カレッジランポ2001-3  まちづくり条例    2002/02/14更新


カレッジランポ2001-3報告 

昨年の都市計画法の改正を受けて、いま、多くの自治体がまちづくり条例の検討を行っている。まちづくり条例については、まちおこし的な内容から、ニセコ町のような自治基本条例的なものまで、多様な展開をみせている。今回のカレッジランポでは、パネリストとして東京大学工学部助教授の小泉秀樹氏、練馬区都市計画課長の室地隆彦氏、三鷹市都市計画課主事の角間裕氏を招き、都市計画分野を中心にまちづくり条例の動向と課題について議論を行った。(2001年12月8日)

bumov_r.gif (145 バイト)当日のカレッジランポの様子がご覧になれます
http://www.chigasaki.or.jp/~fujimoto/lanpo2/index.html

■基調講演

◎小泉氏「まちづくり条例の動向」

  まちづくり条例の先駆的試みは、神戸市が1981年に制定した「地区計画及びまちづくり協定条例」、1982年の世田谷区街づくり条例である。1980年代には景観系の条例が広く普及した。1990年代前半には、真鶴掛川湯布院といった投機的リゾートマンションの立地が著しい地方都市での制定が進んだ。そして1990年代後半より各自治体に急速に普及するとともに、多様化の様相を見せ始めた。例えば、豊中市の段階的なまちづくり支援、穂高町の都市農村山林の一体的な土地利用コントロールシステムなどである。
 これらまちづくり条例の意義としては、まず協議システムの導入、参加システムの充実、空間的に総合的・一体的な土地利用コントロールシステム、マスタープラン優位の整合的体系、法による事前確定性の補完(土地利用規制基準、地区街づくり計画)などが考えられており、都市計画法制の諸問題に見事に対応していることである。それも官と市場の2局的な都市計画でなく、第3の主体として市民社会・協同的発意(住民による計画提案など)を位置付け、そのための参加や協議のシステムを組み込んでいる。また、条例発展の過程においては、ある自治体の取り組みに触発されることにより別の自治体による創造的試みが生まれ、多様な進化を遂げていることである。
 一方で、マスタープラン優位のシステムを作ろうとしてはいるものの、法律先占論や縦割りによる補助制度などの計画を実現するための制度の弱体さ、地域の代表性確保や実現性の確保などの観点によるまちづくり方式の見直しの必要性、都市計画に関する行政訴訟・審査制度の欠如といった課題もある。また、日本においてはマスタープランそのものの概念や位置づけ、法制度との関係などが曖昧であるために、現状では景観や緑地保全などの分野別に条例が制定され、それぞれにマスタープランがつくられているといった根本的問題もある。
 しかし最近では社会学や法哲学の分野などで、よりよい社会をつくるためには官のみに公共性があるのではなく、様々な地域の小さな発意に各々意味があり公共性があると捉えるべきという新しい考え方が出てきており、理論的にも検証されつつある。まちづくり条例にはまだ解決すべき課題も残ってはいるが、そうした地域の小さな発意を育みつなげることによって、市民の生活が豊かになるようなシステムとして有効に機能することを期待したい。

<参考>条例文等を自治体の公式ページへリンクしています

bumov_r.gif (145 バイト)神戸市の制度 もりだくさんです
http://www.kobe-toshi-seibi.or.jp/matisen/1jouhou/seidosyokai/seidolist.htm
bumov_r.gif (145 バイト)世田谷区まちづくり条例のあらまし  条例文、経緯など
http://www.city.setagaya.tokyo.jp/topics/toshiseibibu/maccho/contents/joureiaramashi.htm
bumov_r.gif (145 バイト)真鶴町 ルールのあるまちづくり 概要/条例文/美の基準/まちづくり計画
http://www.ebisu.ad.jp/users/manazuru/m-indx.htm
bumov_r.gif (145 バイト)掛川市の「生涯学習まちづくり土地条例」
条例の概要/掛川市生涯学習まちづくり土地条例本文/掛川市生涯学習土地審議会運営規程
/ 土地条例のスケジュール /住民総参加のフィールドウォッチングの一日
http://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/totijorei/totijo-main.htm
bumov_r.gif (145 バイト)湯布院町「潤いのあるまちづくり条例」
http://www2.town.yufuin.oita.jp/Files/1/1421/attach/uruoi.pdf(PDF)
bumov_r.gif (145 バイト)湯布院町「潤いのあるまちづくり条例」の手続の流れ
起業者/住民/事務手続き/町/町づくり審議会のそれぞれの役割とフローチャートについて
http://www2.town.yufuin.oita.jp/Files/1/1422/attach/flow-chart.doc(PDF)

bumov_r.gif (145 バイト)豊中市公式HP  表紙→まちづくりを選択→まちづくり支援課に条例文がPDFであります
http://www.city.toyonaka.osaka.jp/

bumov_r.gif (145 バイト)穂高町条例文(リンク切れのため準備中)
bumov_r.gif (145 バイト)穂高町http://www.town.hotaka.nagano.jp/index.html
開発事業に係る意見聴取のための公聴会の開催について平成13年11月22日
http://www.town.hotaka.nagano.jp/topics/kikaku/200111/kikaku_tps02.html

bumov_r.gif (145 バイト) 「市町村における総合的な土地利用計画の策定について」講 師:大方潤一郎 東京大学教授
http://www.pref.tochigi.jp/shuto/kekka/kouenkai/990609.html
内容は条例づくりに関わられた大方教授の穂高町の土地利用コントロールシステムについての講演

栃木県、栃木県首都機能移転促進県民会議主催/4回国会等移転課題別フォーラムより講演会要旨 /平成11年6月9日


■事例報告

1.室地氏
「都市計画マスタープランとまちづくり条例―まちづくり条例の制度設計をめぐって―」

 練馬区では都市計画マスタープランをまちづくり条例に先立ち策定中であり、全体構想は既に策定済、地区別指針を平成13〜14年度で策定中である。全体構想では、懇談会形式で市民参加を試みた。地域別指針策定では、公募区民約130名によるカルテづくりを行っており、これを通じて区民の目による計画の「質」のチェックを期待している。
 このように市民参加で都市マスの策定を行っているが、策定後にはその実効性をどう担保するのかに直面することが予想される。その実効性確保のために、ある程度地域の中で計画策定や協定締結を行い、その計画・協定を根拠として自治体が建築に関する指導を行ったりできないかというところに、まちづくり条例への期待が強い。
 まちづくり条例を制定し活用していくためには、まちづくり条例の制度設計をどう組み立てるかが重要である。そのためには、建築基準法や都市計画法に委任された委任条例と地方自治法を根拠とする自主条例や要綱を有効に組み合わせた活用、訴訟を起こされた場合に防御できるようにするための市民参加の仕組みの確立、そのまちの成り立ちや各自治体の持っている権限などを踏まえた制度設計を行う必要がある。こうしたことによって、具体的に活用できるツールとしてのまちづくり条例ができるのではないかと考える。
 まちづくり条例の制度設計のための参考事例としては、委任条例活用の可能性として中央区の地区計画の活用がある。街並み誘導地区計画と用途容積型地区計画を活用し、具体的な建築に際してのローカルルールを作り上げている。中央区にはいわゆる「まちづくり条例」というものはないが、この「地区計画の建築規制条例」が「まちづくり条例」といえる。委任条例と自主条例の融合事例としては、京都市市街地景観整備条例があるが、これは美観地区は委任条例、建造物修景地区等は自主条例と、双方をうまく組み合わせて活用している。事前手続きに対する工夫の事例としては、京都市土地利用の調整に係わるまちづくり条例があるが、この運用の実態としてはネゴシエーション条例に止まっており、
事業者も含めたコラボレーション型の仕組みの必要性を感じる。
 まちづくり条例を考える際、まちづくりにおける政策法務の重要性を痛感している。その意味で、実務者が政策法務に精通することが求められる。


bumov_r.gif (145 バイト)練馬区都市計画マスタープラン全体構想
http://www.city.nerima.tokyo.jp/ku/keikaku/toshi/zentai/index.html


2.角間氏
「地域課題への対処とまちづくり条例―三鷹市まちづくり条例の改正について―」

 市の大部分を住宅地が占めている三鷹市にとって、住環境は極めて重要な要素である。そのために、三鷹市では平成8年にまちづくり条例が制定された。当時の条例では、まちづくりの方針を示すものとして土地利用総合計画に関する規定、この方針を具体的に実現するため手法として、市民主体の地区計画、建築協定、まちづくり推進地区と、行政主体による開発事業の事前協議制度を規定した。この条例施行後約5年を経過し、平成13年9月に条例を改正した。
 条例改正の背景及び理由は、指導要綱による行政指導では限界があることや、法改正などにより日常的なマンションや大規模小売店に関する紛争の内容が変わってきたこと、都市計画法の改正による住民の発意による地区計画が認められるようになったことなどである。この条例改正により、民間事業者の開発事業に対してより有効な対応を行うこと、および市民による発意を中心にしたまちづくりを積極的に推進していくことを目的としている。
条例改正の主な内容は、
1)開発事業において「環境配慮制度」の導入、
2)中高層建築物等に関する指導要綱および開発行為に関する指導要綱の手続き規定を条例に盛り込む、
3)開発事業について市民の意見を述べる機会の確保、
4)環境配慮計画書等を調査審議するため、市長の附属機関として「三鷹市環境配慮審議会」の設置、
5)勧告・公表等の強化、
6)地区計画等に関する住民参加手続き規定の追加、
7)「まちづくり推進地区」における「まちづくり協定」の締結と、これに基づく開発事業に対する指導・助言を盛り込むことである。

  「環境配慮制度」は、要綱を条例に格上げし、一部修正を加え、強制力を強化したものである。この制度は、一定の基準を開発事業者に事前に示し、開発事業に環境への配慮を行ってもらうことを狙いとしている。「まちづくり推進地区」は、地区計画や建築協定の簡易版といったイメージである。市が一定の地区についてまちづくり推進地区を指定し、市が指定するまちづくり推進団体を応援しながらそのまちの方針を明確にして、実現していこうとするものである。これは、法的拘束力のある地区計画へ至る1ステップとしての位置づけとなっている。環境配慮制度とまちづくり推進地区制度の併用により、ある程度市民にとって価値のある、使いやすい、色々な可能性のある制度になったのではないかと考えている。
しかしながら、今回の改正を経てもまだ課題は残されており、さらなるバージョンアップが必要である。今回の改正作業を通じて、行政によるまちづくりには限界があり、市民が中心となった攻めのまちづくりの重要性を実感した。


bumov_r.gif (145 バイト)三鷹市まちづくり条例を改正します
http://www.city.mitaka.tokyo.jp/machizukuri/index.html



■質疑応答から〜まちづくり条例の課題

poki_b01.gif (232 バイト)まちづくり条例制定に対する市民の役割としては、行政が条例を作る際にどういうものを入れるべきかについて市民から提案してもらい、提案された内容をさらに提案者以外にも公表しながら、何が本当に必要かという枠組みをつくる作業を行っていくことが考えられる。

poki_b01.gif (232 バイト)市民参加の仕組みの中で地域の代表性を確保するのは、意外に難しい。そのためにも、提案された意見が本当に地域の価値観を反映しているのかということを確認していく作業が必要である。

poki_b01.gif (232 バイト)マスタープランは総合技術であり、個別領域的な専門性がない限り、また、個々の領域に対する市民の関心の高さがなければいいマスタープランはつくれないが、日本においては、市民サイドも専門家サイドにおいてもその関わり方が弱い。

poki_b01.gif (232 バイト)まちづくり条例の実効性確保の上で、事業者がまちづくりに協力することで得るメリットを今後考えていく必要があり、その手法として税制面での優遇措置や助成制度の導入、社会的ステータスの確立のようなものが考えられるが、今後多様な視点で詳細に検討すべき課題である。

(東京ランポ会員・白藤 一博)

2002年1月 月刊ランポNo.49掲載


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