資料4 密集市街地の効果的改善方策について一検討の方向−
(全文そのまま:下線は国交省による、赤字はランポによる)1 密集市街地の現状と課題
@密集市街地は、幅4m未満の細街路や行き止まり路が多いなど公共施設が未整備であるとともに、十分に按道要件を満たしていなかったり、全く按道していない小規模な敷地が多く、また、耐震性・耐火性の低い老朽木造建築物が多いなどの特徴があるが、これらの密集市街地は高度成長期を通じて形成され、その後も都市基盤が整備されずに同じ状態が続き現在にいたっている地区である。東京都の震災時の被害想定をみても、これらの地区には、地震時、火災時に人的にも物的にも大きな被害が予想され、またその影響は都市全体へ大きく及ぶと予想されることから、これによる社会的損失は大きいものと考えられており、防災上「20世紀の負の遺産」となっている。
これら整備すべき密集市街地は、全国で25,000ha(東京都、大阪府で各々約6,000ha)存在すると推計されており、東京・大阪圏には都心周辺部を中心に分布している。
A密集市街地の住民は、小規模・高齢者世帯が比較的多く、自宅やその周辺の災害に対する安全性、住環境は劣っていると感じているものの、利便性に優れ、その地域に住み続けたいという意向が強い。また、建て替えに対する意向は低い状態にあるが、自宅を建て替える場合にも現在居住している戸建て住宅に建て替える希望が多く、総じて現状からの大きな変化を望まない傾向にある。
Bこれらの地区は、土地建物に関する権利が細分化し、かつ、既存不適格建築物や建替え困難な敷地が多く存在するなど整備を行うには困難な条件が多い。一方、経済状況等から空家・空地が発生するなど地区を改善させる要因も出てきている。
これまでも密集市街地の改善のため、様々な取り組みが行われてきている。
ア 市や区が住民による協議会を設立し、これが行政と住民との橋渡しの役割を果たしながら、避難路、小公園の整備が行われるとともに、土地所有者の協力により細街路の拡幅・隅切り等を漸次行ってきているものが多い。(東京都では、約2,600haの防災再開発纏進地区で主に取り組まれている。)
イ ー方、市街地再開発事業等の面的整備手法を活用し全面的な整備を行うことにより、防災拠点として整備し地域防災性を大きく向上させる方法もとられてきている。しかしながら、全面的な改造は、地域が大きく変化するとともに、膨大な公共負担も必要となることから、現下の厳しい財政事情から、これらの事業量は低下する傾向にある。(例えば、東京都施行の10ha以上の市街地再開発事業は、全て昭和40年代後半から50年代に都市計画決定されたもので、かなりの進捗をみている。)
ウ 近年では、土地所有者等が自らの発意により共同建替えし、少ない事業費で短期間に改善が図られる例が出てきている。
エ 密集市街地内に街路が整備され、沿道に耐火性の高い民間建築物が建築されることにより、避難路の整備と延焼防止性能を向上させる方策も講じられている。
今後は、ウ、エのような民間を主体とした効率的な整備手段の活用が増加していくことが考えられる。
2 今後の密集市街地の改善の基本的方向
@防災性確保のための目標の明確化
密集市街地の存在が都市全体へ大きな影響を与えうることに鑑み、その防災性向上を図るためには、防災性能を重視した明確な目標設定を行い、この目的を達成するのに必要な施策を重点的におこなうべきではないか。(例えば、地区の火災危険度を示す不燃領域率*その他の防災機能の目標数値(例 全ての地区を40%以上とする)を定め、この達成を図るために重点的に改善すべき地域に各種施策を講じるべきではないか。)
*不燃領域率‥一定の空地と耐火建築物等の敷地の合計面積の地区面積に対する比率
A厳しい財政事情を踏まえた効率的・重点的整備
密集市街地を全面改造して整備するには膨大な公共投資が必要(仮に東京都の整備すべき密集市街地6,000haを全面改造型の土地区画整理事業を行うとして試算すれば約18兆円(30億円/ha)の投資が必要)であり、国、地方公共団体の財改状況が厳く、効率的な公共投資の実施が求められている中では、事実上これによる整備は極めて困難であると考えられる。
このため、できるだけ少ない投資で最大限の効果をもたらすよう防災上の観点からメリハリをつけて公共投資を行うべきではないか。この場合、公共投資に合わせ民間投資を誘発する効果の高い手法を用いるべきではないか。
(例えば、密集市街地内の避難路、延焼遮断帯となる都市計画道路の整備や工場跡地等の低利用地の活用等を重点的に行い、これと一体に民間中心での沿道・周辺の不燃市街地の形成を誘導促進する手法を講じるべきではないか。)
B住民主体の防災まちづくりの推進
防災性の高いまちづくりを進めるため、住民により構成されるまちづくり協議会が結成され、これを中心に計画している地区が多くあるとともに、これら住民によるまちづくりを支援するまちづくり公社(現在、東京都でこれに類するものを含め15ある。)やNPO等の活動も多く見られるところである。
密集市街地の防災性の向上を効果的に図るためには、公共のみが事業を実施する磨けではなく、住民が主体となって合意・連携しながらまちづくりに取り組み、これと公共事業や公共からの支援を有機的に組み合わせることが必要である。このため、住民が主体となってまちづくりに取り組むことができる体制を整備するとともに、住民のニーズに対応した多様なまちづくりのための支援ツールを用意しておくことが重要ではないか。(例えば、住民によるまちづくり協議会が中心となって計画を調整できる体制を整備するとともに、地権者が行う敷地・建物の共同化、防災に資する建替え・セットバックによる道路空間の形成等の活動を促進するべきではないか。)
3 検討の方向
以上の考え方を踏まえると、密集市街地の防災性の向上を効率的に実現するため、密集市街地全体を早急に全面改善することではなく、都市構造の観点から必要な延焼遮断機能・避難機能を確保すべき地域への重点的に整備を行い、あわせて「自らのまちは自ら守る」という意識の下、住民主体の防災まちづくりを促進することを中心とすることが必要ではないか。
(1)公共による重点的整備と民間活力活用による防災環境軸の整備等による防災性向上
@密集市街地内の都市計画道路等の集中整備と沿道市街地の一体整備(別紙1)
密集市街地内において、道路・公園等の公共施設が整備されることは、その沿道地域に民間建築活動が誘発され、不燃化が進み、延焼遮断機能、避難路機能が確保された防災及び環境機能を持つ軸が形成されることにつながり、密集市街地の防災性を大きく向上させることが可能となる。現在、密集市街地には都市計画決定済みにもかかわらず未整備の都市計画道路が存在しており、これらの道路を中心に交通ネットワークの観点だけでなく市街地の防災性の向上を図る観点から整備促進し、この沿道に不燃化された市街地の形成をあわせて行う「防災環境軸」の整備が必要である。
このうち、特に災害危険性の高い密集市街地に存する防災環境軸の緊急整備の投資の重点化を図るべきではないか。
これら防災環境軸の緊急整備を推進するため、次のような措置を検討すべきではないか。
ア 地方公共団体による整備方針、整備プログラムの策定
住民と協議しつつ整備目標、整備区域、整備手法・手順等を明らかにし、これらの内容について地域防災計画や防災再開発方針等で位置付ける。
イ 各種事業の総合的かつ集中的実施
密集市街地において、防災環境軸の基となる都市計画道路を集中的に整備するほか、街路と沿道市街地を一体的に整備する土地区画整理事業や市街地再開発事業、また公園整備事業、都市防災不燃化促進事業、密集住宅市街地整備促進事業、従前居住者用住宅制度等の各種事業をちくの状況に応じ有機的に組み合わせながら集中して実施する。
ウ 沿道の不燃市街地形成誘導
沿道においては、防火地域や最低限高度地区等の指定により延焼遮断性能を確保するほか、不燃市街地の形成に資する民間の建築活動を誘発するため、公共施設の整備に応じた容積率を明示する誘導容積型地区計画や総合設計制度等の積極的な応用を図るとともに、各種事業による公的支援の内容の事前明示を行う。
エ 防災環境軸整備に資する面整備事業制度等の改善
密集市街地は、一般に敷地が狭小であるため、まとまったオープンスペースを確保したり、高度利用された不燃市街地を形成するためには、土地の整序、集約化、共同化を促進する必要がある。このためには、地方公共団体による事業実施だけではなく、土地所有者や民間企業等が自らの建築活動にあわせて取り組むことができるようにする必要がある。
このため、土地区画整理事業においては、事業を契機として敷地の共同化を図り、市街地環境の改善と土地の高度利用が促進されるような新しい換地制度の創設を図る。また、民間主体による面整備を促進するため、組合等施行土地区画整理事業に対する無利子融資制度を既成市街地に拡大するほか、第二種市街地再開発事業の施行主体に一定の要件を満たす民間主体を新たに追加すること等を検討するとともに、民間建築へ不燃化助成を行う都市防災不燃化促進事業の拡充等の措置を行う。
さらに、防災環境軸の整備にあわせて、内部市街地の権利者を防災環境軸において高度利用が図られる地区へ移転促進するなどにより、内部市街地に空地を確保し改善効果を波及させるような方策についても今後検討する。
A発生する工場跡地、統合による学校跡地等の活用(別紙2)
わが国の経済構造や人口構造の変化等から、今後密集市街地にある工場の遊休化や小中学校の統合化による跡地の発生等が予想される。上記の都市計画道路等を基とした防災環境軸を補完するため、これらの土地を単なる開発ではなくオープンスペースや不燃空間を形成し、地域の防災性向上につなげるよう活用する必要がある。具体的には、開発にあわせ防災拠点機能を有する公園・広場の整備、周辺の密集市街地で整備すべき道路等に係る地権者の代替地・代替住宅の提供等、密集市街地整備に資する活用を誘導するため、民間事業者への支援措置の実施や都市計画制度等の活用をおこなうべきではないか。
また、これらの土地の交換や敷地・道路形状の再編を敷地整序型土地区画整理事業の活用を図ることなどにより実現すべきではないか。
B防災公園街区整備事業、緑化重点地区整備事業の活用
密集市街地で防災に資する公園を地域の実情に即して整備するため、地方公共団体の要請に応じ工場跡地等を活用して都市基盤整備公団のノウハウにより防災公園の整備とあわせて不燃市街地の整備を行う防災公園街区整備事業や複数の小規模な公園を緊急に整備する緑化重点地区整備事業を積極的に活用すべきではないか。
C敷地の細分化防止策
密集市街地において、いくら防災性の向上を図るための政策を推進しても、一方から敷地規模の細分化が進むようでは全体としては防災性向上は進展しない。また、密集市街地周辺の地域においてもいわゆるミニ戸建て開発の形で土地の細分化が行われ、地域の防災性・居住環境の悪化を進展させている実態もある。このため、建築物の敷地面積の最低限について、密集市街地等への適用を普及する方策を講ずるづべきではないか。
D都市基盤整備公団等の活用
密集市街地の整備は、集中して人手がかかる事業であり、土地の交換・整形、建物の共同化のコンサルティング、民間活力を引き出す条件整備、各種事業のノウハウの発拝が必要となることから、必ずしも地方公共団体のみでは対応できない場合がある。このため、密集市街地の整備を円滑に推進するため、都市基盤整備公団等技術力・ノウハウを有する組織の適切な活用を図るべきではないか。
(2)住民主体の防災まちづくりの推進
@地区防災性能の公表等による住民意識の高揚(別紙3)
住民が自らまちの問題点を把握することが、住民によるまちづくりの出発点である。このため、地方公共団体はGISを活用してビジュアルに地区の防災性能の評価を行い、わかりやすく住民に公表するとともに、効果的な改善方策について地方公共団体とGISの図上で対話型まちづくり計画を行う手法の確立を図るべきではないか。
A住民主体のまちづくり推進体制の整備
現在、密集市街地の整備において、住民によるまちづくり協議会が多く結成されてはいるが、まちづくり協議会自らが住民間を調整し事業を推進しているものが多いとはまだ言えない状況にある。まちづくり協議会の推進調整能力を高めるため、これを支援するNPOの活用やコーディネータの派遣等の技術的支援を強化すべきではないか。
また、計画的な防災まちづくりを進めるためには住民発意による防災街区整備地区計画の活用拡大を図ることが有効であり、地域の状況に応じ当該地区計画について整備方針と地区整備計画を二段階で行う方式の活用や準耐火建築物の建設誘導を推進するほか、あわせて斜線制限等の特例を適用できる街並み誘導型地区計画との併用を可能とする制度改正も行うべきではないか。
B住民等による都市計画の提案制度の導入
密集市街地における住民の主体的なまちづくりを実現していくため、前回分科会で示されたような住民等による都市計画の提案制度の導入についても、積極的に活用するべきではないか。
C地権者等の意向に対応しうる多様なまちづくりツールの整備
地区全体の整備方向に合う形で個々の地権者等が単独であるいは複数連携して地区の状況に応じ防災性向上に資する建築活動、地区整備を行えるようにし、これを積み重ねていくことが密集市街地の防災性向上にとって有効である。これらの活動を適切に助長できるよう、活用しうる各種事業手法や都市計画制度等の多様なまちづくりツールの内容について地権者等に周知するなど条件整備が必要ではないか。例えば、上物整備事業(密集住宅市街地整備促進事業等)と基盤整備事業(区画整理事業)の一体施行や建替事業にあわせた柔軟な敷地整序手法、連担建築物設計制度の活用促進等を図るための運用指針、事例集の策定・普及などが考えられる。
また、耐震基準に合わない住宅が多く存在し、阪神淡路大震災でみたように建物の倒壊で多くの方が犠牲になり、道路の閉塞で救助活動が遅れた実態があった。このため、建物の耐震改修促進のための支援の強化を行うとともに、敷地の接道義務の例外措置に係る特定行政庁の許可制度の活用等地域の環境を保ちながら建替えを可能とする運用を工夫すべきではないか。
(3)密集市街地整備推進体制の整備
密集市街地の整備は、ひとつの事業手法で整備ができるものでなく、様々な政策ツールを多様に活用することによって実施できるものである。また、高齢者福祉や中小企業者・商店街振興とあわせた対策も求められる。このため、地方公共団体が地域の多様なニーズに応えつつ地域の防災安全性を高めるため、都市計画、街路、市街地整備、住宅、福祉、商業振興等部局が連携して対応できる体制の整備が必要ではないか。
さらに、地方公共団体や住民に加えて、これらを支援するNPOや専門家の活用が地域の向上に期待されることから、住民のまちづくり活動に対するNPO、専門家の派遣システム及びこれを支援する体制づくりをこんご検討すべきではないか。
社会資本整備審議会第4回都市計画分科会議事録(国土交通省)
http://www.mlit.go.jp/singikai/infra/city_planning/4/images/011121.pdf
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