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連続講演会「住まいの原点を問う」
第1回「ホームレス・家を失くした人の自立再生の展望」


主催;新建築家技術集団東京支部・日本住宅会議関東会議
  東京芸術劇場大会議場      1999/6/19

岩田正美

地域社会の側は変わらなくていいのか       「住民」概念の拡大を


1)ホームレス問題の背景

 ホームレスという人々がいるわけでなく、多様な要因によって「家を失った」多様な人々である。「路上生活者」や 「野宿者」はその一部でしかなく、その構成員は情勢によって変わりうる。ホームレス問題の要因は複合的であり、 次のような現代社会の諸問題とつながっている。

・雇用システムの転換
  若い人を中心とした新しい契約社員形態など不正規雇用の一般化と終身雇用制度の見直しがすすんでいる。

・家族の縮小と非婚傾向、単身世帯の増大
  95年の国勢調査で全世帯の25%が単身(東京では4割)となっている。また、未婚率が男性で高く、高度成長を担っ たサラリーマン中心の家族形態である終身雇用型核家族の縮小、解体がすすんでいる。

・多重債務問題などの社会問題との関連
  生活の破壊のされ方がドラスチックである。

・都市の再開発と安価な住宅や宿舎の縮小
  木賃アパートなどがマンション化、ビル化され、社会的な失敗者を受け入れる場所がなくな りつつある。

・自由と自己責任の強調

  自立性の強調が圧力となって、孤立化を招いている。基本的に路上生活者は自立して いる人だと思うが、それで は生きていけない人といえる。路上生活者が地域社会、地域 関係の中の一員となって自立していく、そのために支 援するということも必要だが、地域社会の側は変わらなくていいのか。
  
     路上生活者は集団居住ができるのかという懸念がもたれるが、路上の人ほどじっと集団居住してトラブルも少ない。路 上の人は集団居住できないと思い込んでいるのが地域社会の人たちではないか。


2)ホームレスという状態とその「問題」化

 日本では、路上にさらけだされた失業・貧困・疾病そのものの問題と、公共空間や公有地に居ると、周辺の住民など から迷惑視され排除される近隣の「迷惑」と「空間的排除 が問題視されている。
 
 しかし、問題として重要なのは失業による家族の解体で生活拠点(ホーム)を喪失し、「住民資格」が希薄となるこ と、さらに住民登録されないことで生活保護から漏れやすくなるなど「制度的排除」につながていることである。
 
また、英国のブレア政権は社会の一員でいる人と排除される人に二極分解することは社会的統合を危うくするの で、それを防ぐためにホームレス対策に重視している。こうした社会的統合という角度からの問題視はホームレスの人々 も市民として同じ社会の一員であると考えたとき無視できない。


3)何を解決すべきか-住民登録の回復が優先

 まず居住の回復が必要だが、家だけでなく、社会への帰属の立脚点の回復が重要となる。住民資格がアイデンティティ となるという点で、住民登録の回復が優先される。次いで労働者資格の回復となる。

 第2に、ホームレス問題の要因が複合的である以上、いろいろな問題を抱えているその実態への、総合的な施策が必要 である。一般に弱者優先の施策がとられやすく、比較的弱っていないために施策から取り残されている若年、中年単身者 への対応が急がれる。

 第3には、地域社会が分権などで小さなコミュニティを形成しようとする保守的傾向が見られ、違う人を排除、差別す る意識を変えていく社会対立・排除の回避と、同じ空間を共有する人として、そこに来た人、たまたまいた人、逃れてき た人も含めた「住民」概念の拡大を図ることが重要となっている。

水田    恵

路上生活者の問題解決を地域社会とつなげる

 従来は日雇い労働の就労斡旋する寄せ場での仕事がないために路上生活化する人々 が主流だったが、近年の傾向として寄せ場を経由しない路上生活者が、関東近県から山谷などに集まっていることであ る。こうした路上生活者への自立支援活動をすすめているが、高齢者、疾病者など自活できない人には生活保護をはじ めとする現行の個別福祉制度で対応している。

 現状の大きな問題は、個別福祉にまで至らないが、就労自活がさまざまな理由で 難しくなっている人への施策が不足しているところにある。それについては個別福祉の基盤のうえで、居住、雇用など を地域において創出していく地域福祉への転換をNPOあるいはアメリカのCDCsのような地域開発の組織を核にし て実現する方向で活動しており、NPO法人の申請を行なう予定だ。
 
 路上生活者の社会復帰とは、元の生活スタイルに戻ることではなく、路上生活体験を生かした地域社会づくりに参加 することと考えている。路上生活者の問題解決を地域社会の再生につなげていくことが重要である。路上生活者もまた 住民であるという「住民」概念の拡充によって、地域社会再生の人材=資源ととらえ、地域に受け入れることで地域が 豊かになっていくというまちづくりの戦略を山谷ですすめていきたい。

 

ありむら潜
釜ヶ崎に来れば誰もが暮らせるという良さ
共生できるまちづくりをめざす

 この西成地区(釜が崎)でもホームレス1万人時代となって、やは り寄せ場を経由しない人が増えている傾向にある。全く西成のことを知らない人が労働福祉センターにやってきて仕事がな いため、西成地区から市街地へと路上生活者が流出している。

存立も危ぶまれる状況になりつつある。大阪では東京と違いドヤ住まいは生活保護の対象としていないため、そうした生活 保護対象者は施設収容して地域から切り離されていく。

 路上生活からドヤでの短期宿泊を最初のステップにして、次に自力宿泊へ、さらに共同居住へ、最後に自力居住へ至 るステップを踏んで、地域社会のなかで自力再生していくことを考えているが、これを画一化したくない。寄せ場の人は流 動性と、高齢化と仕事がないことによる定着性の二重性の側面があり、そのカオスのなかで生きているが、それを包み込ん だ地域社会を目指したい。この釜ヶ崎に来れば誰もが暮らせるという良さは失ってはいけない。普通の町にしたいというの とは違う。寄せ場的コレクティブタウン、共生できるまちづくりを目指している。

 現在、路上生活者の一時避難や社会復帰の準備施設として地域資源であるドヤをいかしていく提案をしている。これ はドヤの2000室を大阪市が借り上げる構想で、同規模の施設を新規に建設する場合の費用の12分の1ですむ。

                                                                                                                                     文責 辻利夫


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