今国会で都市再生関連3法(都市再生特別措置法、都市再開発法等の一部改正法、建築基準法等の一部改正法)が制定された。立法の狙いは、欧米諸国では例のない規制緩和を通じて、「都市再生」を民間事業者に委ねることで実現することである。
今回のカレッジランポでは、C.まち計画室代表の柳沢厚氏を講師に招き、東京ランポ理事の早川淳の解説も交えて、今回の法施行によって、私たちのまちがどのように変わるのか、地方分権に基づく市民−自治体のまちづくりは形骸化しないのかを考えた。(6月29日開催)

柳沢厚氏「都市再生関連法の概要とその問題点」
国土交通省社会資本整備審議会建築分科会集団規定のあり方部会の専門委員として、今回の法制定に関わってきたが、個人的には不賛成の立場である。
都市再生特別措置法について、意外と注目されていないのが、自治体と国から構成され、緊急整備地域ごとに設けられる協議会の存在である。都市再生事業者は、自治体が都市計画決定を着々と進めないとき、いわば尻叩き機関である協議会に「なかなか進まない」と訴えることができる。
緊急整備地域内で指定される特別地区では、建築基準法の都市計画的な制限が外れるので、建築のアイデアが煮詰まった後に、それを認めるような都市計画を作れる。現在もすでに、新宿副都心を造った特定街区の制度があるが、特別地区も基本的には同じもの。ただ、建築基準法上の制限を全て外す特定街区の方が、スーパー都市計画としてはわかりやすい。特別地区では、なぜ用途制限、容積率制限、斜線制限、高度地区制限のみを対象としたのかは不明である。
緊急整備地域で認められる提案制度は、ディベロッパーのみが提案できる。国土交通省が提案手続きを省令で定めるが、どういう資料を添えて出すのか、提案内容が都市計画基準に合っているかどうかの挙証責任を提案者と自治体のどちらが持つのかに、注目が必要である。挙証責任は提案者が持つと考える方が素直だが、数百万円の調査費が必要と考えられるため、都市計画法で認められる提案制度でも同様の手続きとなると、地権者やNPOにできるかどうか疑問である。
都市再生特別措置法で認める提案対象は、具体的な建築の整備を伴うような事業に限定されている。一方、都市計画法で認められた提案制度では、全ての都市計画が対象であるため、現実には難しいとしても、道路の廃止のような提案もできる。
都市再開発法の改正では、従来、自治体、公団、組合にしか認めていなかった再開発事業の施行者として、1種事業(権利変換方式)、2種事業(全面買収方式)とも、株式会社でも可能になった。1種に株式会社が必要ということは、ディベロッパーやゼネコンが組合の実務を代行していた実態もあり、従来から言われていた。しかし、収用権が発動できる2種に、なぜ株式会社が必要なのかわからない。2種事業でやろうとしている環状2号線を、ディベロッパーが部分的に代行できるようにしようという、直接的な目的があるためだろうか。
建築基準法の改正では、総合設計制度が、特定行政庁(建築主事を置く自治体の首長)による許可制度から、建築確認のみで行えるようになった。総合設計は特定街区の小ぶりの制度であるが、特定街区がまとまった1つの街区全体を造り変え、しかも都市計画で決めるのに対して、総合設計は1敷地から発動できる。
総合設計では容積と高さを緩和できる。容積の緩和は、住居・商業系の用途地域で、住宅が含まれているものであれば、最高基準容積率の1.5倍までは建築確認で行える。特定行政庁は、適用除外の区域を決めることができるが、建築確認による総合設計の適用除外であって、許可制度としての総合設計は適用除外にできない。また、特定行政庁が、区域を決めて、1.5倍を1倍までの間で抑えることもできる。高さの緩和は、採光・通風くらいしかない政令基準をクリアした建築物に、斜線制限が課せられなくなるというもの。これを適用除外にすることは、特定行政庁にはできない。高度地区や地区計画で高さを制限するしかない。
今回の法制定の背景にあるイデオロギーは何だろうか。
現在、経済学者が、都市計画制限の目的を、経済学的な用語で翻訳しつつある。しかし、規制目的の明確化は、性能規定化へとつながっており、問題がある。法には、それが直接的な狙いでないが、いろいろな意味を内包している面がある。総合設計における斜線制限の目的が、採光の確保だけになってしまったが、高さをそこそこで抑えるという機能は切り捨てられてしまった。
また、事前明示性は、今回特に強調された点である。「事前」とは、役所での手続きの前という意味で、どのような建物が建てられるかは、法律を読めばわかるようにしておくということ。総合設計の建築確認化もこの流れであるが、場所の状況に相応しい計画を作るというアプローチを排除してしまう。事前明示性は、「都市型」時代のものではなく「都市化」時代のものであり、そんな乱暴なやり方では、地域に蓄積されてきたものまでなくなってしまう。
94年の八田達夫・阪大教授(当時)の論文では、容積率制限の妥当性が乏しいという論が展開された。八田氏によれば、都市計画学者の意見を総合すると、容積率制限は混雑回避のために行われているが、道路の混雑にしても、料金制のような価格政策でコントロールできる。もし料金制が無理なら、用途別容積率制を導入すべきで、住宅地での自動車発生量は少ないので、住宅であれば1.5倍まで容積が緩和できるという、今回の総合設計の建築確認化も、この流れから来ている。
ただ、用途別容積率制は、都市計画学者が、全く違う観点で、昔から言っていた。例えば、横浜市では、飛鳥田市政時代に、600%の商業地域に500%のマンションがどんどんできると、小学校などが追いつかず困るということで、住宅という用途で容積率を抑えていた。ニューヨークやパリでも用途で容積率が決まっており、本来魅力的な制度だが、日本のように、自動車発生量から説明するのは邪道である。
早川淳「都市再生関連法成立への自治体の対応」
これまでの都市計画法の改正を見ると、92年の改正では、都市計画マスタープランを作ることになり、いまでは多くの自治体で出揃った。98年には、市町村の都市計画審議会が法定化され、都市計画の事務自体が自治事務となった。2000年には、条例への委任事項が増え、地区計画の申出制度が加わった。
2000年の都市計画法改正の際、都道府県が都市計画区域に関するマスタープランを、2004年までに作ることになった。東京都でも都市計画区域マスタープランを2004年5月までに策定する。東京都は、このマスタープランに基づいて、用途地域の都市計画決定をやり直すことにした。用途地域の原案は市区町村が策定するが、今回、建築基準法が改正され、容積率、建ぺい率のメニューが増えたため、用途地域に適用する容積率、建ぺい率を見直す必要が出てくる。
例えば、容積率は、建物前面の道路が狭い場合、前面道路幅員(cm)に、ある数字(0.4または0.6)を掛けた値が、上限となる(例:400cm×0.4=容積率160%)。準工業地域では、従来0.6掛けのみであったため、近年のように住居ばかりが建っている実態でも、0.4掛けしかない住居系の用途地域に変更できなかった。今回、住居系にも0.6掛けが加わったことで、容積率を0.6掛けに上げて、用途地域を住居系に下げるという方法での、現状の街並みを否定しないで済む、複線的なダウンゾーニングが可能になった。
総合設計制度が建築確認化されたことで、これまでは選挙で選ばれる首長が、特定行政庁として許可していたのを、建築主事の確認だけでできることになってしまう。それどころか、民間の建築確認機関でも済んでしまう。確認の基準も政令で定められ、自治体が関与できないまま、容積率1.5倍までの建物が建ってしまう。必要に応じて、適用除外にすべきである。
一番の問題は、都市計画法の改正で、民間があらゆる都市計画について提案できるようになったことかもしれない。これまでも、ディベロッパーは底地買いをして、非公式な提案を自治体に持ち込んで協議をしていた。今回は、地権者・地籍の3分の2の賛成を集めれば、自治体と協議しなくても提案できてしまう。もっとも、入口が広くなったにすぎず、通常の都市計画決定を経る必要があるので、都市計画審議会を強化することで対応できる。ただ、市区町村の都市計画マスタープランが詳細にできていないなど、提案の是非を判断する基準がないことが問題である。
また、2000年の都市計画法改正で、都市計画決定手続を自治体が条例で上増しできるようになっている。周辺住民の意見を聴く、意見に対する見解書を出す、といったことを条例で付加できる。民間の都市計画提案制度ができたことで、これまでの都市計画法改正によってできた制度を活用する必要性が出てくる。都市計画決定手続付加条例、地区計画申出制度条例などを作る必要がある。
質疑応答
都市再生特別措置法ができただけでなく、都市計画法、建築基準法といった一般法まで改正されたのはなぜか。
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都市計画も大事だが、都市再生にお金を投じてくれる企業が動きやすくなるのがもっと大事であると、国が考えたため。総合設計の建築確認化に見られるように、企業が動きやすいよう、事前明示性を浸透させようとしている。都市計画には、事前明示では解決できないものがあることを、もっとランポなどがアピールしなくてはならない。(柳沢)
国会では多くの附帯決議が付いたが、頼もしいと思っていいのか。我々を守る附帯決議はどれか。
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「建築基準法等の一部改正法」の衆議院附帯決議の四は、ランポが入れたもの。自治体への委任事項を増やし、自治体の土俵で勝負するという考え。地方分権一括法で、都市計画は自治事務になっているので、法律をどう解釈しどう運用するかは自治体の権限であり、省令に拘束される必要はない。民間提案を受けるのも自治体であるし、自治体が判断を行う。ただ、自治体の現場が、地方分権モードになっていないのが問題。(早川)
都市計画法で認められた民間提案は、市民が使える制度なのか。また、民間提案で都市計画マスタープランまで変えられるのか。
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民間提案制度がこんなに簡単に入ってしまうとは思わなかった。NPOの存在価値が1つ増えたので、おもしろがる人は増えるだろう。ハードルを高くするとお金があるものだけしか提案できないし、低くするとでたらめな提案が出てきて自治体の労力が増えるという、両面のデメリットがある。でも、低めにする方がよいだろう。地区計画の提案なら、都市全体のバランスと切り離してよいし、緩和型ではないので、そんなに調査費もかからないのではないか。(柳沢)
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都市計画マスタープランは、都市計画決定されるものではない。民間提案は、都市計画決定されるものに対するもの。ただし、マスタープランは、これまでのところ個別の利害関係を扱う基準になっていないので、別の意味で改定の必要がある。(早川)