第三章 研修会の報告

この「NPOの立ち上げ期における事業と財源開発に関する実践的モデル構築事業」においては、2回の研修会(公開のセミナー)を実施しました。第一回は、立ち上げ期におけるNPOの事業開発に関するもの、第二回は財源開発に関するものでした。

それぞれの概要、および研修会の内容の要旨は次のとおりとなっています。

研修会の概要

第一回研修会

タイトル「NPOの事業開発 〜その戦略とポイント〜」
日時2002年2月27日(水)午後7時〜9時
場所北沢タウンホール11階“らぷらす”研修室
参加者数66名(9割がNPO関係者)
講師松原 明(シーズ事務局長)

第二回研修会

タイトル「NPOの財源開発 〜その工夫とポイント〜」
日時2002年3月7日(木)午後7時〜9時
場所三軒茶屋 キャロットタワー5階セミナールーム
参加者数85名(9割がNPO関係者)
講師松原 明(シーズ事務局長)

研修会の内容の要旨

第一回研修会「NPOの事業開発 〜その戦略とポイント〜」の内容

非営利とは「儲けてはいけない」ということではない。企業であれば、株主から出資を受けた会社が事業を行い、あがった利益を株主に分配する。NPOの場合は、会員などから資金を受け取り事業を行うが、利益があがっても出資者である会員などにそれを分配することはなく、利益は次の活動に充てる。この利益を分配するかしないかだけが営利と非営利の違いだ。

一般に、事業とは「対価を得る活動」と解釈されているが、NPOが行う事業の場合は、受益者から対価を得られないものが多く含まれる。例えば、野生動物保護を目的としているNPOの場合、受益者は野生動物であるが、野生動物は対価を支払ってはくれない。

しかし一方で、NPOの専門知識やネットワークを活用したい、という人たちもいることに気づくべきだ。例えば、鯨保護のNPOであれば、鯨を見たいという人のためにホエール・ウォッチングを企画することで保護活動の重要性を喚起しつつ、参加費から収入を得るという事業も可能である。また、鯨の生態を調査したいという政府などから委託を受け、専門知識を生かした生態調査事業も考えられる。つまり、NPOの事業とは、直接の受益者だけを向いて開発するのではなく、その周囲や関心を寄せる人を結びつけて開発するのが基本である。

また昨今は、金利低下などにより助成財団の資金も減少し、行政の補助金も小さくなる一方でNPO間の競争も始まっているが、これはチャンスでもある。これまで特定の団体にしか資金提供しなかった行政や助成財団が、その仕組みをオープンで公正なものとし、新しいNPOも参入できる仕組みに変えようとしている。NPOに必要なのは、いかに目的を果たすために、しっかりとした事業をつくっていくかであり、そのためには、自分のNPOが持っているオリジナリティ、知識、独自のノウハウを「優位性」として捉え、どう展開することができるか、またひとつの事業からどのように次の事業に展開させていけるかを考えなければならない。

ひとつひとつの事業には、開発期、立ち上げ期(離陸期)、成長期、成熟期、衰退期があるが、このなかでも開発期、立ち上げ期に、いかにオリジナリティを作れるか、専門知識とノウハウを蓄え、ネットワークを広げることができるかが鍵となる。この時期はたとえ赤字で持ち出しとなろうとも、「優位性」を作る時期である。

第二回研修会「NPOの財源開発 〜その工夫とポイント〜」の内容

NPOの資金は、大きく分けて、会費、寄附、本来事業からの収入、非本来事業からの収入、助成金、補助金、金利、借入金の8つに分けられる。それぞれの資金には、制約があったり、事業が終わって後に支払われるものなどもあり、こうした特色を知っておくことが重要だ。

こうした資金の種類とその使途はリンクしている。NPOの支出は、大きく「管理費」と「事業費」に分けられる。8つの資金のうち、助成金と補助金は事業費にしか充てられないものが多い。なぜなら、助成財団も行政も、支援したいのはNPO自身ではなく、NPOの事業による受益者だからだ。また、支援を停止した時に、NPOの運営が立ち行かなくなるという依存関係は作りたくないと思っている。

よって、NPOの固定的な費用である管理費は、その他の資金に求めなければならない。会費や寄附金は自由度が高いが、これらだけで運営できるNPOはきわめて少ない。また、寄附金のなかでも事業への指定寄附は、使途が限られてしまい管理費に当てられない。対価を得る事業収入からのお金は自由度が高いが、その中でも行政などからの委託事業は実費精算方式であり、事業経費である人件費などには充てられるが、委託事業以外の管理費分は作れない。よって、それぞれの資金の特色を知り、複数の資金を組み合わせて管理費と事業費の両方を作っていく必要がある。

財源開発は事業開発と密接にリンクしている。財源を開発する時は、NPOの事業をいくつかのブロックに分け、それぞれからどのような目に見える明確な成果(アウトプット)が得られるのかを整理する必要がある。その成果を示しアピールすることで、ブロック毎の資金を得ることが可能となる。

ブロック分けされた事業に資金を求める段階では、資金の提供者である財源側のニーズもよく知る必要がある。助成財団や基金は、NPOに助成する時には、自らの目的(ミッション)も果たしたいというニーズがある。企業は、企業イメージの向上や社員のボランティア意欲を満たしたいというニーズがある。一般の個人寄附者も、社会へ貢献しているという実感が欲しいというニーズがある。こうしたニーズを十分に理解し、これらに応えられる仕組みを開発することで、資金もついてくるのである。

立ち上げ期の資金調達で最初にぶつかる壁は「信用」である。信用のつくり方には、理事に著名人や専門家に就任してもらうなどの「人の信用を借りる、」という方法や、新聞や雑誌に紹介してもらい、これらのコピーをまとめて「パブリシティ集」を作ったり、しっかりした「年次報告書」「案内パンフレット」を作るなどのテクニックもあるが、もっとも重要なのは、開発期と立ち上げ期で、無理をしてでも「実績」をつくることである。最初は持ち出しになっても事業を興し、専門性を深め、「優位性」をつくることがその後の資金獲得につながるのである。

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