都市計画法改正と市民合意、 |
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都市計画法改正と市民合意、市民参加のシステムとプロセス |
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| 市民活動法人 東京ランポ | |||||||||||||||||||||||||
分権まちづくり研究会 |
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はじめに 都市計画法や都市計画制度は、一般の市民にとってきわめて難解である。たとえば、都市計画区域をもつ市や区、町は都市計画図の裏面に用途地域、都市施設、都市計画施設、地区計画などを掲載している。これらは貴重な情報であるにも関わらず、そこから自らが住む都市の全体像を読みとることのできる市民は少ない。 しかし難解ではあっても、都市計画の具体的な手続き、たとえば都市計画決定や事業認可などに関心をもつ市民は多い。この関心の高さと難解さとの落差をどのように解消していくのかという課題は、国や自治体の課題であると同時に市民の課題でもなければならない。1992年の改正都市計画法によって創設された都市計画マスタープランは、都市計画を市民に近づけるという意味で大きな役割を果たしてきた。また、分権一括法による改正都市計画法は市区町村都市計画審議会を法定化し、そして2000年改正都市計画法では委任条例が拡大した。これらの動きは、条例の構成や運用次第ではあっても、また法律の限界があっても、より一層市民が参加、参画できる条件を広げてきた。 東京ランポは、市区町村の現場で活動する市民や市民活動団体のまちづくり支援を目的とするNPOである。この間、いくつかの市区における市民版・都市計画マスタープラン策定の支援(注1)、市区町村都市計画審議会条例化への提案、都市計画法改正に向けた旧建設省のパブリックコメントへの意見提出やヒヤリングなどを行ってきた。これらの活動はいずれも、どのようにしたら都市計画に市民の意見を反映できるかという視点からのものであった。 本稿は、こうした東京ランポとしての活動や、内部的につくっている分権まちづくり研究会の活動を通してみた市民意見反映のシステムやプロセスを、都市計画法改正との関連から考えてみたものである。 1. 都市計画マスタープラン策定過程における市民参加のプロセス 現在、東京都の市区町村における都市計画マスタープラン(以下マスタープラン)の策定状況は<表>の通りである。マスタープラン創設から10年になろうという現在、なお策定中の自治体があることは大いに興味深い。その原因として次の5点が考えられるが、総じてこの機会に積極的に市民参加のあり方を模索したところと、困惑してしまったところとの違いが明らかになったと言うことができる。けれでも策定中の自治体には、後発の利点を生かした工夫が期待される。 (1) 旧建設省がマニュアルを作成しなかったこと。これは、たとえば「緑の基本計画」については詳細なガイドラインが作成されたことと対比すると面白い。 (2) 東京都がマニュアルを作成しなかったこと。 (3)マスタープラン策定に「市民意見の反映」、すなわち市民参加を法文化したこと。このことによって、実に多様な市民参加のシステムやプロセスが試みられている(もちろん、形式的な市民参加にとどまったところもある)。 (4)市民の参加意欲が高まったこと。これは(3)があったからでもある。 (5)コンサルタントの使い方が変わったこと。丸投げに近い旧来のやり方では市民の批判が強く、コンサルタントは資料作成やワークショップのファシリテーターなど、補佐的な役割になってきている。 さて、マスタープラン策定過程の市民参加は、多様なシステムやプロセスが試みられたとはいっても、実験的、試行的なものであった。けれどもその後、総合計画(基本構想・長期計画)や環境基本計画の策定にあたって、より市民参加を充実、重層的に行う自治体も現れている(注2)。 ここでは、マスタープラン策定過程からみた参加のプロセスを、一定程度整理しておきたい(注3)。 (1) 市民意見に対して柔軟に対応したところ……「たたき台―素案―原案」の3段階で市民の意見を聞き、柔軟に計画案を修正した(例:杉並区)。 (2) 地域協議会等により原案作成を行ったところ……地域における住民参加組織(協議会、懇談会)などで地域別構想を作成し、それをたたき台として地域の会の代表者を含む全体構想策定組織(策定委員会など)で全体構想を検討した(例:中野区、国分寺市)。 (3) 市民原案が先行したところ……複数の市民原案づくりが先行し、提案された市民案をたたき台に策定委員会が検討を行った(例:狛江市)。 (4) 市民とのキャッチボールを繰り返したところ……多段階のアンケートやダイレクトメールなどにより、計画案の周知や市民の意見を汲み上げる工夫をこらした(例:豊島区)。 (5) 地区別計画は段階的に行うところ……地区別に市民参加を行いながら、全体構想の他に地区別計画は概念レベルにとどめ、詳細な地区別計画は段階的に作成することにした(例:足立区、多摩市)。 このように様々なプロセスがあるのは、当然であり、好ましいことである。しかし、都市計画決定が私権を制約する拘束的な計画であるのに対し、マスタープランは非拘束的な計画であるため、その実現のプロセスがあいまいになっている。マスタープラン創設以降のまちづくり条例は、マスタープランの実現性を担保することを主要な目的にしている(注4)。しかし多くの場合、たとえばマスタープランに沿って既存の都市計画道路をどうするか(見直しや変更、場合によっては廃止)、マスタープランを実現していくための地区計画等をどう策定するかなど、地域別方針を明確に打ち出しているところは少ない(注5)。 先行した自治体のマスタープランも、近い将来改定期を迎える。その際、マスタープランに事後評価を加えるとともに、実現可能性や実現プロセスにまで言及したマスタープランの改訂や、それを実現するための条例化が行われることを期待したい。そのためには、行政と市民との合意形成だけではなく、市民同士、市民間の合意形成も不可欠になる。 また、これまでの自治体基本構想・基本計画(総合計画)は抽象的な理念型がほとんどであったために、マスタープランがその役割を代行していた感もある。今各地ですすめられている総合計画の改定作業によって、より具体的な計画が策定されれば、マスタープランとの関係も明確になると思われる。 2.市区町村都市計画審議会における市民意見反映のシステム 東京ランポは分権一括法による改正都市計画法において、市町村都市計画審議会(以下審議会)が法定化されることを受けて、東京23区27市を対象に既存の審議会の運用状況調査を行い、新たな審議会に向けた提案を行った。さらにその後、改正都市計画法を踏まえた条例改正が行われたことから、改正された市区の審議会条例を調査・分析し、報告書にまとめた(注6)。 東京ランポが市区町村の審議会にこだわった主な理由は次の諸点であった。 (1)市区町村の都市計画決定権限が拡大するときに、審議会の運用はどのように行われるるべきか。 (2) 審議会は私権を制限する都市計画決定を審議する重要なところであるにも関わらず、一般の市民の関心が低い。どうしたら、市民の関心を高めることができるか。 (3) 法定以前の審議会はそれを公開するところはきわめて少数であった。会議公開をすすめていくにはどうすればいいか。 (4)同様に、審議会委員に市民を公募するところは目黒区のみであった。それはどのような理由であり、委員に市民枠を拡大していくためにはどうすべきか。 それでは、実際の審議会条例はどのように変わったであろうか。紙幅の関係から上記の報告書をもとに、2つの視点から見てみよう。 第1は、委員会構成、とりわけ市民委員がどうように位置づけられたかということである。市町村審議会の組織及び運営を定める政令は、審議会の組織を次のように規定した。すなわち、「学識経験者と議会議員は必置、関係政府機関、都道府県職員、当該市町村住民は任意設置」であり、「委員数は全体で5人以上35人」とされた(注7)。このことから、全体の委員数と委員の配分、任意設置に関わる関係政府職員・都道府県職員と市民の位置づけと委員数、などが課題であった。結果的には、次のような分析ができた。 a. 学識経験者と議会議員をあわせると、過半数を上回るところがほとんどである。特に墨田区では20人の委員のうち、両者で18人を占めている。 b. 両者あわせて過半数に満たないのは、練馬区ただ1つである(練馬区は住民代表が多い)。 c. 住民(市民、区民)の枠を設けなかったところもある。条例改正を行わなかった足立区と田無市(当時)のほか、条例改正を行ったところでも、2区4市あった。 d. 区民・市民の枠を設けたところは、委員数は2人から3人のところが多い。1人という、あきる野市の例もある。4人以上のところは6区1市あった。区部が多いこと、練馬区がきわだって多い(30人中11人)ことが特徴である。 e. 区民・市民を公募することを条例で規定したのは、江戸川区、昭島市、国分寺市の3自治体である。 以上のように、第1の視点から見ると条例改正により積極的に市民枠を拡大しようとしたところと、不十分なところとがあることが分かる。公募委員については規則や要綱(に位置づけたところもあり、その導入自治体は条例改正前と比較すると格段に増えている(規則、要綱は未調査)。なお、自治体全体の公募委員についても、導入する自治体が急速に増加している(注8)。 第2の視点は、会議公開など審議会の運用状況である。会議公開は、いまや当然のことになっているが、問題は条例に位置づけているか否かである。これは、市民参加条例や会議公開条例などの基本条例による場合と、個別の審議会条例に規定する場合とがある。調査時点では、町田市が「審議会等の公開に関する条例」(町田市公式ページhttp://www.city.machida.tokyo.jp/より情報公開と個人情報保護のページに条例が掲載されています)を定めているほか、都市計画審議会条例に会議公開を定めたのは、練馬区、調布市など2区3市ときわめて少数であった。多くの自治体は規則等による対応になっている。 そのほかで注目されたのは、福生市が公聴会を規定したことである。条文は「審議会は、必要があると認めるときは、公聴会又はその他適当な方法によって利害関係を有する者、学識経験を有する者等から広く意見を聞くことができる」となっている。規則等は未調査であるので断定はできないが、公聴会の開催を定めたのは福生市のみだと思われる。 審議会は今回の改正によって、都市計画決定に関わる調査・審議や区市町村長の諮問に応じた調査・審議だけでなく、審議会自らが「関係行政機関に建議する」権限も持つことになった。そのような権限の拡大に対応するためには、より一層市民委員の枠を拡大していくことが望まれる。 3.2000年改正都市計画法と市民参加のシステムとプロセス 改正都市計画法を踏まえて市民参加のシステムとプロセスを考えるときに、重要なのは次の2点である(なおここでは、市区町村におけるシステムやプロセスを考えている。都道府県のシステムは敷延できる課題もあるが、一応除外する)。 (1)都市計画制度、都市計画案、事業計画案など、市民への周知、情報提供に関わる課題や行政と市民との協働に関わる課題 (2)マスタープラン策定や具体的な都市計画決定続き、住民による地区計画案の申し出方法など、決定続きのシステムに関わる課題。 1) 市民への周知や情報提供、市民との協働のシステム 改正都市計画法は第3条に新たに3項を加え、「国及び地方自治体は、都市の住民に対し、都市計画に関する知識の普及及び情報の提供に努めなければならない」と規定した。この規定によって、「住民に対する知識の普及と情報の提供」は市区町村の責務となったわけであるが、具体的な方法はそれぞれの市区町村に委ねられている。 それでは、知識の普及と情報の提供にはどのようなシステムが必要であり、可能であろうか。ここで重要なのは、行政と市民との協働(パートナーシップ)の視点である。これまでも市区町村は、都市計画制度などに対する市民の理解を深めるための工夫を行ってきた。たとえば、まちづくり公社の設立による様々な普及啓発活動、まちづくり協議会への助成、コンサルタントの派遣などである(注9)。 しかし、今回の第3条3項の規定を単なる努力規定ではなく責務と捉えるならば、より一層の工夫が必要とされる。千代田区は、「計画策定段階や実現段階において、必ずしも住民・企業・行政相互の情報提供やまちづくりへの参加が充分ではなかった。今後は、従来からの情報提供に加え、計画段階から双方向の情報交換の仕組みを確立し、(中略)情報を共有しながらまちづくりをすすめていく」としている(注10)。 けれども、その双方向の情報交換の仕組みについて新たな提案はされていない。必要なのは、双方向の情報交換の「場」と運営のシステムである。その場は、従来のようなまちづくり協議会の機能を拡大していく場合と、運営をNPOが担うシステムが考えられる。それぞれの市区町村にそのようなNPOが存在しうるか、あるいは形成されうるかという危惧があるかも知れないが、それは杞憂である。市区町村が条例等で方針を明確にすれば、必要な役割を担うNPOが必ず育っていくと考える。 2) 都市計画決定手続き等のプロセス 改正都市計画法の計画決定手続きの付加(第17条の2)について、旧建設省は(a)任意措置である公聴会の義務化、(b)縦覧期間の延長、の2点をあげるにとどまっている(注11)。 しかし、この2点のみではいかにも不十分である。そこで、その他の手続きについて何点か提案したい。それは、2つの視点から考えられると思う。 第1は、計画案作成までのプロセスである。マスタープランですでに試みられている市民意見反映のプロセスを、都市計画決定手続きにどのように組み込んでいけるかということになる。それは次のようなプロセスが用意できるのではなかろうか。 a. 第17条1項に新設された「都市計画を決定しようとする理由を掲載した書面」については、その「理由」を条例等で列挙し、明確にする。さらにこれまで計画案は任意の公聴会などで市民の意見を聴取してつくられるが、その後は縦覧の手続きしか残されていない。今後は、行政案の作成過程を多段階、重層的に行っていく b. その作成のプロセスには、計画段階からの総合的なアセスメント制度を組み込むことが考えられる。環境面だけでなく、経済、社会的側面の影響も評価し、複数の代替案の作成も義務づけることができる。また、アセスメント制度は市民からの意見に対して事業者の回答が義務づけられるが、アセスメントだけではなく、多段階、重層的な作成過程の市民の意見に対しては、すべて個別に回答するすることを義務づけることも行政の説明責任として重要である。 c.さらに、市民による地区計画案の申し出が条例により可能になったことにともない、地区計画以外の既存の都市計画について、意見を申し出ることが可能になるように条例化することである。これらの手続きについては、地権者だけに限定せず、「利害関係者」のような形でできるだけ拡大することを考えなければならない。 第2は、最終案が作成されて以降の手続きである。 a. 縦覧によって提出された意見書については、「要旨」(第19条2項)だけではなく、全文を審議会に提出することとすべきである。その上で、すべての意見書に対する回答を審議会に義務づけることが必要である。 b. 市区町村から都道府県に対して都市計画案の申し出が可能になった(第15条の2)が、この案作成にあたっても、市区町村都市計画案と同様な手続きがとられる必要がある。 c.事業認可の際の事業説明会を条例によって義務づけることも必要である(本来は法改正を行うべきであるが)。これは土地収用法改正案が、事業認定手続にあたって、事業内容等の周知を図るための事前説明会の開催を義務づけていることからも必要なことである。 おわりに 東京ランポは、おもに東京都内を活動基盤としている。そのために、本稿も東京あるいは東京圏が検討に対象になっており、全国的にみた場合には不充分であることをお断りしなければならない。また分権まちづくり研究会での検討は、現段階では条例案を明らかにするまでには至っていない。都市計画法による委任条例と自主条例との関係も検討課題である。今後検討がすすんでくれば、何らかの方法で公表し、批判を仰ぎたいと考えている。 (文責:東京ランポ理事 伊藤久雄)
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