<第3章 2 都市像>
1 新たな都市構造の必要性
2 東京圏の骨格的な都市構造
3 生活圏の都市構造
4 政策誘導型の都市づくりの実現方策
1 新たな都市構造の必要性
1) 多心型都市構造の限界
従来、東京都は、都心(注1)への業務機能の集中圧力を副都心(注2)や多摩の「心(しん)」(注3)へ、いかに分散させるかという視点で、都内を対象として多心型都市構造の実現に取り組んできた。
この結果、東京圏における業務核都市(注4)の育成ともあいまって、事務所供給が都心3区から周辺区部、業務核都市等へ広がり、業務機能の都心への集中圧力は緩和されてきている。
一方、商業機能などを含む総合的な就業環境が重視される今日では、業務機能に特化している都心の、業務地としての魅力は低下している。
業務機能だけでなく居住や商業、文化などさまざまな機能がバランスよく配置された都市を実現することは、業務機能の効率的配置に主眼を置いた多心型都市づくりだけでは達成できない。
混雑現象を回避しながら集積のメリットを十分発揮させることも、環境の視点や集積相互の連携の視点が欠けている多心型都市構造では困難である。
また、人口減少下における社会の活力維持や、国際都市間競争を勝ち抜くという観点から、社会的、経済的に一体となっている東京圏全体の機能を最大限に発揮させていくことは、都内に対象が限定されている多心型都市構造では限界がある。
これまでの多心型都市づくりによってつくられた副都心や多摩の「心」における一定の機能集積や、拠点間の交通基盤を活かしながら、多心型都市構造では十分対応できない課題を解決できる新たな都市構造が求められている。
2) 生活圏における都市構造の課題
一方、区市町村が主体的に取り組む地域レベルについても、今日的課題に対応した地域づくりの目標としての都市構造が求められる。
情報化や少子・高齢化の進展、固定化された労働市場から流動的な労働市場への転換などにより、高齢者等の通勤困難者(注1)の社会進出や、時間と場所に制約されない働き方を望む勤労者が増加していくと見込まれる。
これらの人びとが十全に活動できる都市空間をつくっていくことが、高齢社会において東京の活力を向上させていくうえで重要である。そのため、生活圏レベルの地域の構造をコンパクトで機能的なものとしていく必要がある。
2 東京圏の骨格的な都市構造(注1)
(注1)
骨格的な都市構造:東京外かく環状道路など根幹的な道路、国際空港など拠点的な空港、都心及びその周辺地域の機能集積(図表1の「センター・コア・エリア」を指す。)、核都市群(参照)といった中枢的な機能から構成される都市構造のこと。
東京圏の都市の魅力と活力を向上させるために、東京圏に無秩序に広がっている市街地を再編・整備し、東京圏の骨格的な都市構造を実現する。
この骨格的な都市構造は、環状方向の都市と都市との結びつきを重視して交通網の整備等を進め、東京圏の発展を図ることをめざすものであり、「環状メガロポリス構造」(図表1)と呼ぶ。
<「環状メガロポリス構造」の実現により達成されること>
(1)
東京圏全体に適切に都市機能が配置され、核都市(注1)を中心とした圏域などの自立性が高まり、混雑や環境面での負荷など東京都区部への一極依存による弊害が是正される。
(2)
国際航空機能など国際交流機能が充実し、国際都市東京の魅力が向上し、世界の人びとを惹(ひ)きつけ、交流が活発になる。
(3)
東京圏の広域幹線道路ネットワークの形成によって、東京圏における人、もの、情報の流れがより速く、より便利となり、都市相互の機能連携が進む。これにより、東京圏の経済活動が効率化し、ひいては日本の活力が高まる。
1) 環状メガロポリス構造の構成要素
(1) センター・コア・エリア (略)
(2) 水と緑の創生リング (略)
(3) 臨空・臨海都市軸(東京湾ウォーターフロント都市軸)
(略)
(4) 核都市連携都市軸 (略)
2) 東京圏の自然環境(略)
3) 首都圏3環状道路と第二東京湾岸道路の整備
環状方向の交通ネットワークを構成する圏央道、外環、中央環状線と第二東京湾岸道路は、東京圏全体が発展することに大きく寄与するものであり、東京圏の高コスト構造を是正し、東京圏を活力ある地域にするうえでの骨格的な広域幹線道路として、その整備が不可欠である。
これらの道路が完成すると、混雑が緩和され、自動車走行速度が上がり、利便性が向上する。また、大気汚染も改善される。
特に外環は、東京圏の骨格的な広域幹線道路ネットワークの要ともいえる路線であり、東京圏における都市活動の効率化や生活の利便性の向上に大きな効果をもたらす。
外環の完成によって、都心部等を通過する交通を迂回させ、交通混雑を緩和し、大気汚染を改善することができる。
そのことにより、重要な機能が集積しているセンター・コア・エリアにおける集中の弊害を排除しつつ、集積の利点を享受することができる。
外環の整備を契機に骨格的な緑の軸の形成や、周辺地域におけるまちづくりが進展し、外環の内外の地域において、質の高い居住環境の維持・向上が可能となる。
3 生活圏の都市構造 (略)
4 政策誘導型の都市づくりの実現方策
1) 望ましい都市像の実現に向けて
2) 都市づくりのための新たなルールづくり
東京の都市空間は、経済的活動や居住の場として高い価値を持つ高密度な空間であり、希少性が高いため、都民共有の財産として有効に使っていかなければならない。そうした東京の都市空間の有限性と公共性を十分踏まえて、都市づくりに向けて合意形成を進め、事業を実施するための新たなルールをつくっていく。
総合環境アセスメント制度(注1)など新たな評価制度の導入によって適正な手続きを徹底するとともに、便益が広域に及ぶ基幹的な施設の整備や土地利用の基本的なあり方をめる際には広く都民の意見を反映させていくことが重要である。そのうえで、正当なプロセスを経て合意された公益的事業については、個人の利益をいたずらに優先させることなく、迅速に実行される必要がある。
日本においては、所有者の財産に関連する権利が保護されすぎている傾向がある。このことが事業を画するにあたって利害関係者の調整に多くの時間を費やす一因となっている。都市機能再生していくうえで、都市を再開発する事業は重要であり、そうした公共の利益の実現のために、私権の適切な制限は正当化されるべきである。
また、欧米の諸都市に比べ建築や開発が自由であることが、建物の高さや色彩、看板が乱雑で、醜悪なまちなみを生み出してきた。都市のデザインの質は都市の魅力を保つための必要不可欠な条件である。魅力的で効率性の高い都市をつくり、都市の競争力を高めていくためには、土地や建物に関する規制の強化と適正な開発の誘導とを適切に組みあわせて、都市づくりを進めていくことが重要である。
そのためには、従来の制度にとらわれることなく、新たな計画や規制のあり方への転換を、国民的な議論を喚起しながら進めていく必要がある。
また、都市づくりに関する情報を共有するとともに、計画策定、事業実施過程における透明性、客観性を高め、公共性を担保することが不可欠である。このため、情報公開の推進、計画段階におけるPI的手法(注2)の導入、都市計画手続きの運用の改善などに取り組んでいく。
<計画の早期の段階における合意形成のしくみ>
計画策定の透明性・客観性を高めていくための合意形成を進めるにあたっては、まず、構想の内容やその事業効果などについて、都民等へわかりやすく情報を提供していく。
計画や事業の規模、内容等に応じて、アンケート調査、シンポジウム、ワークショップ、協議会による討論、専門グループなどによる検討など各種手法を使い分け、都民等との協議を行い、計画の素案等について情報提供するとともに、都民等の意見をその計画素案に反映していく。
その計画素案については、都民等が比較判断できるよう、採用可能な複数の案を、その実施に伴う社会・経済面での効果や環境影響などとあわせて提示する。
その計画に関わる人びとの協議の場への参加・意見表明の機会を確保するとともに、寄せられた意見や議論の経過などを広く公開しながら合意形成を進めていく。
3) 民間事業者等の都市づくりへの取組みを促すしくみづくり
東京という都市を再構築していくために、都民や民間事業者、NPOなどが都市づくりに参加しやすいしくみを充実していく。
都市づくりについて民間事業者の取組みを適切に誘導する情報を提供していく。また、容積緩和などの誘因策が効果的に作用して民間事業者による都市の再構築への取組みを促進するしくみをつくることなど、地権者にとっても受け止めやすく、民間事業者が参入しやすい制度的な枠組みを充実していく。
4) 政策誘導型の都市づくりの展開に向けて
今後の東京の都市づくりを推進するためには、人口と産業の集中に追随する形で対応してきた従来の需要対応型のやり方やしくみにとらわれない取組みが求められる。
政策誘導型の都市づくりに向けた戦略的な取組みや実現方策については、本構想で示した基本的な考え方を踏まえて策定される東京の新しい都市づくりビジョンにおいて具体化する。さらに、法定の都市計画マスタープランを策定するとともに、本構想で示した都市づくりの理念やルールなどを内容とする「都市づくり基本条例(仮称)」を制定し、政策誘導型の都市づくりを推進していく。
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