東京都「身近な都市再生のための新たな仕組み」への意見 2002.8.16

東京ランポ


 『東京の新しい都市づくりビジョン−都市再生への確かな道筋−』(2001年10月)の目玉でもあり、今回の『身近な都市再生のための新たな仕組み』でも提案されている、「街区再編プログラム」について、以下に4点ほど意見を述べます。

(1)街区再編が必ずしもよい市街地をつくるとは限らない
 「街区再編プログラム」は、イメージ図にもあるように、敷地が細分化し建て詰まった地域において、小規模敷地を統合して建て替えを進めるものです。確かに、空地や道路空間が確保され、防災上の危険が軽減するといった効果はあると思われます。
 しかし、低層の建物に狭い道路という組み合わせは、そこで暮らし、働いている人たち同士の交流を、日常の何気ない場面でも生み出す効果があります。顔の見える付き合いができることは、まちににぎわいをもたらし、助け合いの関係を保持し、犯罪からの安全性を高めます。一方、大型の建物にオープンスペースという組み合わせは、一見きれいなまちにはなるかもしれませんが、人とまちの距離を物理的にも精神的にも遠ざけ、活気、相互扶助、治安などの面での自律的な機能を低下させる恐れがあります。
 「街区再編プログラム」の適用にあたっては、敷地の狭さや空地、道路の少なさといった数字上での判断だけなく、コミュニティの実態を把握したうえでの判断が必要です。

(2)街区再編をビジネス街に適用する場合も慎重に
 『東京都市白書2002』(2002年7月)の125ページに、「日本橋、八重洲などの地区が、マーケットニーズに合わせた地区の更新を進めるためには、小さい敷地を統合し、街区再編を図って土地の有効・高度利用を進めることが不可欠である。」との記述があり、「街区再編プログラム」により是正すべきとの主張がなされています。
 日本橋・八重洲地区については、中央区が開催する、東京駅前地区まちづくりの懇談会や協議会を見学したことがありますが、中央区が示唆する街区再編による超高層ビル建設に対して、ビルオーナー等の地元地権者からは反対や疑問の声が多く出されていました。そのような地元合意もない地区を例にとって、「街区再編プログラム」を適用すべき地区と、狙い撃ち的に白書で断定していること自体おかしいと思いますが、ビジネス街に「街区再編プログラム」を適用する場合も、地元合意が十分なされることが要件でなくてはなりません。

(3)東京都が支援する提案のみが出されないか
 「街区再編プログラムの制度フロー」によると、今年7月の都市計画法改正で制度化された、「都市計画提案制度」の活用が組み込まれています。「都市計画提案制度」は、民間の発意を都市計画に取り入れる画期的な制度であり、それを活用するという方向性には賛成です。
 ただ、国土交通省の省令が出ていないのでまだわかりませんが、提案にあたっての挙証責任がどの程度求められるかで、提案のハードルが変わってきます。もし、提案を裏付けるきちんとした調査が必要となると、一説には数百万円の調査費がかかるとの専門家の意見もあります(C.まち計画室代表 柳沢厚氏)。ディベロッパーならいざしらず、お金をかけずにボランティアでまちづくり活動をしているような市民団体の場合、そのような大きな負担はできません。
 東京都が調査助成をするといった支援策が考えられますが、そうなると都のメガネにかなった提案だけが支援を受ける可能性があります。本当に民間の発意を活用するのであれば、都の方針に合うかどうかを問わず、自主的な提案活動ができるような支援メニューを、合わせて準備すべきです。

(4)複数の提案を合わせてよりよい提案に
 「都市計画提案制度」に関してもう1点。これは、都市計画法改正の段階(国の段階)での問題ではあるのですが、この「都市計画提案制度」は、土地所有者等の3分の2の同意があれば行政に提案できることになっています。3分の2の同意を取り付けることは大変なことなので、それだけの人数が同意した提案が重みを持つのは確かですが、完璧でないこともまた事実です。少しでもよいものに近づけるには、複数の提案を突き合わせ、共通点を見出したりしつつ、より多くの人が納得できるようなものにする必要があります(東大助教授 小泉秀樹氏)。この「街区再編プログラム」の場合に限らず、「都市計画提案制度」は、国が定めた3分の2という要件に縛られず、提案できる資格をもっと広げて運用すべきです。
 「都市計画提案制度」は、市民のまちづくりの発意が、都市計画制度のなかで公式に位置づけられた画期的な制度です。多くのまちづくりの動きに恵まれた東京都では、その市民発意をもっと活かせるよう、都独自の工夫が必要です。

特定非営利活動法人
市民活動法人 東京ランポ 職員
 庄嶋 孝広



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