『都市計画制度の見直しに当たって』

〜これまでの小委員会での検討の概要〜
 

都市計画中央審議会基本政策部会
計画制度小委員会




 現行都市計画法は、昭和30年代後半から40年代にかけての高度経済成長の過程で、都市への急速な人口や諸機能の集中が進み(ピーク時には三大都市圏に毎年70万人近い人口が流入した。)、必要な公共施設整備を伴わないまま、市街地の無秩序な外延化が進む等都市問題が深刻化し、緊急に対応が求められていた経済社会情勢を背景として、昭和43年に制定・施行された。この緊急課題に対応するため、現行制度は、一体の都市として総合的に整備、開発、保全すべき区域を都市計画区域として指定し、当該区域の無秩序な市街化の防止と計画的な市街化を図るため、市街化区域と市街化調整区域とに新たに区分(線引き)することとした。これは、限られた都市整備財源を市街化区域内に集中的に投資し、市街地を計画的に整備・改善する一方、市街化調整区域において開発・建築行為を抑制することにより、都市の健全な発展と秩序ある整備を図ることを主眼としたものである。法制定後、時々の政策課題に対応して地区計画制度の創設をはじめとして制度を追加拡充したものの、制度の基本的な枠組みは今日まで維持しているところである。

 しかしながら、法制定後30年を経過して、都市的生活と都市的活動をめぐる経済社会環境は様相を一変してきている。まず、人口動態については、線引き制度をはじめ、現行都市計画制度は右肩上がりの人口増加を前提としているが、近年、少子高齢化が急速に進行する中で、都市への人口集中は沈静化している。都市機能を支える各種の産業の立地については、交通・通信網の整備とモータリゼーションの進展等に伴い、都市計画区域外も含め、立地上の制約要因はなくなりつつある。また、所得水準の上昇等により、様々な形での質の高い住まい方を望む国民意識が高まっている。加えて、身近なまちづくりについて、住民自らが主体的に参画しようとする動きも広がってきている。

 いわば、我が国は、急速な都市化の時代を経て、安定・成熟した都市型社会の時代を迎えつつあり、今こそ都道府県や市町村が、地域住民と一体になって、地域特性に応じた個性豊かな都市の整備に、本格的に取り組む環境が整ってきているものと言える。

 こうした観点から、都市計画制度についても全般的に見直し、新たな時代に対応した柔軟で実効性ある制度として、また、住民にとって分かりやすい制度として、再構成する必要がある。また、新たな制度は、コンパクトで快適な中心市街地の再整備を積極的に進めるとともに、郊外部に残された貴重な緑地等については極力これを保全し、全体として質の高い都市空間を提供するものである必要がある。

 具体的には、目指すべき都市像を地域社会の合意(まちづくりのルール)として明確化するとともに、その都市像を実現するために具体の都市計画を定めるという分かりやすい体系にするため、都市計画のマスタープランの充実を図る必要がある。また、都市計画区域制度のあり方や、都市計画区域を市街化区域と市街化調整区域に二分する線引き制度、それを支える開発許可制度についても、都市型社会に即応するものに見直すことが必要である。さらに、都市型社会においては、新たな市街地の開発よりも、既に一定の公共施設整備がなされ、都市機能が集積する既成市街地を核として都市を再生し、戦略的に整備を進めることが重要な課題になることから、既成市街地の再整備を進めるための制度や、質の高い都市環境を総合的に整備するための制度の拡充強化を図ることが必要である。また、都市計画の決定の手続についても、地域住民や民間事業者など、まちづくりに携わる関係者の意思と創意工夫を十分に活かしつつ、地方公共団体が必要に応じて柔軟に都市計画決定が行えるよう、見直しを行うべきである。加えて、コンパクトで快適な中心市街地等望ましい都市像の実現のためには、都市計画法に規定する規制や事業のみならず、補助、融資、税制など総合的な取り組みが必要となることは言うまでもない。

 なお、見直しに当たっては、それぞれの地域における必要性に応え、保全すべきものは確実に保全し得るよう、また、規制を緩和する合理性がある場合には柔軟に緩和し得るよう、都市計画上の規制の内容を見直し、全体として調和ある運用を図ることが可能となるような制度構成とすることが必要であると考える。

 個別の項目についての見直しに当たっての基本的考え方及び新たな制度構成の考え方については、以下のとおりである。


1 都道府県の都市計画に関するマスタープランの創設

2 都市計画区域外における開発行為及び建築行為についての考え方

3 線引き制度及び開発許可制度の見直し

4 既成市街地再整備のための新たな制度

5 環境問題等への対応のための制度の強化

6 都市計画の決定システムの合理化


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1.都道府県の都市計画に関するマスタープランの創設


現行制度)

・都道府県レベルでは、線引きの説明図書である「整備、開発又は保全の方針」が事実上のマスタープランとして扱われている。未線引きの都市計画区域にはマスタープランが存在しない。

・市町村レベルでは、市町村マスタープラン制度があり、多くの市町村で既に策定され、あるいは策定されつつある。  

(今後の制度のあり方)

1.見直しに当たっての基本的考え方 

 我が国は安定・成熟した都市型社会の時代を迎えており、都市計画制度としても、あらかじめ目指すべき都市像を地域社会の合意として明確にし、その都市像を実現するために具体の都市計画を定めていくという分かりやすい体系にすることが求められている。しかしながら、現行都市計画制度には、市町村レベルの都市計画マスタープランはあっても、都道府県レベルの都市計画マスタープランは位置付けられていない(線引き都市計画区域について、「整備、開発又は保全の方針」が事実上その役割を果たしているのみ。)。

 このため、都道府県レベルの都市計画マスタープランを法定化し、都道府県の定める都市計画はこれに即して定めなければならないこととすべきではないか。また、都市計画区域外での都市的土地利用が進んでいる現状にかんがみれば、このマスタープランについては、都道府県全域を対象とし、隣接する都道府県との関わりも踏まえて、都市計画区域の指定の方針や都市計画区域外での開発・建築行為についての考え方等と、都市計画区域ごとの土地利用や都市施設の整備の方針等とを、あわせて定められることとするべきではないか。ただし、この場合、マスタープランが、必要に応じて柔軟に変更し得るものとなるよう留意することが必要ではないか。

 また、市町村の定める都市計画の基本的方針である市町村マスタープランについては、手続、内容ともに自由度の高い現行制度を、極力維持する方向で考える必要があるのではないか。

2.制度構成の考え方

(1)マスタープランの構成と法的位置付け

○都道府県は、当該都道府県の区域における都市の健全な発展と秩序ある整備を図るため、「都道府県の都市計画に関する基本的な方針(都道府県マスタープラン)」を定めることとし、都道府県の定める都市計画はこれに即して定めなければならないこととしてはどうか。一方、市町村は、都道府県マスタープランに即して「市町村の都市計画に関する基本的な方針」(市町村マスタープラン)を定めることとし、市町村の定める都市計画はこれに即して定めなければならない(基本的に現行制度を維持する)こととしてはどうか。(都道府県マスタープランと市町村マスタープランの二層性とし、地方分権の趣旨を踏まえつつ、相互の連携をとった運用に配慮する。)

○都道府県マスタープランは、都市計画区域内のみにとどまらず、都道府県全域を射程に入れ、さらには隣接都道府県との関わりも踏まえて策定されるマスタープランとして構成することが必要ではないか。

(2)マスタープランの内容

○都道府県マスタープランに定めるべき内容は法定することとしてはどうか。具体的には、都道府県全域を視野に入れて、都市計画の目標、都市計画区域の指定の方針及び概ねの位置、都市計画区域外での開発・建築行為についての考え方、都市計画区域を超える都市施設の整備の方針などを定めるとともに、各都市計画区域毎に、土地利用の方針、主要な都市施設の整備の方針等を定めることとしてはどうか。この際、従来、線引き都市計画区域のマスタープランとして扱われてきた市街化区域及び市街化調整区域の「整備、開発又は保全の方針」の内容のうち、都道府県の定める都市計画に関わる事項は、都道府県マスタープランの中に記載することとすべきではないか。

○市町村マスタープランに定めるべき内容については、都道府県マスタープランの場合と異なり、極力、市町村の自主性を尊重する必要があるのではないか。

マスタープランの決定・変更の手続

○都道府県マスタープランの決定・変更に当たっては、住民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるとともに、関係市町村及び都道府県都市計画審議会の意見を聴くなどの手続を経る必要があるのではないか。

○マスタープランは、目指すべき都市像を明らかにする役割を有するものであり、一定の安定性を確保する必要があるが、一方、概ね5年ごとに実施される都市計画基礎調査の結果等により変更が必要と考えられる場合には、機動的に見直しを行う必要があるのではないか。このため、都道府県マスタープランの内容のうち、都市計画区域毎に定める事項については、都市計画区域単位で、変更することができるようにすることが必要ではないか。


2.都市計画区域外における開発行為及び建築行為についての考え方



現行制度)

・都道府県が、市町村(町村については一定要件を満たす町村に限る)の中心市街地を含み、一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する必要がある区域を都市計画区域として指定する。(都市計画区域面積は全国土の約4分の1、都市計画区域人口は全人口の9割以上)

・都市計画区域においては、具体の都市計画が定められるほか、市街地開発事業の実施、開発許可、建築確認の実施等により、都市としての整備、開発、保全が進められる。

・一方、都市計画区域の外については、例外的に都市施設が定められるほかは都市計画は定められず、都市計画制度の射程外となっている。

(今後の制度のあり方)

1.見直しに当たっての基本的考え方

 現行都市計画制度においては、都市計画区域外は都市的な活動が展開される可能性がない区域であり、予め指定した都市計画区域を一体の都市としてとらえ、当該区域の中を計画的に整備、開発及び保全すれば、十分にその法目的を達成できるものと考えていた。

 しかしながら、近年のモータリゼーションや高度情報化の進展、国民一人一人の意識の多様化と活動範囲の拡大等により、都市計画区域外における都市的土地利用(開発・建築行為)が進んでいる。これらについては、例えば、大規模な開発や建築行為が行われる場合には、それに見合う公共施設整備や、周辺の環境との調和が必要であるし、幹線道路の沿道や高速道路のインター周辺、あるいは既存集落の周辺等で建築行為が進んでいる場合には、最低限の用途整序や市街地環境の保全が必要であるが、都市計画制度の射程外となっているため、それが担保されていない状況となっている。地方公共団体が独自に条例や要綱を定めて対応している場合も多いが、法律上の根拠がないため、運用上苦労している公共団体もあり、法制度として受け止める必要が高まっている。(都市計画区域の縁辺部で生じている開発、建築については、都市計画区域の拡大で対応すべき場合もあるが、スポット的、散発的に行われる開発や建築行為を、すべて現行の都市計画区域に編入することは困難であり、また妥当でもないと考えられる。)

 このような状況にかんがみ、都市計画区域制度を弾力化し、現行の都市計画区域の性格(一体の都市として総合的に整備、開発及び保全を行うべき区域)は維持しつつ、一方で、そのような位置付けを行う区域でなくとも、必要な土地利用規制のみを柔軟に行い得るようにするとともに、都市計画区域外において、将来的に都市計画区域に編入されるような大規模な開発行為等が行われる場合には、都市の健全な発展を図る観点から必要な規制を行い得るような制度を検討する必要があるのではないか。なお、これらの制度を検討するに当たっては、地方公共団体独自の条例制定権を無用に制約することのないよう、制度の位置付けや対象とする範囲を明確にすることが必要ではないか。

2.制度構成の考え方

(1)都市計画区域制度の弾力化

○都市計画区域に指定し「一体の都市として総合的に整備し、開発し、及び保全する」までの必要はないが、スポット的に、開発行為や建築行為を規制する必要がある区域については、都市計画区域に準ずるような区域として指定し、必要な都市計画を柔軟に決定できるような仕組みを創設すべきではないか。また、このような区域は、地域の実情に通じた市町村が主体となって、機動的に指定できることとすることが望ましいのではないか。

(2)都市計画区域外における開発許可制度の適用

○都市計画区域外で行われる大規模な開発行為については、当該開発行為自体に市街地としての最低水準を求めることにより、都市の健全な発展を確保するため、原則として都道府県知事の許可に係らしめ、必要な公共施設の確保、周辺の環境との調和、開発業者の資力信用のチェック等最小限のコントロールを行う(開発許可制度を都市計画区域外に適用し、いわゆる技術基準の審査を行う)こととすべきではないか。

(3)特に大規模な建築物等についての届出制度の導入

○近年、幹線道路の沿道を中心に、ショッピングセンター、アミューズメント施設等大規模な建築物等の立地が進んでおり、そのうち特に大規模なものは、建築物単体で、都市の構造あるいは都市の発展方向に影響を与え得ることにかんがみ、このような大規模な建築物等の立地については、都市計画区域の内外を問わず、都道府県知事への届出を義務付け、都市の健全な発展を図る観点から、必要な勧告を行い得ることとすることが必要ではないか。



3.線引き制度及び開発許可制度の見直し



現行制度)

・都市計画区域は、無秩序な市街化を防止し、計画的な市街化を図るため、市街化区域と市街化調整区域に区分(線引き)することを原則としつつ、都市計画法の附則で、大都市圏等以外の都市計画区域では、当分の間、線引きの規定を適用しないこととしている(未線引き都市計画区域)。

・市街化区域は「既に市街地を形成している区域及び概ね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域」であり、少なくとも用途地域、道路、公園、下水道等の都市計画が定められる。開発許可については、1000u以上の開発行為に限り、良好な市街地形成のための技術的基準(法第33条)により審査される。

・市街化調整区域は「市街化を抑制すべき区域」であり、原則として用途地域は定められず、市街地開発事業など市街化を促進するための都市計画も定められない。開発許可については、市街化を促進することのない開発行為のみ許容する趣旨から、規模の限定なく、技術的基準及び立地基準(法第34条)に基づき審査される。

・未線引き都市計画区域は、線引きをするまでの暫定的な位置付けであるため、必要最小限の規制として、3000u以上の開発行為に限り、技術的基準により審査される。

(今後の制度のあり方)

1.見直しに当たっての基本的考え方

 線引き制度は、都市の無秩序な市街化を防止し、計画的な整備を進める上で大きな役割を果たしてきており、地方公共団体の都市計画行政に定着していること、昭和40年代に見られた激しい都市化現象はおさまっているものの大都市を中心に市街化圧力は依然存在することを踏まえれば、その骨格は引き続き維持することが必要ではないか。

 しかし一方、市街化調整区域において、全国一律の開発許可基準を適用していることから、地域によっては規制が活性化の阻害要因になっている場合が見られるなど弊害が指摘されているため、市街化調整区域の中であっても、地域の実情に応じて段階的に必要かつ十分な開発規制が行えるよう、制度面での対応を図る必要があるのではないか。

 また、開発許可制度においては、一定の宅地水準の確保のため、法令で定める技術的基準を適用しているが、まちづくりに対する考え方が多様化しており、また、開発許可に係る事務が地方公共団体の自治事務になることなどを踏まえ、最低基準は担保しつつ、地域特性を反映し、基準を強化又は付加できることとするなど、地域の実情に応じた運用が可能となる制度にする必要があるのではないか。

2.制度構成の考え方

(1)線引き制度の弾力的な適用

○線引き制度は、基本的には維持することが必要であるが、地域の実情に応じて適用しうるよう、線引きをするか否かは、予め法令で定めるのではなく、都道府県が、当該都市計画区域の市街化の状況や見通し等を踏まえて定め得ることとすることが必要ではないか。

○三大都市圏の既成市街地など一定の都市計画区域については、今後とも、相当の市街化圧力が続くことが予想されることから、引き続き線引きを義務付けることが必要ではないか。

○市街化調整区域内すべてについて、一律の基準で、開発を抑制するのではなく、区域内の状況に応じて開発許可の基準を変えることができることとする必要があるのではないか。その際、どの地域でどのような開発が許容されるかは、予め開発許可権者が条例で明示する等、透明な運用を行い得るような制度的手当が必要ではないか。

(2)「非」線引き都市計画区域における規制のあり方

○線引きをしなかった「非」線引き都市計画区域は、市街化圧力が弱く、一定地域の市街化を特に促進するとの位置付けを持たない区域であることから、必要に応じ用途地域や地区計画、あるいは保全系の地域地区を定められることとするほかは、一般的に開発を抑制するような厳しい立地規制は適用しないこととするべきではないか。

(3)開発許可の技術的基準における地域特性の反映

○一定の宅地水準の確保のため、開発許可の技術的基準は現行どおり法令で定めつつ、地方公共団体が条例で基準を強化又は付加することなどを可能とすることが必要ではないか。



4.既成市街地再整備のための新たな制度


現行制度)

・都市計画は、必要に応じ、用途地域等の地域地区、道路、公園等の都市施設、土地区画整理事業等の市街地開発事業等を、一体的かつ総合的に定めることとされている。市街化区域において、少なくとも用途地域及び道路、公園、下水道に関する都市計画を定めなければならない。

・地区レベルで建築物に関する制限や地区施設等を定める地区計画については、容積適正配分型、誘導容積型、街並み誘導型といった特例や、再開発地区計画、住宅地高度利用地区計画、沿道地区計画といった特別目的のための制度が存在する。

・用途地域により一般的に定められている建築物の用途制限、容積率制限等については、特別用途地区、高度利用地区、特定街区等の地域地区や地区計画により、地域の実情に応じて強化又は緩和が認められている。

・都市施設に関する都市計画が定められれば、その効果(都市計画制限)は、概念上、当該区域の地上空間、地下空間すべてに及ぶ。

(今後の制度のあり方)

1.見直しに当たっての基本的考え方

 既成市街地の再整備のための都市計画制度としては、道路、公園、下水道等の都市施設、市街地再開発事業、土地区画整理事業等の市街地開発事業のほか、地域地区制度あるいは地区計画制度の中で、優良なプロジェクトについて、容積率その他の土地利用制限を緩和する各種の制度が構築されており、既に相当の活用が図られている。既成市街地の再整備を一層強力に進めるためには、これら土地利用制限の緩和に係る制度について、他の都市計画との整合性に留意しつつ、プロジェクトを実施する事業者の意向も踏まえて、手続や制限緩和の内容の柔軟性を高め、より分かりやすく汎用性の高い制度にすることを検討すべきではないか。あわせて、これまで時々の社会的ニーズに対応して必要な追加拡充が重ねられてきている地区計画制度についても、より一般化する方向で見直しを図るべきではないか。なお、これらの制度の検討は、建築規制のあり方の検討と並行して進める必要があるのではないか。

 また、既成市街地の地上空間及び地下空間において、複数の都市施設の立体的整備や、都市施設と民間施設の適切な複合的整備を促進するため、道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナル等の都市施設について、平面概念である「区域」だけでなく、立体概念である「空間」を都市計画に定めることが有効ではないか。

 なお、既成市街地の再整備のためには、公共施設が不十分な地区で、土地区画整理事業等の事業を促進することが重要であり、都市計画制度と事業制度とをより効果的に連動させるための方策について検討することが必要になるのではないか。

2.制度構成の考え方

(1)多様な建築計画を可能とする新たな都市計画制度等の検討

○既成市街地における土地の有効高度利用を積極的に進めるため、用途地域で定めた建築物の容積率の割増、容積の適正配分、形態制限の特例等を行う既存の地域地区等(高度利用地区、高層住居誘導地区等)を再編整理する等により、公共施設の整備水準や地区の特性等に応じて、用途地域の制限を一律に当てはめるのではなく、多様な建築計画とまちづくりが可能となるような柔軟な制度を構築すべきではないか。

(2)地区計画制度の一般化

 地区計画制度を、具体の地区に着目してその土地利用のあり方を改善するための一般的な都市計画制度と位置付け、以下の改善を図ることとしてはどうか。

○地区計画を定めうる区域の要件を緩和し、市街化調整区域を除いて、必要に応じて自由に定めうることとしてはどうか。また、地区計画に定められる計画事項(届出・勧告の対象)の限定列挙を例示列挙に改め、必要に応じて多様な事項を定められることとしてはどうか。

○地区計画は、原則として、用途地域等の地域地区で定められた規制内容を緩和することはできないが、一定水準以上の公共施設を整備する場合等には、例外的に、当該規制を緩和することができることとしてはどうか(従来の再開発地区計画及び住宅地高度利用地区計画)。

(3)都市施設の立体的整備

○既成市街地の地上空間及び地下空間における都市施設の立体的整備を促進するため、都市施設に関する都市計画について、「区域」に加えて「占有空間」を都市計画決定することができることとしてはどうか。

○この場合の都市計画制限(都市計画法第53条の建築許可)については、占有空間内の都市施設に支障が及ばないかどうかの観点から判断することとしてはどうか。 



5.環境問題等への対応のための制度の強化


(現行制度)

・市街化区域及び市街化調整区域の「整備、開発又は保全の方針」において、運用上、自然的環境の保全及び公共空地系統の整備の方針、ごみ処理施設の整備方針等について記載している。

・保全系の地域地区として、開発を前提としつつ緩やかな規制を行う風致地区、開発を厳しく規制する一方不許可の場合の損失補償を義務付ける緑地保全地区(首都圏及び近畿圏の近郊緑地特別保全地区を含む。)や歴史的風土特別保存地区などが存在する。

・ごみ焼却場その他の処理施設については、都市施設として都市計画決定の対象(市町村決定)となっている。また、建築基準法第51条により、ごみ焼却場その他の処理施設の用に供する建築物は、原則として、都市計画決定したものか、特定行政庁が都市計画審議会の議を経て許可したものなどに限り建築できることとされている。

(今後の制度のあり方)

1.見直しに当たっての基本的考え方

 安定・成熟した都市型社会においては、都市に残された貴重なストックとしての自然的環境や景観の保全、さらには地球環境の保全の問題が、非常に重要な政策課題となる。また、都市の防災対策、高齢社会に対応した都市づくりなど、都市行政をめぐり顕在化している社会的課題は、このほかにも多くの分野にわたっている。

 これらの課題に対し、都市計画制度としてもできる限り積極的に対応し得るような仕組みが必要ではないか。このためには、目指すべき都市像を規定するマスタープランにおいて、これらの諸課題への基本的な考え方を明記し、それを具体の都市計画等に反映していくことが必要ではないか。

 特に、環境や景観の保全に重要な意味を持つ都市内の緑地を保全・創出するため、広範囲にわたって必要な開発規制等を行うことができるような制度のあり方について検討することが必要ではないか。

2.制度構成の考え方

(1)各種の社会的課題に対する考え方のマスタープランへの明記

○都道府県マスタープランや市町村マスタープランにおいて、都市計画の目標として、自然的環境や景観の保全に関する事項、環境負荷の低減に関する事項等を明記するほか、都市防災に関する事項、高齢者・障害者福祉に関する事項などについても明らかにする必要があるのではないか。

(2)広く緑地を保全・創出するための制度の強化

○環境や景観の保全に重要な意味を持つ都市内の緑地(里山、平地林等)をできる限り保全し、さらには新たな創出を図るため、広範囲にわたって必要な開発規制や土地の買取りの協議等を行うことができるような制度を構築すべきではないか。この場合、風致地区等既存の制度との関係を含めて検討するべきではないか。また、併せて、緑地保全のための税制や財源の充実を検討することにより、緑地保全の実効性を担保することが必要になるのではないか。

(3)廃棄物の処理施設や処分場の積極的な都市計画決定

○廃棄物の処理施設や最終処分場については、都市生活において必要な基盤施設として積極的に都市計画決定していくべきではないか。また、都市計画の決定主体については、周辺の環境に対する影響が大きく、広域的観点から配置する必要がある産業廃棄物関係施設については都道府県決定とする(現行制度はすべて市町村決定)べきではないか。また、これらの施設については、都市計画決定の必要性を、予め地域の合意として明確にするため、その整備方針(整備目標や概ねの位置等)を、都道府県マスタープラン又は市町村マスタープランに明記する必要があるのではないか。なお、これらの検討は、廃棄物処理行政と十分な連携をとって進める必要があるのではないか。

 

6.都市計画の決定システムの合理化


(現行制度)

・都道府県又は市町村は、都市計画の決定等をしようとする場合には、必要に応じ、公聴会の開催等住民の意見を反映させるために必要な措置を講じた上で、都市計画の案を作成する。

・都道府県又は市町村は、都市計画の案を公衆の縦覧に供し、関係市町村の住民及び利害関係人から提出された意見書の概要を都市計画審議会に付議するとともに、必要な場合にはそれぞれ国又は都道府県との調整を経て、都市計画を決定する。

・住民がイニシアティブをもって都市計画の案の作成に参画する場合として、地区計画の方針が定められている区域において、関係権利者全員の合意により、地区整備計画の作成を都市計画決定権者に要請する制度がある。

(今後の制度のあり方)

1.見直しに当たっての基本的考え方

 都市計画の決定システムは、都市計画が住民の財産権に直接影響を与えるものであるとともに、決定等に当たっては専門的、技術的判断が必要とされることから、都市計画の策定過程において住民の意思を反映させるとともに、第三者機関である都市計画審議会における審議を経ること等により、住民の権利保護の要請と都市計画における専門技術性の尊重の要請に応えようとするものである。

 近年、行政全般について、意思決定過程におけるアカウンタビリティの向上や市民参加の要請が高まっており、都市計画決定システムについても、この観点から制度を再点検する必要があるのではないか。特に、地区レベルで定められる都市計画については、生活者たる住民自らの意思によるまちづくりを促進するための新たな手法の導入を検討すべきではないか。

 また、都市計画制度に係る地方分権については、先般のいわゆる地方分権一括法における都市計画法の改正等により、都市計画の決定等の事務の自治事務化、市町村都市計画審議会の法定化等の措置を講じたところであるが、地方分権後の都市計画制度の円滑な実施を可能とするよう措置を講ずるべきではないか。特に、都市計画の決定等における市町村の役割が大幅に増大することとなるが、都市計画に係る執行体制が必ずしも十分とはいえない市町村であっても、適切に都市計画に係る事務を遂行することが可能となるよう、措置すべきではないか。

2.制度構成の考え方

(1)都市計画の透明性の確保と住民自らの意思によるまちづくりの促進

○都市計画の透明性をさらに向上させる観点から、都市計画図書を公衆の縦覧に供するのと併せて、都市計画を定める必要性(根拠)や当該案を決定案として選択した理由を記載した書面を公表すべきではないか。この場合、都道府県マスタープランあるいは市町村マスタープランにおいて、既に当該都市計画を定める必要性や理由が記載されている場合は、マスタープランの記載をもってこの書面に代えることを認め、マスタープラン段階での基本的な合意を促進することにより、結果として、円滑な都市計画の決定が可能になるのではないか。

○地方公共団体が都市計画決定を行う際の基準となる法定の「都市計画基準」について、新たに導入する都市計画制度への対応も含めて早急に充実を図るべきではないか。また、国として、全国共通に存在する社会的課題とそれへの都市計画における対応の考え方(例えば、中心市街地の活性化と都市計画の活用についての考え方、高齢社会の到来とバリアフリーの都市構造についての考え方等)を示す資料を、都市計画ガイダンス(仮称)のような形で、地方公共団体に積極的に提供すべきではないか。

○現行制度上措置されている、地権者等の全員合意による地区整備計画の策定要請制度(地区計画の位置、区域、方針等が既に定められている場合に限られる)を拡充し、地区計画について、地権者等の一定割合の合意で地区整備計画の要請を認めることにより、地権者等の意思を地区計画に柔軟に反映させることとしてはどうか。さらに、地区計画の案の作成について早い段階から地権者等の意向を反映させる観点から、地区計画の策定自体についても要請を認めることとしてはどうか。また、要請があった場合には、市町村に要請に対する見解の公表等を義務付けることにより、要請を契機とした地区計画の案の作成の検討を促すこととしてはどうか。

(2)地域の実情に応じた都市計画決定手続の合理化

○都市計画の決定等の事務が自治事務となることに伴い、都市計画決定権者の独自性を高める観点から、都市計画決定手続を条例により手厚くすることができることを、法律上明確化すべきではないか。

○地方分権により都市計画の決定等に関し市町村の役割が一層重要なものとなることに伴い、執行体制が必ずしも十分とは言えない市町村が適切に都市計画に係る事務を遂行することを可能とするため、都市計画決定の案の作成のため必要な調査・分析や住民説明の補助等の事務について、都市計画の専門的知識を有している者の知識や経験を有効に活用するための仕組みを構築すべきではないか。 

○現在都道府県の定める都市計画については、通達において、原則として市町村がその原案を作成することとされているが、地方分権後は、都市計画決定に係る事務が、都道府県、市町村それぞれの自治事務となることにかんがみ、都道府県が都市計画の案を作成しようとする場合において必要があると認めるときは、関係市町村に対し、当該都市計画の案の作成のため必要な資料の提供等を求めることができることとする必要があるのではないか。

建設省 都市局 都市計画課  法制担当


募集要領は→http://www.moc.go.jp/city/singikai/sn0900.htm   
募集期間は1999年11/1〜11/11まで

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