まちづくり市民フォーラム「まちづくり制度の改革を考える」 報告

 11月17日(月)全労災東京本部会議室にて上記フォーラムを行った。山内理事から国交省次世代小委員会の経過報告、早川理事からランポ改革案(「まちづくり制度改革案」)の解説を行った後、6人のゲストスピーカーにそれぞれの立場から発言してもらい、その後、会場も含めて全体討論を行った。55名の参加を得て、活発な議論が展開された。

小泉秀樹・東京大学助教授
 都市計画では市民の意思、地域性が尊重されることが規範となるべきであり、価値観の多様化した都市社会においては代表制民主主義、直接投票民主主義、参加民主主義の異なる3つの民主主義の型を組み合わせることが必要不可欠である。フォーラム(協議の場)、アリーナ(決定の場)、コート(決められた公共性を問う場)が確保されていることが重要であるが、現在の日本の都市計画では、フォーラムは縦覧や公聴会等意見を聞き置くだけ、アリーナは都計審があるが、議員・公募市民・専門家が渾然一体となっており、どの機能・見地からの意思決定の場なのか役割があいまいになっている。重要な都市計画に関しては議会が関与し、場合によっては直接住民投票とすべきである。都市計画決定事項は処分性がないため訴訟の対象外であり、個別事業では実質的な利害がないと訴訟権は発生しない。ランポ案のように準司法機関を設ける方法もあるが、行政訴訟権を法的に位置づける方が良いと思う。

林泰義・玉川まちづくりハウス主宰
 国交省次世代小委員会とりまとめは、規範的なことや抽象化された方策はそれなりに書いてあるが、問題の核心は具体化の段階にある。
 一方、ランポの改革案は、いまの都市計画制度をどう改革すべきかがしっかりと書き込まれている。ポイントは3点。
 義務としてやるべきこと、権利として保障すべきことは法律の中に明記し、地区計画等の策定中に開発行為等を停止し、現状を変化させない「参加保障と分権」を行う。
 都市計画決定は議会決定を原則とし、議会決定で都計審等に例外として委ねるようにする、広域都市計画に関しては基礎自治体が連合して行い、県や国はこれに対し発言・助言を行うようにする「都市計画決定の分権」を行う。
 地域的公共性には同感するが、「公共の福祉」の解釈の延長ではなく、「新しい公共」という概念を確立し、制度的に定着させる。

大西隆・東京大学教授
 全国市町村へのアンケート結果を踏まえてもさらなる分権改革が必要であると思っており、その他にもランポの主張に賛同する点は多い。同時に分権後の制度の活用も重要である。
 まちづくり条例の中には参画について市民投票まで踏み込んだものや、1市で15の条例をつくっている例もある。これらが先駆例となって、分権の内実を高めていく必要がある。
 また、国の役割は人材派遣や法整備である。都市計画運用指針等を懸念する声も多いが、制度の使い方の競争の時代だと解釈し、いかに乗り越えていくかの先行例だと捉えることもできる。また、県の役割に否定的な見方をもあるが、市町村間の調整や弱小な自治体の後見的役割を果たす必要はあるのではないか。
 また、ランポのような組織には、条例、事業実施度、市民参加度、最終的な成果等「まちづくり力」を客観的に評価することも行ってほしい。

益子三有紀・神楽坂地区まちづくりの会
 新宿区は都市マスの中で「路地を生かしたまちづくり」「まちづくりの主体はその地域に住む区民」と謳っているのに、神楽坂で区道である路地を廃止して新しい道路に付け替え、100m近い超高層マンションが計画された。都市マスは法的拘束力を持たないため、開発行為の申請に対しストップをかけられない状況にあった。
 また区道の廃止・認定には議会の議決が必要なのだが、区民がこの計画を知ったのが議決のあった後。路地にしても開発行為にしても事前に計画があることは知っていても、訴訟や異議申し立てができない事項も多い。
 議会への陳情では、神楽坂のまちづくりの文脈に沿って建築計画を変更することは採択され、都知事へ意見書も提出されたが法的拘束力を持たないため見直しに関する指導は行われず、行政及び第三者機関等も交えての話し合いについては採択されなかった。
 このような経験から、早くからの情報の開示と住民の参加、そのための都市マスや条例、制度づくりが望まれる。

角間裕・三鷹市都市計画課
 ランポの制度改革研究会に参加し、以下のような観点から提案づくりに関わった。
 市側の@情報提供が下手、A決定権不足の2点が、市民参加促進の障害になっていると思う。
 提案内では、@の対策として行政は素案を複数案出すこととした(2-1(1))。自分の選択した案の採用・不採用等、参加の実感が湧きやすくなる。またサイレントマジョリティの意見をどう拾い集めていくかも今後の課題になる。
 Aに関しては2-1(2)、2-7(2)(3)で述べている。現在市町村が単独で決定できる事項がほとんどなく、市民と協働しての提案が都に却下された事例もあり問題が多い。
 市民参加抜きでは市が困る状態を制度的に担保することと、制度の運用改善が必要。また行政職員も市民参加によって手応えを感じる等インセンティブ的な効果を求めるべき。

井上赫朗・都市プランナー
 ランポ案では都市マスの機能性を問題視しているが、規定があったことで都市マス策定時に住民参加の意識に目覚めた自治体も多い。参加者からは意見や提案が反映されていないとの声も多く、参加方法は不十分な点や課題も多い。
 一方、審議会を信用していない市民が多いため、評価等に審議会方式を用いることは不十分。住民投票、代案提示等様々なメニューをつくらないと納得がいくものにはなりにくく、アリバイづくりに終わってしまうことが危惧される。
 また参加のプロセスの途中で上部の決定により現場が混乱することがある。重要な案件にPI等の参加方式を用いるのは良いが、同時に目的や決定主体を明確にする必要がある。
 さらに最近景気低迷・財政難等で大規模用地とその開発トラブルが多発している。大規模用地の土地利用転換に伴う措置に関するルールも重要な要素である。

全体討論
・用途地域を4つ程度にして後は自治体の自由に任せる等、制度自体の自由度を高める。
・税負担を行うことは賛成だが、開発利益のことも同時に考えてほしい。
・都市計画の体系を都市農村計画、事業レベル、地区レベルの計画(地区計画・建築協定等)、個別開発レベルと分けて考え、各レベルの市民参加と相互関係を構造的に整理すべき。
・法律内の「市町村」の定義を明確にし、市町村長・議会・計画局等組織的な構造を分ける。
・法律の最初に決定主体の権限を決め、その中でいくつかのプロセスを重んじる方がよい。
・重要事項については参加を明記すべき。
・現在確認する行為はないため、都市計画と都市マスの整合性を都市計画決定の手続や開発行為においてチェックするようにすべき。
・専門家の役割も法律の中に明記すべき。
・都市計画・土地利用計画における規制の適正化の外側にある規制緩和の波との対峙の仕方を考える必要がある。
・あまり大上段に「制度論」を掲げず、現場から議論を積み重ねるということが必要。
・都市計画決定事項の判断基準をしっかりと持つべきではないか。
・用途転換の時に制御できる仕組みがあれば大規模開発はかなり制御できるのではないか。
・地区計画等をつくろうとする住民の運動等を支えるような仕組みを法律に書き込むべき。
・水平の自治体間といっても規模によって違いがある。
・住民・行政・大学等が反対運動を等でうまく協働できない。
・市民が「公共性」について発言しようとしても法律も権限もないことが問題。

(東京ランポスタッフ・深田 祐子)

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