NPO立ち上げのための事業開発と財源開発

STEP.3 事業開発と財源開発

(1)団体の立ち上げと事業開発

立ち上げ資金は財源開発のためにも使おう

NPOを立ち上げることとは、新しい事業を立ち上げることに他なりません。

つまり、NPOの立ち上げ初期というのは、一般に事業の「準備期」や「立ち上げ期」に該当するわけです。 準備期・立ち上げ期には、STEP1で見たように、一般的に経費が収入を上回ります。立ち上げ期では、事業ミックスをするためのペアになる事業もまだありません。信用も十分でないため、会費や寄付金もそう集まってこないのが通例です。委託事業も実績がないとなかなかとれないでしょう。「会費・寄付金モデル」「行政補完モデル」「事業ミックスモデル」のどれも使えないことが多いのです。

そこで、いきおい「ボランティアモデル」からスタートする団体が多いようです。しかし、こうなると、十分な専門性が団体に生まれず、また立ち上げ期に必要な社会に普及するための経費がまかなえないため、立ち上げから成長への移行に失敗することがよくあります。つまり、十分な事業展開ができなかったり、利用者を見つけられなかったりという結果になってしまうのです。それはボランティアモデルのまま活動を続けようとしてしまうため、立ち上げ期に財源開発を怠ってしまうことが原因です。

これを避けるために、NPOを立ち上げるときは、最初にきちんと資金を集める工夫をすることが大切です。企業でいえば、開業資金に相当するものです。2〜4年はなかなか収支が均衡しないと考え、その間の資金をまかなえる工夫を当初からしておくことが必要です。そして、その資金は、活動だけでなく、財源開発のためにあてることを忘れてはいけません。

(2)立ち上げ資金をどうつくるのか

立ち上げ資金確保のさまざまな手法

立ち上げ資金は、一般的に、そのNPOが始めようとする事業からは生まれてきません。したがって、事業以外から生むということが必要となります。

よくあるのは、設立者の私財を寄付したり、知人から個人の信用で借りたり、寄付を受けたりする方法です。

設立者が知名度の高い人なら、その知り合いから寄付や会員になってもらうだけでもかなりの立ち上げ資金が集まります。また、NPOのスタートに際して、知名度の高い人に代表や理事になってもらい、その人の信用で会員を集めたり、パーティーを開いて、そこでの収益を立ち上げ資金にするという方法もあります。

準備会や研究会などを作って準備期をスタートさせるという方法もあります。研究会は、ボランティアベースで行うのですが、調査レポートやイベントの開催などを行い、実績をつくり、その実績をもとに、会員を集めたり、助成金や行政の委託事業を受けて、NPOを立ち上げるという方法もあります。この場合は、ともかく、レポートなどをきちんとした報告書として印刷物にするなどして、実績として評価されるものにしていく努力が必要です。イベントなら、イベント報告などを報告書にする方法もあります。いずれにせよ、記録をつくるということが大切です。

同じような活動をしている他の地域の実績あるNPOのネットワークなどで、事業ノウハウの提供を受け、地域の会員などを紹介してもらう方法もあります。それにより、事業開発と立ち上げ経費を少なくするわけです。

NPOを立ち上げるための助成金などもありますので、第2章を参照してください。

(3)事業開発の方法(1)

目的指向性と財源指向性からのリストアップ

ここでは、事業ミックスモデルに発展していくための事業開発の方法を紹介します。

NPOの事業開発は、まず、「何をどうしたい」という目的からスタートします。

たとえば「地域の子どもがいじめで苦しまないようにしたい」といった目的を持っているとします。

次に、この目的を達成するためには、どのような活動が必要かを検討することになります。たとえば、「いじめられている子どものための電話相談活動」「悩みを話せる居場所づくり」「いじめから身を守るセミナー」「いじめを予防するための親子塾」「いじめの実態を調査して学校などに改善を申し入れる」などといった活動です。

そして、そのような活動から、(1)自分たちが活用できるノウハウは何か、実施可能で成果を上げられる活動は何かなどという自己診断、(2)社会の状況や子どもたちのニーズからみて重要性が高い活動はどれかという環境診断を行い、中核となる活動を選択します。これが、目的指向性からの選択ということです。

さらに、先にリストアップされた活動から、中核となる活動と一緒にすればさらに効果のあがりそうな活動(相乗効果の見込める活動)をもう一度リストアップします。そして、その中から、財源が探せそうで、資金を得ることが見込めそうな活動を選択するという作業をします。これが財源指向性からの活動選択というわけです。

後で述べますが、実際には、財源は活動を展開していく中で見つかっていくことが多いものです。しかし、財源を探す努力は最初から欠かすわけにはいかないのです。

(4)事業開発の方法(2)

差別化と優位性の追求

活動の種類を一定リストアップしたら次にすることは、差別化と優位性の追求ということです。

NPOが競争環境にあることはすでに述べました。企業や行政と同じことをしていては、資金力や事業規模の点で、NPOは常に劣位に立たざるを得ません。そうなると、財源開発はおぼつきません。

もし同じことをしている企業や行政があれば、それとの違いをどの活動だったらつくれるのか、活動のどこで優位性を示すことができるのかを、しっかりと考える必要があります。優位性は、たとえば、独自のノウハウを持っているとか、より細かなニーズに応えられるとか、まったく違う製品をもっているとか、より専門家などを擁しているとかいったものです。

この差別化や優位性の追求こそ、事業開発の中心になるものです。

そして、多くのNPOの場合、そのNPOが持つ独自の価値観が、優位性や差別化を生み出す原動力になります。たとえば、「里山が守られるということは、単に里山をそのまま残こしていくことではなく、多くの人々がどんどん入って利用することに意義がある」という価値観を持てば、多くの人が利用できるような製品を開発していくことになります。たとえば、里山を歩くイベントや、里山を利用した学校の校外授業などの製品を開発するというわけです。

この価値観を一つ一つの事業や製品に組み込んでいくこと、つまり運動的要素を織り込んでいくことが、NPOに企業とは違う優位性や差別化をもたらします。

その点では、オリジナリティの明確な価値観を持つことは、事業開発の大きな強みとなるわけです。

(5)事業開発の方法(3)

ノウハウを転化して事業ミックスへ

目的指向性と財源指向性および活動同士の相乗効果、差別化や優位性の追求という点から、いくつかの活動をリストアップした段階で、不十分でも、3年先、5年先のNPOの事業ミックスのイメージを考えてみましょう。もちろん、実際に事業をスタートしてみると期待していた財源が活用できなかったり、思わぬ財源が現れたりするのが常ですが、常にイメージする訓練は必要です。

そのイメージを描きつつ、次に、団体立ち上げ時における優先事業を決める作業を行います。

中核となる活動が、それだけで事業化できる(つまり資金的に自立できる)ようなら、それを事業として開発していくことにとりかかるべきです。

中核となる活動がそれだけでは資金的に自立できる見込みがない場合は、その活動と相乗効果があり財源が見込める事業を、並行してか、少し後に立ち上げることを念頭において、最初の事業開発をしていきます。

この時のポイントは、最初の事業開発で培ったノウハウを、第二の事業開発で別の製品へと加工して、違う利用者に販売したり、助成金をとったりするということと考えるとわかりやすいでしょう。

たとえば、アルコール依存症の人の相談活動をはじめた団体が、そこで培った依存症の人への対応の仕方や家族が心がけなければいけないことなどの専門的知識を本にして、病院や、依存症の人が家族や親類にいて対応に悩んでいるような一般の人に売るという方法です。

もちろん、この事業が軌道に乗るまでは立ち上げ資金などで活動を支えることになります。

(6)助成金の申請にみる事業開発のポイント

事業を企画する前に企画書をつくる

事業の立ち上げを支援する助成金があります。そのような助成金の申請書類には、一般的に事業を立ち上げる時のポイントが要求されています。

事業開発や助成金申請をする際に参考となりますし、賛同者を募るときにも必要になりますから、そのポイントを列記しておきます。10のポイントがあります。

助成金申請書を書くときおよび事業企画書を書くときの10のポイント
  1. 事業の目的:その事業を行うことで、何をどう変えようとしているのか。事業の意義。
  2. 社会背景:その事業が求められる現在の社会問題や世の中の変化など。
  3. 事業の目標:その事業でどんな対象を具体的にどう変えようとしているのか。
  4. 準備状況:申請事業ができる能力を有することを証明する実績や準備状況。
  5. 新規性:今までの事業や他のNPOの事業と今回の事業がどう違い、先駆性があるか。
  6. 事業の詳細:具体的な事業の内容、スケジュール、実施者氏名や略歴、従事者数など。
  7. 事業の効果:事業が終わった時、対象や社会にどういう良い変化が期待できるのか。影響力や波及力はどの程度あるのか。社会をどう変えられるのか。
  8. 継続性:助成が終了した後にも、その事業をどのようにして継続していけるのか。どうやって、助成後の資金を確保するのか。(助成に依存していないことを示す)
  9. 実施体制:事業において、その実施に携わる専門家や協力団体の体制。
  10. 予算額:事業にかかる予算の全体額とそのうち申請額が占める部分の内訳と見積もり。

(7)必要な額を明確にする

どの財源からどの程度集めるかという課題

事業開発と財源開発において、立ち上げ期のNPOにとって難しいけれども絶対必要なことの一つは、事業にかかるコストを見積もるということです。

とりわけ、これは消費型の活動についていえます。

消費型の活動は、助成金や委託事業、寄付金などを資金にすることが多いのですが、助成財団、企業、寄付者などが必ず知りたいこととして、その事業をするのにいくらかかるのかということがあります。助成金を申請するときは必須の情報となります。

また、NPOの側としても、いくらかかるのかが明確でなければ、どのような財源からどの程度資金集めをすべきかが分からないことになってしまいます。

助成財団の助成金は多くの場合、助成金額の上限が決められています。補助金や委託事業もそうです。もし必要とする活動を行う場合、助成金や委託でまかえない場合は、その不足分をどうやって補えるのかということを考えなければなりません。

必要な額が分からなければ、資金をどの程度ミックスすればいいのかが分からないのです。

また、目標金額が決まっていなければ寄付者も寄付しにくいですし、どのくらい寄付すればいいのか判断できません。NPOは必要金額を見積もったら、それをどのような単位のお金で、どれくらいの人数から集めるかを考える必要があります。

たとえば、50万円必要としたとき、10万円づつの寄付を集めれば5人獲得できればOKです。5千円づつの寄付を集めるとしたら、100人が目標寄付者となります。5人と100人では、当然寄付者集めの手法も違ってくることになります。

(8)事業分割や事業統合という方法

事業を要素分解して資金ミックスをつくる

事業開発をしていくとき、「事業分割」や「事業統合」という手法を理解しておくと便利です。

たとえば、「食品の安全性を高める法律を作りたい」という目的をもって政策提言活動をしていこうと考えたとします。しかし、政策提言活動では、なかなか財源が見つからないのが実際です。そこで、政策提言活動をいくつかの事業や製品に分解するという作業を行うわけです。

まず、この活動をするためには、提言の下となる現状の食品の安全性に関するデータや、海外の法制度などの情報が必要になります。また、それをもとに改善策を検討していく必要があります。そして、出てきた政策を政府や国会議員などに提言し、働きかけていくわけです。

この働きかけていくという最終段階だけ見れば、なかなか財源が得られそうにもありません。しかし、日本の食品の安全性に関する調査や、海外の法制度などの調査などは、先駆的であれば助成金や行政からの委託がとれるかもしれません。もし、助成金がとれれば、この調査をし、制度の改善点を提案するまでを助成金で行い、後の提言活動を寄付金や会費で行うという資金ミックスも可能になります。これが事業分割です。

また、調査ではなかなか資金が獲得できなさそうな場合、たとえば国際シンポジウムなら資金が獲得できそうだとすれば、日本と海外との比較調査をした上で、シンポジウムをするという企画をたて、そこで、提言する政策もつくってしまうという方法で助成金を申請するということもあるでしょう。これが事業統合です。

事業として成立することが難しそうな活動でも、これらの手法を使って財源開発の工夫をしていくことが可能です。

(9)活動分野にこだわらない財源開発を

他の分野の財源も積極的に活用する

NPOが財源開発をしていくときに、注意しないといけないのは、「活動分野」という考えにしばられないようにするということです。

よくあるのは、福祉のNPOなら福祉分野の助成金だけを探したり、福祉に関心ある企業だけに寄付のお願いにいったりすることです。

これは、自ら財源開発の機会を狭めているだけです。

たとえば、福祉のNPOでも、海外の福祉NPOと交流してネットワークを作っていくという事業をつくれば、国際交流関係の助成金を申請することができます。外務省からの補助金なども検討できるようになります。

障害者にとってバリアフリーなまちづくりをどうするか研究したいとすれば、まちづくり関係の助成金や自治体の補助金なども財源開発の対象となります。また、建設や建築コンサルタントといった企業などに協力や寄付の依頼をしてもいいでしょう。

まちづくりをテーマに障害者団体とまち作り団体が協力して、セミナーやシンポジウムを開いて、地域の人から参加費をとるということも可能です。

財源を探すときは、決して分野にとらわれないことです。財源のニーズをチェックし、そのニーズとNPOの目的やノウハウを重ね合わせて、何か新しい事業や製品が企画できないかと考えるようにしましょう。 福祉活動が国際交流やスポーツに、芸術がまちづくりや子どもの健全育成に、医療が消費者保護に貢献していける。それがNPOの世界なのです。

(10)事業の発展段階と財源開発

事業の発展は社会的関心の広がりと重なる

NPOにとって、事業が、準備期から立ち上げ期、成長期、成熟期を経て衰退期へと向かうサイクルはまた、活動が取り組む課題が社会的に広がっていくサイクルとも一致していきます。

そこで、成果を上げつつ財源開発を発展させていくには、各期でその新しく参入してくる関係者にどのような製品なり事業なりを提供できるかということが重要になります。

たとえば、食品の安全性を確保するための制度づくりのNPOの場合で考えてみましょう。

まず、活動を始める時は、まだまだ社会的関心が薄く、有志の寄付や会費などで立ち上げ資金を調達し、制度の提案を始めることになります。事業分割や事業統合によって、調査に助成金を得て、調査活動が事業化されていきます。活動が成果を上げていくか、社会環境の変化により、制度の必要性が認められてくると、社会的な関心も高まります。一般の人や自治体などがセミナーに参加したり、報告書などが売れていくことになります。セミナーや出版事業が事業化されていくわけです。そして、調査事業やセミナー事業、出版事業などと事業ミックスすることにより制度づくりの提言はより強化できるようになります。事業ミックスが一定構成されると成長期から成熟期へとなっていくわけです。しかし、行政がセミナーなどを開始したり、出版社が同類の本を出すようになると競争が激しくなってきます。

関心が高まり制度が改善されると、制度づくりの事業は、衰退期に向かうことになります。これで目的を達成したといってNPOを解散してもいいのですが、一方では、それまでのセミナーや調査から、食品の安全に関する新しいニーズが見つかってきたりしています。そこで、そのニーズに向けて、それまでの資産を利用して新しい事業を開発していくということも可能なのです。

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