カレッジランポ2001-2報告
■都市やまちを経済的な効率や維持管理のしやすさだけで考えていくと、まず切り捨てられるのが高齢者や障害者、そして子どもたちの視点である。地域社会と子どもたちの関わりが疎遠になる状況が進むなか、地域と子どもをつなぐまちづくりの試みが各地で始まっている。
今回のカレッジランポでは、事例報告者に川崎市教育委員会生涯学習推進課の夏井賢氏、江戸川区都市開発部住宅課の松本千秋氏、川崎市まちづくり局建築指導課の宮崎伸哉氏、元「ゆう杉並」中高生委員長の浅野純氏を招き、子どもが参加するまちづくりのあり方について展望した。

T 各地の状況報告
◎東京ランポ理事 佐々木貴子「状況報告」
これまで子どもの問題は、教育委員会や福祉の範囲の中でのみ語られてきた。子どもを取り巻く問題は、校内暴力・いじめ・自殺・虐待などの頻発から、社会問題として顕在化し、1995年日本が子どもの権利条約を批准して以降、イベント的な試みは実施されてきた。
継続的なまちづくりへの子どもの参加の取組み例はまだ少ないが、各地でのプレイパークづくり、近江八幡市の議会ジュニアによる公園づくりと管理、世田谷区における情報誌の発行などの実践例も見られるようになった。
子どものまちづくりへの参加には、地域住民・教師・NPOなど人の介在が必要であり、そこに行政も関わり始めている。
U 事例報告
1.夏井氏「まちづくりと子ども会議」
川崎市では、1994年に「子ども会議」を実施、95年からは行政区子ども会議を開催し、子どもたちの意見表明の機会としているが、年1〜2回の企画で継続性はない。
97年にスタートした「川崎子ども・夢・共和国」は子どもの意見表明・社会参加の場を保障し、子どもたち自身が考え・行動し・提案することを目的にしている。公募による小学生から高校生までが、3年目までは行政区別に、4年目からはテーマ別に活動を行っている。5年目の今年度で終了するが、
1)交流の場・安心できる場、
2)子ども活動の基地的役割、
3)「子どもの声」の発信基地、
4)サポーターの活躍とその成長という成果をあげた。
2002年度からは、その精神を2000年12月に制定された「子どもの権利条例」第4章30条にある「川崎市子ども会議」に引き継ぐため、現在準備中。定期的に会議を行い、市政に子どもの声を反映するシステムにする。
「川崎子ども夢パーク」は、現在推進委員会を中心に実施設計中で、「川崎市子ども会議」の活動拠点や子どもたちの居場所にしたい。また、子どもたちが使うことで、創り続けていく場にしていきたいと考えている。
2.松本氏「総合的学習の時間」とまちづくり
1999年8月に江戸川区が策定した「住まいの基本計画」は「住まいのことを考えてみよう」というメッセージを込め、住環境意識を明確に位置付けたことが特色である。
住環境学習フォーラムから始めたが、カリキュラム変更によって、子どもを取り巻く学びの環境がどう変わるのかを考える場として、教師や地域住民の参加を呼びかけた。1年目のフォーラム後、感動的な授業が展開された例が報告されている。
学校をまちづくりを考える拠点にするためには、子どもの学びを大人が支えることが必要である。また、熱心な教師を孤立させないよう支えることも課題である。これまでは「学校」「教育委員会」「PTA」が三角形をつくっていたが、総合的学習の時間を通し、学校が開かれ、地域に多様な関係を広げる可能性が生まれ、自治体が開かれることにつながる。
3.宮崎氏「まちづくり学習プログラムの開発」
まちづくりを進めるうえで、生活者が普段からまちのことを考えることが大切であり、
そのためにも子どもの頃から日常的に地域とつながることが重要である。子どもと地域のつながりをどうつくるかという視点で、まちづくり担当者と教員とがじっくり学び合い、2000年3月に発行したのが、まちづくり副読本−『まちは友だち』である。
川崎市には小学校1学年に1万人の児童がおり、毎年新3年生に「まちづくり1万人運動」的にこの副読本を配布することが、その後継続事業となっている。
『まちは友だち』の特長は、体験型教材として地域で実践できるような方法論と、わかりやすい事例が掲載されていることである。今後の課題は、指導用手引きの作成、地域の人・専門家を巻き込んだ活動、支援体制づくり、活用事例の公開などである。
都市をマネージメントすることを長期的に考えると、子どもを含めた住民参加、とくに子どもたちが主体的に関わることは、決してコスト高ではない。まちづくりと教育とがどうアプローチするかは大切な課題である。
4.浅野純氏「施設運営への参加
〜杉並区児童青少年センター『ゆう杉並』の事例から」〜
杉並区42館目の児童館『ゆう杉並』は、中高生を主な対象とした児童館であり、建設時から中高生の参加をつくったことが特長である。建設委員会には43名が集まり、夢を語ったが、それまで児童館を利用してきた経験から新しいものを「つくりたい」という思いが強かった。開館後は中高生運営委員会を発足、運営を担ってきた。現在利用者は1日200人前後であり、とくに体育室とスタジオの人気は高い。
運営委員のメンバーは公募と学校推薦が半々程度で、定例委員会のほか、部会活動、その他の活動が多彩に展開されている。先進都市の調査・研究活動として、99年度より広島・大阪などを訪れ、施設の枠内での活動から社会とつながれるような企画へと発展させていくべきという課題が明らかになり、その後の活動に生かしている。
今年10月27・28日に全国で活動する中高生のネットワークづくりを目的にフォーラムを開催、福岡から岩手まで全国27団体から130名が参加した。フォーラムのまとめは、「自分たちの活動を継続しよう」「悩み・経験を交流することで学習しよう」「活動を支える拠点・環境をつくろう」「中高生世代でネットワークしよう」「思いを大人や行政に伝えて未来をつくろう」というものだった。
V 質疑応答・まとめ
◎事例報告につづき、会場からいくつかの質問が寄せられた。質問内容は「江戸川区は若年人口流入が多いと聞くがなぜか」「どういうきっかけで参加したのか」「庁内のネットワークは」「夢パークの運営は」「まちづくり副読本をどう使うか」など。
◎報告者の各質問に対する答えの中から。
・楽しければ自然に参加するが、義務ではだめ。大人が言うのではなく、楽しい思いを伝え、子どもが子どもを誘うことが大切。
・小さなことでもよいので、その集まりで何かを決定すること=決定権を委ねることが参加につながる。
・学校の場合教員の異動があり、状況が全く変わってしまうことが多いので、専門家の集まりを緩やかにつながるなどのしくみがあると、先生方の肩の荷も少し軽くなるのでは。
・これまで領域ごとに取組んでいたことから横断的なネットワークへと変えていく必要がある。子どもを取り巻く人材ネットワークづくりが課題。
・まずは子どもが参加するしくみを保障するために、行政は民間と関わりながら、場づくりや情報提供を行っていく。
◎最後に報告者から今後について一言
(松本氏)学びの場での子どもの参加は遅れている。制度がないと継続していかれない。
(宮崎氏)子どもの可能性は無限であり、そのアプローチも無限である。場所ごとに地道に取組みながら、情報交換をしていきたい。
(浅野氏)「中高生だってできるんだ」この積み重ねが自信になり、OBとして支える立場にもなれる。地域ごとの居場所づくりが必要。
(夏井氏)大人と子ども、行政と民間…元気が出るようなパートナーシップづくりを。
(東京ランポ理事・近藤 恵津子)
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