カレッジランポ2000-2報告

地区計画や建築協定 まちづくりのツールとしての使い勝手は?
〜まちにマンションがやってきたとき〜


 既成市街地・台東区谷中と国立市大学通りに計画されたマンション建設を巡っての紛争に焦点を当て、地域の意思が反映されるまちづくりを進めるために必要なしくみや問題点について、手嶋尚人・谷中学校代表、大越 武・(株)大京取締役広報室長、井上赫郎・都市プランナーの3人による報告とパネルディスカッションを行なった。/11月11日

■建築協定によりマンションの設計変更を成功させた事例
 地域の専門集団が問題解決のコーディネート/谷中

報告者
 谷中学校代表・手嶋尚人さん
 建設側の(株)大京広報室長・大越 武さん

手嶋さんの報告
 建築協定によりマンションの設計変更ができた要因は、
@企業経営方針を「本社主義」「地域と共生する」に転換した時期の大京と出会った幸運A寺町という歴史的景観に愛着を持ち地域の付き合いをよしとするまちの団結力
B地域に信頼されているまちづくり専門集団=谷中学校や外部専門家の存在が紛争解決のコーディネーター役を果たせたという3点に分析している。
 谷中で使った建築協定という手段は建築基準法を根拠とし、制度の性格として属人的であり、全員合意が必要である。策定主体は関係権利者で作る運営委員会なので、協定内容には市民自身が建築物に関するすべてを規定できるメリットがある。マンション問題を町全体の問題として捉えるためにピロットアドバルーンの打ち上げによって、マンションの高度問題を視覚化したり、まちの不動産専門家による企業側の提案の妥当性診断などを通してマンション設計の具体的な提案に結びつけた。

大越さんの報告
 住民との対話、情報公開により町会、自治会を巻き込み、メディアでの取り上げによって宣伝費用の抑制が図れ、粗利を通常より2〜3%下げても事業採算収支ではとんとんであり、損して得とれどおり、これが地域共生の経営改革の契機となった。谷中学校という地域の専門建築家集団の存在が話し合いを実現させたと評価している。最終的に9階建て49戸から寺の甍の高さに合わせた6階建て43戸になり、建設規定は「歴史・文化に対する配慮」、「地域住民と交流をもつ」、「自然を取り込む・緑豊かな環境」など住民側からの提案を取り入れたものになった。


市民同意を担保する法整備が必要/国立
現在係争中の国立市のマンション問題について

報告者 首都圏総合計画研究所 都市プランナー井上赫郎さん(都市プランナー)

 全国のマンション紛争のほとんどがこの事例に類似していることから、この問題は建築および都市計画上の問題点を鮮明に浮かび上がらせたのではないか、ととらえている。
 国立市は大正末期ヨーロッパ風の学園都市として整備され、教育機関が集中している。大学通りには高さ20mに届くほどの樹齢を重ねた桜と銀杏の並木道が続きまちのシンボルとなっている。これが谷中同様、国立市民の守るべき原風景なのである。
すでに国立市には建築物の高度を街路樹の高さと同じ20m以下に要請する都市景観形成条例を制定しており、開発行為等指導要綱とともに開発業者の協力を得ながらまちづくりを進めてきた経緯がある。しかし、開発業者の明和地所は大学通りに面した桐朋学園のある一角に地上18階高度53m、440戸のマンション建設計画を提示した。
 8割を超える近隣住民の要望で、国立市は14haの地域に建築条例化まで約2カ月という最短コースで地区計画をかけ問題に対処しようとした。しかし、明和は住民への通告なしに地下1階、地上14階、高度43.65m、343戸へと勝手に計画変更して東京都多摩西部建築指導事務所に建築確認申請を提出してしまった。市は地域の意思を伝え確認を待って欲しいという申し入れをしたが無視された。そのため地区計画の建築条例化の前に建築確認が下り、業者は即工事着工が可能になってしまった。
 建築確認業務における規制緩和の流れは「建築基準関係規定」の明文化により、国立市のみならず市町村独自のまちづくり行政や条例、要綱など上記規定以外の法令審査を禁止し、建築確認と連動しなくなったことが業者の建築強行を招いている。本来は基準より厳しい制限をかけるのが地区計画であるはずで、それを斟酌しないのは地方自治の本旨に反することではないのか。
 そのうえ地区計画手続きは都道府県都市計画審議会の承認事項もあるため2段階になる。手続きに通常半年ほど時間がかかる反面、確認申請の手続きは法的には21日と短いので、今回のような駆け込み着工を業者に許してしまう事態が起こりうる。このことは建築行政と都市計画行政の連携により、進めるべきまちづくり行政の趣旨に反しており、自治体の一体性を大きく損ねる。
 いったんこじれた場合、既存の紛争解決手段である建築紛争予防条例による調停委員会などは市民の側に有効に機能せず、最終的には司法に訴えるしかない。しかし、これとて立証義務を負わされる市民側には大きな負担で、結局は途中で和解に持ち込まれる場合が多い。今後の問題として市民参加や市民同意を担保する法整備と裁判外紛争処理制度のあり方が問われている。

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