参議院国土交通委員会レポート 2002.03.28

「都市再生特別措置法案」と「都市再開発法等改正案」の
参考人質疑から委員会可決までの模様

レポーター:庄嶋 孝広、蔵方 博史(東京ランポ事務局)


 3月28日(木)の参議院国土交通委員会で「都市再生特別措置法案」「都市再開発法等改正案」が可決されたときの模様をお伝えします。
 私たちが傍聴したのは、午前10時か12時20分までの参考人質疑と午後1時20分から4時30分頃までの総括質疑−反対討論−採決−附帯決議採決の過程です。
 なお、ここに掲載しているものは、レポーターの記録をもとに作成したものです。一言一句正確なわけではなく、なかには誤解もあるかもしれませんので、正しくは、後日参議院事務局より出される議事録をご参照ください。


 東京ランポ関連の参考人、小泉秀樹さん(理事)の意見は、別のページに掲載されていますので、ご覧ください。
 その後の参考人質疑での、各参考人の回答をまとめると、以下の通りです。

<伊藤 滋・早稲田大学理工学部教授>
・ 地方都市における草の根まちづくり運動の仕組み・仕掛けづくりとして、次の2点が挙げられる。1点目は、大都市に比べて、地方都市にはまちづくり・都市計画に関する専門家が少ないので、国費を投じたまちづくり研修・教育プログラムの実施である。2点目は、ハード的に小さいスケールのまちづくりを全国に広めることである。
・ 日本には、日本型、アメリカ型などいろいろなまちづくりが共存している。この多元性が、ある要素がダメでも、他の要素なら大丈夫といった復元力となっている。
・ 高齢化・情報化社会における都市では、今まで以上に土地が空いてくるものと予想される。大都市では、高層マンションが整備されるのもよいが、地方都市では、中心市街地を商業地として再生するのでなく森にするのもよい。
・ 都市再生特別措置法は10年の時限立法ということで、大都市都心のみが対象となり、日本人と外国人が気持ちよく仕事できる都市づくりに活用されるだろう。それ以外については、今回の法律ではなく、今後50年かけて都市計画法や建築基準法を変えていくなかで、取り組む必要がある。
・ 東京の臨海部や工場跡地には大規模開発、文京区などではパリ型、荒川区などでは木造密集市街地(木密)を少しずつ手直しというように、ふさわしい都市づくりは地域によって異なる。
・ 第4次までの国土計画では都市を扱わなかった。つまり、日本には、「経済政策」はあっても「都市政策」はなかった。そのため、木密には全く手を着けてこなかった。墨田区の都市計画審議会委員を20年やってきたが、道を少し広げるだけでも大変である。権利が複雑すぎる木密では、ゆっくり整備していても進まないので、国費を投入して集中的に整備すべきである。その手始めとして、私鉄駅の手直しを行うのがよい。
・ 以前、都市に関わる学者が議論したとき、21世紀の先進国の大都市は、パリの旧市街を目指すのがよいという結論になった。社会資本構造物・建築物を長持ちさせることで、文化的なにおいが出てくるようになるからである。また、都市に住むことは、ガソリンを使わない、高い建物に住むなど、つつましい生活となる。東京で言えば、23区内は居住密度がある程度高くなるのはいたしかたない。
・ 日本には戸籍はあっても地籍がなく、都市計画家もその意味を軽んじてきた。都市の地籍を調査し、社会のなかでの自分の土地の役割をはっきりさせることで、都市づくりにおけるモラルを明確にできる。
・ 東京ディズニーランドは楽しいが、お金がかかるので毎日行くわけにもいかない。臨海部には植物園など、学習機能のある公園などを設けて、都外も含めた広い範囲の人が利用できるようにするのもよいのでは。
・ 第2種市街地再開発事業において民間事業者に土地収用権を付与することは、文言だけ見ればチャレンジャブル(挑戦的)である。
・ 東京への一極集中はよくないと言われながら、実際はそうなってきた。この現実を直視して、東京では木密を解消したり、地方中小都市では商業地でない中心市街地づくりをしたりするなど、1つ1つ考えて行うことが必要である。いずれにせよ、コンクリートでモノをつくる前に、そこで何がなされるべきかをまず考えなくてはならない。
・ 高齢化が進む一方で国際化が進み、中国、フィリピンなどアジア系の人が増える。外国人でも、日本でゆりかごから墓場まで過ごせるようにすることが必要で、しかも民族・人種が固まるのでなく混在するまちにする必要がある。

<小泉 秀樹・東京大学大学院工学系研究科助教授>
・ 都市再生を進める手法としてPFIの導入や不動産証券化はあってよいと思うが、市場の活用ばかりに偏重するのでなく、地べたに貼りついたまちづくりを支援することが重要である。
・ 都市計画法の改正で地権者等の2/3の同意を得ることによって、地権者・まちづくりNPOが都市計画に対して提案できるようになるが、様々な提案を並べて検討することで、もっとよい案になっていくものなので、2/3の同意がなくても提案できるように規定を見直すべきである。
・ 社会資本整備審議会都市計画分科会の中間とりまとめは、法案に反映されたものもあればそうでないものもあるが、今後の検討課題に記載されている計画評価や住民参加について、より反映されるべきである。
・ 木造密集市街地のアフォーダブルな住宅にブルーカラーの人々が住まうことで、都市に様々なサービスが生み出されている。クリアランス型の整備が行われることによって居住者がホワイトカラーのみになると、産業構造が偏ったものになり、これまで都市が持っていたしなやかさ、多様性が喪失されて、かえって競争力を失うことになる。
・ これからの都市計画・まちづくりでは、まちができあがる過程に住まい手が参加することで、その地域に合ったまちにすることが大切である。地域発意で出てきたものを支援するような体制の構築が必要である。
・ 今後、現在供給されているほど多くの、オフィスへの需要があるのかは疑問。新しいものはよいだろうが、全体としてはどうか。住宅も、都心部での大量供給で、郊外部の地価がいっそう下落し、資産が目減りするのではないか。都市政策に、急激な変化は向かず、着実に「育む」ことが大切である。
・ 都市計画の制度は難しく、わかりにくさがつきまとうので、住民が行うまちづくりには時間がかかる。まずは学習が大切で、専門家と何度もやりとりをして、ある程度の知識を築く。今回の都市再生緊急整備地域でも、住民が積極的に取り組めるようなプログラムを設ける必要がある。

<石田 頼房・東京都立大学名誉教授>
・ 都市再生緊急整備地域の周辺地域への影響評価を含めて、当該自治体が責任を持って事業評価を行うべきである。
・ (都市再生本部が描いている)マンハッタン型の都市づくりができるのは、東京でも少ないように思える。今回の法律では、これまで後回しになってきた木造密集市街地(木密)を整備することにはならないため、国費を投じて整備すべきである。
・ マクロ経済活性化の道具として都市を使ってはいけない。これまで大規模開発では公共投資が繰り返し行われてきたが、木密では行われなかった。また、地籍調査もなされていない。こういった、いままで手を着けなかったところにこそ、お金を使うべきである。
・ 第1種市街地再開発事業では、再開発組合が事業資金を確保することが困難であったので、民間事業者が参入して併存することで、組合体質の近代化が期待される。
・ 第2種市街地再開発事業で民間事業者に土地収用権が付与されることは問題であり、収用の定義に関して論議を深めるべきである。アメリカのように、土地の調整は公共が行ったうえで、きちんと条件を満たした民間事業者が開発を行う仕組みが望ましい。
・ イギリスには、プランニングエイドという専門家組織があり、住民案の作成を支援している。日本の都市計画家協会もそういった活動が必要である。
・ 都市計画法の改正で、地権者等の2/3の同意を得て都市計画を提案できるようになるが、なぜ2/3であるかについての政府の考えは、1/2では少ないからということであった。むしろ、2/3が同意するまでの議論がオープンに行われることが重要である。


 次に、質問や意見をもとに、各党の「都市再生」への考えをまとめると、以下の通りです。

<自民党・保守党>
・ 都市再生緊急整備地域の指定手順を透明化し、大都市・地方都市を問わずに指定すべきである。
・ 都市再生緊急整備地域ごとに設けられる都市再生緊急整備地域協議会において、当該地方公共団体の声が反映されるようにする。
・ 都市再生に向けて、関連法(例えば、消防法)を含めた総合的基準が作成されるべきである。

<公明>
・ 近年の社会情勢の変化に都市機能が対応できていないという現状認識のもとにインフラ(例えば、IT関連)整備が行われるべきである。
・ 都市再生緊急整備地域に設けられる都市再生特別地区において、周辺地域との調和、周辺環境への配慮が重視されなければならない。

<民主党>
・ 都市再生に関する理念とビジョンが明確に示されていない。
・ 都市再生本部の権限があまりにも強いように見受けられ、地方分権の流れに逆行している。
・ 都市再生基本方針が大都市における再開発事業にのみ適合するように見受けられ、地方都市における整備事業に役立たせることは難しいように思える。
・ 都市再生緊急整備地域内における民間プロジェクト増加に伴う地価上昇が推測され、地上げの横行の再来が危惧される。
・ 都市再生に関連して無駄な公共事業の増加が危惧される。
・ 事業の短縮化のために都市計画提案から決定までの期間を限定することは、今回の都市計画法改正の趣旨と相反する。
・ 民間活力を活用するために期間を限定して都市再生事業を行うことは、単に業者間競争を助長するだけである。
・ 都市再生事業が経営状態の悪い民間事業者を救済する手段として活用されないように求める。
・ 市街地再開発事業における責任所在を明確にし、事業が破綻した際、従前の権利が保全される必要がある。

<共産党>
・ 高度利用推進区への集約換地は、土地区画整理事業における照応の原則に反する。
・ 都市再生特別地区における用途地域規制の撤廃や都市計画決定に至るまでの期限の設定は、民間事業者の意向のみを尊重したものである。
・ 民間事業者への無利子貸し付けは、やり過ぎである。
・ 民間事業者の第2種市街地再開発事業への参入に伴う土地収用権限の付与は、憲法違反である。
・ 民間都市開発推進機構の土地取得業務延長は、ただ民間土地開発業者を救済するだけである。

<国会改革連絡会(自由党・無所属の会)>
・ 法案をより分かりやすく情報公開すべきである。
・ 国土計画に関して、政策が終始一貫して行われるべきである。

<社民党>
・ 都市再生がトップダウンで行われ、地方分権の流れに逆行する。
・ 都市再生基本方針と当該地方公共団体の都市マスタープランとの整合性が不明確である。
・ 周辺環境との調和を図るために、景観づくりや歴史的建造物を活かしたまちづくりが都市再生緊急整備地域における整備手法として盛り込まれるべきである。
・ 今回の都市再生は、中曽根民活の再来である。
・ 都市計画は「50年100年の計」と呼ばれているにもかかわらず、都市再生を10年という時限立法で行うことに矛盾を感じる。


 続いて、各党の質問に対する、政府の回答をまとめると、以下の通りです。

<政府>
・ 都市再生緊急整備地域の指定にあたっては、大都市か地方都市か、地権者数が多いか少ないかによって区別しない。地方公共団体の意見を活用して決めたい。(国土交通大臣)
・ 建築基準法等の一部改正法案にある、都市計画法改正による提案権は、地権者等の2/3の同意があれば誰にでも認める。一方で、都市再生特別措置法案にある、都市再生緊急整備地域における提案制度は、都市再生事業を行うものにのみ認める。(都市・地域整備局長)
・ 都市再生事業に関する情報公開は誰にでも行い、都市再生特別地区に入らなかった地区の人の意見も聴きたい。(大臣)
・ 都市開発に関する従来の規制緩和では、民間の力が十分に発揮できない、タイミングが合わない、資金が伴わないといった問題があった。都市再生特別措置法は、地域と時期を限って、より一層の規制緩和を行うというのが、従来とは異なる。(局長)
・ 地方公共団体には条例や要綱による独自規制もあるが、地方公共団体には、都市再生特別措置法に規定された努力義務に従ってもらう。(内閣審議官)
・ 今回の法律によって、魅力的な都市づくりが行われることが必要であり、地価の高騰はないのではないかと思う。(国土交通副大臣)
・ 事業のスピードアップによってコスト削減につながる。事前−事業−事後に評価することによって、インフラへの公共投資もムダにはならない。(大臣)
・ 6ヶ月で都市計画決定をするというのは、民間のスピード感覚に合っている。都市計画決定自体は、従来からあるプロセスを経るので、スピードアップしても問題ない。(国土交通大臣政務官)
・ これまでは都市開発に時間がかかりすぎたので、検証する意味でも10年の時限立法とした。期間中に乱開発が起こるとは考えていない。(副大臣)
・ 民間事業者への土地収用権の付与に対する懸念が指摘されているが、第2種市街地再開発事業は都道府県が認可するものであること、地権者と地籍の2/3以上の同意が必要なこと、希望する人は残れること、出て行く場合も引越費用や新住居の提供もすること、などがあるため問題ない。(大臣)
・ 都市再生特別地区は、自治体が策定している都市計画マスタープランと整合的に指定されるはずである。(局長)
・ 市街地再開発事業を施行する民間事業者には、通常の会社法に加えて、都市再開発法の改正によって設けられる「再開発会社」の要件も必要になる。(局長)


 最後に、レポーターのまとめ。
 3月19日(火)の衆議院国土交通委員会で、東京ランポ関係の参考人が法案の問題点を指摘したこともあってか、衆議院国土交通委員会に比べると、自民党や民主党の質問が、法案の問題点を踏まえたものに変わっていたことが印象的でした。
 しかし、民主党は多くの問題点を指摘したにもかかわらず、法案自体には賛成で、反対に回ったのは、共産党、国会改革連絡会、社民党でした。附帯決議は、共産、社民両党以外により提出され、決議されました。
 政府の回答は、衆議院国土交通委員会のときと同様、各党の要望に対して「検討します」といったことは聞かれず、指摘された点については、全てクリアしているという姿勢でした。この政府の自信満々な様子は、しっかりと記憶しておきたいと思います。
 これにて、予算関連法案であった「都市再生特別措置法案」と「都市開発法等改正法案」は国会で成立しましたが、もう1つの「建築基準法等改正案」については、4月に参議院先議で審議されますので、続けて注目していきたいと思います。
 また、今回成立した2法については、国会議員へのロビーイングの時間や市民の声を集める時間もあまりありませんでしたが、「建築基準法等改正案」については、4月6日(金)のシンポジウムなどで、法案の修正を求める声をあげていきたいと思いますので、ご賛同いただける方はご協力ください。全国どこにでも適用される一般法である点で、より重要な面をはらんでいるとも言えます。


 参議院ホームページ(会議録)
 http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kaigirok/daily/select0110/main.html
 衆議院ホームページ(会議録)
 http://www.shugiin.go.jp/itdb_main.nsf/html/index_kaigiroku.htm
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