こんばんは。今日は都市のお話です。
政府は今日、都市再生本部の会議を開き、民間の力を借りて都市の再開発を行う「緊急整備地域」として、東京や大阪など17の地域を指定することを決めました。都市の再生がいよいよ本格的に動き出します。しかし、景気対策を重視した都市の再生に問題はないのでしょうか。そこで今日は、なぜいま都市の再生なのか、その背景と問題点に迫ります。
政府は去年5月、構造改革や経済の再生の柱として都市の再生を推進するため、総理大臣を本部長とする「都市再生本部」を設置しました。企業や人口が集中する都市にお金を集中した方が、投資効率がよく、景気の回復にもつながると考えたからです。都市の再生の目的として掲げられたのは3つです。第1は、都市の魅力と国際競争力を高めることです。言ってみれば、外国と比べて日本の都市は魅力が少なく、元気がないということです。その都市が元気になれば、景気もよくなるということです。第2に、民間の力を都市に振り向け、経済の再生を実現することです。民間主導の再開発で、オフィスビルやマンションを供給することによって、1400兆円にのぼる個人の金融資産を何とか都市の再生に向けてもらおうということです。個人の眠っているお金が都市再生に回れば、経済も活性化するという算段です。第3に、バブルで虫食い状態になった土地の流動化を図り、不良債権を解消することです。
では、都市の再生をどう進めるのでしょうか。政府は、環状道路や空港とのアクセスの整備など、インフラの整備は国など行政が担当し、都市の再開発は民間主導でと、官民の役割を分けることにしました。しかし、都市の再開発を民間主導で進めるには、思い切った規制緩和が必要です。そこで、政府は「都市再生特別措置法」という新たな法律を作り、先月1日から施行しました。この法律の特徴は、これまで自治体が行っていた都市計画について、時間と場所を限って、国が強いイニシアチブをとるようにしたことが第1点。次に、規制の大幅緩和。いまある都市計画の規制を全て撤廃する「都市再生特別地区」という制度を創設。民間のディベロッパーには、法律上の権利として、従来の都市計画に代わる新たな都市計画を提案できるようにしたことです。例えば、これまで10階の建物しか建てられなかった地域も、計画次第では、30階、40階の建物が建てられるようになるということです。3つ目は、手続きの短縮です。自治体は、民間のディベロッパーから提案があった場合、6ヶ月以内に計画を認めるかどうかの判断をすることが義務づけられました。これによって、従来2年8ヶ月かかっていた都市計画の手続きが6ヶ月に短縮されると、都市再生本部では言います。4つ目は、金融支援。国が事業の立ち上がり段階の資金の調達に出資したり、債務保証したりする、金融支援制度も用意しました。あの手この手で民間にやる気を起こさせ、民間の力を誘導しようというわけです。
しかし、規制が大幅に緩和できるのは、飽くまでも緊急整備地域に限られます。この緊急整備地域に指定されることになったのは、東京と大阪、名古屋、横浜の4つの都市圏の17の地域です。このうち、7割近くを占めるのが、東京です。そこで、東京を検証することによって、今回の都市の再生の問題点を考えてみたいと思います。
東京の緊急整備地域なんですが、この色のついた部分ですね。合わせておよそ2400ha。これは、JR山手線の内部のおよそ4割弱に相当する広さなんです。このうち、主な地域の計画を見てみますと、丸の内と大手町の地域は「国際ビジネス拠点」として、秋葉原・神田地域は世界的な「IT関連産業拠点」として、臨海地域は国際的な「情報発信拠点」として、虎ノ門・赤坂・六本木地域は国際性豊かな「国際交流ゾーン」とするとしています。大幅な規制緩和によって景気対策につなげようという意図はわかるのですが、これをご覧になって、東京が本当に魅力ある国際競争力の高
い都市に生まれ変わると、皆さん思われるでしょうか。私は、いくつかの問題点を指摘したいと思います。まず、都市戦略が見えないこと。新たな不良債権が発生する恐れがあること。あとは、環境への問題です。
まずは、都市戦略です。個々の地域の開発の土台となるビジョンと言うか、東京の将来像が見えないことです。また、都市再生の予算の7、8割が東京に振り向けられていると言われていまして、今回の都市再生は地方の切り捨てだという声も聞かれます。東京は日本の中でどんな役割を果たすのか、国際競争力の強化と言いましても、何をセールスポイントにするのか、東京の位置づけや役割をはっきりさせることが大切だと思います。また、東京では、都心回帰が進む一方で、郊外都市の空洞化が始まっています。郊外に移転した大学が都心に戻る動きもあります。中心部だけではなく、都市全体をどう考えるのか、総合的な視点も重要です。次に、新たな不良債権の発生の恐れはないかです。今回の都市の再生によって、どのくらいのオフィスビルが供給されるのか、供給の見通しは立てられていません。来年の2003年には、汐留や品川駅前など旧国鉄の跡地を利用した大規模開発が相次いで完成、オフィスビルの供給過剰が心配されています。いわゆる2003年問題です。そこに今回の都市再生です。きちんとした需要予測のない中で、オフィスビルの大量供給が続くわけです。前のバブルでは、土地が不良債権になりました。今回は大量のオフィスビルが不良債権になる恐れがあります。また、供給ありきは、マンションも同じです。職住近接はいいのですが、マンションの建設ラッシュが起きている江東区では、学校の整備が追いついていません。計画性のある供給が必要です。次に、環境への対策は十分なのでしょうか。開発の規模が大きければ大きいほど、大量の水や電気が必要になりますし、下水やごみの処理も大変です。また、交通混雑を招くことはないでしょうか。ビジネス地域と住居地域が混在する港区では、大規模な開発がどんどん進めば、電波障害や日照権など新たな環境問題が起きるのではないかと心配しています。
こうして見てきますと、今回の都市の再生は、緊急整備地域という地域を限定してミニバブルを引き起こし、不良債権を解消しようというのが、どうも政府の本音のような気がしてなりません。しかし、果たしてそれでいいのでしょうか。都市づくりは、50年100年先を見定めたものだと思います。また、はっきりとした需要があるのかどうかわからないのに、次から次にビルやマンションを造っても、本当に大丈夫なのでしょうか。さらに、都市の魅力は、新しいビルを造ることだけで高まるものではありません。生活のしやすさとか物価の安さとか、あるいは芸術・文化が楽しめるとか、いろんな要素があります。歴史的な古い街並みを守っていくこともその1つです。空襲を免れ、江戸情緒がいまも残る街として、外国人に人気のある、東京台東区の谷中がそのいい例です。まちは生き物です。経済的側面だけで推し量ることはできません。都市の主人公は、建物や施設ではなく、そこに暮らしそこに活動する人です。何よりも生活者の視点を大切にしてほしいと思います。そして、次の世代にどんなまちを引き継ぐのか、次世代を見据えた都市づくりをしてほしいと思います。
今日はこれで失礼します。
※ 傍線は、東京ランポによる。
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