T 民間の都市活動を促す都市計画の枠組みについて
3 今後の検討の方向性
都市づくりの計画段階では、「民」の取組の中に「公」的なものを認め、これを都市計画として受け止め、また、実行段階では、事業の実施主体がこれまで公的主体に限定されていたものを民間にも開放するなど、民間の資金力、組織力、事業遂行能力を活用する方向で検討する必要がある。
また、優良な民間都市開発を行うために必要となる都市基盤施設については、その整備を強力に推進する必要がある。
このため、現行都市計画制度の課題に的確に対応し、都市型社会に即応した新たな都市計画の枠組みを構築するため、以下に掲げる施策について検討する必要がある。
その際、留意すべき事項として指摘した課題については、引き続き検討を行う必要がある。
(1)都市計画・建築規制について
都市計画による土地利用規制は、民間の建築活動を規制・誘導し、良好な都市空間を形成する機能を有するものである。
○ 全国的には、住民等による地道なまちづくりの取組を都市計画に反映するための制度の導入を図る必要がある。また、住民等にとって、もっとも身近な都市計画である地区計画制度について、より分かりやすく使いやすいものに改める必要があると考えられる。
○ 特に、民間都市開発事業者に旺盛な投資意欲が認められる大都市地域においては、民間都市開発事業者の発意を適時適切に受け止め、都市計画を弾力的に変更するための仕組みが求められている。
また、民間の投資を積極的に誘導する観点から、良好な市街地整備を実現するための事前明示性の高い土地利用計画の仕組みが必要である。
したがって、次のような施策について検討する必要がある。
@ 民間による都市計画の提案制度の導入
地域住民によるまちづくりの取組や都市再生に資する民間都市開発事業者の創意工夫を都市計画に積極的に反映させていくため、民間等による都市計画の提案制度を導入すべきである。
<基本的な制度構成のあり方>
○ 住民等が自主的なまちづくりを推進し、地域の活性化を図りやすくするため、土地所有者、まちづくり協議会、まちづくりNPO等から、一定の面積以上の一体的な土地の区域について、当該区域内の土地所有者等の一定割合(例えば、3分の2)以上の同意を得て、都市計画の案となるべき事項について提案できるよう措置すべきである。
○ 提案の対象となる都市計画は、都市計画の提案の指針となるべき都市計画区域の整備、開発及び保全の方針等を除き、基本的に、広く認める必要がある。
○ 都市計画決定権者は、当該都市計画の提案の内容について、都道府県都市計画審議会又は市町村都市計画審議会に付議等を行うとともに、住 民参加の手続を保障することにより、当該都市計画の決定又は変更を行う必要があるかどうかについて、適切に判断することとすべきである。
○ 特に都市の再生を図る必要がある特定の区域においては、都市の再生に資する都市開発事業を行おうとする者が都市計画の提案をすることができるよう措置すべきである。この場合においては、都市計画の提案からその決定又は変更までの期間を明示することにより、民間事業者等の負う時間リスクの軽減にも配慮する必要がある。
<留意すべき事項>
○ 民間等による都市計画の提案制度の導入に当たっては、計画の早い段階から、地域住民が広くまちづくりに参加し、十分な協議が行われ必要がある。
○ 都市計画の提案制度がより有効に機能するよう、提案を評価するための指針の充実を図るなど都市計画の決定ルールについて検討する必要がある。例えば、圏域計画等の広域計画や地方公共団体の都市政策との関係、環境に関する取組の方向性等の明確化など、都市計画の提案が備えるべき条件の明確化について、今後検討する必要がある。
○ 提案した者と提案を受けた地方公共団体がそれぞれの立場を明確にしつつ協議・調整を行うことができるよう、協議のプロセスを書面で明らかにすることについて、今後検討する必要がある。
○ 地域住民は、自らのまちづくりに関するニーズを都市計画の提案としてまとめる経験やノウハウを持たないこと多いと考えられることから、地方公共団体や公的セクター、まちづくりNPO、まちづくり専門家等と協力して、住民が共同して組織するまちづくり協議会等を支援する制度の充実についても、今後、検討を行う必要がある。
○ 都市計画の提案制度が確立されるために、行政側が都市計画の提案に対してどのような対応を行うことが効果的であるか等について検討する必要がある。
○ 国は、住民等と直接向き合う地方公共団体に対し、必要な支援を行う必要がある。
○ 多様な主体の意見を反映させながらまちづくりを行うことは、時間のかかる取組であるが、制度が定着し、経験やノウハウが蓄積されることにより手続の迅速化が図られることを期待したい。
A 良好な市街地の整備を実現するための新たな土地利用計画の仕組み
都市の再生の拠点として緊急に整備を図るべき特定の地域においては、地域の整備方針を示すこと等により目標となる市街地像を具体的に明らかにし、当該市街地像の実現に寄与するような民間主導の自律的なプロジェクトの実施が促進されるような措置を講ずるべきである。
<基本的な制度構成のあり方>
○ 都市の再生の拠点として緊急に整備を図るべき特定の地域においては、民間事業者の事業意欲を事業の実施に円滑に結び付けることにより、民間に存する資金やノウハウなど民間の力を引き出し、都市の再生を緊急かつ強力に推進する必要がある。
このため、都市計画上もこうした要請に対応して、民間事業者等が創意工夫を発挿して自由に事業計画を立案することができるよう、既存の用途地域に基づく規制に代えて、自由度の高い計画を定めることができる特別の都市計画制度を創設すべきである。
○ 新たな都市計画制度は、必要に応じて誘導すべき用途を明示するとともに、形態に関してきめ細かく都市計画で定めること等により、将来の市街地像を明らかにすることができる制度として構築する必要がある。
また、当該都市計画が定められた場合には、用途地域に基づく用途規制や容積率制限、斜線制限、日影規制等については、特定行政庁の許可等によらず規制を緩和することができる事前明示性の高い仕組みとして構築する必要がある。
<留意すべき事項>
○ 新たな土地利用計画の仕組みは、用途地域に基づく規制に代えて、自由度の高い都市開発を可能とするものであることから、活用に当たっては、そのねらいを明確にするとともに、環境や地域コミュニティに与える影響等を含め、都市計画としての公共性の確保に十分留意する必要がある。
○ 新たな都市計画制度は、既成市街地における非効率な土地利用を是正し、土地の有効・高度利用を促進するため、建築物のスカイラインを設定すること等により、個々の敷地単位での建替えではなく、狭小敷地を統合し、街区全体としてまとまりのある調和のとれた建築物の整備を誘導するための制度としても活用することが期待される。
○ 公的セクターが、地方公共団体や民間事業者、土地所有者等との間を調整するような仕組みについて検討する必要がある。
B 地区計画制度の見直し
地区計画制度は、身近なまちづくりを誘導するものからプロジェクトを促進するものまで、多様なメニューがあり活用されているが、制度が複雑で分かりにくいとの批判がある。このため、再開発地区計画及び住宅地高度利用地区計画を地区計画に統合するとともに、多様なまちづくりのニーズに対応できる、より分かりやすく使いやすい一般的な制度として再構成すべきである。
<基本的な制度構成のあり方>
○ 再開発地区計画及び住宅地高度利用地区計画を地区計画に統合し、これらの用途・容積緩和型のメニューを地区計画のメニューとして追加する等、分かりやすい制度構成とすることにより、多様なまちづくりのニーズに対応できる、より一般的な制度として再構成すべきである。
○ その際、単に既存の軸度を整理統合し、分かりやすくすることに加えて、既存の地区計画制度における用途、容積率等の特例制度が、複合的なニーズに対しては必ずしも十分に対応できていないことから、地区計画制度を活用する目的や地域の実情に応じ、複合的なニーズにも対応できる制度とすることによって、機動的に、きめ細かなまちづくりが実現できるよう配慮する必要がある。
<留意すべき事項>
○ 地区計画制度の普及は、住民のまちづくりへの参加意識を高めることに資するものであるとともに、街区レベルで既成市街地の更新に取り組もうとする民間の投資意欲にこたえるものとしても効果的であることから、より一層、その活用を図る必要がある。
○ 地区計画制度の統合により、それを活用する地方公共団体、住民等に混乱が生じないよう留意すべきである。
(2)都市づくりの事業手法について
都市づくりの実施段階においては、公的主体に限定されている法定事業の施行権能を民間主体にも開放するなど、民間の資金、ノウハウを積極的に活用する方向で検討する必要がある。
したがって、次のような施策について検討する必要がある。
@ 民間の資金、ノウハウを活用する観点からの市街地再開発事業の見直し
民間活力の活用等による都市の再開発を促進するため、ノウハウや資力・信用を有する民間事業者が土地所有者等と連携して迅速に事業の実施ができるよう、市街地再開発事業の施行者に、一定の要件に該当する株式会社等を追加すべきである。
<基本的な制度構成のあり方>
○ 市街地再開発事業の施行者については、土地所有者等による個人施行、市街地再開発組合による組合施行及び地方公共団体、公団等の公的主体による施行が認められているが、民間の資金力、組織力、事業遂行能力等民間の創意工夫や活力を活用しつつ良好な市街地の形成を図るため、土地所有者等の参画した株式会社等について、第一種市街地再開発事業及び第二種市街地再開発事業の施行権能を付与すべきである。
○ 市街地再開発事業の施行権能の付与に当たっては、土地所有者等の意向が事業に十分反映されるよう施行地区内の合意要件を明確化するとともに、地方公共団体の指導・監督の下、事業実施の公正性、透明性及び確実性が確保されるよう、必要な措置を講ずる必要がある。
<留意すべき事項>
○ 事業の実施に際しては、土地所有者等の意見が反映されるよう十分配慮する必要がある。
○ 第二種市街地再開発事業の施行権能の株式会社等への付与に当たっては、施行地区からやむを得ず転出する者に対する5,000万円控除等の税制上の特例措置も、あわせて講じられることが望ましい。
A 土地の健全な高度利用のための敷地の集約化
土地の健全な高度利用を図るべき土地の区域については、土地区画整理事業を活用して、敷地の共同化意向のある宅地の所有者等が敷地を集約化し、敷地規模を拡大することにより、良好な街区を形成することを可能とするような制度を創設すべきである。
<基本的な制度構成のあり方>
○ 基盤整備が不十分なまま敷地が細分化されている既成市街地の再構築を進める上では、基盤整備と合わせて敷地を集約することにより、土地の健全な高度利用を図ることが、良好な市街地の整備を進める上で重要である。
このため、高度利用地区の区域等において敷地を集約化し、都市計画に適合した建築物の建築を進める任意の事業について、土地区画整理事業の換地特例制度を措置すべきである。
(3)民間都市活動を支える都市基盤施設の整備について
都市の骨格を形成する都市基盤施設の整備は、民間都市投資を促す観点からも重要であり、国や地方公共団体等の公的セクターは、その事業実施の見通しを示した上で、計画的な整備を強力かつ機動的に推進することが求められている。
さらに、優良な民間都市開発を行うために必要な都市計画道路等の整備について、都市計画事業として弾力的に事業認可する仕組みや、民間都市開発事業者の発意と能力を活用する仕組みの整備が必要である。
したがって、次のような施策について検討する必要がある。
○ 優良な民間都市開発を行うための官民協働型の都市基盤施設の整備
優良な民間都市開発に呼応して都市計画道路の整備を機動的、重点的に実施することができるよう、道路整備の優先順位を定めている都市計画道路整備プログラムや都市計画事業認可の運用を見直し、弾力的に事業着手ができるようにすべきである。
また、民間都市開発事業に必要な都市基盤施設の整備を民間事業者の活力を活用して整備することができるよう財政的な支援措置を講じるべきである。
<基本的な制度構成のあり方>
○ 都市計画道路の整備に新たな観点を加え、土地の有効・高度利用を図るべき大都市の都心部や活性化を図るべき地方都市の中心市街地等においては、優良な民間都市開発に関連する都市計画道路について、民間都市開発とタイミングを合わせて事業認可を行うための運用改善が必要である。
○ また、民間都市開発事業に必要な都市基盤施設の整備を行う民間事業者に対する財政的な支援措置を講じるべきである。
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