもとに、最近の「大規模型」公募市民会議の動向を紹介したい。 公募市民が活躍できる会議スタイル 市民公募委員制度の調査では、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の全市区143自治体(当時)で、97〜99年度に公募委員を採用した会議を対象とした。 調査で得られた情報を総合して、公募委員を採用する意義を、次の2つにまとめた。1つは、「誰にでも応募できるチャンスを提供することで、埋もれていた市民ニーズを把握し、従来得られなかったタイプの人材を獲得できる」ことであり、もう1つは、「公共分野の問題を行政だけで解決できなくなってきたなかで、市民がその解決の担い手となることで、政策の実行力・実効性が高まる」ことである。 このような意義を持つ公募委員は、これまで従来型の、いわゆる審議会方式の会議で採用されるのが一般的であった。審議会方式では、委員は議論することが主な役割であり、職員が議論を編集して答申案を作成し、さらに政策への反映も判断する。また、公募委員も少数であるので、わずかな市民意見しか反映できないことになりがちである。つまり、審議会方式には、「アリバイづくり」に利用されやすいことや、少数の市民意見しか入らないといった問題点がある。 このような問題点を克服し、公募市民の意義をより一層引き出す対策の1つが、「大規模型」公募市民会議への採用であると考えられる。公募に応じた市民を選考せずに採用すれば、多数の市民意見をもとに議論することができる。また、参加者数が多ければ、職員が事務局を担うのにも限界があるため、市民自身が成果物(答申、提言)を執筆したり、事務局を務めたりして自主運営することになるが、そうすることでアリバイづくりの余地も大幅に減少する。このように、「大規模型」公募市民会議は、審議会方式への公募委員採用の次の段階にある、会議スタイルと言えるのである。 「大規模型」公募市民会議の事例 「大規模型」という場合、便宜的に、100人以上の公募市民が参加する会議を指すことにしたい。こういった会議では、希望者全員を選考せずに採用するのが一般的である。 先の市民公募委員制度の調査には、「大規模型」として、東京都日野市で総合計画の素案を作成した「日野いいプラン2010のワーキングチーム」と東京都三鷹市で総合計画への市民提言を作成した「みたか市民プラン21会議」が含まれていた。 その後、東京都多摩市では、自治基本条例案を作成する「多摩市市民自治基本条例をつくる会」が、2000年11月に発足した。人数は約60人と、100人以上の条件には満たないが、これまで行政計画の策定に活用されてきた「大規模型」が、条例づくりに活用されている事例として、特に取り上げた。市長の条例提案権の一部を市民が担っているものと位置づけ、「みたか市民プラン21会議」と同様のパートナーシップ協定が、会と市長の間で締結されている。なお、事務局は、運営委員会が、職員の協力を得て担っている。 また、東京都八王子市では、2003年度からの総合計画を策定する「八王子ゆめおり市民会議」が、2001年8月に発足した。133人のメンバーには、23人の庁内公募職員が含まれるという、「日野いいプラン2010のワーキングチーム」と同様の協働が行われている。担当職員によれば、事務局は企画政策課が担っているが、代表・副代表といった役職が決まれば、リーダー会議が事務局になっていく可能性があるとのことであった。 一方、行政計画や条例の案を作成するといった、単一目的のために設置されることが多い「大規模型」であるが、最近では、単一目的でない、いわば常設の会議も登場している。 宮崎県日向市では、2000年7月に「日向市まちづくり100人委員会」が発足した。当初は、約200人の市民が3ヶ月ほどかけて、総合計画への市民提言をまとめる活動を行った。しかし、参加した市民自身で、会議の役割を再定義したいということになり、2001年度は準備会(37人)が発足して、再出発に向けた活動を行ってきた。再出発後は、会議自らが設定したテーマについて提言をまとめる活動を行い、これから締結するパートナーシップ協定に基づいて、最大限市政に反映する仕組みになる見通しである。 また、群馬県伊勢崎市では、2001年5月に「伊勢崎21市民会議」が発足した。180人の市民が6つの行政テーマに分かれ、市民の視点で調査研究を行い、アイデアをまとめる活動をしている。すでに初年度の提言が出され、行政からの回答も行ったが、担当職員によれば、今後回数を重ねながら、あり方を模索したいとのことであった。なお、事務局は市民が務め、職員はオブザーバーとして同席している。 このほか、冒頭で見た、志木市民委員会も、単一目的でない会議に入る。「デビュープレゼンテーション」をきっかけに、市民が自主運営するこの会議が市政とどのような関係を築いていくのか、事務局体制をどのように作っていくのかなどを、現在、模索しているところである。 ※下図は、2003年9月現在で更新したもの。
「大規模型」公募市民会議の特徴 「大規模型」の事例は、まだそれほど多くはないが、これまでの実績をもとに特徴をまとめてみたい。「大規模型」の特徴を考えるうえで、出発点となるのは、やはり「会議規模の拡大=参加者の増大」という視点だろう。ここから、4つの主な特徴が導かれる。 1つ目は、市民が担う仕事が拡大することである。「みたか市民プラン21会議」に代表されるように、最も自主性・自立性が高いケースでは、事務局も市民が担うことになる。また、会議録作成やホームページ作成、同伴した子どもの保育など、仕事や家事を通して身に着けた、会議運営に役立つ多様な専門性の発揮が期待できる。 2つ目は、大勢参加している市民同士はフラットな関係にあることである。つまり、他者を尊重する姿勢がなくては、会議が上手く進まないことになる。もっとも、初めは知らない者同士であるので、行き違いも起きる。しかし、回数を重ねることで、信頼関係が醸成され、会議の生産性も上がるようになる。 また、行政に苦情を言って、期待通りの対応がなければ、「行政は市民の意見を聞かないのか」と言えることも、市民しかいない会議では、「私はそうは思わない」という市民も出てくる。つまり、自分の意見が他の市民の常識に照らして、一般的なものであるかがわかる。別の言い方をすれば、8割くらいの市民に納得してもらえない意見であれば、自分の方が間違っているかもしれない、と思う謙虚さが必要ということである。ともあれ、審議会方式のように、行政が議論をうまく編集してはくれないので、市民だけで自分たちの結論を出す必要がある。 3つ目は、部会中心の活動になることである。全体的なテーマや横断的なテーマについて議論したり、部会の結論を全体で承認したりする必要がある場合、全体会でそれらを処理できるかが課題である。しかし、部会に時間と労力を費やしているため、全体会で十分に時間をかけて議論を深めるのは難しいようである。また、運営委員会と一般会員との情報共有は、きちんとルールを決めておくなど工夫が必要である。 4つ目は、議会の機能に接近していることである。確かに、これだけ大規模な直接参加の市民会議があれば、議会を代替できるのではないかと意気込む公募市民もいる。また、こういった会議に、議会の存在が脅かされると感じる議員もいる。しかし、地方議会の存立は地方自治法に根拠を持つことであり、他の機関で代替するには相応の根拠がいる。その根拠を探すよりは、「大規模型」公募市民会議が、市長の意思決定のプロセス上にあることを明確に位置づけて、運用することが重要であろう。
志木市長も述べていたように、分権社会にあっては、全ての自治体が同じ組織である必然性はない。これは、自治体としての意思決定についても同様であり、市長と議員を選挙で間接的に選び、自治体としての意思決定を委ねていたこれまでの均一的な方法に、関心と意欲のある市民の直接参加がもっと組み込まれてもよい。各市区町村の個性に合った、意思決定プロセスを築くにあたって、「大規模型」公募市民会議は1つの有力なオプションとなっていくであろう。 (東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広) |
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