衆議院国土交通委員会 参考人意見


衆議院国土交通省 参考人意見

                        2002319日 伊藤(東京ランポ)

 

1.関連三法案として審議すべきであること

 まず最初に、当委員会は「都市再生関連二法案」として審議が行われています。しかし私は、すでに上程されています「建築基準法等一部改正案」も加えて、関連三法案として審議すべきであると考えます。そして、二法案は予算関連法案として審議されていると聞いていますが、予算関連法案という限られた審議日程で成立を目指すのではなく、今国会の会期末までの日程の中で、慎重かつ十分な審議が行われることを希望します。その理由は主に次の2点です。

 第1は、3つの関連法案はこれまでの都市計画やまちづくりの枠組みを大きく変えるものであり、民間開発業者の意向を色濃く反映したものであることです。都市再生特別措置法案で提案されている「都市再生特別地区」がその象徴ですが、都市再開発法改正案における「民間開発業者を第二種市街地再開発事業施行者に追加する」こと、すなわち民間開発業者に土地収用権を付与すること、あるいは建築基準法における「建築確認型総合設計制度」や容積率、建ぺい率、日影規制の大幅緩和など、基本的に関連三法案は規制緩和をその内容としているからです。

 第2は、都市再生というからには現在の東京などの大都市圏の現状に対するコンセンサス、そしてどのように変えていくのか、その基本となる「あるべき都市像」、グランドデザインについてのコンセンサスが図られていなければならないと思いますが、それは極めて不十分だと言わなければなりません。東京で言えば、木造住宅密集地域といわれる地域は、本当に「20世紀の負の遺産」なのか、超高層のタワービルが建ち並ぶ市街地をだれが望んでいるのかなど、議論すべき論点は大変多くあると思います。本来は、市区町村が策定する都市計画マスタープランがその役割を果たすべきだと考えていますが、現状ではまだまだ理念にとどまっており、その実現プログラムを欠いています。そして今回の関連法案は、その市区町村マスタープランさえ、ないがしろにされる危険性をもっています。

 

2.法案上程までの手続きに不備があること

 さて今、「あるべき都市像」についてコンセンサスが得られていないことを述べましたが、それはコンセンサスを得るような手続きを行っていないからでもあります。都市計画法に関連して申し述べますと、前回の地方分権一括法の施行後に行われた改正では、法案策定の前段で当時の都市計画中央審議会の「中間のまとめ」に対してパブリックコメントが実施されました。しかし今回は、国土交通省社会基盤整備審議会都市計画分科会で「中間のとりまとめ」が行われましたが、パブリックコメントの手続きは行っていません。同様に、建築分科会の議論もパブリックコメントは行っていません。

 パブリックコメント手続きは、ご承知のように小渕内閣時代に閣議決定され、実施されてきました。このような手続きは、本来は行政手続法の抜本的な改正として行われなければならないと思います。したがって、現行のパブリックコメントは制度としては不十分なものです。しかし、たとえば「交通バリアフリー法」成立後に実施した「移動円滑化基準」などについては、障害者の皆さんからの意見提出を受けて、原案を大幅に修正しました。このように、個別の案件では高い評価を受けた事案もあるのです。

 先の都市計画法改正の「中間のまとめ」では、全体として549件に及ぶ意見が提出されています。その内訳は、市民(個人)345件、学識者10件、事業関係者68件、業界団体等26件学会5件、都道府県35件、市町村60件、となっています。その結果、法案策定の過程では、一部ではありますが「中間のまとめ」を修正しているのです。

 今回は、なぜパブリックコメントを行わなかったのでしょうか。私は極めて拙速であると思います。小泉内閣の重要政策だから、法案成立を急いでいるとしか考えられないのです。

3.地方分権に逆行し、地域主体のまちづくりを阻害すること

 最後に、関連三法案は都市計画法が積み重ねてきた地方分権の流れに逆行し、地域の市民合意を重要視してまちづくりを進めようとする、自治体や市民の努力を阻害するものであることを申し述べたいと思います。

 第1は先に述べた2000年の都市計画法の改正は、いろいろな意見はありますが、都市計画決定手続を自治体が条例によって付加できるとしたことなど、地方分権を進める観点からは評価できると私は思っています。しかし今回の関連法案は、地方分権の流れに逆行すると断言しなければなりません。現行の都市計画法はその22条で国土交通大臣が定める都市計画を規定しています。それは2つ以上の都府県にまたがる都市計画でありますが、今日まで一度も発動されたことはないと思います。

 都市再生特別法案における「都市再生特別特区」の決定は、たしかに都道府県知事です。しかし、都市再生基本方針を国(都市再生本部)が決定し、都市再生緊急整備地域の指定を政令で行う(すなわち国)ことは、都市計画を国が決定することとほとんど変わりがありません。このことは、極めて重大な国の関与であり、地方分権とは異なるものです。

 第2は、関連法案が施行されれば、現在各地で頻発しているマンション紛争を激化することになる可能性が大きいという点です。マンション紛争の原因は種々あると思いますが、制度的な観点から、あるいはNPOとしてみた時に、主に3つの原因があると思っています。

 1つは、建築確認の問題です。自治体によっては様々な条例によって、あるいは開発要綱などによって開発行為を規制しようとしてきました。しかし現在の特定行政庁、あるいは民間建築確認機関による建築確認審査には、自治体の独自の努力は活かされていません。条例は、法に委任された条例以外の、いわゆる自主条例は確認審査の対象とはならないとされているからです。

 2つは、総合設計の問題です。この制度によって、地域で生活する市民が考えていた容積率をはるかに上回る規模の建築物を計画することができるためです。

 3つは、開発する土地、あるいは土地の権利者だけが重視されて、周辺地域に対する影響を考慮することが極めて不十分だからです。国の環境影響評価法や都道府県の条例は、評価対象の条件や市民が意見を反映する仕組みなど、多くの問題点があります。

 繰り返しになりますが、都市再生特別措置法案をはじめとする3つの法案は、このような現状の問題を解決するのではなく、より一層助長するものであることを懸念します。
 21世紀のまちづくりは、国の制度によって規制したり、緩和したりすることよりも、市民同士の合意形成によって進めていく方向に向かわなければならないと思います。我が国では、まだまだその条件は成熟していませんが、徐々に成熟していくことに私は確信を持っています。

 以上、私の意見を申し述べました。結論を言えば今回の都市再生関連二法案は、廃案にすることが最前の選択だと思います。少なくとも、パブリックコメントが実施されなかった事情も勘案し、予算関連法案であることの是非も含めて、引き続委員会において十分な審議が行われることを要望しまして意見を終わります。


都市計画分科会top    3月13日都市再生法案を考える会