テーマ4:既成市街地の新たな整備手法
課題 従来の既成市街地の整備手法の課題
<行政施行の課題> 都道府県・市町村等による施行
・
事業目的に公共性があり、かつ行政の発意で事業を実施するため、施行者と地権者が対立的
関係になりがち(地権者は事業に対して受け身の姿勢)
・ 個々の地権者からの過度な要求のため、調整が長期化
・
一律の基準で地権者への補償を行うなどにより、事業費が高騰し、公共負担が大
・ 例えば、密集度の高い地区での土地区画整理事業は30億円/ha程度の公共負担
・
結果として、行政施行の実施は、駅前広場や幹線道路の整備を伴うなど、公共性が極めて高い
ものに限定
<民間施行の課題> 個人、組合、会社等による施行
・ 民間は、自らの開発利益の観点で事業を発意
・
行政は、自らが施行する場合と比べて、駅前広場や幹線道路の整備を伴うなど公共性の高い
民間施行に対して、十分な支援を行っていない
・
結果として、民間施行が成立するのは開発ポテンシャルが極めて高いものに限定
↓
・
行政施行は公共性が極めて高いもの、民間施行は開発ポテンシャルがきわめて高いものしか
実施されていない
・
課題がありながら市街地整備が十分行われていない領域(要整備区域)が広く残されている
提案 今後の既成市街地の整備方針
<基本理念>
・
民間による施行が可能なものは、民間の有するノウハウ、資金力、機動性を最大限活用し、限
られた財源で、広大に残された要整備地域を効率的に整備
・
行政は、民間施行の事業に対し、幹線道路等の整備、都市のコンパクト化などの公共性の高さ
に着目した財政支援や規制緩和などの支援を制度化することにより、事業化を促す施策を展開
・
行政施行は、従来どおり、駅前広場や幹線道路の整備を伴うなど公共性が極めて高いものに
限定して事業を実施
・
公共性が高くても、ポテンシャルが高く、民間の発意があるものは、民間により施行
<行政の支援による民間施行喚起の基本方針>
以下の方針で、行政は民間施行が実施されるよう、条件整備
・
公共的貢献に応じて、貢献が大きいほど行政は手厚く支援を実施
・
支援内容は、地区のポテンシャルの高い地区は規制緩和を中心に、低い地区は財政支援を中
心に支援を行う
・
支援内容は予め分かり易く明示(どのような地域で、どのような支援内容を提示するかは、地域
の事業立ち上げ意欲及び公共の負担額に影響するので極めて重要)
・
行政による支援内容を前提に、地域が環境整備を行いたいという自主的な発意に対して、行政
は事業の初期段階において立ち上げを支援
・ 必要に応じて、民間発意による都市計画提案制度を活用
・
地域環境に課題があっても地域住民に自主的な発意がなければ、基本的に行政は関与しない
(結果として事業が立ち上がらなくても是とする)
・
区画道路の設定など広域的でない地域の整備水準は、行政が一律に決めず、地域住民が選
択
テーマ3:道路交通対策の施策領域の拡大
背景
・
明治以降、都市の幹線道路は市街鉄道(路面電車)の敷設を意識して、計画・整備が進めら
れ、大都市圏だけではなく、地方都市圏においても路面電車が都市交通の主役となった。
・
その後、モータリゼーションの進展に伴い、道路混雑の激化、道路空間の制約、利用者の減少
などによって、路面電車は廃止され、輸送量の多い路線は地下鉄に、少ない路線はバスに置換
が進んだ。
・
路線バスの円滑な走行のためバス専用レーン等の設置が進められたが、バス路線全体のごく
一部にすぎない。渋滞にまきこまれるバスは、自家用車に客を奪われ、路線バスの輸送人員は
減少傾向。
・
自動車交通からの利用転換により道路交通を円滑化するため、都市モノレール、新交通システ
ム及び路面電車の整備について、道路整備の一環として推進している。しかし、これらの準備に
当たっては、導入空間確保のための道路拡幅が必要な場合があり、それが実現に当たっての
障害となっている事例が多い。
・
わが国においては、公共交通事業者は乗客からの運賃収入で運営に必要な経費を独立採算で
まかなうのが基本であり、公共交通事業者のみの努力では、望ましいモビリティ実現の観点から
高いサービス水準を確保して、利用促進を図る戦略がとりにくい。
・
交通事業者は利用者の減少により採算が悪化すると、運行頻度の低下、料金値上げ等サービ
ス水準の低下→利用者の減少という悪循環に陥りやすい。
・
公共交通機関の便益を活かし、コンパクトな市街地を形成するためには、主要な交通結節点の
周辺において土地の有効・高度利用を進め、多様な都市機能の導入を図ることが望ましい。し
かし、道路等の都市基盤施設の遅れ等により、駅周辺にふさわしい土地利用が進んでいない地
区も見られる。
提案
1.コンパクトな市街地形成を支える上で重要な交通軸については、公共交通機関の導入空間の
確保を前提とした道路整備を進めるとともに、沿道市街地の再編整備を推進し、望ましい都市
構造の実現を図る。
2.円滑で快適なモビリティを確保し、コンパクトな都市形成を誘導する上で必要となる公共交通機
関については、一定のサービス水準での持続的運営が可能となるよう、土地利用の計画的誘
導や乗り継ぎ利便性の向上等により公共交通機関利用を積極的に促進する。
また、採算性の制約から期待されるサービス水準の確保が困難な場合には、当該公共交通機
関の便益を的確に評価した上で公的助成を行う。
3.主要な交通結節点などポテンシャルの高い地区において、コンパクトな市街地の形成を促進す
るとともに、公共交通機関の利用促進を図るために、都市機能の集積や土地の有効・高度利
用をより一層促進する必要がある。
このため、空間を立体的に利用した乗換利便施設や歩行者通路等の整備と併せて、駅前広
場や周辺街路等の都市施設の一体的な整備を図り、利便性の高い拠点市街地の形成を図
る。
テーマ5:事業の進め方の改編
背景1(都市内道路整備の遅れ)
・
都市計画道路は、将来の都市像、市街地像や交通条件に応じて、合理的なネットワークを形成
するように、都市計画決定してきたもの。都市によっては、戦前に遡ることもできる長期の計画。
・ 戦災復興時、新都市計画法施行前後(昭和43年頃)や大規模な事業の計画策定時などにおい
て、道路網計画を見直しながら、計画・事業を進めてきた。
・
市街地の拡大に伴い、整備が必要な事業量が急激に膨張したのに対して、事業費が十分に確
保できなかったことから、圧倒的に整備が遅れ、未整備のものも多い。
・
今後の投資余力の減少に鑑みると、一層の効果的・効率的整備が必要。
背景2(事業実施上の課題)
・
事業に関係する市民の要求が多様化しており、円滑に事業を進めるためには、これらの多様な
要求を調整することが必要。
・
効率的・効果的な事業のためには、可能な限り早期に整備効果を発現させるとともに、完了後
の道路の使われ方も重要。
・
都市化が進展している状況下の都市整備においては、行政が主導的立場にたって、計画や事
業を進めてきたが、近年、行政と民間が連携して良好な地域社会を実現しようとする機運が芽
生えてきている。
提案1
効果的、効率的な都市内道路整備を推進するためには、当該道路の機能に応じて、計画、整
備、運用の方策を変えることが必要。
○ トラフィック機能重視道路については、
・
将来の都市像を実現する観点や自動車交通を円滑に処理する観点から、都市計画マスタープ
ランに位置づけ。
・
このマスタープランに基づき、行政がルートや車線数を決め、所定の手続きを経て、都市計画決
定することが基本。
・
当該道路に事業の重点化を図り、効果的な網形成を図るために必要な分析、評価を行い、事
業着手。
・
整備に当たっては、停車帯を設けず、駐車場の出入り口や区画道路との交差点を極力少なくす
るために、周辺区画道路も含めた沿道市街地の面的な整備を実施。
・
沿道市街地との一体的な整備や歩道空間等の柔軟な計画・設計について、市民参加を促進。
・
整備後も、関係者と連携して、道路の使われ方を自動車交通を円滑に処理するように維持。
《参考》市民参加による道路の設計の例:調布保谷線(東京都)
調布保谷線は、多摩地区の南北幹線道路の一つで、周辺環境に配慮して幅員16mの車道(4
車線)の両側に10mずつの環境施設帯を設け、総幅員36mの道路として計画。このうち、約
2,200mの区間の環境施設帯の整備に当たって、市民参加による道づくりを試行したもの。
(概要)
・ 幅員36mの現在の都市計画決定を前提。検討の対象(環境施設帯の設計)をあらかじめ明
示。
・
東京都が計画の決定機関であること及び全体の検討スケジュール(平成13年度内の1年間
で全体ゾーニング決定。平成14年9月中旬までに総まとめ)をあらかじめ明示。
・ 東京都、地元2市、市民(公募)及びまちづくりの専門家等で構成する協議会を設置。
・
協議会の運営は、形式ばらずに開かれたものとし、市民の意見を反映するまちづくりの専門
家による会の進行。ワークショップなどの手法の活用。
(評価)
・
都市計画決定の際に反対者が多かったにもかかわらず、平成11年度より並行して進めてい
る用地買収が順調に進捗し、予定どおり平成17年度完了予定。
・
立木処理を補償によらず、購入木とすることによって、シンボルツリーとして保存。
・ 都及び市職員はのべ216人時間。
・ 費用約1千万円。
「テーマ1:都市内道路の機能分化」への追加提案
トラフィック機能重視道路については、自動車を円滑に流す機能を大きく阻害する路上の駐停
車対策を徹底。
具体的には、
@ 交通管理者と連携した違法駐停車の取り締まりの強化
A 沿道建築物に係る荷捌きの処理→アクセス機能重視道路
B 駐車場整備と停車の処理
⇒テーマ2:駐車場政策の充実
■ 路上駐車による交通容量の減少
通常6〜6.5m幅員(4車線の片側2車線分)の道路に路上駐車があった場合、有効幅員が
約2m減少することによって、実質1車線の運用になる。
「テーマ2:駐車場政策の充実」への追加提案
1.トラフィック機能優先道路の停車をなくすため、短時間の駐車(概ね30分)を積極的に路外
駐車場に誘導する。
2.このため、新たな施設整備だけでなく、既設の民間駐車場なども活用する。この施策は、道
路機能の一部を担うものであるから、必要となる費用については、道路整備の一環として負
担。
■ 短時間駐車対策の例
路上駐車減少策として、試験的に大阪駅前駐車場及び桜橋駐車場において、平日の短時
間駐車(30分)を無料とした(平成10年では一部の期間、平成11年1月から継続中)。その結
果、路上駐車台数は徐々に減少している。
○ アクセス機能重視道路については、
・
沿道の建物等への出入り、荷捌きを処理する観点だけでなく、利用者、受益者が一定の広がり
に限定される場合が多いことや地域の生活環境の改善に直結していることから、地区レベルの
住民(含企業等)が主体的に計画することが基本。
・
当該道路の整備は、地域の協力を得ながら民間都市開発と連携して、地方公共団体が整備を
進める。このうち、優良な民間都市開発の誘発や木造密集市街地の解消など都市再生に資す
るものについては、重点的に整備。
・
このような過程を通じて、私的(沿道)空間と公共(道路)空間の連携、一体化を実現するととも
に、公共空間とセットバック空間などの準公共空間を地区全体で民間が維持、管理。
・
中心市街地においては、歩行者や自転車の空間とアクセス機能重視道路の空間を融合させ、
にぎわいを演出。駐車場政策と連動して、駐車場の出入り口の集約整備と一体管理を実現。
《参考》市民参加の例:北彩都あさひかわ(北海道旭川市)
当該事業は、約86haの土地区画整理事業及び鉄道の高架化を行う事業で、平成6年度より全
体事業を調整するために、学識経験者、北海道、旭川市等で構成する「まちづくり推進会議」を
設置。平成10・11年度には公募による市民20人と旭川市による意見交換の場として、「まちづくり
懇話会」を設置。さらに、戸建て住宅地区の地区整備計画とまちづくり協定などを協議するた
め、平成10年度に地権者、学識経験者、市で構成する「宮前地区まちづくり協議会」を設置。現
在、道路のデザイン及びまちづくり協定が決定している。
提案2
トラフィック機能重視道路における公共交通機関(路面電車、路線バス)の平面での導入【テーマ
3の提案1】については、都市構造、道路網の形状、交通条件等を考慮して、決定することになる
が、その際、次のようなことに留意することが必要である。
【トラフィック機能重視道路に公共交通を導入する場合】
・
トラフィック機能重視道路に導入する路線バスは、自動車の円滑な流れが確保されている状況
を活かして、比較的速い走行速度を維持でき、また路線長が長くても、定時制が確保されること
から、基幹的な路線が適切。
・
導入に当たっては、路面電車はもちろんのこと、路線バスについても一層のサービスレベル向
上のため、バス専用レーンといった専用の導入空間を確保することが望ましい。この場合、路面
電車については、バリアフリーや交通安全の観点からバス専用レーンのように歩道側の車線を
導入空間とすることも検討されるべきである。
・
歩道側に公共交通の専用空間を設けることは、路上の駐停車の排除も同時に実現できる可能
性があることから、自動車のトラフィック機能を十分に確保できるのであれば、積極的に導入す
ることも考えられる。
・
このような形で公共交通を導入したトラフィック機能重視道路は、都市構造上の主要な骨格軸と
なることに注意が必要。
【アクセス機能重視道路に公共交通を導入する場合】
・
アクセス機能重視道路は、沿道サービスを重視する路線で、トラフィック機能重視道路に比べ
て、交差点が多く、走行する自動車の速度が遅いことから、路線バスは、身近な交通機関として
の機能を意識して導入。
・
また、アクセス機能重視道路は、沿道市街地と一体化して機能するものであり、路上の荷捌き
や停車、駐車場の出入り口を設けることから、路面電車は中央走行となる。
・
アクセス機能重視道路は、交差点が多く、また平面交差点となるので、交差点付近の渋滞に公
共交通が巻き込まれる場合があることから、優先信号の設置によって定時制の確保に配慮。
・
地方都市の商店街通りや主要な鉄道駅の駅前通りなどは、近傍にトラフィック機能重視道路を
確保した上で、アクセス機能重視道路として公共交通を積極的に導入。
提案3
○
トラフィック機能重視道路の重点的整備を進める場合、合理的な道路網形成や交通処理上の
ボトルネックの解消を考慮して、資金計画や用地確保見込みなどを踏まえ、整備プログラムを
策定する。
○
このプログラムについては、積極的に公表することによって、事業の透明性・公平性が確保さ
れ、事業に対する市民の理解と信頼を得ることができる。また、沿道市街地との一体的整備の
機運の醸成も可能となる。
○
道路に限らず、都市計画は廃止も含めた変更を否定しているものではない。しかしながら、都
市施設に関する都市計画については、これまで、都市化の進展、市街地の拡大を前提とせざ
るを得ず、既存の計画を硬直的に扱ってきた面もある。将来の都市像、コンパクトな市街地形
成を考えれば、高密度化する中心市街地や一層低密度化する郊外市街地に応じて、追加、廃
止、現状維持など適切かつ早急に都市計画道路を見直すべきである。
提案4
○
都市内道路と沿道市街地や区画道路を一体的に整備するとともに、街区内の残留希望や土
地の共同化などの地権者の意向に柔軟に対応できるよう、面的な整備手法の充実を図る。
○
このうち、特に緊急を要する事業については、事業期間を明示した詳細な事業計画を策定・公
表し、事業実施。この他の事業については、事業区域内の民間の建築活動と連携して、移転
補償費を軽減。
○
市民が主体となった計画、事業、使い方や管理を推進するために、行政は的確に情報を提供
するとともに、相互の信頼感の醸成と市民の自主性の尊重に留意しつつ、専門家の派遣等に
より市民参加を促進することが必要である。
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