参議院国土交通委員会 参考人意見 



地域社会の構築を基点とした「都市再生」を

                          2002.3.28 小泉秀樹(東京大学工学部都市工学科)

1.政府の考える都市再生の構図

  ● 民間企業(それも相当に資本力のある)によるスクラップアンドビルド型再開発を志
    向しているように見える。
     →小さい個別的更新の否定、多様なまちづくり活動の存在も殆ど視野に無い。
    ● 借地借家法改正、収用法改正、PFI、不動産証券化、株式会社による再開発
      事業(収用権付与)、提案権付与、「特区」
  ● 誰の発意によって政策が決定されてきたのか?
    ● 経企庁土地・住宅ワーキング報告→総合規制改革会議→都市再生本部及び
      都市計画分科会での検討
  ● もちろん市場に委ねるかたちで進める都市更新を一概に否定することはできない。
    しかし、そもそも都市再生とはどのような社会的状況を目指すべきものなのか?生
    産者→消費者の2局的構造のもとで、空間を大量供給し、都市の形を作り替えること
    が、本当に都市の再生につながるのか?

2.現代的な公共性概念から見た都市再生とは

  ● 社会学者ハーバーマスらにより、公共性を再解釈することが行われている。
  ● 多様な主体による発意が集積することによって実態として公共性が確保される。官、
    企業、市民(ボランタリー)の各セクターによる相互補完的な関係によって、公益が
    確保されるという考え方である。
  ● 真に公共性を有する「都市再生」の姿とは、この定義に照らせば、多様な主体の発
    意や起業の意思が、相互に補充しあいながら、一つの地域社会として、その豊かさ、
    生活の質の高さを実現すること、ということができるであろう。
  ● 都市再生は、このようなパラダイムに沿った都市政策の構造転換を積極的に展開す
    るための機会として捉えるべきである。
  ● この際、企業活動を通じた都市再生のみが強調されてきた上記の流れに対して、とり
    わけ発展途上にあるNPOなど市民セクターの育成と、政府・企業・ボランタリーセク
    ターの連携形成に重点を移すペきである。
                                                              
3.都市再生関連法案と関連施策の実施に対する意見

  ● 都市再生基本方針の策定と緊急整備地域の選定と施策の実施
    ・ 都市再生基本方針の作成と、緊急整備地域の選定にあたっては、各地域や
      市民の発意を十分に反映しつつ行うべき。
    ・ また、作成・選定過程を可能な限り透明なものとすべき。
    ・ 更に各種施策の実施過程こついて、進捗状況をモニターし評価することを通
      じて適宜見直しする仕組みを取り入れる必要がある。
    ・ 具体的には、以下の通りの対応を行うことが考えられる。
     ・ 基本方針の作成にあたってはパブリックコメントなどの意向収集手段
       を講じる。
     ・ 緊急整備地域の選定にあたっては、市民・NPOや基礎自治体に広く
       各地域における再生政策こついて提案を行うことを呼びかけ、これらの
       提案について、中立的な組織(市民・専門家などによって構成される)
       による審議に基づいて決定すべきである。
     ・ 選定地域においては、評価プログラムを確立し、必要に応じて施策に
       ついて見直しを行う。例えば、実施過程を逐次公開するとともに、各地
       域で行われる施策の内容に応じた評価指標を設定し、単年度毎の評価を
       行い、この結果とそれに対する市民意向をふまえて施策を随時修正する
       ことなどが考えられる。

  ● 緊急整備地域(都市再生特区)における都市計画の特例的緩和
    ・ 特例的緩和あたっては、当該区域内部に限らず周辺や都市全体に対する外
      部不経済について十分に配慮する必要がある。
    ・ こうした点について、積極的に情報公開を行うことを通じて、市民セクタ
      ーからの多様な発意を促すことを可能とすべきである。
    ・ 積極的な合意形成・協議こ関して実績の少ない我が国において、関連する
      技法を発展させる貴重な機会と捉え、積極的な取り組みを進めるべきであ
      る。
    ・ 具体的には、都市計画法17条の2の積極的な活用を促し、計画内容の検
      討決定の手続きにおいて、以下の事項等を取り入れる。
     ・ 都市計画の内容を検討する早期段階から広く一般に情報を公開する。
     ・ 計画の素案(最終案ではなく変更の余地がある案)段階において、計
       画評価とその結果の公開を通じて意向収集を行うべきである。
     ・ 同時に、計画内容に大きな影響を受ける主体や重大な関心を有する市
       民、提出される意向に応じて必要と考えられる専門家を含めた協議の場
       を設定し、その場において、提出された意見をもとに計画内容を十分に
       検討する必要がある。

  ● 第二種市街地再開発事業の民間事業者への施行権限付与
    ・ 第二種市街地再開発事業の施行権限を民間開発事業者に付与することは、
      収用権限を一般民間企業に与えることを意味する。
    ・ 法制度的には都市計画決定を行う段階で、公共性が確認されていることか
      ら、その決定内容に従って事業を実施し、必要に応じて収用権限を行使す
      ることには妥当性があるとの見方も可能であるかもしれない。
    ・ しかし、この論理が成立するには、行政の行う都市計画決定の公共性につ
      いて、多様な主体の参加のもとで十分な議論を行い、確認することが必要
      である。
    ・ また同時に、行政が行う都市計画決定の公共性を司法的機関に問う道等を
      用意することも必要であろう。
    ・ こうした措置を執ることが困難であるとするならば、第二種市街地再開発
      事業の施行確限を民間開発業者に付与することは、当面都市再生特区に
      限定して行い、事業の実施経過をふまえて一般制度化を検討すべきである。

  ● 提案権の付与
    ・ 緊急整備地域においては、開発事業者のみに都市計画の提案権限が委
      ねられているが、これを、市民・住民にも広く門戸を開く必要がある。
    ・ なお、後から予定されている都市計画法の改正(第21条の2〜4関係)
      にともない、この点について、緊急整備地域においても、必要に応じて住
      民・市民提案に関する積極的支援を併せて行うことを強く要望するもので
      ある。

  ● 都市再生総合補助事業制度の創設
    ・ 緊急整備地域に指定された地域においては、「提案内容に応じる」かたち
      で、各主体が活動・事業を柔軟に実施することを可能とする必要がある。
    ・ このためには、使途が明確に限定されており、また個別分野毎に分断され
      ている既存の補助助成の枠租みでは対応が難しいこともある。
    ・ 英米の都市再生では、事業実施に関わる主体(これには、NPOなども含
      まれる)の発意に応じて補助助成金の使途を決めることが可能な「総合補
      助金制度」が積極的に活用されている。
    ・ 都市の再生は、各地域・都市の特性に応じて多様な方向が有り得るもので
      あり、たとえるならばオーダーメイドの対応が必要なのである。洋服を国
      が標準的に設計するような方式では、地域の実情に答えられないことは自
      明だろう。
    ・ また、地域のネットワークの核となる市民組織やNPOなどへの支援施策
      も同時に必要である。この際にも、なるべく助成要件を事前確定せず、む
      しろ個別事業の実施提案に対する審議、更に実施過程の公開と評価によっ
      て公共性を確保することが必要である。


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