カレッジランポ2004-J(2004年5月22日開催)
公募市民会議は市民参加をどう変えたか
2.事例報告
◆大和市自治基本条例をつくる会・・・徹底したPIの実施 太田善夫さん(会長)
庄嶋コメント 「公募市民会議への視点」の4つめの点で注目。徹底したPIを主体的に行った、他にない事例。
現役のサラリーマンであり、銀座まで通っている。つくる会には、市の広報を見て、軽い気持ちで応募した。ちょうど40歳になったときで、パブリックなことにも関わりたいと思った。
大和市は、交通の便のよいベッドタウンで、商工業などの生産活動もさかんである。
自治基本条例は自治体の憲法に当たるもので、自治体の理念や運営の仕組みを定めた根本のルールになるものである。北海道ニセコ町が最初に定め、その後10数箇所で制定され、現在も100近い自治体で制定準備が進められている。
自治体としての独自のビジョンやルールを、行政と市民の間でつくる・契約するものであるので、行政中心や学識経験者を中心とした審議会ではなく、幅広い市民の参加のもとで市民中心につくるということで、つくる会ができた。
2002年10月に発足した。その前に公募が行われたが、大和市でも、従来は関係団体代表にプラスして公募ということが多かったが、つくる会は、市民は全員が公募であり、希望者全員を委員とした。発足時は、委員総数は35名で、うち行政メンバー5名(3名は推薦、公募2名)、学識経験者1名であった。
条例素案をつくって市長に提言するのが、会のミッションである。
委員構成であるが、年齢的には50〜60代以上が多い。また、男性が圧倒的に多い。職業を持っている人は9名。市民活動・地域活動の経験者は20名である。
事務局は、市にやってもらっているが、内容はあくまで裏方。運営は、市民が中心に行っている。スケジュールも、委員が自ら立てた。
市長からの唯一の要望は、つくる会だけでやるのではなく、市民のなかに出て行って叩かれてほしいというものだった。それで、パブリック・インボルブメント(PI)を重視した。
最初は、問題意識ややりたいこと、考えていることがバラバラで、議論にならなかった。そこで、スタートして半年は、問題意識の共有、情報収集や学習の時間に充てた。そして、委員のレベルが揃ってきたところで、具体的な条例の内容に入っていった。
PIについて2段階の方式をとった。第1回目は、2003年の夏を中心に行い、自治基本条例の基本的な考え方・ポイントだけを示して、市民から自由に意見を言ってもらったり、議論したりした。従来の行政のやり方は、かなり具体的な形を示してから行うものだったので、早い段階から市民との議論をスタートしたと言える。シンポジウムでフォーラムを開催したほか、市民との意見交換会を30回くらい行った。
同じ位置づけで、市議会議員とも意見交換の場を持った。本当は全議員と一度にやりたかったのだが、7会派それぞれ別にやることになった。平日だったので、市長名で会社の社長に文書を出してもらって、休みをとった。意見交換では、「この条例についてどんな考えを持っていますか」という問いかけをしたので、議員にとって大きな刺激になったのではないか。従来は行政案に注文をつけることが多かったが、自らこうしたいと考えることは少なかったのではないか。
2回目のPIは、条文の形にした「たたき台」を示して、2004年2〜3月にかけて行った。内容としては、フォーラム、意見交換会など、前回と同様。ただ、議員は第1回目で懲りた様子で、気が進まなかった模様。しかし、「たたき台」を記者会見で発表し、新聞各紙が取り上げると、議員も応じることになった。
2段階のPIで出た意見は、全部論点ボードに整理して、論点ごとにつくる会で議論して、条例素案をつくった。5月末に、提言書の形にまとめて市長に提出する。
つくる会の特徴であるが、市民とのコミュニケーションを重視してやってきたことが挙げられる。市民に対してつくる会の市民委員が説明するということは、市民にとっては新鮮なことであり、建設的な議論にもつながったと思う。また、市民委員は全員が公募だったので、市民の輪を広げるのに貢献したと言える。その市民委員がつくる会を引っ張ってきたが、PIをここまで徹底してやるとは行政も思っていなかった模様である。
今後の予定としては、つくる会の条例素案をもとに、市長部局が実務的なチェックを行って条例案をまとめ、議会に提出される。
感想をいくつか述べたい。
まず、合意形成は難しいということである。会社だと判断するポジションにある人間が責任を持って決めるのだが、そういうわけにはいかない。また、多数決がよいのかというとそうでもない。議論が対立したときの合意形成は難しい。つくる会の場合も、合意形成できたものもあれば、多数決になったものも、役員が判断したものもあった。
次に、担当職員が大変だったと思う。会議は平日の夜や休日なので、膨大な残業時間が発生し、職員への負担が大きかった。こういった会議は、行政のシナリオ通りにはいかない。行政としては、計画を立てて、予算を組んでやっているので、軌道修正するのが難しいだろう。
また、委員は参加する動機がバラバラなので、ミッションが何かを常にはっきりさせながら進まないと、空転してしまうと感じた。
しかし、市民にとっても職員にとっても大変勉強になり、刺激になった。
最後に、こういった会議では、特定の目的を持った人たちが集団で入ってきた場合の懸念がある。公募組織が悪用されないための工夫も必要だろう。
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(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)
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