最近、「NPO(非営利組織)をつくりたい」という方が増えてきています。
1998年にNPO法がスタートしてから、NPO(非営利組織)への関心が高まり、全国各地で「NPOをつくろうと思っている」という声をたくさん聞くようになりました。
NPO法では、10人の会員がいて、書類をきちんと作成すれば、4ヶ月弱でNPO法人をつくることができます。このことから「NPOをつくるのは簡単」といわれています。
「NPOは、企業、行政と並ぶ、新しい社会の柱」とか、「NPOは、米国では大きな雇用の担い手となっている」という新聞などの記事もしばしば読みます。
「よし、じゃあ私もNPOを作ってみるか」という気になられても不思議ではありません。
でも、そこで、少し待ってほしいのです。
NPO法人をつくるのがいかに簡単だからといって、本当に法人化したり、団体をつくって上手くいくのかどうか、事前によく考える必要があります。
実際、「NPO法人化したけれど、収入のめどがたたない」「法人化したけれどもメリットがない」という声を最近よく聞くようになりました。
「面倒なだけなので法人を解散した」という人も増えてきています。
NPOを立ち上げることは容易ですが、法人化するしないに係わらず、NPOを継続していくこと、NPO活動を発展させていくことはそれほど容易なことではありません。
このハンドブックでは、NPOをつくりたいと思った人が、はじめに考えておかなければならないもっとも大切な「事業」と「収入」のことについて説明します。
NPOを立ち上げたい人の関心は、多くの場合、何らかの目的を追求したり、ある活動を行うことにあります。
「障害者が街中で暮らせるように移送サービスを提供したい。」「浜辺の環境を守るためにクリーンアップ活動を強化したい。」「高齢者が一緒に集まって食事できる場所をつくりたい。」
このような活動は、企業のように利益を得ることを目的としていません。企業ならば、まず事業を企画する際に、その事業からの収入と支出を見通し、長期的には収入が支出を上回るように企画することは当たり前の話です。
しかし、NPOの活動というのは企業と違い、その活動対象から、サービスに対する十分な対価を得ることができない場合が多いのです。
たとえば、「浜辺の環境を守るためにクリーンアップ活動を強化したい」といっても、いくら浜辺をきれいにしても、浜辺がお金を払ってくれるわけではありません。
いきおい活動を企画すると、支出ばかりの計画になって、どこから資金を得るかということがわからないで途方に暮れるということも少なくありません。
NPOを立ち上げたけれども、十分な資金の目途が立たないので休止してしまったという話もよく聞きます。
NPOを立ち上げる時に、どのようにすれば資金的に活動を継続していけるかということについて、事前に十分検討しておく必要があるのです。
このハンドブックは、NPOを立ち上げる時や、その後活動を継続していく時に考えなければいけないことを、主に資金面の問題から解説した入門書です。
まず、NPOが活動するため資金には何があり、それぞれどのような性格の資金なのかを理解することが、資金獲得のスタートとなります。と同時に、NPOというのは、どのような財源からどのような事業モデルを使ってそのような資金を得ていくのか、を理解することが重要になってきます。
さらに、事業を立ち上げたり、組織を継続していく上で必要となるNPO運営の基本的な考え方も学ぶ必要があるでしょう。
そこで、このハンドブックでは、以下のような3ステップから説明をしていきます。
まず、「STEP1 NPOの基礎知識」で、NPOの資金面に係わる基本的な知識を説明します。収入面から見た、NPOの典型的な事業モデル。目的と事業の関係、「事業」をどう捉えるか、事業の発展段階とそれぞれの特徴などについて解説します。
次に、「STEP2 NPO経営の基本」で、NPOの事業開発や財源開発する時に念頭に置くべき考え方を解説します。財源のニーズ、事業の優先順位やミックスのさせ方などについて説明します。
「STEP3 事業開発と財源開発」では、事業開発と財源開発の基本的手法を説明します。立ち上げ資金の作り方、助成金申請書のポイント、事業分割や事業統合という手法、事業の発展段階と財源開発の方法などを解説します。
このハンドブックを作成するにあたっての基本的な方針というのは、極めてプラグマティックなものです。 すなわち、もっとも実践的なノウハウというのは、行動や活動を規定する基本的な「考え方」の中に存在するというものです。
NPOの経営の現状を見ていると、「非営利だから対価を得るサービスはしてはいけないか、廉価でしなければならない」「事業と運動とは対立する」「会費や寄付で活動をまかなうべきだ」「収益が上がる事業というのは本来事業とは別に立てるものだ」「NPOは公益的な活動をしているのだから行政が支援すべきだ」といったさまざまな誤解が、NPOの経営や自立を阻害しています。
基本的な考え方が適切でないと、どのようなノウハウを学んでも、組織内部で合意形成ができなかったり、ノウハウの応用ができなかったりして、使えなくなってしまいます。
基本的な考え方をマスターすることが、NPOの立ち上げにおいて最も重要で、実践的なことだということを理解してください。
また、この調査プロジェクトにあたっては、分野別に事業モデルの差異なども検討しましたが、このハンドブックにおいては、分野毎のモデルを提示するよりも、事業の財源との関係でモデル化する方が汎用性も高く、実用的であるとの判断から、分野を越えた事業モデルを作成し説明しています。
今日のNPOの世界においては、むしろ分野の壁を超えた事業や財源をどう開発していくかが重要になってきているのです。
NPO(エヌ・ピー・オー)とは、英語のNon-profit Organizationsの頭文字(pは小文字ですが)をとって省略したものです。直訳すると「非営利組織」となります。
これは、米国で、私立学校や病院、市民活動団体やボランティア団体などを含めた「企業でない民間組織」一般を呼ぶときの名称です。
一方、米国と違って日本では、NPOは、市民活動やボランティア活動を推進している団体に対する呼称として使われています。また、1998年にNPO法がスタートしてからは、この法律で法人格をとったNPO法人だけを指してNPOと呼ぶ場合もあります。
日本では、NPOという言葉の母国である米国とは、その意味する対象団体の範囲が違うことに注意が必要です。
これは、両国の歴史的・社会的な背景の違いに起因しますが、NPOという言葉が意味していることは共通しています。
つまり、NPOというのは、「特定の社会的目的を追求するための、営利を目的としない(非営利の)民間の自発的な組織であって、政府から独立しており、継続的になんらかの社会サービスを提供している団体である」というものです。
非営利組織という点では、日本でも、学校や社会福祉法人・公益法人などもNPOであるといえるのですが、「民間の自発的な活動であり、政府から独立している」という点で、米国的なNPOの意味からは、はずれてしまうということなのでしょう。
日本では、戦後長い間、福祉や環境保護といった公共のための事業は、政府や政府を補完する団体(社会福祉法人や公益法人など)が行うという考え方が支配的でした。
しかし、70年代後半に入ると、行政の公共サービスがだんだん硬直化してきて、市民ニーズに合わないという事態が起こってきました。行政サービスは、在宅介護や難民支援や地域の自然保護などといった新しい社会のニーズに上手く応えきれなくなってきたのです。
このような行政サービスの限界に対して、70年代から80年代には、福祉や環境保護、国際協力といったさまざまな分野で、新しい市民ニーズに対応した、市民が主体となった利益を求めない活動をする団体が次々と生まれてきました。これらの団体は、ボランティア団体とか、市民団体、市民活動団体などと呼ばれました。また、後には、NPOとか、国際協力の分野では、NGOなどと呼ばれていくようになりました。
90年代に入ると、行政サービスに限界があることが多くの人々に理解されるようになってきました。また、財政危機により、行政自身も公共サービスをどんどん増やしていくことがもはやできないということを認めるようになりました。
こうして、市民からも、行政からも、行政サービスの様々な限界を超えて公共サービスを提供できる存在としてのNPOに注目が集まってきました。
とりわけ、95年の阪神・淡路大震災の際には、これら小さなNPOが多数被災地支援に駆けつけ、社会的評価が一気に高まりました。行政側にも、NPOと対立するのではなく、NPOと協力して様々な社会的課題に取り組んで行こうという意見が主流になってきたのです。
1998年に、NPOの活動をいっそう促進するためにNPO法(特定非営利活動促進法)が議員立法で作られました。
NPO法は、一言でいうと、ボランティア団体や市民活動団体などのNPOが簡単に法人格を取得できる制度であるといえます。10人の構成員がいて、定款などの書類を整え、都道府県や内閣府に申請すれば、4ヶ月以内にほとんどの団体がNPO法人(特定非営利活動法人)となることができます。
この法律は、市民社会(契約社会)の中で、NPOがきちんとした契約主体として活動できるようにその組織についての制度を定めたものだといえます。企業で言えば、商法に該当するものです。したがって、NPO法には、法人となる要件や法人の組織、運営の基本的ルールなどが規定されています。
しばしば、NPO法については、政府がNPOの活動をバックアップし、補助金や税制で支援することが目的でつくられた法律であるという「誤解」があるようです。「NPO法人になったら行政からの支援が自動的に受けられる」と考えている人もいますが、これは正しくありません。
あくまでも、NPO法というのは、市民が自発的に社会貢献活動をしたいと考えた時に、それが組織としてできるように、法人制度を整えたものです。
NPOは、基本的には、民間の自由な活動であって、政府から独立した活動であるというのが大切なところです。個々の活動を行政が支援するかどうかは、NPO法とは別の話なのです。
NPO法人の申請方法等は、第2章をご覧ください。
NPO法人になることのメリットというのは、基本的には、団体が契約主体として法的に認められるということにあります。
したがって、団体が契約によって活動を行おうとする場合や、事務所を借りる場合、また、土地などの資産の所有がしやすいというメリットがあります。
また、法的な地位は、外部からの信用を高めることにつながります。
一方、毎年、都道府県や内閣府に事業報告書や会計報告書を提出しなければならないとか、法律や定款に則った運営が必要になってくるなどの事務上の煩雑さは増えます。また、組織変更や住所変更をしたりする場合に、所轄庁への再認証の手続きが必要になるなどの手間もかかるってきます。これらの手間が最大のデメリットだといえるでしょう。
2001年10月から、NPO支援の新しい制度として、NPO支援税制(認定NPO法人制度)がスタートしました。これは、NPO法人のうち一定の要件を満たすものとして国税庁長官の認定を受けたNPO法人が「認定NPO法人」となり、この認定法人に寄付をした個人や法人は、課税所得から一定の金額まで寄附金を控除できるという制度です。
この制度により、認定NPO法人になると寄付を集めやすくなるというメリットがあります。
ただし、認定NPO法人になるための要件は、「過去2事業年度の総収入金額等に占める受入寄附金額等の割合が3分の1以上あること」などといった厳しい内容となっています。そのため、2002年4月末段階で、認定NPO法人となれた団体は、わずか5法人にとどまっています。
制度はできましたが、ほとんど使えないのが現状なのです。
税制の他には、NPO法人向けの融資制度もあります。信用金庫や労働金庫が行っています。また、ボランティア活動をする際の保険などもボランティアセンターなどを通して加入できます。
世田谷区では、まちづくり活動のために助成金を出す仕組みをもっています。中央省庁でも、NPO支援のための助成制度やモデル事業の委託などを実施しています。
法人化支援のための相談窓口も設けられています。この窓口には、民間のものと行政が開設したものがあります。有料の窓口もありますので、相談する前に、どのような相談をどのような体制で行っているのかを確認しておいてください。
また、各自治体でNPO向けのマネジメントセミナーなども開催しています。
これらの制度の概要などの情報は、第2章を参照してください。
NPOの組織としてのキーワードは「非営利」という点にあります。
この場合、「非営利」というのは、そのさまざまな活動から得た利益(剰余金)を、団体の構成員(会員や役員など)に分配しないことを意味しています。
NPOにおいては、さまざまなモノやサービスを対価を得て販売しても、それは「非営利組織である」ということとなんら矛盾はしません。そこであげた利益を分配せず、その団体の目的や事業に再投資すればいいのです。つまり、団体が「有償」でサービスを提供することと、「非営利」とは別の話だということです。非営利組織だからといって、サービスは無償でなければならないというわけではありません。
もう一つ、ボランティア活動の原則である「無報酬」と「非営利」との関係も理解しましょう。
NPOでは、個人はボランティアとして自分のためには稼がないで活動するけれども、組織のためには資金を作っていくということが当然あります。個人が労働の対価をもらわないという「無報酬」と、組織が利益を分配しないという「非営利」も別の概念なのです。
また、NPOでは、活動を行っていくために有給のスタッフを雇うことも必要となります。この場合のスタッフへ払う給与や報酬も、NPOにとっては活動のための経費であって、利益の分配ではありません。有給スタッフを雇う(報酬を出す)ことと、非営利とは矛盾しないことだと理解してください。
NPOは対価をとる事業ができるし、有給でスタッフを雇うことも、ボランティアの参加を求めることもできるということを理解することは、活動の幅を大きく広げるものとなります。
NPOの収入を構成する「資金の種類」(ここでは「資金」と呼びます)は8つあります。
それは、会費、寄付金、本来事業からの対価、非本来事業からの対価、助成金、補助金、借入金(つまり借金です)、金利等です。
会費は、会員からの定期的な納入金です。ただし、会費にもいろいろな性格があります。とりわけ、資金ということで分けると3つの種類があります。一つ目は、団体の構成員(NPO法人の場合は「社員」)からの会費です。二つ目は、賛助会員やサポーターからの会費で、寄付金的な要素が強いもの。3つ目は、ニュースレターの購読会員や施設などの利用会員といった会員が払う会費で、なんらかのサービスやモノの対価となっている会費です。この三つ目の会費は、正確には会費収入というよりは、対価による収入と分類すべきものです。
寄付金は、見返りをもとめずに提供されたお金です。
本来事業からの対価というのは、たとえば福祉のNPOが福祉サービスを提供して利用者から利用料をもらう場合のように、その団体の目的とする事業から得た対価収入を指します。委託事業もたいていこの収入に含まれます。非本来事業からの対価というのは、チャリティバザーやチャリティコンサートなど、団体の本来目的の事業ではない事業から得た資金のことです。
助成金というのは、民間の財団や行政の外郭団体・基金などが、NPOの活動を支援するために出す資金です。一方、補助金というのは、行政が直接にNPOの活動を奨励するために出す資金のことです。
金利等は、銀行に預けたお金の利子や投資収益ですが、資金としては一般的ではありません。
8つの資金の拠出者は、ここで「財源」と呼んでいるものです。
助成金の財源は、助成財団や行政のつくった基金などです。最近、NPOに対する関心が強まり、どんどん助成財団や基金などが、NPO向けの助成プログラムを作ってきています。
補助金の財源は、中央政府や自治体です。補助金は実際たくさんあるのですが、長い歴史の中で、すでに支出先が固定化してしまっている補助金が多数を占めています。自治体によっては、補助金を公募制にしていますが、まだ少数派です。最近の行政の財政危機を受けて、補助金はなかなかアプローチができない状態となってきています。
一方、対価収入のうち、事業委託の財源の多くは行政です。近年、公募して審査して決めるという方式が増えてきています。また、近年、NPOの専門性などが評価され、企業から調査や商品モニターなどをNPOに委託する事例もでてきています。対価収入では、規制緩和の影響で、介護保険事業や、保育園の事業などの行政の補完事業が、新たにNPO法人ができる事業となってきています。このような介護保険事業をはじめとする、さまざまなサービスの利用者・購買者も対価収入の財源となります。
会費や寄付金などは、一般市民や団体が財源となります。また、寄付金に関しては、大手の企業などは社会貢献部などという部署を持っていて、NPOの事業に寄付をしたりしています。
借入金の財源としては、労働金庫とか地域の信用組合などが貸し付ける制度を最近始めています。
これらの財源に関する情報は、第2章に掲載してある情報源にあたるといいでしょう。
NPO活動のスタートは、まずその「目的」にあります。
「地球環境を守りたい」「年をとっても暮らしやすい町にしたい」「海外の難民の窮状をなんとかしたい」。このような目的が、NPO活動の始まりとなります。
しかし、同じ目的をもっていても、そこで行う活動は千差万別となってきます。
たとえば「地球環境を守りたい」と考えているNPOの間でも、様々な活動があります。あるNPOは各国政府に対して地球温暖化防止条約に加盟させることに取り組んでいます。また別のNPOは、家庭において環境家計簿をつけることを普及する運動を展開しています。また、違うNPOは、学校などに対して環境教育を行う活動を行っています。
つまり、NPOは、特定の目的をもとに、そのNPOごとに、働きかける対象や働きかける内容・手段をさまざまに開発していくことになります。これがNPOの専門性を生み出していきます。
この働きかけの対象と働きかける内容、そして、その期待される結果というのが、NPOの「活動」となってきます。
さらに、「事業」といったときは、その活動がいかにして経済的に成り立っていくのかという点まで含めたものです。各国政府に政策提言をしていくために、その資金や人などの経営資源をどのようにして確保していくのか。活動とそれを支える資金集めの継続的な組み合わせをここでは「事業」と呼ぶこととします。しばしば、対価収入を得る活動だけを指して「事業」という言い方をする場合もありますが、ここではその意味ではありません。
そして、その事業の典型的な類型を「事業モデル」と呼ぶことにします。
NPOの事業モデルが、企業のビジネスモデルと大きく違う点は、NPOの事業モデルでは、多くの場合、その活動の対象からまったく対価を得られないか、十分得られない活動があり、それを支える資金を生み出す仕組みが必要となることです。
もし、その行う事業が、相手から十分対価を得られるようなものであるか、将来的に十分対価を得られるようなものであるならば、NPOではなく企業としてスタートする方が良いでしょう。しかし、NPOには、社会的な目的があります。この社会的な目的は、その達成のために、ほとんどの場合、対価を得られない活動を必要とします。
たとえば、「年をとって体が不自由になっても安心してくらせるまちづくり」という目的を掲げたとします。そして、介護保険事業による介護サービスの提供を始めたとしましょう。しかし、介護サービスだけでは「年をとって体が不自由になっても安心してくらせるまちづくり」はできないでしょう。地域に必要とされる移送サービスや日常の相談のサービスをどう確保するのか。外出したときにバリアフリーな環境をどうつくるのか。年をとった場合に、地域コミュニティへの参加の方法をどう確保するのか。これら次々と新しく生まれてくる課題を解決していかなければ、決して「年をとって体が不自由になっても安心してくらせるまちづくり」は実現しません。
また、環境保全や人権擁護、難民支援といった活動は、活動対象から対価を得ることはほとんど不可能だといえるでしょう。
NPOの事業モデルでは、「活動対象から対価を得られないけれどもそれを事業としてどう成立させるか」が、最大のポイントとなるのです。
対価を得られない事業をどういう資金で成り立たせていくか、これがNPOの事業モデルの基本となります。これにはいろいろなモデルがありますが、入門的なものをあげます。
まず、「ボランティア・モデル」とでもいうべきものがあります。つまり、そもそも経費をかけないというモデルです。活動にかかる人手をボランティアでまかなってしまい経費が発生しないようにするというものです。ボランティア個人が自分のお金で活動をまかなう場合もしばしばあるので、「持ち出し」モデルと呼ばれることもあります。
「会費・寄付金モデル」は、会費や寄付金を集めて事業の経費をまかなっていくモデルです。若干の集会での資料代などを徴収したりしますが、基本的には会費やカンパなどで事業を支えていこうとするものです。
この2つとは違い、事業の資金を行政の補助金や委託事業に求める事業モデルがあります。「行政補完モデル」とでもいうものです。このモデルでは、自分のNPOが行っている活動は、行政が本来すべき活動であるにもかかわらず、NPOが代行して行っているのであるから、資金は行政が出すべきであるという考え方に基づくことが多いようです。
また、「資金ミックスモデル」では、会費や寄付金、助成金、補助金、対価収入などのさまざまな資金をミックスさせて、一つの事業の経費を生み出していくものです。
最近多くの団体が採用している「事業ミックスモデル」は、組織のもとで、複数の事業を行い、収益の上がる事業と収益の上がらない事業を並立させ、収益の上がる事業からの収益で収益の上がらない事業へ資金を移転して経費をまかなっていく事業モデルです。
5つの事業モデルも時代や政府との関係の変化によって移り変わってきています。
福祉や社会教育などの分野では、「ボランティアモデル」「会費・寄付金モデル」「行政補完モデル」が長い間主流でした。とりわけ、福祉国家の考え方が強かった時期は、「ボランティアモデル」からスタートして「会費・寄付金モデル」へと広がり、「行政補完モデル」を目指すという発展段階がしばしばとられてきました。
一方、国際協力や環境保全などの分野では、一時期、政府との対立などもあり、「ボランティアモデル」や「会費・寄付金モデル」または、非本来事業からの対価収入を柱とした「事業ミックスモデル」をとる団体が多かったのですが、90年代にはいると、政府との関係も大きく変化し、「行政補完モデル」や「資金ミックスモデル」「事業ミックスモデル」が広まってきています。
NPO法成立の前後からは、NPOの自立性を確立していこうという動きが主流的なトレンドとなってきています。政府もNPOに行政の補完を求める場合も少なくありませんが、新しいパートナーシップづくりへの模索も始まっており、その中では、NPOの自立性・対等性を尊重しようという意識が生まれてきています。
このため、あらゆる分野で、「資金ミックスモデル」や「事業ミックスモデル」が主流となってきているのが現在の状況です。この傾向は今後さらに強まると思われます。
「事業ミックスモデル」でも、かつては、収益の上がる事業として、チャリティバザーやコンサートといった本来目的以外の収益事業を営む事例が多かったのですが、近年は、本来目的事業を組み合わせて、事業をミックスしていく例が増えてきているのが特徴です。
NPOでも、「製品」や「サービスの品目」という概念をしっかり持つことが重要です。
たとえば、野鳥の保護を目的としているNPOが、野鳥の生態についての普及啓発を事業としている場合を考えてみましょう。この事業の下で、一般の人が毎週日曜日に自由に参加して野鳥を観察する会を催しているとすると、この催しがこのNPOの「製品」や「サービスの品目」となります(以下「製品」と呼びます)。
このNPOが、この催しとは別に、夏休みなどの小・中学生向けの野鳥観察会を新しく立ち上げて、学校に参加を呼びかけたりした場合は、NPOは新しい「製品」を開発したということができます。
また、海外の難民を支援しているNPOの場合、寄付金を集め、現地の難民に生活物資を手渡す活動なら、これが一つの製品となります。このNPOが、新たに、日本から医療チームを送るので、そのチームの活動費を寄付金で集める場合には、新しい製品を開発したということになるわけです。
ただし、NPOの場合、事業と製品との区別はきちんと明確に分けられるというものではありません。事業と製品が一体化している場合も多いですし、製品と思えるものを「事業」と呼んでいる場合もあります。
しかし、NPOは一つの事業の下に、さまざまな製品を提供していくことができるということと、製品は開発するものであるということを理解しておくことは、NPOの経営にとってとても重要なことです。
NPOがどう事業の資金を作って、どう使っていくかという視点から、事業モデルを見るとき、「生産型」と「消費型」とでも呼ぶべき2つのタイプがあることを理解しておくことが重要です。(この呼称はもう少し検討が必要だと思いますが、ここではとりあえずこう呼びます)
生産型というのは、製品を販売したり利用してもらえばもらうほど、事業が拡大し、資金も集まるようなタイプの事業モデルです。先に述べた野鳥観察会の開催などは、この事業モデルです。
製品が利用されればされるほど、収入と支出が拡大していく形態です。
企業が商品を販売するのと同じなので、理解しやすいと思います。この事業モデルの場合、企業で使っている「損益計算」や「損益分岐点」といった考え方が利用できます。
一方、消費型というのは、ある事業をするのに、最初からまとまった資金をつくる必要があり、資金を作ることと事業の遂行が分離している事業モデルです。たとえば、ある河川の環境調査をすることを企画したとして、300万円の資金が必要だとします。すると、助成金や寄付金などで、まず300万円を作って、それから調査を行うというような事業の形態です。
この助成金が後払いであったとしても、また、寄付を集めながら事業を遂行していくにしても、基本的には「消費型」であるといえます。
この消費型においては、まず事業を遂行するには、いくらかかるのかという経費の見積もりが重要になってきます。そして、その経費をまかなえる資金をどうやって集めるかを考えるという手順になるわけです。
生産型と消費型の2類型は、事業開発などにおいて重要な概念となってきます。
資金作りという点で見た場合、NPOの世界は、基本的に競争の世界です。
介護保険事業などでは、企業や社会福祉法人との競争がすでに大きな関心事となっています。
それだけでなく、環境保全や人権擁護、平和の推進といった一見競争とは縁がないかのように見える活動であろうとも、いったん「事業」となれば、そこは競争の世界となってきます。
たとえば、環境保全の事業を行おうと考えて、助成金を助成財団に申請するとします。助成財団の多くは、公募で申請を受け付けていますから、そこでは、他のNPOとの助成金をめぐる競争が発生するわけです。その助成金を取れるかどうかで、活動ができるかどうかが決まってくるとなれば、いやが応でも競争に勝たなければなりません。勝つと考えると、助成財団に、自分のNPOの活動がより他のNPOの活動より価値があると認識してもらわなければならないわけですから、他のNPOの活動よりもより価値がある活動を提案しなければならないということになり、活動の間での競争にもなっていくわけです。
会員や寄付を集めることでも同様です。社会には問題が山のようにあり、それは環境保全や人権擁護といった一つの分野だけをとっても、さまざまな問題があります。市民や企業は、さまざまな問題に取り組むNPOから、頻繁に、寄付や会員になってくれるような依頼を受けています。けれども、市民や企業の寄付金や会費にあてられる資金には限界があります。ある寄付者は、「寄付をするならより価値ある寄付をしたい」と言っていました。同じ金額でも、より効果があり魅力的な活動へ寄付したいと考えている人たちがたくさんいます。この人たちに寄付や会員になってくれることを求めるのならば、NPOの活動は競争環境にあることを理解する必要があります。
NPOの事業(製品)にも、発展段階があり、寿命があります。
それはNPOの競争環境や、社会環境の変化によってもたらされるものです。たとえば、あるNPOが福祉施設の見分け方に関するセミナーを始めたとします。スタートしたときは、なかなか利用者が増えなかったとしても、ある時期から上手く軌道に乗ってきたとします。そして、利用者が増えていきます。しかし、人気が出てくれば、企業も始めるかもしれません。政府も同じようなセミナーを行うことも十分考えられます。こうなってくると、競争の中で、セミナーの必要性や収益性を問い直さなければならなくなります。制度が変わって、福祉施設に関する情報公開などが進むこともあるでしょう。そうなれば、セミナー自体が不要になることも考えられます。
このようにNPOの事業は、以下のようなサイクルをたどると考えておく必要があります。
消費型モデルの場合は、少し適合しない点もありますが、十分応用できると考えます。
NPOの経営において、一番大切なことは、NPOは民間の自立した組織であり、活動だけでなくその財政的な継続性を自力で確保していかなければならないということです。
しばしば、NPOは「公益的」な活動をしているので、行政が面倒をみるべきであるとか、良い活動をしているのだから支援されるべきだという議論を聞きますが、これは正しくない認識です。
それは、企業がいくらいい商品を作っていても、その商品が売れて利益が上がることとは別の話であることと同じです。
また、一定の行政の監督を受けるからといって、NPO法人は、行政の傘下にある団体でも、行政の庇護の下にある団体でもありません。会社でも、様々な法律で一定の行政の監督を受けていますが、だからといって行政の庇護の下にないのと同様です。
NPOの経営は、目的を達成するための活動を生み出していくと同時に、組織と活動とを存続させていくための資金を自前で作り出していくという2本の柱から成り立っています。
「自ら稼ぐ」ということが、経営の重要な基本なのです。
もちろん、行政からの補助金や財団からの助成金などを受けることや、行政から事業を受託することは、この資金を作り出していくということの一つの方法です。しかし、助成金や補助金、委託事業は必ず受けられるものとは限りませんし、受けることができたとしても、継続的に受けられる保証はありません。民間助成財団の助成金は、むしろ一度受けた団体には出されなかったり、一定期限以上は出されないなどの制限が当たり前です。 NPO経営は、いかにして資金を生み出すかということと日々向かい合うことでもあるのです。
NPOの自立性・独立性を理解し、NPOの世界が競争社会の中にあるという認識を持つと、NPO経営の中心的テーマは、目的に対して成果があがる活動を生みだし、行うことだけではなく、資金を出してくれる人や団体にとって魅力的で価値ある活動をどう作るかということになってきます。財源を見込んだ事業開発や製品開発が必要になるわけです。
企業が購買者の見込みもないのに商品を開発しないのと同様、NPOも、その事業の財源の見込みを立てつつ事業や製品を開発していく必要があります。会費でまかなうのか、寄付金なのか、それとも料金(対価)を取るのか、助成金や補助金を申請するのか、それらを組み合わせて資金ミックスモデルでいくのか。事業や製品を開発するときには、その事業に適した財源を考えなければなりません。また、その財源を獲得するためには活動にどのようなアピールポイントを持たせるべきか、つまり財源のニーズは何かということを最初から考えて事業開発をしていくことが不可欠となります。財源の確保やそのニーズから事業開発をしていくことを、ここでは「財源指向の事業開発」と呼ぶことにします。
財源によって、適した事業とそうでない事業があります。調査・研究やイベントの開催、新規事業の立ち上げ企画・実施などとった事業は、助成金や補助金が出やすい事業となっています。
一方、政策提言や政治的な活動、政府を批判するような活動といった場合は、企業や助成財団といった財源は向いていません。このような活動は、その価値観に共感する個人が会費や寄附金で支えていくことが必要になります。
財源によって、事業を選択することが重要になります。
NPOの事業開発に「財源指向」の考え方が必要だとはいっても、収入の見込める事業ばかり追求していて、本来達成しなければならない目的が置き去りにされては何のためにNPOを経営しているのか分かりません。目的の追求を考えた活動を計画し、実施していくことが重要であることは言うまでもないことです。
ここでは、目的を達成するためにより効果があるかどうかという視点から事業開発をしていくことを「目的指向の事業開発」と呼ぶことにします。
ただ、目的指向といっても、通常は、目的を達成するために必要となる活動は、実に多様にあるということを押さえておく必要があります。
たとえば、ある地域の自然を守りたいといっても、そのための活動として、その地域の自然の現状調査、自然を守るための政策提言、その地域の自然を知ってもらうためのセミナーや体験学習の開催、開発反対のデモなど、実にさまざまな活動が考えられます。
どの活動が、今必要とされているのか。どの活動が将来重要となるのか。どの活動がより効果があるのか。そのような視点から、活動に優先順位をつけていくことが重要です。
それと同時に、目的指向の事業のうち、財源が見つかりそうな事業とそうでない事業を分けておく必要があります。また、財源指向の事業をいくつか企画したとすると、その事業の中での目的への貢献性もきちんと把握しておく必要があります。
当然、目的への貢献性が高い事業に優先順位をつけて、その事業から取り組んでいくことができるようにするためです。
NPOの経営では、この「目的指向」と「財源指向」のバランスをいかにとっていくか、ということが大きな課題となります。
このバランスの取り方としては、大きく分けて2つの方法があります。
一つ目は、一つの事業企画の中でバランスをとっていく手法です。
この手法では、さまざまな事業を、目的指向性の高さと財源指向性の高さのそれぞれからリストアップしていきます。そして、どちらも一定の高さが認められる事業から企画していくか、もしくは、財源の見込みをつけて、その財源にあった事業の中から、目的追求に貢献する事業を企画する、または、その逆の手順を踏むということになります。
もう一つは、事業ミックスモデルを採用し、複数の事業の組み合わせでバランスをとっていく手法です。
NPOの場合、すべての事業が独立して資金を得られるとは限らないということは、STEP1で解説したとおりです。目的指向性の高い事業だが収入の見込みが立たない事業を行う場合は、他の財源指向性の高い事業でその不足分の経費を補っていくわけです。この場合には、目的指向性の高い事業と同時に、財源指向性の高い事業の開発が必要となってきます。
ただ、この場合は、財源指向性の高い事業だとしても、その事業が準備期や立ち上げ期または成長期の初期にある場合は、十分な収入を生めないということになります。事業ミックスモデルを活用できるのは、一定財源志向のある事業が成長してからであり、団体の立ち上げ期からこのモデルを採用することは難しいのです。
NPOの経営においては、常に新しい事業や製品を開発していく必要があります。
それにはさまざまな理由があります。
一つは、NPOの競争環境の存在です。NPOが社会にアピールできる事業を生み出せば生み出すほど、他のNPOや政府、企業などもその事業へと参入してきます。財源からの選別も強化されます。すると、その事業をさらに発展させた新しい事業を生みだしていくか、まったく別の事業を生みだしていくかという選択に迫られます。
財源側のニーズも新しい事業を望む傾向があります。助成財団の助成とか、行政のモデル事業の委託などでは、審査要件によく「先駆性のあること」という条件がついています。NPOには社会変革の役割が期待されているからです。
また、時代のトレンドにあった事業が望まれる傾向にもあります。市民の寄付や会員になるにも、時代のニーズに合っている事業に自然と注目が集まるものです。
事業や製品の発展のサイクルも、事業開発の必要性を要求します。
いや、地域で地道に環境保護をしたいので、事業開発などはできないと言われる方もいるかもしれません。しかし、地域の環境もどんどん変化していったり、活動にもっと資金が必要になってくるのはよくあることです。
その場合、新しい財源を開発するためにも、事業開発をしていく必要が生まれてきます。
どのような活動でも、事業開発や製品開発抜きには発展や継続は考えられません。
NPO経営の根幹は、企業と同様、事業開発や製品開発を連続していくことにあるのです。
NPOの経営では、資金繰りのことを十分考えておく必要があります。
財源によって、その支払い方法や、その資金の使い道に制限がある場合が多いのです。
助成金や補助金の多くは、事業費に対して支払われるので、経理や通常の通信費などの管理費に回せなかったり、一部しか当てられないということが一般的です。また、常勤スタッフの人件費に当てられない場合もあります。助成金をたくさん受けると、事業はしやすくなりますが、その事業をするために、NPOの管理部門も当然さまざまな作業をする必要が生じます。しかし、管理費が助成金ではまかなえないために、管理費は別途資金集めをしなければならなくなります。事業をすればするほど、団体の経営が苦しくなるということもありえるのです。
また、助成金や補助金は、一度にまとまった金額が受けられるのですが、事業が終わるとその分一気に資金がなくなるということになります。民間の助成金は、1年単位だったり、長くても3年程度の資金援助が受けられるだけです。この助成金などを頼りに団体の職員を雇ったりすると、助成がなくなったとき、いきなり大リストラせざるを得なくなるということにもなりかねません。せっかく始めた事業自体も続けられなくなってしまう場合もあります。
補助金などでは、事業費の半分を補助するというものがたくさんあります。つまり、その事業の資金の半分は自ら集めなければならないわけで、集められなければ、補助金が最終的に受けられないということもあります。後払いの補助金もあり、最初に自己資金がを準備しておかなければならない場合もすくなくありません。助成金も補助金も支出できる科目が決められていることも大きな制約となります。行政の委託事業にも、助成金と同じようなリスクがあります。
助成金や補助金、委託事業に依存した経営をしているとさまざまなリスクが発生することは前節で述べました。
このリスクを回避するためには、それ以外の財源をいかに開拓するかが重要となってきます。
それは、会費や寄附金、そして委託事業以外の対価収入です。これらの資金は、団体が一定使途を自由に決められること、団体の管理費をまかなえることから、NPOの世界では「自己資金」と呼ばれているものです。この自己資金をどう確保するかが経営の大きなテーマとなります。
ただし、寄附金も、特定目的のために集めた場合はその目的に拘束されますから、注意が必要です。
目的を継続的に達成していくためには、団体の継続可能性を担保していかなければなりません。
この継続可能性というものは、この自己資金をどれだけ確保できているかに大きく左右されてきます。NPOの経営では、団体の管理費や固定費をきちんと把握し、それを超える自己資金が確保できているかどうかが一つの経営指標となります。
もちろん、会員も増減しますし、対価収入も寄付も増減します。だから、それらの資金が確実に継続可能性を保障するということにはなりません。しかし、ある程度NPOの活動が軌道に乗ってくると、会費や寄付金、対価収入は減ると言っても、よほどのことがない限りいきなり激減することはないものです。もちろん、何もしないと会員も寄付も減るだけですから、継続してもらう努力や新規会員などを獲得する努力は欠かせません。
団体の継続性を考えて、資金のミックスを考えていきましょう。
NPOで活動していると、「良いことをしているので、それを理解してもらえれば支援はえられるはず」という考えをついつい抱きがちです。
しかし、支援する側や対価を払う側の財源サイドにはそれぞれニーズがあり、そのニーズを満たすためにNPOに資金を支援したり、対価を払ったりするわけです。
せっかく良い事業を立案しても、こうした財源側のニーズに合わないと、資金は集まりません。
たとえば、助成金を出す助成財団には、かならずその財団の目的やその助成金を出すプログラムに関する目的があります。そのような目的は、助成財団の規約(専門用語で「寄附行為」といいます)や、助成金の募集要項に書いてあります。
行政が出す補助金でも、その補助金が出る事業の性格や選考基準が公表されていることが多くなっています。
企業寄付でも、寄付する基準や寄付するテーマなどを決めている企業が増えてきています。企業に聞けば教えてもらえる場合があります。
難しいのは、一般市民がどういうニーズを持っているか把握することですが、時代のトレンドや社会的注目度、問題の社会的影響などから、ニーズを把握していく必要があります。
財源開発をするときは、こちらのニーズを相手に押しつけるのではなく、まず、どこから資金を集めるのかという財源を絞った上で、その財源が持っているニーズは何か、そのNPOの事業と適合できる部分はどこかを検討することが大切です。
常に財源のニーズを考えたり、調べたりする習慣をつけましょう。
会費や寄附金は集まらないとよく言われます。また、「日本には寄付の文化がない」とも言われています。会員や寄附金を集める手法は、まだまだ未開拓なのが現状です。
それでも、会員や寄附金集めに成功している団体も少なからずあります。そのような団体はどのような方法を用いているのでしょうか。参考になるノウハウを紹介します。
まず、NPOが会員や寄付者が集まらない最大の要因は、そのNPOに信用がないということにあります。会費や寄附金を出しても、効果があげれそうもない。どこにお金が消えるかわからない。多くの人がNPOにそのような疑念を抱いています。会員や寄附金集めの基本は、「信用をつくる」ことです。そして、信用をつくるにはいろいろな方法があります。
会の代表に信用がある人になってもらう。会員に知り合いの人を勧誘してもらう。マスコミなどへ紹介されることで知名度を高めたり、評価を得る。成果を見える形で報告する。会のイベントや成果を体験する機会を提供する、など団体の活動に合った信用づくりを試みて下さい。
会費や寄付金の持つ価値を明確にするという方法も有効です。会員や寄付者は、自らの行為になんらかの価値を認めることを望んでいます。たとえば、海外の医療協力の活動で、「3千円の寄付があれば、○人の子どもに予防接種ができ、子どもの死亡率を年間で○%減らせます」とか謳っている寄附金集めのキャンペーンを見かけますが、これは寄付金の価値を示しているわけです。
寄付者や会員の名声に寄与するという方法もあります。会報や、成果としてできた建物などに、寄付者の名前を載せたりするのはこの一つのやり方です。
このような手法を組み合わせて、会員や寄附金集めをするという工夫が必要です。
どのような分野のNPOの活動であろうとも、社会に貢献し、社会の課題を解決しようとする活動ならば、かならず人々の意識変革や参加をもとめたりする「運動」としての側面が不可欠となってきます。
従来、事業と運動とは対立するものであるという理解がNPOの世界にありました。しかし、このような考え方を持つと事業開発の幅は大きく狭まってしまいます。
いくら財源のニーズに合わせて事業開発をするといっても、まったくの収益目的の事業でない限り(たとえそうであっても)、団体の目的への貢献や運動としての側面を切り捨てなければならないということはありません。
たとえば、食品の安全性を高める制度をつくろうという活動をしているNPOならば、現在の食品の安全性に関して、どのような問題があるのか、それを消費者としてどう対応すればいいのか、また制度のどこを変えるべきかという本を出版して販売したり、有料のセミナーを開催したりする事業を開発できるでしょう。この事業が成功し、広まっていくことは、収入にもつながりますし、運動の拡大にもつながります。ここでは、事業を進めることと運動を拡大していくことが一体となっているわけです。
どのような事業でも、きちんと設計すれば運動の要素を織り込むことができます。むしろ、現在のNPOにおいて、事業は運動と切り離せないものとして捉えられています。人間とは不思議なもので、お金を出して買った情報や利用料を払って出たセミナーの方がより真剣に読んだり、聞いたりするものです。より強力に運動を進めるには、対価をとる事業も大きな手段なのです。
NPO法人になると、補助金が受けやすくなるとか、委託事業を得やすくなるということが言われています。まったく間違いであるとは言えませんが、NPO法人になれば、なんらかの「優遇」が生まれて、補助金や委託事業が得られると考えるのでしたら、それは大きな誤解です。
法人格は、STEP1で述べた通り、団体が契約の主体となれる仕組みです。委託事業も、補助金の交付も一種の契約行為であるわけで、その契約行為を相手方がNPOとしやすくなるということにすぎません。
また、介護保険事業をするにあたって、指定事業者になるためには、法人格が要件となってきます。介護保険事業をするならば、法人化していると指定が受けられるというわけです。
このように、NPO法人化は、介護保険や委託事業をしていくための一つの道具でしかありません。事業によって、法人化が必要かそうでないかが決まってくるのです。
NPOを立ち上げようとしている方は、法人化からスタートするのではなく、事業開発からスタートすべきでしょう。
どのような事業をするのか、どのような財源にアプローチするのかによって、法人格の必要性をその後に考えていく方がいいのです。介護保険事業のように契約関係やナショナルトラスト活動のように所有関係が不可欠な事業を展開する場合には、法人化を検討すべきです。
法人化すると、管理運営に手間がかかってきます。事業をするのに法人格が必要でなければ、団体の立ち上げ当初は、任意団体で活動して、事業が一定程度軌道に乗って、必要性が生まれてから法人化しても決して遅くはありません。
NPOは競争環境にあると「基礎知識」で述べましたが、だからといって、周りはすべてライバルであると考えるのもまた間違っています。NPOの世界で今進行しているのは、多様化と専門化というトレンドです。または、各地域における地域密着型の展開も進んでいます。
その中で、さまざまな「棲み分け」が行われてきているのです。
福祉や医療でも、環境保全でも、難民支援でも、一つの団体だけで総ての問題に対応できるようなNPOはありません。
たとえば、ある国の難民を支援しようとしても、医療の提供や、食料援助、テントなどの物資の支援、子どもへの教育援助、難民への援助を増やすための国際機関への働きかけ、帰国に向けた職業訓練など、さまざまな支援が必要となってきます。しかも、それぞれが専門的なサービスを必要としています。
そして、どれかが欠けたり足りなかったりすると、他の支援も十分効果をあげられないということになってくるのです。
目的を達成するために、このような場合、NPO間での提携やネットワークが必要となってきます。資金集めなども、財源のニーズによっては、協力して対応した方が効果があがる場合もあります。
一方で、競争しながら、もう一方では協力していくことが重要になる。NPOの活動環境はそのような独特の環境であることを理解しましょう。そして、良い協力と良い競争ができるよう、自身の専門性や得意分野をしっかり持ちあい、相手の活動に敬意を払うことも経営の基本です。
NPOは競争環境にあるという認識は重要ですし、それは事実ですが、今ある財源をどう取れるかということだけに経営の主眼が置かれることは、結局NPO同士のつぶし合いを生むだけになりかねません。
NPO向けの助成財団の助成金や企業の社会貢献費、行政の補助金や委託費などは、徐々に増えていく傾向にありますが、NPOの数の増加の方がそれを上回る勢いだといえます。
そして、助成金や補助金、委託費、社会貢献費などには支出金額の限界があります。とりわけ、昨今の財政危機や不況はそのような限界を低くしていっています。
小さいパイをたくさんのNPOで奪い合っていては、価格競争が中心となってしまい、NPOの経営状況をますます厳しいものにしていくことへとつながります。
事業開発や製品開発といった場合、すでに分かっている財源のニーズから発想するだけでなく、新しい財源や利用者を増やすという視点から企画を進めていくことが重要です。
本来、事業開発や製品開発の目的というのは、新しい事業や製品をつくることで、新しい利用者や購買者を生みだし、活動を拡げていくことにあります。日本では、米国や英国に比べると、個人寄付やNPOのサービスを利用する人の数がとても少ない現状にあります。
また、行政とのパートナーシップも欧米に比べると、まだまだ事例が少ないといえます。これはつまり、まだまだ増やしていける未開拓の財源がたくさんあるということです。
新しい事業や製品を提案することで、今までNPOの活動と関係なかった人や団体を巻き込むことを考えましょう。財源のパイを拡げることが、今の日本のNPOの最大の課題なのです。
NPOを立ち上げることとは、新しい事業を立ち上げることに他なりません。
つまり、NPOの立ち上げ初期というのは、一般に事業の「準備期」や「立ち上げ期」に該当するわけです。 準備期・立ち上げ期には、STEP1で見たように、一般的に経費が収入を上回ります。立ち上げ期では、事業ミックスをするためのペアになる事業もまだありません。信用も十分でないため、会費や寄付金もそう集まってこないのが通例です。委託事業も実績がないとなかなかとれないでしょう。「会費・寄付金モデル」「行政補完モデル」「事業ミックスモデル」のどれも使えないことが多いのです。
そこで、いきおい「ボランティアモデル」からスタートする団体が多いようです。しかし、こうなると、十分な専門性が団体に生まれず、また立ち上げ期に必要な社会に普及するための経費がまかなえないため、立ち上げから成長への移行に失敗することがよくあります。つまり、十分な事業展開ができなかったり、利用者を見つけられなかったりという結果になってしまうのです。それはボランティアモデルのまま活動を続けようとしてしまうため、立ち上げ期に財源開発を怠ってしまうことが原因です。
これを避けるために、NPOを立ち上げるときは、最初にきちんと資金を集める工夫をすることが大切です。企業でいえば、開業資金に相当するものです。2〜4年はなかなか収支が均衡しないと考え、その間の資金をまかなえる工夫を当初からしておくことが必要です。そして、その資金は、活動だけでなく、財源開発のためにあてることを忘れてはいけません。
立ち上げ資金は、一般的に、そのNPOが始めようとする事業からは生まれてきません。したがって、事業以外から生むということが必要となります。
よくあるのは、設立者の私財を寄付したり、知人から個人の信用で借りたり、寄付を受けたりする方法です。
設立者が知名度の高い人なら、その知り合いから寄付や会員になってもらうだけでもかなりの立ち上げ資金が集まります。また、NPOのスタートに際して、知名度の高い人に代表や理事になってもらい、その人の信用で会員を集めたり、パーティーを開いて、そこでの収益を立ち上げ資金にするという方法もあります。
準備会や研究会などを作って準備期をスタートさせるという方法もあります。研究会は、ボランティアベースで行うのですが、調査レポートやイベントの開催などを行い、実績をつくり、その実績をもとに、会員を集めたり、助成金や行政の委託事業を受けて、NPOを立ち上げるという方法もあります。この場合は、ともかく、レポートなどをきちんとした報告書として印刷物にするなどして、実績として評価されるものにしていく努力が必要です。イベントなら、イベント報告などを報告書にする方法もあります。いずれにせよ、記録をつくるということが大切です。
同じような活動をしている他の地域の実績あるNPOのネットワークなどで、事業ノウハウの提供を受け、地域の会員などを紹介してもらう方法もあります。それにより、事業開発と立ち上げ経費を少なくするわけです。
NPOを立ち上げるための助成金などもありますので、第2章を参照してください。
ここでは、事業ミックスモデルに発展していくための事業開発の方法を紹介します。
NPOの事業開発は、まず、「何をどうしたい」という目的からスタートします。
たとえば「地域の子どもがいじめで苦しまないようにしたい」といった目的を持っているとします。
次に、この目的を達成するためには、どのような活動が必要かを検討することになります。たとえば、「いじめられている子どものための電話相談活動」「悩みを話せる居場所づくり」「いじめから身を守るセミナー」「いじめを予防するための親子塾」「いじめの実態を調査して学校などに改善を申し入れる」などといった活動です。
そして、そのような活動から、(1)自分たちが活用できるノウハウは何か、実施可能で成果を上げられる活動は何かなどという自己診断、(2)社会の状況や子どもたちのニーズからみて重要性が高い活動はどれかという環境診断を行い、中核となる活動を選択します。これが、目的指向性からの選択ということです。
さらに、先にリストアップされた活動から、中核となる活動と一緒にすればさらに効果のあがりそうな活動(相乗効果の見込める活動)をもう一度リストアップします。そして、その中から、財源が探せそうで、資金を得ることが見込めそうな活動を選択するという作業をします。これが財源指向性からの活動選択というわけです。
後で述べますが、実際には、財源は活動を展開していく中で見つかっていくことが多いものです。しかし、財源を探す努力は最初から欠かすわけにはいかないのです。
活動の種類を一定リストアップしたら次にすることは、差別化と優位性の追求ということです。
NPOが競争環境にあることはすでに述べました。企業や行政と同じことをしていては、資金力や事業規模の点で、NPOは常に劣位に立たざるを得ません。そうなると、財源開発はおぼつきません。
もし同じことをしている企業や行政があれば、それとの違いをどの活動だったらつくれるのか、活動のどこで優位性を示すことができるのかを、しっかりと考える必要があります。優位性は、たとえば、独自のノウハウを持っているとか、より細かなニーズに応えられるとか、まったく違う製品をもっているとか、より専門家などを擁しているとかいったものです。
この差別化や優位性の追求こそ、事業開発の中心になるものです。
そして、多くのNPOの場合、そのNPOが持つ独自の価値観が、優位性や差別化を生み出す原動力になります。たとえば、「里山が守られるということは、単に里山をそのまま残こしていくことではなく、多くの人々がどんどん入って利用することに意義がある」という価値観を持てば、多くの人が利用できるような製品を開発していくことになります。たとえば、里山を歩くイベントや、里山を利用した学校の校外授業などの製品を開発するというわけです。
この価値観を一つ一つの事業や製品に組み込んでいくこと、つまり運動的要素を織り込んでいくことが、NPOに企業とは違う優位性や差別化をもたらします。
その点では、オリジナリティの明確な価値観を持つことは、事業開発の大きな強みとなるわけです。
目的指向性と財源指向性および活動同士の相乗効果、差別化や優位性の追求という点から、いくつかの活動をリストアップした段階で、不十分でも、3年先、5年先のNPOの事業ミックスのイメージを考えてみましょう。もちろん、実際に事業をスタートしてみると期待していた財源が活用できなかったり、思わぬ財源が現れたりするのが常ですが、常にイメージする訓練は必要です。
そのイメージを描きつつ、次に、団体立ち上げ時における優先事業を決める作業を行います。
中核となる活動が、それだけで事業化できる(つまり資金的に自立できる)ようなら、それを事業として開発していくことにとりかかるべきです。
中核となる活動がそれだけでは資金的に自立できる見込みがない場合は、その活動と相乗効果があり財源が見込める事業を、並行してか、少し後に立ち上げることを念頭において、最初の事業開発をしていきます。
この時のポイントは、最初の事業開発で培ったノウハウを、第二の事業開発で別の製品へと加工して、違う利用者に販売したり、助成金をとったりするということと考えるとわかりやすいでしょう。
たとえば、アルコール依存症の人の相談活動をはじめた団体が、そこで培った依存症の人への対応の仕方や家族が心がけなければいけないことなどの専門的知識を本にして、病院や、依存症の人が家族や親類にいて対応に悩んでいるような一般の人に売るという方法です。
もちろん、この事業が軌道に乗るまでは立ち上げ資金などで活動を支えることになります。
事業の立ち上げを支援する助成金があります。そのような助成金の申請書類には、一般的に事業を立ち上げる時のポイントが要求されています。
事業開発や助成金申請をする際に参考となりますし、賛同者を募るときにも必要になりますから、そのポイントを列記しておきます。10のポイントがあります。
事業開発と財源開発において、立ち上げ期のNPOにとって難しいけれども絶対必要なことの一つは、事業にかかるコストを見積もるということです。
とりわけ、これは消費型の活動についていえます。
消費型の活動は、助成金や委託事業、寄付金などを資金にすることが多いのですが、助成財団、企業、寄付者などが必ず知りたいこととして、その事業をするのにいくらかかるのかということがあります。助成金を申請するときは必須の情報となります。
また、NPOの側としても、いくらかかるのかが明確でなければ、どのような財源からどの程度資金集めをすべきかが分からないことになってしまいます。
助成財団の助成金は多くの場合、助成金額の上限が決められています。補助金や委託事業もそうです。もし必要とする活動を行う場合、助成金や委託でまかえない場合は、その不足分をどうやって補えるのかということを考えなければなりません。
必要な額が分からなければ、資金をどの程度ミックスすればいいのかが分からないのです。
また、目標金額が決まっていなければ寄付者も寄付しにくいですし、どのくらい寄付すればいいのか判断できません。NPOは必要金額を見積もったら、それをどのような単位のお金で、どれくらいの人数から集めるかを考える必要があります。
たとえば、50万円必要としたとき、10万円づつの寄付を集めれば5人獲得できればOKです。5千円づつの寄付を集めるとしたら、100人が目標寄付者となります。5人と100人では、当然寄付者集めの手法も違ってくることになります。
事業開発をしていくとき、「事業分割」や「事業統合」という手法を理解しておくと便利です。
たとえば、「食品の安全性を高める法律を作りたい」という目的をもって政策提言活動をしていこうと考えたとします。しかし、政策提言活動では、なかなか財源が見つからないのが実際です。そこで、政策提言活動をいくつかの事業や製品に分解するという作業を行うわけです。
まず、この活動をするためには、提言の下となる現状の食品の安全性に関するデータや、海外の法制度などの情報が必要になります。また、それをもとに改善策を検討していく必要があります。そして、出てきた政策を政府や国会議員などに提言し、働きかけていくわけです。
この働きかけていくという最終段階だけ見れば、なかなか財源が得られそうにもありません。しかし、日本の食品の安全性に関する調査や、海外の法制度などの調査などは、先駆的であれば助成金や行政からの委託がとれるかもしれません。もし、助成金がとれれば、この調査をし、制度の改善点を提案するまでを助成金で行い、後の提言活動を寄付金や会費で行うという資金ミックスも可能になります。これが事業分割です。
また、調査ではなかなか資金が獲得できなさそうな場合、たとえば国際シンポジウムなら資金が獲得できそうだとすれば、日本と海外との比較調査をした上で、シンポジウムをするという企画をたて、そこで、提言する政策もつくってしまうという方法で助成金を申請するということもあるでしょう。これが事業統合です。
事業として成立することが難しそうな活動でも、これらの手法を使って財源開発の工夫をしていくことが可能です。
NPOが財源開発をしていくときに、注意しないといけないのは、「活動分野」という考えにしばられないようにするということです。
よくあるのは、福祉のNPOなら福祉分野の助成金だけを探したり、福祉に関心ある企業だけに寄付のお願いにいったりすることです。
これは、自ら財源開発の機会を狭めているだけです。
たとえば、福祉のNPOでも、海外の福祉NPOと交流してネットワークを作っていくという事業をつくれば、国際交流関係の助成金を申請することができます。外務省からの補助金なども検討できるようになります。
障害者にとってバリアフリーなまちづくりをどうするか研究したいとすれば、まちづくり関係の助成金や自治体の補助金なども財源開発の対象となります。また、建設や建築コンサルタントといった企業などに協力や寄付の依頼をしてもいいでしょう。
まちづくりをテーマに障害者団体とまち作り団体が協力して、セミナーやシンポジウムを開いて、地域の人から参加費をとるということも可能です。
財源を探すときは、決して分野にとらわれないことです。財源のニーズをチェックし、そのニーズとNPOの目的やノウハウを重ね合わせて、何か新しい事業や製品が企画できないかと考えるようにしましょう。 福祉活動が国際交流やスポーツに、芸術がまちづくりや子どもの健全育成に、医療が消費者保護に貢献していける。それがNPOの世界なのです。
NPOにとって、事業が、準備期から立ち上げ期、成長期、成熟期を経て衰退期へと向かうサイクルはまた、活動が取り組む課題が社会的に広がっていくサイクルとも一致していきます。
そこで、成果を上げつつ財源開発を発展させていくには、各期でその新しく参入してくる関係者にどのような製品なり事業なりを提供できるかということが重要になります。
たとえば、食品の安全性を確保するための制度づくりのNPOの場合で考えてみましょう。
まず、活動を始める時は、まだまだ社会的関心が薄く、有志の寄付や会費などで立ち上げ資金を調達し、制度の提案を始めることになります。事業分割や事業統合によって、調査に助成金を得て、調査活動が事業化されていきます。活動が成果を上げていくか、社会環境の変化により、制度の必要性が認められてくると、社会的な関心も高まります。一般の人や自治体などがセミナーに参加したり、報告書などが売れていくことになります。セミナーや出版事業が事業化されていくわけです。そして、調査事業やセミナー事業、出版事業などと事業ミックスすることにより制度づくりの提言はより強化できるようになります。事業ミックスが一定構成されると成長期から成熟期へとなっていくわけです。しかし、行政がセミナーなどを開始したり、出版社が同類の本を出すようになると競争が激しくなってきます。
関心が高まり制度が改善されると、制度づくりの事業は、衰退期に向かうことになります。これで目的を達成したといってNPOを解散してもいいのですが、一方では、それまでのセミナーや調査から、食品の安全に関する新しいニーズが見つかってきたりしています。そこで、そのニーズに向けて、それまでの資産を利用して新しい事業を開発していくということも可能なのです。
NPOをつくろうと思ったら、まず第一に考えるべきことは、いかにして目的に対して成果を上げられるかということです。しかし、今日、変化の早いこの社会の中で成果を上げるためには、専門性と継続性を持ち、より多くの人を巻き込める活動を発展させていく必要があります。そのためには、個々の活動を、財源の裏付けのある「事業」として成り立たせていくことが不可欠だというのが、このハンドブックのテーマです。
この章では、「事業ミックスモデル」を中心に、NPOの事業モデルと立ち上げのための事業開発と財源開発の考え方を解説してきました。
もちろん、「事業ミックスモデル」が一番いいモデルであると主張するわけではありません。事実、日本でトップクラスの規模を誇るNPO法人は、年間15億円以上の資金を寄付金だけで集めています。「会費・寄付金モデル」でも大きな成果を上げることができるわけです。
しかし、元手に乏しいNPOが一定継続的・自立的活動ができるようになっていくためには、「事業ミックスモデル」が一番利用しやすく、また機能するモデルだと思います。
今日、NPOに寄付したい人、ボランティアをしたい人だけでなく、NPOのサービスを利用したい人や団体は急速に増えていっています。行政もまたその一部をなしています。このニーズに応え、ニーズに適した製品を提供していくことは、単に「財源」を開発することだけではなく、人々や団体をNPOが提案する社会変革のプロセスに、利用者という役割で参加させていくことにもなってきます。利用者が運動の担い手=「協力者」となっていくのです。
「財源」を「協力者」へ。今日のNPOの新しいテーマがそこにあります。