1. 都市を取り巻く経済社会の動向
(1) 都市化の進展
◎
高度成長期以降の産業構造の変化に伴い、都市人口及び市街地の拡大が急速に進んだ。
@
産業構造が農業等の第一次産業を中心とするものから、工業、商業、サービス業等の第二
次産業、第三次産業を中心へと変化してきた。
A
この産業構造の変化、特に第三次産業就業者の増加に伴って、都市へ人口集中が急速に
進み、市街地も急激に拡大した。この際、市街地の人口密度は低下した。
(2) 市街地の外延化
◎
都市への急速な人口集中は、市街地の拡大・外延化をもたらし、薄く広がった市街地が形成さ
れた。
@
高度成長期の都市集中によって、市街地が急激に拡大した。近年、拡大の勢いは弱くなって
いる。
A
東京とニューヨークの人口密度を比較すると、東京は中心部で低く周辺部で高く、薄く広がっ
た市街地を形成している。
(3) 交通負荷の大きな都市構造
◎
日本の都市は都心部の昼夜間人口比が高く、都心部に通勤・通学交通が集中する都市構造
をもつ。
@
東京と世界の各都市を比較すると、東京は中心部の夜間人口密度が低く、昼間就業人口密
度が高い。経年変化をみると、東京の夜間人口密度は低下しており、昼間就業人口は中心
部で減少しているものの、周辺部では増加している。
A
夜間人口と昼間就業人口のバランスをみると、諸外国の都市が昼夜間人口比が低下してい
るにもかかわらず、東京は増大している。
(4) 交通施設整備と市街地の拡大
◎
交通施設の整備と市街地拡大は連動している。特に、都市鉄道の整備は居住人口の増加に
大きく寄与する。
・
福岡県における交通施設整備と都市化の動向を分析すると、鉄軌道(博多南線、地下鉄、モ
ノレール)の整備により居住人口の増加が見られる。また、高速道路や国道バイパス等の広
域道路整備により2次産業従業人口の増加が見られる。
(5) 中心市街地の活性化の必要性
◎
地方都市では市街地の拡大に伴い、中心市街地の都市機能の低下・高齢化が進んでおり、そ
の活性化が課題となっている。
@
福島市では、全市人口が増加しているにもかかわらず、都心部人口は減少している。また、
沿道郊外型店舗が増加する一方で、中心地区の店舗数は減少している。
A
全国の市を対象としたアンケートにおいて、「都市づくり、まちづくりに係る課題」として、中心
市街地問題が1位、2位を占めている。(1位=中心市街地の空洞化など商業の不振、2位=
中心市街地の人口の減少)
B
群馬県沼田市では、市全体の高齢化率に比べ、中心市街地における高齢化率が大きく上昇
している。
(6) 人口の都心回帰
◎
ここ数年、都心部への人口回帰が見られる。首都圏では転居の動機に「通勤・通学が便利に
なるため」がトップを占める。
@
東京都ではここ数年都心部への人口回帰が顕著であり、また、分譲マンション等の供給戸数
も増加している。
A
転居の動機は、「通勤・通学が便利になるため」がトップを占める。都心居住の評価も、通勤
時間の短いことや職場が近いことが評価が高い。
B
福岡市でもここ数年都心部の人口密度が高くなる傾向が見られ、都心部への人口回帰が見
られる。
(7) 都市基盤整備の歪み
◎
都市基盤整備は着実に進行しているが、オープンスペースや緑が少ないなど都市の生活環境
には改善すべき課題が多い。
@
住宅・社会資本は、着実に改善されているが、十分な水準には達していない状況である。
A
特に、都市の生活環境を支える道路や公園等のオープンスペースについては、低い水準とな
っている。
(8) 危険市街地の存在
◎
震災時の高い被害が想定される木造密集市街地が多く残っており、市民に危険認識されてい
るが、「阪神・淡路大震災」以降、高まった震災に対する意識は徐々に風化しつつある。
@
東京区部には、敷地が狭小で狭隘道路が多く、震災時の危険度が高い密集市街地が多数
存在している。
A
地域で危険と感じることとして、「木造家屋が密集していること」を上げる人が多い。一方、大
震災への不安感は減少しており、「阪神・淡路大震災」の教訓は風化しつつある。
(9) まちづくりへの住民意識の高まり
◎ まちづくりを活動としたNPOの設立など、住民のまちづくりへの関心は、近年高まってきている。
@ まちづくりの推進を活動分野とする認証NPOは、年々増加している。
A
地方公共団体も「まちづくり条例」などで住民のまちづくり活動の支援や協力、連携を図りつ
つある。
(10) 地球環境問題
◎
地球環境問題のうち地球温暖化問題は、二酸化炭素排出量の民生部門や運輸部門のシェア
が大きく、また拡大していることから、都市問題の一つとして考えるべき。
@ 日本での過去100年の地上気温は、上昇傾向にあるといえる。
A 二酸化炭素排出量は、平成2年度から平成9年度の7年間で約9%増加した。このうち、運輸
部門は約21%と大きく増加している。旅客輸送機関のうち、自動車の排出原単位が大きい。
(11) 人口減少
◎ 増加し続けてきた人口は、平成18年にピークに達した後、以降長期の人口減少過程に入る。
また、高齢化も急激に進展する。
@ 平成12年の国勢調査に基づく人口推計(中位推計)では、平成18年に1億2,774万人でピーク
に達した後、減少過程に入り、平成25年にはほぼ平成12年の人口規模に戻り、平成62年に
はおよそ1億60万人になるものと予想されている。
A 生産年齢人口は戦後一貫して増加を続けてきたが、平成7年の国勢調査以降、減少局面に
入っている。また、老年(65歳以上)人口の割合は平成12年の17.4%から平成26年には25%
に達する。その後も上昇を続け、平成62年には35.7%に達する。
(12) 投資余力の減少
◎
今後、高齢化の急激な進展によって社会保障関係費の増加が見込まれ、公共投資が大きく拡
大することは、期待できない。
・ 平成14年度予算においては、社会保障関係費の増の圧縮をおこなってもなお、大幅な公共
投資の削減が行われた。
2. 都市交通の現状と課題
(1) 人の動きの推移
◎
公共交通機関(鉄道、バス)利用及び自転車・徒歩の人の動きは、過去12年間で減少してい
る。一方、自動車利用は増加している。
・ 昭和62年から平成11年の12年間の人の動きの推移をみると、公共交通機関利用が減少し、
自転車・徒歩は、平日・休日ともに約3割と大きく減少している。一方、自動車利用は、全国平
均で増加している。
(2) 移動距離の推移
◎ 移動距離は、昭和62年から平成11年までの間、平日・休日ともに斬増傾向である。
・
全目的では、平日、休日ともに斬増傾向にある。三大都市圏の平日の通勤目的では、平成
11年には前回調査(平成4年)よりも短くなっている。しかしながら、業務目的は、都市規模に
よらず、増加する傾向にある。
(3) 交通手段分担
◎
交通手段の自動車分担率は、年々高くなっており、公共交通(鉄道、バス)の利便性の低い地
方都市ほど高い。
@
人の移動に関して交通手段分担率の推移をみると、平日、休日ともに公共交通機関の分担
率が低くなり、自動車の分担率が高くなっている。
A
平日の自動車分担率は、東京、京阪神都市圏ではほとんどの都市で40%未満であるが、地
方都市圏ではほとんどが40%以上である。
(4) 鉄道利用の現状
◎
三大都市圏の鉄道の利用率は、海外都市に比べて高い。これは、路線の整備が進んでおり、
運行頻度が高いことが理由と考えられる。しかしながら、鉄道の混雑は諸外国の都市と比較す
ると依然高い。
@ 平日1日に都心部に流入する交通手段を国際比較すると、東京は約86%が鉄道利用と諸外
国の都市に比べて、飛び抜けて高い。
A
この背景には、路線密度や運行頻度が高いことが考えられる。しかしながら、混雑率は新線
建設、複々線化といった鉄道整備や列車本数の増加、列車の長編成化等の輸送力が増加
することによって、改善されてきているが、海外諸都市と比較すると依然高い状況にある。
(5) モータリゼーションの進展
◎
経済の発展とともに、自動車利用は拡大しており、物流においても自動車輸送は中心的手段と
なっている。
@
経済の発展とともに運転免許保有者数、自動車保有台数は依然として堅調に伸びており、こ
れに伴って自動車走行台キロも大きく伸びている。
A 物流においても自動車利用は、拡大しており、平成11年度は総量の約55%(トンキロベース)
を担っている。特に、野菜、果物、水産品、日用品等日常生活に必要な主要品目の輸送の
ほとんどを自動車輸送が担っている。
(6) 高齢者及び女性の自動車利用の拡大
◎
高齢者及び女性の自動車利用は、平日・休日ともに全国的に拡大している。
@ 高齢者1人あたりの動きをみると、三大都市圏でやや増加し、地方都市圏では減少傾向にあ
る。また、自動車利用は、平日・休日ともに全国的に拡大している。
A 女性の1人あたりの動きをみると、全国的に減少しているが、自動車利用は平日・休日ともに
拡大している。
(7) 交通混雑の慢性化
◎
都市部の交通混雑は、これまで道路整備が講じられてきたにもかかわらず、依然として厳しい
状況である。
@
自動車交通量の伸びが道路整備の伸びを上回っているため、混雑は年々激しくなっている。
A
各都市におけるピーク時(混雑時)の自動車の走行平均速度は、交通量の増大が著しいこと
から、ほとんど改善されていない。
(8) バス利用者の減少
◎
乗合バスの輸送人員は、地下鉄等の整備や激しい道路混雑による運行速度の低下や定時運
行の困難などによって、長期的低落傾向にある。
@ 乗合バスの輸送人員は、平成12年度まで一貫して減少している。また、平均輸送距離は増
加傾向にあり、平成12年度には輸送人キロが増加に転じたが、これは高速バス輸送が好調
で輸送量を伸ばしているためである。
A
東京都内の場合、バス停の密度は高いが、バス利用者は減少傾向にある。その理由は、地
下鉄の整備の進展とともに、走行速度の低下が原因と考えられる。
(9) 道路交通環境問題
◎
自動車から排出される汚染物質に関する環境基準が達成されていない地域や騒音の環境基
準を達成できない幹線道路路線が、依然として多く残っている。
@
自動車から排出される窒素酸化物や粒子状物質によって、環境基準が達成できない地域が
大都市を中心に多く存在する。特に、ディーゼル車からの排出ガスは、大きな社会問題にな
っている。
A
幹線道路の沿道における騒音についても、環境基準を未達成の地点が依然として多い。
(10) 市街地を通過する普通貨物車
◎
物流を担う幹線道路網の形成が不十分なため、市街地内を多数の貨物車が通過している。ま
た、都心の一般道も普通貨物は利用している。
・
普通(大型)貨物車の交通量をみると、首都高速道路が物流の中心を担っていることがわか
る。一般道では環状7号線や8号線などの交通量が多い。しかしながら、環状7号線の内側や
首都高速環状線の内側の一般道でも交通量が4,000台/12時間を超える区間があり、沿道
環境の悪化の一因になっている。
(11) 都市内道路に対するニーズ
◎
世論調査によると、都市交通の問題点として、道路渋滞や駐車場の不足が上位を占める。ま
た、居住地周辺の社会資本整備の要望は、道路が1位である。
@ 平成11年8月に実施された世論調査によると、都市内の交通に関して、現在の問題点を聞い
たところ、「自動車を利用する際に、道路渋滞に悩まされる」を挙げた者の割合が約45%、
「駐車場が少ない」を挙げた者の割合が約44%と高い。都市規模別にみると、50万人以上の
都市(東京都区部、政令指定市を除く)で「駐車場が少ない」を挙げた者の割合が、東京都区
部で「自転車道や駅前などの駐輪場が不足しており、自転車での移動に不便を感じる」を挙
げた者の割合が高くなっている。
A
住宅地周辺の社会的な施設で特に整備してほしいものを聞いたところ、「道路」を挙げた者の
割合が約29%と最も高い。昭和56年2月から平成10年6月(今回)までの5回の世論調査の全
てにおいて、「道路」を挙げる者の割合が最も高くなっている。
(12) 都市計画道路の整備状況
◎ 都市計画に定められた幹線道路のうち、約51%が改良済みで、現在の事業ペースでは完成ま
でに60年以上を要する。
@ 都市計画道路の過去10年間の整備状況の変化をみると、改良率は年平均で約0.7%高くなっ
ているに過ぎず、このまま推移すれば、全てを完成させるのに60年以上を要する。
A
地域別にみると、地方中枢都市の既成市街地の改良率が高く、大都市近郊が低い。
(13) 市街地の道路整備の状況
◎
市街地内の道路の状況は、未だ十分に整備されたものとは言い難い。
@ 東京都下の都市計画道路の整備率は、平成13年度末で約53%と全国平均よりも若干高い。
このうち、主要な幹線道路網の整備状況をみると、未整備の区間が散在しており、ネットワー
クとしての機能を十分に果たせない状況にある。
A 東京都心部(4区)とNYのマンハッタンの道路の状況を比較すると、道路率は23%と38%であ
り、東京都心部は幹線道路や区画道路ともに未整備のものがあり、狭小な宅地が多い。
(14) ボトルネック踏切の存在
◎
踏切道は道路と鉄道が平面交差しており、重大事故の発生や交通の遮断など、多くの問題を
抱えており、その対策が緊急課題となっている。
@ 平成10年度現在、全国の踏切道数は約37,000箇所あり、昭和35年当時と比べ半減してきて
いるが、まだまだ多くの平面踏切道が残されている。
A 遮断時間や交通遮断量の多い踏切道が全国に約1,000箇所存在し、交通上のボトルネックに
なっている。東京都においてはボトルネック踏切が線上に多数存在している。
(15) 交通結節点の現状
◎
鉄道駅の「他の交通機関との連絡強化」の要望は高い一方で、駅前広場が未整備、機能が十
分でない、バリアフリー化が不十分などの問題が存在している。
@
鉄道について、今後、どのような施策に力を入れて欲しいかを調査したところ、「同種又は異
種の他の交通機関との連携の強化」を挙げた人の割合が最も高い。その一方で、駅前広場
のある駅は全体の5割にとどまっている。
A
駅周辺に、歩行者空間の不足、路上駐車、放置自転車などの問題が集中している場合があ
る。また、交通結節点の円滑な利用のため必要なバリアフリー化は、未だ約半数しか整備さ
れていない。
3. 市街地整備の現状と課題
(1) 地価の下落傾向
◎
東京の中心部は下げ止まっているが、郊外部においては依然として下落率は高い状況にあ
る。
・
東京都港区等、都心部の地価は下げ止まりつつある。しかし、郊外部については、依然とし
て高い下落率を示している。
(2) 容積充足率の状況
◎ 東京都(23区)の容積充足率(実容積率/指定容積率)は、52.2%にすぎない。
(3) 市街地に多数発生した低未利用地
◎
産業構造の変化に伴って、工場跡地が全国で発生しており、低未利用地となっている。今後
も、工場閉鎖などが予想され、低未利用地は拡大すると考えられる。
@ 通商産業省(当時)のアンケート調査(平成9年)によると、昭和60年以降の10年間で、全国で
約1,900haの、首都圏で約900haの工場跡地が発生した。また、東京都区部の低未利用地
は、約6,000haあり、このうち、都心4区では400ha前後である。
A
工場跡地は、都市整備用地として地方公共団体や都市基盤整備公団などが取得して、有効
利用してきた。しかしながら、地方公共団体の財政状況が非常に厳しいことから、民間の活
力によって有効活用を図ることが期待されている。
(4) 土地の細分化の実態
◎
敷地あたり面積は減少を続けており、土地の細分化が進んでいる。
@ 1世帯あたりの平均現住居敷地所有面積を見ると、近年鈍化傾向にはあるものの、年々減
少を続けている。
A 東京23区でみると、全ての区において敷地100u未満の割合が増加している。
(5) 市街地整備ニーズの変化
◎ 土地区画整理事業の重点は新市街地から既成市街地へシフト。
@ 全国の宅地供給量は、昭和40年代をピークに減少し、昭和60年度〜平成5年度までは横這
い状態であったが、近年はさらに減少傾向にある。
A 我が国の土地区画整理事業も、新市街地(DID外)から既成市街地(DID内)へと、事業の重
点をシフト。
(6) 既成市街地における市街地整備制度の課題
◎
既成市街地における土地区画整理事業等の全面改造型の事業は、面積あたりの事業費が高
く、また事業期間も長いなど課題が多い。
@
既成市街地における土地区画整理事業は、新市街地の事業と比べ、面積あたりの事業費が
高い。その原因としては、移転移設補償費の占める割合が高いことがあげられる。
A
既成市街地における土地区画整理事業は、地権者交渉に時間を要するなど、事業期間が長
期化。
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