用途地域等見直しの自治体方針比較 2002.12.4
東京ランポ
用途地域等見直しのプロセス
東京都の用途地域等一斉見直しが始まっている。都道府県が決定権者である用途地域は、従来8年ごとに見直され、今回は2004年の決定を目指して行われている。決定に先立ち、2002年7月、都から各自治体に、用途地域等の原案策定が依頼された。その際、「用途地域等に関する指定方針及び指定基準」(以下、都方針)も、合わせて自治体に示された。
原案策定は、この都方針と、各自治体が独自に定めた方針(以下、自治体方針)とに従って行われることになる。2002年12月現在の進捗は、自治体によって異なるが、自治体方針を定めている段階や、原案のもととなる「素案」を作成している段階である。
多くの自治体では、「素案」が来年初の広報紙で公表され、2月頃に住民説明会が行われる。その後、自治体の都市計画審議会の議決を経て、首長が決定して「原案」となり、2003年7月に、都に提出される。以後は、都の側での作業となる。
自治体方針の比較
ここでは、東京ランポが入手した、9つの自治体方針の比較を行う。会員の皆さんが在住・在勤の自治体の動きをウォッチする際に、参考にしていただけることを狙いとしている。
次々ページの表
に沿って見ていくが、各項目について、自治体方針のなかで、明確な言及が見られるものは○、条件付でそう解釈できるものは△とした。
1)総合計画・都市マスを踏まえる
今回は、各自治体で都市計画マスタープランが策定されて初めての、一斉見直しとなる。また、ここ数年のうちに総合計画を見直した自治体も多い。大田区を除く全ての自治体方針で、総合計画や都市マスを踏まえることを明記している。
2)現行を継承・維持する
決定権者である東京都は、2001年10月に出した『東京の新しい都市づくりビジョン−都市再生への確かな道筋−』に描かれた都市像を、今回の見直しの目標としている。また、国や民間事業者が「都市再生」を声高に叫ぶなかで行われるのが、今回の見直しである。
しかし、過半数の自治体が、現行を継承・維持することを、基本姿勢としている。特に、世田谷区や府中市は、規制を緩和するような見直しについては、地区計画の策定を前提としているし、杉並区も、都市マスで位置づけた業務・商業等の拠点を除けば、現状の良好な住環境を維持することを最優先にしている。
もっとも、小金井市のように、現行を継承するとしつつも、駅前再開発や団地建て替えなど、重点課題への取り組み姿勢も強く持っていると見られる自治体もあるので、「現行を継承・維持する」という原則よりも、そこから漏れる重点課題への注目が必要である。
3)新メニューには慎重に対応する、
敷地面積の最低限度の指定
本誌上でも継続的に取り上げてきた、2002年改正の建築基準法で追加された新メニューも、今回の見直しから適用可能になる。
しかし、緩和方向への拡充が目立つ新メニューについては、「住宅都市」を自認する自治体を中心に、慎重に対応することを明記している。
一方で、人気のある新メニューもある。ミニ開発などを予防する、敷地面積の最低限度(これ以上敷地を細かくできない)の指定である。従来は、第1種・第2種低層住居専用地域でのみ指定可能であったが、今年の改正で12種類のいずれの用途地域でも指定できるようになった。やはり「住宅都市」の特性を持つ自治体が、住居系用途地域を対象に指定する意向である。
4)絶対高さの指定
また、新メニューではないが、これまで多用されてきた斜線制限型高度地区ではなく、絶対高さを定める高度地区の指定に、多くの自治体が意欲を示している。これは、都方針で、街並み景観の形成のために活用することが示されているが、世田谷区では、住環境保全策として、純粋に高さの上限を設けたいという意図が感じられる。
5)地区計画を見直しの原則とする
都方針で最も注目されるのが、用途地域等の変更にあたっては、必要な事項を原則として地区計画に定める(但し、容積率や建ぺい率の低減や、地形地物による用途地域の変更などは除く)とした、「地区計画の原則化」である。これを、文面通り受け取れば、用途地域等見直しは、対象地域の地区計画なしにはできないと解釈できる。
しかし、今回の見直しでは、解釈の厳格さは、自治体により異なる。世田谷区や府中市は、かなり厳格に対応するように思われる。一方で、今後は、地区計画の策定を用途地域等見直しの原則とするが、今回の見直しでは、前回の見直し以降の課題に、地区計画とは無関係に対応するとしている自治体が多いようだ。
また、注意が必要なのは、地区計画と言っても、規制強化型ばかりでなく、規制緩和型のものも含まれるということである。この辺りの明確な記述は見られないが、用途地域を緩和する際に策定する地区計画は、規制緩和型のものであろう。2002年改正の都市計画法で導入された、都市計画の民間提案を活用すれば、民間ディベロッパーが自分たちの企画にあった地区計画を提案してくる可能性がある。実際に、狛江市方針では、民間事業者主導で作った地区計画が、事例として紹介されている。
「地区計画の原則化」に伴って、今後は、従来のような一斉見直しでなく、「適時適切な見直し」を行うことも、都方針に謳われている。「地区計画の原則化」が、今後の用途地域等見直しの基本ルールとなることは確かだと思われるので、各自治体がその意味をどのように解釈しているのかを、担当課に確認することが必要である。
用途地域等見直し素案の事例
大田区では、すでに素案が都市計画審議会で議決され、杉並区でも、素案の中間報告が都市計画審議会でなされている。大田区の場合は、6ヶ所の見直しがあるが、鉄道の立体交差化や交通結節点の整備などに伴う見直しが主であり、区方針に沿った形となっている。杉並区の場合も、6ヶ所の見直しがあり、業務・商業等の拠点を都市マスに沿って形成する内容となっている。また、杉並区の場合は、住居系の7つの用途地域について、敷地面積の最低規模を指定することとしている。
両区で対照的なのは、都市計画審議会における、情報提供の仕方である。大田区は、見直し箇所のみを載せているのに対し、杉並区は、区長と区議会に対して出された全ての見直し要望を一覧にし、対応しなかったものについても、その理由が記載してある。
「建築確認型総合設計制度」の適用除外
用途地域等見直しの方針に出てくる事項ではないが、2002年改正の建築基準法で導入された(第52条第7項)、一定の空地を確保し、一定の住宅用途を含んだ建築物に対して、容積率が建築確認だけで緩和できる(但し、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域、近隣商業地域、商業地域、準工業地域だけが対象)、いわゆる「建築確認型総合設計制度」についても、自治体の都市計画審議会で議題となっているので、紹介しておきたい。
東京ランポが入手している範囲では、杉並区と府中市で、自治体内全域を、当面はこの制度の適用除外とする旨の方針が示されている。杉並区では、その理由も文書で示されており、「これが適用されると周辺居住環境に与える影響度合いも少なくない。また、商業系の用途地域内でも、住宅系の建築物のみの緩和のため既存の商店から共同住宅への用途転用が進みかねず、業務・商業機能の活性化を阻害する恐れもある。」となっている。
(東京ランポスタッフ・庄嶋 孝広)
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