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事業報告


カレッジランポ 2001-J(2001年9月1日開催)
市民公募制度は市民参加の新しい扉を開くか


 90年代半ばごろから目立つようになった、自治体の審議会や委員会などへの市民公募委員の採用。2000年度東京ランポは、東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県の全市区143自治体(当時)で97〜99年度に公募委員を採用した会議を対象に、市民公募委員制度の実態調査を行った。
 
今回のカレッジランポでは、その実態調査をもとに、コメンテーターに岩手県立大学総合政策学部助教授・高橋秀行氏、事例報告者に「まちづくりフォーラム・ひの」の金井透氏、「みたか市民プラン21会議」の森重嘉之氏を招いて、市民公募委員制度の可能性を展望した。

J 市民公募委員制度の実態と課題

◎最初に、東京ランポが実施した市民公募委員制度の実態調査の報告を、東京ランポ調査スタッフの庄嶋孝広が行った。

 
アンケートとヒアリングによって調査した結果、85%(110/有効回答129)の自治体で、公募委員を採用した会議があることがわかった。公募委員のいる会議の数や委員総数に占める公募委員の割合は様々で、1〜2人入れてみて「市民参加をやっています」という雰囲気のものから、希望者全員を採用して100人以上が参加するというケースも出ている。
 
調査結果を総合すると、公募委員を採用する意義の1つは、「誰にでも応募できるチャンスを提供することで、埋もれていた市民ニーズを把握したり、従来得られなかったタイプの人材を獲得できる」ことであり、もう1つは、「公共分野の問題を行政だけで解決できなくなってきたなかで、市民がその解決の担い手となることで、政策の実行力・実効性が高まる」ことであるとまとめられる。
 
今後も公募委員を採用したいとの行政職員の声や、「何かしたい」という気持ちで応募する市民の存在を考えると、公募委員制度はさらに一般化するであろう。その場合、公募委員の特性を生かすような会議の形態や運営方法が求められる。また市民も、本当の自発性という意味では、会議自体を市民発意で設置して、首長と協定を結んで活動するというNPO的な動きの方向性も展望できる。

◎市民公募委員制度全体を鳥瞰する形で調査を行った東京ランポの報告に対して、高橋秀行氏から次のようなコメントをいただいた。

〔高橋〕
1)市民公募委員制度を論じるには2つのタイプに分けるべきだろう。1つは従来型とも言える執行機関の附属機関である審議会等への一部参加である。もう1つは日野市とか三鷹市などに見られる大量参加型、全員公募型などの新しいタイプである。

2)従来型審議会等への市民公募委員制度の導入については、
1. 少数公募委員が形式化・形骸化した審議会などの機能を変革することができるのかというと、むしろ流れに抗することができずに市民参加のアリバイづくりに使われているのが実態ではないか。審議会などの委員構成そのものにメスを入れ、会の目的に沿った人材の登用、運営のあり方、会そのものの存続の是非などを射程に入れて議論する必要がある。でなければ、従来型への公募委員制度の導入は実質的な市民参加の促進をむしろ阻害する恐れがある。
2. 審議会などへ参加する少数公募市民は市民一般の意思を代表しているとは言えない。選考方法によっては諮問テーマの活動と無関係の市民が選出されることが往々にしてある。市民自身が公募委員の発言内容や出席率など活動をチェックする必要が出てくる。

3)新しい大量参加型、全員公募型市民公募委員制度の課題と新しい扉を開くための提案としては、
1. 現在は計画段階への参加であるが、今後はPlan、Do、Check、Action各段階へ大量参加型、全員公募型の参加を検討する必要がある。
 
新しいタイプの公募委員制度は政策立案、実施、評価に向いている。公募委員は計画策定後も何らかのプロジェクトを組織化し、計画の実施に向けて行政との連携を図ろうとしている。
 
一方で、これは審議会の役割にも関わることだが、市民専門家による進行管理や市民の申し出を受け止めるオンブズ組織が形成されると市民による両輪体制ができるのではないか。
2. この辺りで行政主導型の市民参加を凌駕する市民発意の新しい参加の形態を模索すべきだ。
 
例えば北海道ニセコ町のまちづくり基本条例には、行政が計画策定にあたって市民参加手法を決定する前に、予定する案を市民に公表し意見を聞くという条項がある。これにより、市民意見を反映した市民参加組織の設置要綱が作成されるという新しい取り組みをしている自治体がある。
 
さらに進むと、行政に対峙して提出されていたこれまでの直接請求による市民立法ではなく、行政との協働で地域のルールである条例づくりへ市民が参加する可能性が出てくる。
3. 行政が市民参加に足踏みする時には議会と市民の連携もあり得るのではないか。提案活動を行う市民を議会のシンクタンクとして位置づけるような議会への参加を実現させたい。例えば議会の中に公募委員による条例づくりの組織を立ち上げ、議員と真摯に議論を重ね、そこに行政も呼び議会中心に条例を作る方向性だ。

◎今後予め枠組みが決められた行政主導の市民参加から、市民発意の行政参加、議会参加への流れを期待したいとの、新しい扉を開くためのコメントをいただいた。
 市民参加が今後向かう方向として東京ランポとしても同じ考えであり、注目していきたい。

K 大量公募市民と行政との協働型自治の可能性

◎次に大量参加型、全員参加型の事例紹介を日野市「まちづくりフォーラムひの」の金井透氏と三鷹市「みたか市民プラン21会議」の森重嘉之氏から報告していただいた。

〔金井〕
 
日野市の基本構想・基本計画である2010年プランの策定にあたって、1999年4月全員公募の市民ワーキングチームが発足した。行政が想定したよりずっと大量の参加市民160人余と若手の公募行政職員30人余が対等な立場で参加。行政が用意した5つのテーマとどれにも属さないそれ以外のもので6分科会を形成し、事務局として各分科会に企画調整課職員が1人ずつついた。途中で極力行政を巻き込み、担当部課長による途中経過の説明会などの開催をし、実効性を高める努力をした。また市民意見に対するワーキングチームとの、または行政との双方向性の調整を確保するようにしたが、市民同士で提案のすり合わせをするのが一苦労であった。
 
これまでのやり方と大きく違う点は、対等な関係の職員と協働で計画を策定し、ワーキングチームの提案を担当部課長と調整し、市民の面前で公表することにより計画実行への担保としたところである。
 
2001年3月26日議会で議決されたが、全体での未調整部分、実施に向けての財政計画や具体的優先順位、進行管理への市民参加が不明瞭な点など課題は残っている。市民自身が「住民」を超えた「市民」になることも必要だ。

〔森重〕
 
みたか市民プラン21会議は活動を開始する前に、市の提唱で公募委員58名により準備会を立ち上げ、会則や会議のルール、パートナーシップ協定、組織のあり方、運営方法について協議した。組織の概要と契約内容について決定してから、準備会の市民自身が全員参加型で市民公募メンバーを募集した。1999年10月375人全員公募の市民会議が発足した。この市民会議は三鷹市の基本構想・基本計画に盛り込むべきことを自立的な組織として提言集にまとめ、市は提案された内容を最大限反映して基本構想・基本計画素案を策定するというもの。市民会議は10分科会に分かれ納期を1年後と明確にした。活動のための必要経費は600万円ほどが行政から補助された。市との協働によって資料提供システムを作り、論点データ集と用語解説集が若手職員によって作成された。策定プロセスは日野の事例と同様、行政とも一般市民とも双方向性を確保した。2000年11月からは行政の素案を検討し、2001年8月31日最終案を市長に提出した。森重氏が座長を務めた自治体経営分科会では、戦略的自治体経営、自治基本条例の制定、行政評価が提言の大きな柱であったが、基本構想に反映された。

◎日野市と三鷹市の大量参加型の事例に対して高橋秀行氏のコメントをいただいた。

〔高橋〕
 
三鷹市の事例は役割分担型、市民提言型と言える。若干原則論を強調しすぎた感もあるが、みたか市民プラン21会議は行政やコンサルの助けなしにNPOとして活動した。パートナーシップ協定を締結したことで、提言内容の反映を担保している。このことは、提言書を行政に提出後市民会議を解散するケースが多く、盛り込まれる内容はすべて行政の判断に任さざるを得ない市民提言型の弱点をカバーしている。
 
今後の課題として、NPOという形で存続し、計画に反映された内容や計画の進捗状況を市民に説明する責任があるのではないか。また他の計画策定にもみたか市民プラン21会議方式を適用できるよう追求してほしい。
 
日野市の事例は素案づくりの段階からの行政との協働型と言える。だから基本的には三鷹のような行政との契約は不要だ。2010年プランでは素案の庁内調整にまで市民が関わり、提案の反映を確実なものにしている点が新しい可能性を開いている。できれば素案のたたき台から市民が作成できるとよかった。
 
ただ結論的に言えば両者は対照的なアプローチの仕方だが、内容的にはそれほど違わない。

L パネルディスカッション

◎このあと、東京ランポ理事の早川淳を司会に、会場から、またパネラー同士の質疑を受けた。

 
市民公募委員として活動できる会議頻度の限界については、会議運営が目的に沿って円滑に運営されている時には、多くても負担に感じていないことがわかった。役割分担型で400人近い公募委員をまとめていくことは非常に困難が予想されるが、メールの活用以上に会って話し、確認しながら進めることの有効性を確認したそうだ。また三鷹の場合は、市民の思いと現実との乖離を行政側の要綱チームとやりとりして埋めていく努力をし、日野の場合は2010年プラン作成の中で、市民提案が反映されないことの裏にある法令上の問題などをえぐり出す作業ができ、行政が国や東京都に働きかけていくきっかけになったという。さらに三鷹の場合は一連の市民会議とのやりとりの中で、行政の役割を直接的なサービスの提供中心から、総合的なコーディネート中心のあり方に転換していく方向性が出てきたという。これから日野方式で基本構想・基本計画策定に臨む八王子市民からは職員との協働についての質問があった。職員との協働がうまくいった日野の場合、基本的に公募に応じたのは問題意識を持った、やる気のある若手職員である。やはり一市民とは行かず職員は職員だが、対等で市民を素人扱いすることはなく、その信頼関係が秘訣だったとのこと。日野市では議員はほとんど関わらなかった。また市民同士での政治色は余り問題にならなかったなど活発な質疑応答が交わされた。
 
基本構想・基本計画策定に関わった市民として金井氏、森重氏が新たに獲得したことは、計画策定後の進行管理に市民が関わることの担保が必要なこと、それを計画にきちんと盛り込み条例化すること、日常的出来事を政策に結びつけたり、監視するための市民協働センター的なものが必要であることなどだ。
 
最後に高橋氏が、何と言っても行政やコンサルの敷いた市民参加に形式的参加を行うのではなく、市民同士が連携し、新しい形を提案していくことだ。市民参加の深さ、広さ、協働の度合いをさらに進化させる必要があると結ばれた。

(東京ランポ理事・佐々木 貴子)

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