最近、「NPO(非営利組織)をつくりたい」という方が増えてきています。
1998年にNPO法がスタートしてから、NPO(非営利組織)への関心が高まり、全国各地で「NPOをつくろうと思っている」という声をたくさん聞くようになりました。
NPO法では、10人の会員がいて、書類をきちんと作成すれば、4ヶ月弱でNPO法人をつくることができます。このことから「NPOをつくるのは簡単」といわれています。
「NPOは、企業、行政と並ぶ、新しい社会の柱」とか、「NPOは、米国では大きな雇用の担い手となっている」という新聞などの記事もしばしば読みます。
「よし、じゃあ私もNPOを作ってみるか」という気になられても不思議ではありません。
でも、そこで、少し待ってほしいのです。
NPO法人をつくるのがいかに簡単だからといって、本当に法人化したり、団体をつくって上手くいくのかどうか、事前によく考える必要があります。
実際、「NPO法人化したけれど、収入のめどがたたない」「法人化したけれどもメリットがない」という声を最近よく聞くようになりました。
「面倒なだけなので法人を解散した」という人も増えてきています。
NPOを立ち上げることは容易ですが、法人化するしないに係わらず、NPOを継続していくこと、NPO活動を発展させていくことはそれほど容易なことではありません。
このハンドブックでは、NPOをつくりたいと思った人が、はじめに考えておかなければならないもっとも大切な「事業」と「収入」のことについて説明します。
NPOを立ち上げたい人の関心は、多くの場合、何らかの目的を追求したり、ある活動を行うことにあります。
「障害者が街中で暮らせるように移送サービスを提供したい。」「浜辺の環境を守るためにクリーンアップ活動を強化したい。」「高齢者が一緒に集まって食事できる場所をつくりたい。」
このような活動は、企業のように利益を得ることを目的としていません。企業ならば、まず事業を企画する際に、その事業からの収入と支出を見通し、長期的には収入が支出を上回るように企画することは当たり前の話です。
しかし、NPOの活動というのは企業と違い、その活動対象から、サービスに対する十分な対価を得ることができない場合が多いのです。
たとえば、「浜辺の環境を守るためにクリーンアップ活動を強化したい」といっても、いくら浜辺をきれいにしても、浜辺がお金を払ってくれるわけではありません。
いきおい活動を企画すると、支出ばかりの計画になって、どこから資金を得るかということがわからないで途方に暮れるということも少なくありません。
NPOを立ち上げたけれども、十分な資金の目途が立たないので休止してしまったという話もよく聞きます。
NPOを立ち上げる時に、どのようにすれば資金的に活動を継続していけるかということについて、事前に十分検討しておく必要があるのです。
このハンドブックは、NPOを立ち上げる時や、その後活動を継続していく時に考えなければいけないことを、主に資金面の問題から解説した入門書です。
まず、NPOが活動するため資金には何があり、それぞれどのような性格の資金なのかを理解することが、資金獲得のスタートとなります。と同時に、NPOというのは、どのような財源からどのような事業モデルを使ってそのような資金を得ていくのか、を理解することが重要になってきます。
さらに、事業を立ち上げたり、組織を継続していく上で必要となるNPO運営の基本的な考え方も学ぶ必要があるでしょう。
そこで、このハンドブックでは、以下のような3ステップから説明をしていきます。
まず、「STEP1 NPOの基礎知識」で、NPOの資金面に係わる基本的な知識を説明します。収入面から見た、NPOの典型的な事業モデル。目的と事業の関係、「事業」をどう捉えるか、事業の発展段階とそれぞれの特徴などについて解説します。
次に、「STEP2 NPO経営の基本」で、NPOの事業開発や財源開発する時に念頭に置くべき考え方を解説します。財源のニーズ、事業の優先順位やミックスのさせ方などについて説明します。
「STEP3 事業開発と財源開発」では、事業開発と財源開発の基本的手法を説明します。立ち上げ資金の作り方、助成金申請書のポイント、事業分割や事業統合という手法、事業の発展段階と財源開発の方法などを解説します。
このハンドブックを作成するにあたっての基本的な方針というのは、極めてプラグマティックなものです。 すなわち、もっとも実践的なノウハウというのは、行動や活動を規定する基本的な「考え方」の中に存在するというものです。
NPOの経営の現状を見ていると、「非営利だから対価を得るサービスはしてはいけないか、廉価でしなければならない」「事業と運動とは対立する」「会費や寄付で活動をまかなうべきだ」「収益が上がる事業というのは本来事業とは別に立てるものだ」「NPOは公益的な活動をしているのだから行政が支援すべきだ」といったさまざまな誤解が、NPOの経営や自立を阻害しています。
基本的な考え方が適切でないと、どのようなノウハウを学んでも、組織内部で合意形成ができなかったり、ノウハウの応用ができなかったりして、使えなくなってしまいます。
基本的な考え方をマスターすることが、NPOの立ち上げにおいて最も重要で、実践的なことだということを理解してください。
また、この調査プロジェクトにあたっては、分野別に事業モデルの差異なども検討しましたが、このハンドブックにおいては、分野毎のモデルを提示するよりも、事業の財源との関係でモデル化する方が汎用性も高く、実用的であるとの判断から、分野を越えた事業モデルを作成し説明しています。
今日のNPOの世界においては、むしろ分野の壁を超えた事業や財源をどう開発していくかが重要になってきているのです。