地方分権推進委員会最終報告
地方分権推進委員会最終報告の概要
−分権型社会の創造:その道筋−
平成13年6月14日
第1章 第1次地方分権改革を回顧して
1 分権改革の理念・目的=画一から多様へ
2 分権改革の主要な成果
3 未完の分権改革
○分権改革を完遂するために、第2次、第3次分権改革の断行を。
4 地方税財源問題の経緯と委員会の基本姿勢
5 地方公共団体の関係者及び住民への訴え
第2章 第1次分権改革の完全実施を求めて(その後の監視活動の結果報告と要請)
1 機関委任事務制度廃止に伴う国の対応、第2次地方分権推進計画等の内容について監視活動を行い、改善事項を要請。
2 監視活動のための仕組み・体制が必要。
第3章 第2次分権改革の始動に向けて(地方税財源充実確保方策についての提言)
1 地方税財源充実確保の基本的視点
○地方の歳出規模と地方税収との乖離の縮小、住民の受益と負担の対応関係の明確化。
○税源移譲を行う際には、国庫補助負担金や地方交付税の減額などにより、歳入中立を原則とすべき。
○国の関与の廃止・縮減や法令等による義務付けの見直しにより、歳入・歳出両面の自由度を併せ増すことが不可欠。
○税財源の地方分権は、国・地方を通ずる全体の構造改革にとっても不可欠の手段。
○租税負担率を見直す際には、地方税源への配分を特に重視していく必要。
2 地方税源の充実策
○地方税源充実は、地域的偏在の少ない地方税体系の構築が必要。特に基幹税目の充実が不可欠。
○具体的には、
・個人住民税については、税源移譲により最低税率を引き上げ、個人所得課税に占める割合を相当程度高め、より比例的な税率構造の構築と課税ベースの拡大を図るべき。また均等割の水準も、過大な負担とならないよう留意し、見直しを図る必要。
・地方消費税については、その位置づけを高め充実を基本に検討。地方交付税原資に組み入れられている消費税の一定部分の地方消費税への組み替えも検討。
・法人事業税については外形標準課税の早期導入を図るべき。
○法定税の充実とともに自主課税の努力が必要。法定外税、超過課税などを活用。
3 地方税源充実に対応する国庫補助負担金、地方交付税等の改革
[国庫補助負担金]
○地方税源充実に伴う国の地方への移転的支出の削減は、まず国の関与の強い特定財源である国庫補助負担金を対象とすべき。国庫補助負担金は真に必要なものに限定。
[地方交付税等]
○地方交付税の総額は減少が見込まれるが、財政力格差の是正という地方交付税制度の役割は依然として重要。
○地方交付税の総量の縮小や配分基準の簡素化の議論は、国の関与の廃止・縮小と一体として検討する必要。
○地方交付税は、次のような見直しが必要。
・国による事務の義務づけの廃止・緩和を進め、算定方法の簡素化等の見直し
・事業費補正による算定は、対象事業の範囲を見直し、特に必要なものに重点化
・課税努力、税源涵養努力、独自税源充実の自助努力を更に促す仕組みの検討
4 今後の検討に当たって
○地方税源の充実策については、現実的には、国・地方を通ずる財政構造改革の際に実施することも。その選択肢・留意事項等について、財政構造改革の議論等との整合性も踏まえつつ、十分に検討しておく必要。
○国と地方の事務配分のあり方など地方行財政制度全般について、地方分権推進の視点に立った具体的かつ専門的な検討を行う場が必要。
第4章 分権改革の更なる飛躍を展望して
○今後の改革課題を6項目に整理。
・分権型社会にふさわしい地方財政秩序の再構築
・地方公共団体の事務や執行体制に対する義務付けや枠付け等の大幅緩和
・道州制論、連邦制論などの新たな地方自治制度の仕組みの検討
・「補完性の原理」に照らした事務事業の移譲
・制度規制の緩和と住民自治の拡充方策
・「地方自治の本旨」の具体化
地方分権推進委員会最終報告
− 分権型社会の創造:その道筋 −
目 次
はじめに
第1章 第1次分権改革を回顧して
T 分権改革の理念・目的
U 分権改革の方針・手法
V 分権改革の主要な成果
W 未完の分権改革
X 地方税財源問題の経緯と委員会の基本姿勢
Y 地方公共団体の関係者及び住民への訴え
第2章 第1次分権改革の完全実施を求めて
− その後の監視活動の結果報告と要請 −
T 監視活動について
1 機関委任事務制度の廃止に伴う国の対応措置等
(1)通達等の取扱い
(2)法定受託事務の処理基準の取扱い
(3)法律・政令による法定受託事務の新設及び自治事務に係る特別の関与の新設
2 第2次地方分権推進計画の措置状況
(1)直轄事業・直轄公物の縮減の状況
(2)統合補助金の制度内容及び運用状況
(3)地方道路整備臨時交付金の運用改善
(4)各種開発・整備計画の見直しの状況
3 意見(平成12年8月8日)の措置状況
(1)国庫補助負担金の整理合理化と当面の地方税源の充実確保策
(2)法令による条例・規則への委任のあり方
(3)個別法に関する諸点
4 市町村合併の推進についての意見(平成12年11月27日)の措置状況
5 その他
U 監視活動に基づく要請
1 機関委任事務制度の廃止に伴う国の対応措置等について
(1)通達等の取扱いについて
(2)法定受託事務の処理基準の取扱いについて
(3)法律・政令による法定受託事務の新設及び自治事務に係る特別の関与の新設について
2 第2次地方分権推進計画の措置状況について
(1)直轄事業・直轄公物の縮減について
(2)各種開発・整備計画の見直しについて
3 意見(平成12年8月8日)の措置状況について
(1)国庫補助負担金の整理合理化と当面の地方税源の充実確保策について
(2)法令による条例・規則への委任のあり方について
(3)個別法に関する諸点について
V 今後の監視活動のあり方
第3章 第2次分権改革の始動に向けて
− 地方税財源充実確保方策についての提言 −
T 地方税財源充実確保の基本的視点
1 地方税源充実への取組みに関する基本的方向
2 地方税源充実の理由と考慮すべき事項
3 地方税源の充実と財政構造改革
U 地方税源の充実策
1 地方税充実確保の方向
2 課税自主権の尊重と租税原則
3 地方税務執行面の機能の充実
V 地方税源充実に伴い発生する偏在問題
W 地方税源充実に対応する国庫補助負担金、地方交付税等の改革
1 基本的考え方
2 国庫補助負担金の改革の方向
3 地方交付税の改革の方向
4 地方債資金の円滑な調達
X 今後の検討に当たって
第4章 分権改革の更なる飛躍を展望して
T 地方財政秩序の再構築
U 地方公共団体の事務に対する法令による義務付け・枠付け等の緩和
V 地方分権や市町村の合併の推進を踏まえた新たな地方自治の仕組みに関する検討
W 事務事業の移譲
X 制度規制の緩和と住民自治の拡充方策
Y 「地方自治の本旨」の具体化
おわりに
(別紙1) 従前の通達等の取扱いの明確化のために発出された通知等(例)
(別紙2) 地方分権一括法の施行に伴う法定受託事務の処理基準案の主な修正事項について
(別紙3) 新規立法・政令による新たな法定受託事務及び関与の整理
(別紙4) 法令に根拠のない関与等についての地方公共団体の指摘と関係省庁の対応状況
は じ め に
地方分権推進委員会(以下、「委員会」という。)は、5年間の時限法である地方分権推進法(平成7年法律第96号)に基づいて平成7年7月3日に設置された。したがって本来であれば、委員会は、平成12年7月2日にその任期を終了し、すでに解散しているはずであった。
しかしながら、この平成12年の任期切れを目前にして、国会は、内閣の提出した地方分権推進法の時限を1年間延長する旨の同法改正法案を可決した。委員会は委員会延長後の平成12年8月、監視活動に基づいてそれまでに準備していた「地方分権推進委員会意見−分権型社会の創造−」(平成12年8月8日)を提出したが、その際、内閣総理大臣から委員会に対して、改めて地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(平成11年法律第87号。以下、「地方分権推進一括法」という。)に基づく施策の実施状況等の監視活動を続けるとともに、市町村合併の更なる推進方策と地方税財源の充実確保方策など残されている検討課題について引き続き調査審議することを要請された。このうちまず、市町村合併の更なる推進方策について重点的に調査審議し、その結論を「市町村合併の推進についての意見−分権型社会の創造−」(平成12年11月27日)として内閣総理大臣に提出したところである。
以来今日に至るまでの約半年間、委員会は一方では地方分権推進一括法に基づく施策の実施状況等の監視活動を続行するとともに、他方ではこれと並行して地方税財源の充実確保方策に関する密度の濃い調査審議を行ってきた。これらの監視活動及び地方税財源の充実確保方策の調査審議の一環として広く地方公共団体関係者の意見を聴取するため、岩手・滋賀の両県で一日地方分権委員会を開催した。また、特に地方税財源の充実確保方策の調査審議においては、関係省庁のほか総計25名の有識者・関係団体の方々を招き、広く各界から多角的な意見を聴取してきた。
その結果、これらの課題について一応の結論を得たので、ここに委員会の最終報告を取りまとめ、これを内閣総理大臣に提出するものである。
以下、まず第1章では、発足以来通算6年間に及ぶ委員会の活動について回顧し、委員会の所感を開陳している。ついで第2章では、上記の「地方分権推進委員会意見−分権型社会の創造−」(平成12年8月8日)提出以降の監視活動の結果について報告するとともに、若干の事項について内閣に善処を要請している。続く第3章では、地方税財源の充実確保方策についての委員会の提言を盛り込んでいる。そして最後の第4章では、分権改革の更なる飛躍を期待し、国民的な議論の展開を促す趣旨で、分権改革の残された諸課題について委員会の所見を述べている。
第1章 第1次分権改革を回顧して
T 分権改革の理念・目的
委員会は、内閣総理大臣に提出した最初の文書である「中間報告−分権型社会の創造−」(平成8年3月29日。以下、「中間報告」という。)の第1章の「はじめに」の中で、次のように述べた。
この変革はわが国の政治・行政の基本構造をその大元から変革しようとするものであり、その波及効果は深く、広い。それは明治維新・戦後改革に次ぐ「第三の改革」というべきものの一環であって、数多くの関係法令の改正を要する世紀転換期の大事業である。したがって、それは一朝一夕に成し得る性格のものではない。相互に複雑に絡まり合っている諸制度の縫い目を一つ一つ慎重に解きほぐし、システムの変革に伴いがちな摩擦と苦痛の発生を最小限度に抑えながら、諸制度を新たなデザインに基づいて順序よく縫い直して、その装いを新たにしていくべき事業である。
この当初の課題認識は、通算6年間に及ぶ活動の幕を閉じようとしている現時点に立って考えても、的確なものであったと確信している。予期したとおり、分権改革は一朝一夕に成し得るものではなかった。委員会としては、現状において達成可能な最大限の改革を成し遂げたと自負しているところであるが、委員会が掲げてきた分権改革の究極目標に照らしてみれば、なお数多くの諸課題が将来の改革に託されている。
来し方を回顧してみれば、明治21年に制定された市制町村制以来存続してきた機関委任事務制度を全面廃止した改革作業は、相互に複雑に絡まり合っている諸制度の縫い目を一つ一つ慎重に解きほぐし、諸制度を新たなデザインに基づいて順序よく縫い直していく性格のものであった。今後の行く末を展望するならば、地方税財源の充実確保方策を中核とする次の段階の分権改革の作業も、国の財政構造改革との関連においてこれまでの作業と同様の高度の複雑さを備え、同様の慎重な手順にしたがって実施すべき性格のものである。
では、分権改革はなぜこの時期に国政上の最重要課題として浮上したのか。この点については、同中間報告において、委員会が今次の分権改革を求められた社会的な背景・理由は、旧来の中央集権型行政システムが、変動する国際社会への対応、東京一極集中の是正、個性豊かな地域社会の形成、高齢社会・少子化社会への対応などの新しい時代の諸課題に迅速・的確に対応する能力を失ってきているところにあるとする認識を示した。
そこで、従来の中央省庁主導の縦割りの画一行政システムを住民主導の個性的で総合的な行政システムに切り替えること、「画一から多様へ」という時代の大きな流れに的確に対応することを今次の分権改革の基本目標に設定した。国、都道府県及び市区町村相互の関係を従来の上下・主従の関係から新たな対等・協力の関係に変えていくこと、さらにこれをとおして地域社会の自己決定・自己責任の自由の領域を徐々に拡大していくことこそ、委員会に課せられた主要な任務であると考えたところである。
U 分権改革の方針・手法
この中間報告を提出したのち、委員会の作業はいよいよ地方分権推進法の規定に基づく勧告に向けた調査審議に移行したが、委員会はこの任務を遂行するに当たって、「現実的で実行可能な、着実な改革」を目指すことをその基本方針とした。
その結果採用された調査審議の具体的な手法が、地方公共団体の総意として地方六団体から数次にわたって提出された改革要望事項を調査審議の土台とすること、そしてまた地域づくり、くらしづくりの両部会に加え、行政関係検討グループ、補助金・税財源検討グループ、地方行政体制等検討グループを設置し、これら3検討グループの委員・専門委員・参与が個別の検討事項ごとに関係省庁の幹部職員とインフォーマルな小会議方式で率直に意見を交換するグループ・ヒアリング方式などであった。
結果から見れば、この基本方針と調査審議の手法には功罪両面があったと認めざるを得ない。まず、マイナスの側面から言えば、調査審議事項の範囲が地方公共団体の総意として提出された改革要望事項に限定されがちであったこと、勧告事項が関係省庁と合意に達した事項に限られたこと、グループ・ヒアリングの場での実質的な意見交換に関する情報が非公開とされたことなどである。しかしながら、その反面、委員会の5次にわたる勧告に盛り込まれた事項は、政府によって文字どおり最大限尊重され、地方分権推進計画および第2次地方分権推進計画に着実に盛り込まれた。しかも、このうちの第4次勧告までの4次にわたる勧告に対応する地方分権推進計画の記載事項は、その後さらに総計
475本の関係法律を一括して改正する地方分権推進一括法として法制化され、平成12年4月1日から施行されている。この種の行政改革に係る諮問機関の成果として、これは異例ともいえる成功例であったと確信している。
この功罪両面をどのように評価するかは歴史の審判に委ねるほかないが、委員会がこのような基本方針と調査審議の手法を採用せざるを得なかった最大の理由は、委員会に対し地方分権推進計画の作成に資する「具体的な指針」の勧告を求めると同時に、政府に対しては委員会の「勧告を尊重する義務」を課していたところの、地方分権推進法に定められた改革推進の仕組みそのものにあったと考える。
V 分権改革の主要な成果
上記のような改革の方針・手法が採用された結果として、今次の分権改革の成果にどのような影響が生じたのか。
地方自治を拡充する方策には、団体自治の拡充方策と住民自治の拡充方策とがある。
ここでいう団体自治の拡充方策とは、国、都道府県及び市区町村相互の関係を改善して地方公共団体による自己決定・自己責任の自由の領域を拡充する方策であり、住民自治の拡充方策とは、地域住民と地方議会・首長など地域住民の代表機関との関係を改善して地域住民による自己決定・自己責任の自由の領域を拡充する方策である。
また、このうちの前者の団体自治の拡充方策には、事務事業の移譲方策と広い意味での関与の縮小廃止方策とがある。
ここでいう事務事業の移譲方策とは、国の事務事業の一部の地方公共団体への移譲、または都道府県の事務事業の一部の市区町村への移譲を進めることによって、地方公共団体が所管する事務事業の範囲を拡充する方策であり、広い意味での関与の縮小廃止方策とは、地方公共団体が所管している事務事業の執行方法や執行体制に対する国による義務付け、枠付け、種々の関与などを、または市区町村が所管している事務事業の執行方法や執行体制に対する都道府県による枠付け、種々の関与などを縮小廃止することによって事務事業の執行方法や執行体制を地方公共団体の判断と責任において自由に取捨選択することのできる裁量領域を拡充する方策である。
今次の分権改革では、まず団体自治の拡充方策に取り組むとともに、事務事業の移譲方策よりも広い意味での関与の縮小廃止方策に改革の主眼が置かれる結果になった。
なかでも通達等による関与の縮小廃止、機関・職員・資格などにかかわる必置規制の緩和廃止、補助事業の整理縮小と補助要綱・補助要領による補助条件の緩和の3点については、きわめて具体的な改革が実現されたところである。
特に、これらのうち通達等による関与を縮小廃止するための基本方策として、住民による選挙で選ばれた知事や市町村長を国の下部機関とみて、国の事務を委任し執行させる仕組みである機関委任事務制度が全面廃止されたことのもつ意義は、きわめて大きい。従前の機関委任事務のうち、ごく例外的にこの機会に事務そのものを廃止したものや国の直接執行事務としたものを除いて、その他の従前の機関委任事務はすべて、自治事務か法定受託事務のいずれかに振り分けられたが、自治事務はもとより法定受託事務もまた「地方公共団体の事務」であることが明確にされた。そこで、平成12年度以降は、地方公共団体には、「国の事務」は皆無となった。
しかも、この機会に廃止された通達等やこの機会に法定受託事務の処理基準に改定された通達等を除いて、その他の従前の通達等はこれ以降すべて、その性格が「技術的な助言」に改められたので、地方公共団体はこれらの通達等に拘束される必要はなくなった。これによって、地方公共団体の法令解釈権は大幅に拡大されることになった。
これに加え、国と地方公共団体の関係や都道府県と市区町村の関係を公正で透明なものにするために、地方分権推進一括法による改正後の新地方自治法には、関与の標準類型が定められると同時に、行政手続法に定められた行政手続に類似した関与の手続ルールが定められた。さらに、国と地方公共団体の関係や都道府県と市区町村の関係がもはやかつてのような上下・主従の関係でないことを明確にするために、処分その他公権力の行使に当たる関与の合法性をめぐってこれらの団体間に係争が発生したときには、どちらの側の法令解釈が妥当かを、最終的には訴訟で争い得る道を開いているのである。
W 未完の分権改革
しかしながら、今次の分権改革の成果は、これを登山にたとえれば、まだようやくベース・キャンプを設営した段階に到達したにすぎないのである。委員会が中間報告以来掲げ続けてきた「分権型社会の創造」という究極目標に照らしてみれば、改革の前途の道筋は遼遠である。言い換えれば、今次の分権改革は第1次分権改革と呼ぶべきものであって、分権改革を完遂するためには、これに続いて第2次、第3次の分権改革を断行しなければならない。
では、次なる第2次分権改革の焦点はどこに当てられるべきなのであろうか。第1次分権改革の成果に対する地方公共団体関係者の評価から見ても、また地方分権推進一括法の国会審議に際して衆参両院でなされた附帯決議等から見ても、次の段階の改革の焦点は、地方税財源の充実確保方策とこれを実現するために必要な関連諸方策であると思われる。内閣総理大臣が、委員会に対して、地方税財源の充実確保方策を特に指定して引き続き検討するよう要請したのも、我々と共通の認識に立つものであったと了解している。
そこで、ここでは、この地方税財源問題をめぐるこれまでの経緯と委員会の基本姿勢について簡潔に言及するとともに、地方公共団体の関係者及び住民に対し、現状に関しての正確な認識と自治能力の実証と向上に向けた一層の努力を訴えるにとどめ、残された数多くの改革課題に関する委員会の所見については最後の第4章に譲ることとしたい。
X 地方税財源問題の経緯と委員会の基本姿勢
委員会は、既に第2次勧告(平成9年7月8日)の第4章において、地方税財源の充実確保に係る基本的な方向を示している。すなわち、地方公共団体に事務・権限の新設または委譲が行われた場合にはこれに伴い所要の財源措置が講じられるべきこと、国庫補助金については一定期間各年度の削減率を定めた削減計画を策定すべきこと、国庫補助負担金の廃止・縮減を行っても引き続き当該事務の実施が必要な場合には地方税等の地方一般財源の確保を図るべきこと、また地方公共団体の歳出規模と地方税収入の乖離を縮小するために地方税の充実確保を図るべきことである。さらに今後は、地方公共団体の財政面における自己決定・自己責任の拡充や地域住民の受益と負担の対応関係の明確化の観点から、国と地方公共団体との役割分担を踏まえつつ、中長期的に、国と地方の税源配分のあり方についても検討し、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系を構築していく必要があることなどを勧告した。
しかしながら、地方公共団体への事務・権限の委譲が小規模にとどまったこと、政府の「財政構造改革の推進について」(平成9年6月3日閣議決定)に基づく国庫補助金の削減が期待に反して小規模なものにとどまったことなどの結果として、この後今日に至るまで、目に見えるような規模での地方税財源の充実は行われていない。
むしろ地方税収入は、景気の低迷により減少した。また国の景気回復政策として、国・地方を通ずる減税措置が講じられた。さらに景気の浮揚を図るため公共事業が拡大され、地方公共団体も協力を求められ、これに応じてきたために、国の財政と同様、地方公共団体の財政は、その深刻さの度合いを深める一方であった。
その後、政府の税制調査会においても地方税財源の充実確保について審議がなされ、同調査会の中期答申(平成12年7月)においては、具体的な税目について充実の方向を示しつつ、具体的取組みの時期については財政構造改革の論議の一環として取り組むのが適当としている。
他方、この間に、市町村の自主的な合併を推進しようとする努力が全国各地で続けられてきており、地方分権時代の行政の主役である市町村においては、引き続き、自主的な合併の推進により、新しい時代の担い手としてふさわしい行政体制の整備に努めることが強く期待される。しかしながら、市町村関係者たちのなかには、分権型社会における地方財政の将来像が依然として不透明な現状の下では、合併の是非を決断しがたいとする声が少なくないのも事実であり、市町村の自主的な合併を積極的に推進するためにも、地方財政の将来像をめぐる具体的論議をできるだけ早期に始める必要がある。
そこで委員会は、先の第2次勧告以降の種々の状況の変化を踏まえ、第2次勧告のときとはアプローチの仕方を変え、今回は国庫補助負担金の廃止・削減という切り口からではなく、国と地方の税源配分のあり方の改革とこれに伴う国庫補助負担金・地方交付税のあり方の改革という切り口から地方税財源の充実確保方策について再検討してみることにした。しかし、アプローチの仕方こそ変えているが、地方公共団体の税制面の自己決定・自己責任の拡充や地域住民の受益と負担の関係の明確化の観点から地方公共団体の歳出規模と地方税収入の乖離の縮小をめざすという委員会の目的意識は、第2次勧告以来一貫して変わっていない。
地方税財源問題についての1年弱の調査審議に基づく委員会の提言については第3章に譲るが、あらかじめここで、この提言に当たっての委員会の基本姿勢について明らかにしておきたい。
まず第1に、地方分権の推進を専らの任務としている委員会としては、また国・地方を通ずる財政構造改革という極めて複雑かつ総合的な課題について多角的に調査審議する権能を十分には持ち合わせていない委員会としては、国と地方を通ずる増減税の要否及び是非について発言することは差し控えなければならない。それ故に、委員会としては、国と地方を通じて国民の租税負担率に制度的変更を加えないとの仮定に基づき歳入中立を前提とし、地方税財源の充実確保方策を再検討することにした。
そこで第2に、委員会がこのたび第3章で提言している地方税財源の充実確保方策は、地方公共団体の歳入・歳出総額の増額を目的としたものではなく、その歳入の構造を変え、その質の転換を図り、地方公共団体の財政面の自由度を高めることを目的としている。いいかえれば、第1次分権改革で提起した自己決定・自己責任の原理を行政面のみならず財政面の領域にまで推し広げていくことこそが目的である。
しかしながら第3に、この提言は、委員会の任務である地方分権の推進を図るという観点から構想したものではあるが、委員会としては、国と地方公共団体の関係の構造を改革することなしに国と地方を通ずる財政再建はあり得ないと認識している。この提言は、国と地方を通ずる財政構造改革の難しさを十分に念頭におきながらもわれわれなりに衆知を結集したものであり、国と地方を通ずる財政再建に矛盾するどころか、むしろこれに寄与する最善の方策であると信じるものである。これが財政構造改革に向けた議論に一つの道筋をつけることになれば幸いである。
Y 地方公共団体の関係者及び住民への訴え
委員会は、中間報告の「まえがき」の末尾で、次のように訴えた。
全国3,200有余の地方公共団体は、国への「従属と依存の意識」を克服し、これまで以上に行政の公正性と透明性の向上、住民参画の拡大に努めるとともに、新たな分権型社会の創造をめざして、創意工夫に満ちた地域づくりとくらしづくりの個性的な構想を積極的に提示してほしい。そして、国の関係省庁においては、地方分権推進法制定の趣旨に鑑み、時代の流れを先取りして、この機会に地方公共団体に対する「指揮監督と保護後見の意識」を払拭し、国と地方公共団体の間に対等・協力の新しい関係を構築するという建設的な方向に、その広い視野と深い識見を生かしてほしい。
委員会の任期を終了するこの機会に、地方公共団体の関係者、更にはその住民に改めて強く訴えておきたいことが5点ある。
まず第1に、地方公共団体関係者の意識改革を徹底して、第1次分権改革の成果を最大限に活用し、地方公共団体の自治能力を実証してみせてほしい。特に、これまでの通達等は、かつては訓令であったものも含めてすべて、その性格を「技術的な助言」に一変させられているのであるから、この機会にこれまで通達等に専ら依存してきた事務事業の執行方法や執行体制をすべての分野にわたって総点検し、これらを地域社会の諸条件によりよく適合し、地域住民に対する行政サービスの質を向上させ得るような別途の執行方法や執行体制に改める余地がないものかどうか、真剣に再検討してほしい。
第2に、地域住民による自己決定・自己責任の原理を貫徹していくことは、この国の旧来の中央地方関係の構造をその大元から改革することを意味しているのであって、それは、国の側のみならず、地方公共団体の側にも少なからぬ痛みを伴わざるを得ない事柄である。無論、構造改革を推進するに当たってはこの種の苦痛の発生を最小限度に抑えるべく最大限の配慮がなされるべきことは当然であるが、この痛みを皆無にする方策などあり得ない。それは、この国のかたちを再構築し、われわれの社会を再活性化していく道筋において、関係当事者のそれぞれが受忍しなければならない苦痛である。地方公共団体関係者はこのことに深く思いを致し、自己決定・自己責任の覚悟を新たにして、中央地方関係の構造改革の推進に先導的に取り組んでほしい。
さらに第3に、分権改革の推進とは別途に、しかし不幸にしてこれと時を同じくして、国と地方公共団体の財政の危機的状況はその深刻さの度合いを深めてきている。したがって、地方公共団体の財政状況はこれから更に年を追うごとにその厳しさを増すものと見込まざるを得ない。国に救済を求めてみても、国にはもはやこれに応える余裕がないのである。したがって、かかる事態に立ち至ったことを慨嘆するのではなく、むしろこれを構造改革を推進する好機ととらえ直してほしい。地方公共団体はこの機会に、国への依存心を払拭し、自己責任・自己決定の時代にふさわしい自治の道を真剣に模索してほしい。そのためには、国に向けていた目を地域住民に向け直し、地方自治の運営の透明性を高め、地域住民に対する説明責任を果たしつつ、行政サービスの取捨選択の方途を地域住民に問いかけ、その判断に基づいて、歳出の徹底した削減を図るという地道な努力の積み重ねが必要である。とりわけ住民に身近な基礎的な地方公共団体である市町村における自主的な合併の推進は、こうした努力を結実させるための有力な選択肢であることを認識してほしい。
第4に、男女共同参画社会の実現に向けた更なる自覚的な努力を強く要望しておきたい。日本国憲法に謳われた「両性の平等」の原理は戦後50年の歳月を経て、ここにきてようやく開花し始めてきた観があり、また男女共同参画社会基本法(平成11年法律第78号。)は、その前文で「男女共同参画社会の実現を二十一世紀の我が国社会を決定する最重要課題と位置付け」、第9条では「地方公共団体の責務」を明記している。旧来の性別役割分担の意識と生活習慣を克服し、伝統的な社会慣行を改めつつ、男女が共に地域社会を支え発展させていく営みに力を合わせていく必要性はますます高まっている。しかるに、地方議会議員に占める女性の比率は、徐々に上昇してきているとはいえ、いまだに国会議員のそれにさえ及ばない。更に多くの女性が地方公共団体の政策決定過程に直接関与し参画するようになることが望まれる。男女共同参画の実現なしに、分権型社会の創造は完成しないというべきである。
最後に、地方公共団体の男女を問わずすべての住民に対して訴えておきたいことがある。地方自治とは、元来、自分たちの地域を自分たちで治めることである。地域住民には、これまで以上に、地方公共団体の政策決定過程に積極的に参画し自分たちの意向を的確に反映させようとする主体的な姿勢が望まれる。また地方税の納税者として、地方公共団体の行政サービスの是非を受益と負担の均衡という観点から総合的に評価し、これを厳しく取捨選択する姿勢が期待される。自己決定・自己責任の原理に基づく分権型社会を創造していくためには、住民みずからの公共心の覚醒が求められるのである。そしてまた当面する少子高齢社会の諸課題に的確に対応していくためにも、行政の総合化を促進し、公私協働の仕組みを構築していくことが強く求められている。公共サービスの提供をあげて地方公共団体による行政サービスに依存する姿勢を改め、コミュニティで担い得るものはコミュニティが、NPOで担い得るものはNPOが担い、地方公共団体の関係者と住民が協働して本来の「公共社会」を創造してほしい。
第2章 第1次分権改革の完全実施を求めて
− その後の監視活動の結果報告と要請 −
T 監視活動について
地方分権推進一括法の施行後十分に監視活動に取り組む必要があることなどから、設置期間が延長され、委員会は、この延長された期間を活用して引き続き監視活動に取り組んできた。
その際、次の点を中心にして監視活動を行ってきた。
@ 12年4月以降の国と地方公共団体の関係が、地方分権推進一括法に示された新たなルールに基づいて適切なものとなっているか。
A 第5次勧告を受けて平成11年3月に策定された第2次地方分権推進計画に関して、そこに盛り込まれた施策が適切に実施されているか。
B 委員会が2度にわたり提出した意見に関して適切な措置がなされているか。
以下、昨年8月以降行ってきた監視活動の結果及びそれを踏まえて特に政府に要請したい事項について述べる。
1 機関委任事務制度の廃止に伴う国の対応措置等
(1) 通達等の取扱い
地方分権推進一括法の施行に伴い、国が地方公共団体に対して指揮監督を行う際の有力な手段となっていた通達等について、その取扱いの見直しがそれぞれの所管省庁において行われていた。委員会は、機関委任事務制度が廃止されたこと、関与の法定主義が明確化されたこと、などを踏まえ、従前の通達等の取扱いがどのように見直されるかについて注視してきた。そこで、通達等の取扱いについて、現実にどのような点が問題となっているかを、地方公共団体側から把握したところ、概ね以下の3点が明らかになった。
(ア) 機関委任事務制度廃止後における従前の通達等の取扱いの基本方針が所管省庁から示されていないため、実務担当者の間で戸惑いが生じている。
(イ) 従前の通達等に代わって、法定受託事務の処理基準が新たに発出される場合が考えられるが、具体的に明らかにならないため、地方公共団体において独自に基準を設けてよいのかがわからない。また、発出されるはずの処理基準が発出されないため、地方公共団体側の作業が滞っている。
(ウ) 従前の通達等の中には、今後拘束力のない助言として取扱われることとされているものがあるが、それにもかかわらず、法令に基づかない国の関与を介在させる規定や法令に基づかない事務の義務付けを行う規定等がその内容に含まれている例がある。
これらについては、(ア)に関しては、それぞれの所管省庁から取扱いの基本方針が別紙1に掲げる通知等により明示されている。また、(イ)に関しても、発出予定の処理基準の概要および発出予定時期について、平成12年10月及び同13年1月、5月の3回にわたり情報提供が行われている。(ウ)に関しては、所管省庁において既に対応が講じられたものもあるが、依然として改善がなされていない事項も残っている。
(2) 法定受託事務の処理基準の取扱い
委員会は、法定受託事務の処理基準についても、作成段階において所管省庁との意見交換を行い、その内容が勧告・地方分権推進計画の趣旨に沿って作成されることとなるよう努めてきた。その結果、法律又はこれに基づく政令に根拠を持たずに、地方公共団体に対して事前協議を義務付けたり、新たな事務を義務付けるなど、そのままでは勧告・地方分権推進計画の趣旨にそぐわないと考えられる場合には、所管省庁との間で調整を行い、修正された上、処理基準の発出がなされている。別紙2は調整がなされた主要な例である。
(3) 法律・政令による法定受託事務の新設及び自治事務に係る特別の関与の新設
地方分権推進一括法及びこれに関連する政令の制定・改廃が行われた以降において、法律又は政令により、法定受託事務の新設又は自治事務に係る特別の関与の新設が行われている例があることから、これらが勧告・地方分権推進計画に示されたメルクマールに則ったものとなっているかどうかの確認を行った。結果は別紙3のとおりであるが、大半はメルクマールに照らして妥当なものであったが、一部今後検討の余地もあるのではないかと考えられる事例が見られた。
2 第2次地方分権推進計画の措置状況
(1) 直轄事業・直轄公物の縮減の状況
国の直轄事業及び直轄公物の範囲については、全国的な見地から必要とされる基礎的又は広域的事業に限定することとし、これらの範囲については客観的な基準などにより明確化するとともに、当該基準に基づき、中央省庁等のスリム化の観点からも、その範囲の見直しが求められていた。
個別事業に関して、一級水系の指定の基準、河川及び道路の直轄管理区間の基準、港湾の直轄事業の実施基準の具体化、治山の直轄事業の基準の明確化及び採択基準の引き上げ、並びに砂防及び海岸の直轄事業の採択基準の引き上げを行うこと、また、一級水系や河川及び道路の直轄管理区間の点検と見直し、砂防、海岸、港湾、農業農村整備及び治山の直轄事業の点検と見直しを行うこと、さらに、一級水系から二級水系への変更や道路の指定区間の指定及び廃止、砂防及び治山の直轄事業範囲・直轄箇所の指定及び引継ぎにあたって関係地方公共団体からの意見を聴取することの明確化などが求められていた。
併せて、直轄公物の管理に際しての市町村等の参画の拡大のための措置を講ずることとされていた。
また、直轄事業及び直轄公物の範囲の基準の基本的事項等については法令に明示する措置を講ずることとされていた。
このうち、基準の見直し等に関しては、一級水系の指定、河川及び道路の直轄管理区間に関して、関係審議会の答申を経て、基準が示されるなどしているが、それらの基準の基本的事項等を法令に明示する点については、現在作業が行われているものの明示されるには至っていない。
また、河川及び道路の直轄管理区間等の点検と見直しについては、現在見直し作業中であり、どの程度縮減するかは明らかにされていない。
関係地方公共団体からの意見聴取手続については、その方針が明示されてはいるものの、道路及び砂防に関しては、法令化などによる制度的な明確化のための対応までは行われていない。
市町村等の参画の拡大については、河川については法律上の措置がなされたが、道路については国からの通知によりその方策が地方公共団体に示されているものの、法令化などによる制度的な明確化のための対応までは行われていない。
(2) 統合補助金の制度内容及び運用状況
統合補助金については、箇所付けしないことを基本として制度が構築され、運用がなされることが求められていた。
所管省庁からのヒアリング及び事務局による実態調査を踏まえると、制度の面においては、第2次地方分権推進計画に沿った内容となっており、また運用の面においても、事業計画に従った補助金交付申請は申請どおり交付決定されており、交付決定後の事業箇所・内容等の変更も事業計画に適合している限り申請どおり認められている。また、変更手続が不要となる「軽微な変更の範囲」が拡大され、箇所間の流用が容易になっている。
別途地方六団体地方分権推進本部が調査したところによると、地方公共団体側からは、対象事業の一層の拡大、「軽微な変更」の更なる拡大、国側窓口の一本化の推進などが求められているとのことであった。
統合補助金は、平成12年度が初年度であるので、制度内容・運用状況ともに今後改めて評価がなされるものと考えるが、第2次地方分権推進計画の趣旨を踏まえ、地方公共団体の要望に応えつつ、実施されていくべきものと考える。
(3) 地方道路整備臨時交付金の運用改善
国が箇所付けをしないことを基本とし、交付決定後の個別箇所間の流用は、整備計画の範囲内であれば申請どおり認めること、変更手続が極力不要となるよう、「軽微な変更」の範囲を拡大することが求められていた。
交付決定後の個別箇所間の流用は、整備計画の範囲内であれば申請どおり認められており、また、新たに要素事業の工事費の3割を越える変更であっても、交付金の額に変更を生じなければ、一部を除いて「軽微な変更」とされ、「軽微な変更」の範囲も拡大されている。
(4) 各種開発・整備計画の見直しの状況
国土総合開発計画等の見直しについては、国土審議会において検討しその結果を踏まえて結論を得るとされ、全国総合開発計画の対象となる事項の重点化、全国総合開発計画は地方公共団体が主体的に地域づくりを進める上での指針とすることの法制上の明示、計画策定過程における地方公共団体からの意見聴取の仕組みの法制化、国土総合開発法及び国土利用計画法の在り方についての総合的見直し、が求められている。
これらについては、昨年11月にほぼ対応した国土審議会政策部会・土地政策審議会計画部会審議総括報告が出され、担当省庁は引き続き国土審議会において検討を進め、結論を得て法制化の作業を行っていくとのことである。
大都市圏整備計画等の見直しについては、関係都府県が計画に盛り込む内容の案を作成すること、及び計画作成に係る地方公共団体の事務の合理化、が求められている。
このうち事務の合理化については平成11年から取り組まれており、また地方公共団体による計画に盛り込む内容の案の作成については、既に近畿圏基本整備計画について関係府県が作成した計画に盛り込む内容の案に基づき策定され、今年策定される首都圏整備計画についても関係都県が計画に盛り込む内容の案を作成することとされている。
条件不利地域振興計画の見直しについては、地方公共団体の自主的・主体的な取組みを促進するための方策の検討、計画作成を市町村が行う方向での検討、本省と地方支分部局での手続の重複の回避、複数省庁にまたがる場合の事務手続の簡素化、今後原則として法期限を設けること、が求められている。
このうち、過疎地域活性化特別措置法については第2次地方分権推進計画以降に終期が到来し、その後新たに制定された過疎地域自立促進特別措置法においては、市町村が計画策定することとされ、その他の項目についても必要な見直し等が進められている。
モデル型地域振興計画の見直しについては、新産業都市建設促進法・工業整備特別地域整備促進法の平成12年度末の廃止を含めた抜本的見直し、本省と地方支分部局での手続重複の回避、複数省庁にまたがる場合の事務手続の簡素化、が求められている。
このうち、新産業都市建設促進法・工業整備特別地域整備促進法については国土審議会の答申が「12年度末に廃止すべき」と結論付け、既に廃止されている。
3 意見(平成12年8月8日)の措置状況
(1) 国庫補助負担金の整理合理化と当面の地方税源の充実確保策
@ 国庫補助負担金の区分の明確化と整理合理化
意見において示された区分に従って、この区分を適切な方法で明記すること、区分に応じた地方財政法等の規定等の整理が求められていた。
また、区分に応じた国庫補助負担金の整理合理化を平成13年度予算から進めること、制度的に検討すべきものを除いた国庫補助金を対象とする国庫補助金削減計画の策定、また策定にあたって、制度的に検討すべき国庫補助金の範囲を必要最小限度のものとすべきこと、が求められていた。
このうち、区分に応じた地方財政法等の規定等の整理については、既に平成13年通常国会において改正がなされているものの、区分を適切な方法により明記することについては、未だなされていない。
また、平成13年度当初予算における国庫負担金は162,179億円で対前年比3.8%の増、国庫補助金は41,290億円で同0.2%の増となっている。
削減計画に関しては、従来制度的に検討すべき補助金に分類されていたものの一部がその他補助金に移し替えられ、また、平成13年度当初予算におけるその他補助金は対前年比17.7%の減となっているが、求められている国庫補助金削減計画は未だ策定されてはいない。
A 維持管理費に係る国直轄事業負担金の見直し
段階的縮減を含めた見直し及び負担金の内容と見直しの状況についての積極的公開が求められていた。
段階的縮減を含めた見直しについては、国家公務員の退職手当が雇用保険法の失業給付に満たない場合にその差額分を特別の退職手当として給付する失業者退職手当等の財源に係る経費に関して、平成13年度より地方公共団体の負担の対象から外す等の取組みが行われたところである。また、負担金の内容の公開については、地方公共団体との協議会等を通じて改善に向けての一定の取組みはなされているが、例えば、地方公共団体に対する積算通知の仕組みの構築といった取組みが十分に行われているとは見受けられない。
B 国庫補助負担金の運用等についての改革措置
従来から行われている超過負担の解消のための共同実態調査に加えて、各省庁自らがそれぞれ所管する国庫補助負担金について早急に具体的な措置を講じる仕組みを構築することが求められていたが、この点についての取組みが行われているようには見受けられない。
C 法人事業税への外形標準課税の導入
地方税として望ましい方向の改革であり、早期に導入を図ること、導入は地方税法を改正して全ての都道府県において共通して実施することが求められていた。昨年11月には中小法人や雇用への影響にも配慮した実現可能な具体案として自治省案が示されたものの、未だ全国共通の外形標準課税の導入に至っていない。
(2) 法令による条例・規則への委任のあり方
地方自治法第14条第2項の趣旨に照らし、地方公共団体が法令の委任を受けて、義務を課し又は権利を制限する内容を定めることとなる場合について、国の立法のあり方として、地方公共団体が「条例」という法形式で当該事項を定めることを前提とすべきとし、平成13年通常国会に所要の改正法案を提出することが求められていた。このため、平成13年3月に改正法案が提出されている。
なお、政府の取りまとめにおいて「別途検討するものとする」とされていた都道府県公安委員会の規則等への委任については、意見は「個別の法令により権利義務規制を行うための基本的な規範の定立を地方公共団体の法規に委任する場合には、規則等ではなく条例に委任することを原則とするとの考え方を十分に尊重すべきである。」としていた。
(3) 個別法に関する諸点
廃棄物の処理及び清掃に関する法律については、抜本的な制度改正を行い、廃棄物処理行政における国、都道府県及び市町村のそれぞれの責任分担の明確化を行うことが求められており、また漁港法については、国は漁港等の整備に係る基本方針と長期の目標及び事業量を定め、個別の漁港の整備計画については漁港管理者である地方公共団体が主体的に定めることとするよう制度を抜本的に見直すことが、さらに道路運送法については、交通空白地帯における地方公共団体によるバスの運行の法制度上の位置付けを明確にすべきことが求められていた。
漁港法については、意見の趣旨を踏まえた改正が今国会において審議されており、また道路運送法については、道路運送法及びタクシー業務適正化臨時措置法の一部を改正する法律の施行(平成14年2月1日)に向け、包括許可制度を法制上明確に位置付けるための省令改正を行うこととなっているが、廃棄物の処理及び清掃に関する法律についてはその後特段の措置がなされていない。
4 市町村合併の推進についての意見(平成12年11月27日)の措置状況
委員会の意見では、自主的合併の促進を基本としつつ、合併支援体制の整備、住民発議制度の拡充と住民投票制度の導入、合併推進についての指針への追加、財政上の措置、旧市町村等に関する対策、情報公開を通じた気運の醸成を求めていた。
これに対する政府の取組みとしては、合併支援体制として、総務大臣を本部長とする市町村合併支援本部を内閣に設置している。
住民発議制度の拡充と住民投票制度の導入については、改正法案を国会に提出している。
指針については、新たな指針において、都道府県が全庁的な支援体制を整備し、合併重点支援地域を指定することを要請するとともに、合併協議会設置勧告の基準を明示している。
財政上の措置としては、合併後の新たなまちづくりや公共料金の格差調整等についての包括的な特別交付税措置、合併移行経費に対する特別交付税措置を創設し、都道府県体制整備費補助金を創設している。さらに、合併後に地方税の不均一課税ができる期間の合併年度及びこれに続く5年度への延長、同期間における課税免除の特例の創設、合併後の事業所税の課税団体の指定の延期(最長5年間)、について改正法案を提出している。
旧市町村等対策としては、新たな指針において、合併後の支所・出張所、地域審議会及び郵便局の活用、「わがまちづくり支援事業」の活用、合併に伴う市町村議会議員の選挙区の特例規定の活用を明示している。また、「地方公共団体の特定の業務の郵政官署における取扱いに関する法律案」が国会に提出されている。
気運の醸成については、新たな指針において、合併に関する住民への積極的な情報提供を行うよう明示されている。また、「21世紀の市町村合併を考える国民協議会」が民間主導で設立されている。
5 その他
(地方公共団体に対する補助的な事務処理の依頼)
地方公共団体が調査を行ったところによると、国が各種の実態調査などを行うにあたって、地方公共団体が補助的な事務処理を行うよう、通知、依頼文書等を通じて地方公共団体に依頼しているケースが、相当数あることが判明している。その形態としては、国が全国調査を行うにあたって、調査表の作成及び提出を地方公共団体に依頼するもの、あるいは、市町村への調査表の送付及びその後の取りまとめを都道府県に対して依頼するものなどがあり、またその根拠付けに関しては、地方自治法第245条の4の資料の提出要求を根拠として行うもの、国が地方公共団体と委託契約を締結した上で行うものなど、さまざまである。
このほか、計画上は廃止の扱いになっていたにもかかわらず、所管省庁において、当該事務について「協力連携事務」という独自の事務区分を設けるかのように、市町村の自主的・自発的な協力を前提に引き続き市町村に協力を求める動きがあったため、委員会の指摘に従って、調整を行った事例もあった。
地方公共団体に対する補助的な事務処理の依頼については、機関委任事務制度が廃止されたにもかかわらず、従前どおり国が地方公共団体をその手足として活用しているということも考えられるので、地方分権推進一括法の施行により国と地方公共団体が対等・協力の関係となったことに照らして妥当なものなのかどうか、引き続き調査・検討が行われるべきであると考える。
U 監視活動に基づく要請
1 機関委任事務制度の廃止に伴う国の対応措置等について
(1) 通達等の取扱いについて
拘束力のない助言として取り扱うこととされているにもかかわらず、法令に基づかない国の関与を介在させる規定や法令に基づかない事務の義務付けを行う規定等が含まれている事例(別紙4参照)に関し、未だ所管省庁において改善がなされていないものについては、地方分権推進一括法の趣旨を踏まえて、削除等所要の措置を講じる必要がある。また、今回は地方公共団体から指摘がなかったものの、同様の問題を有するものが他にもあると考えられるので、随時所管省庁において適切な措置を講じていく必要がある。
さらに、今後新たに発出されることとなる助言や処理基準においても同様の問題が生ずる可能性があるので、法令に基づかない国の関与や事務の義務付け等が行われないよう引き続き監視を行っていくための仕組みを構築する必要がある。
(2) 法定受託事務の処理基準の取扱いについて
関係省庁が法定受託事務の処理基準を発出する旨を明示していたにもかかわらず、地方分権推進一括法施行から既に1年以上が経過して未だ発出されていないものも見られる。発出するとされていた処理基準が発出されないことは、地方公共団体の事務処理に支障を来たすこととなるので、該当する省庁においては早急に処理基準を発出すべきである。
(3) 法律・政令による法定受託事務の新設及び自治事務に係る特別の関与の新設について
委員会は、機関委任事務制度の廃止に当たり、地方公共団体の事務を新たに自治事務と法定受託事務に区分したが、その際原則自治事務とすることとし、法定受託事務については、その定義とメルクマールを定めた上で、これらの基準に合致するものについてのみ法定受託事務と整理してきた。また、自治事務に係る特別の関与についても、国がこのような関与を行うことができる場合は例外的なものに限定すべきであるとの考えに基づき、その類型を示した。
これらのメルクマールは政府が閣議決定した地方分権推進計画に掲載されているが、法令上の位置付けが行われていないこともあり、ともすると法定受託事務の新設や自治事務に係る特別の関与を極力抑制していこうとした本来の趣旨が貫徹されない恐れもなしとしない。したがって、今後とも適切な監視が行われていく必要がある。
2 第2次地方分権推進計画の措置状況について
(1) 直轄事業・直轄公物の縮減について
@ 河川及び道路
一級水系並びに河川及び道路の直轄管理区間の点検と見直しについては、「平成12年度中を目途に関係地方公共団体との調整を進める」とした第2次地方分権推進計画の趣旨を尊重し、関係地方公共団体との調整を急ぐとともに、当該基準の基本的事項等については、早急に法令に明示する措置を講ずるべきである。
また、道路については、指定、廃止に際しての関係地方公共団体からの意見聴取手続について、第2次地方分権推進計画上は明示的に法令化するとはされていないが、制度的なものにするため、法令化について検討するとともに、直轄公物の管理に際しての地元市町村の参画の拡大についても、河川と同様に法令に明示することについても検討すべきである。
A 砂防
直轄事業範囲の指定及び地方公共団体への引継ぎに際しての関係地方公共団体からの意見聴取手続について、第2次地方分権推進計画上は明示的に法令化するとはされていないが、制度的なものにするため、法令化についても検討すべきである。
なお、直轄事業・直轄公物の縮減に伴う地方への委譲については、受け手となる地方公共団体から、適切な財源措置の必要性について強い要望が表明されてきた。この点については、地方分権推進計画において「国から地方公共団体への事務・権限の委譲が行われた場合には、地方公共団体が事務を自主的・自立的に執行できるよう、地方財政計画の策定等を通じて所要財源を明確にし、地方税・地方交付税等の必要な地方一般財源を確保する」こととされており、さらに第2次地方分権推進計画においても「直轄事業及び直轄公物の見直しに伴い、地方公共団体が担う事務事業が増大する場合、地方財政計画の策定等を通じて所要財源を明確にし、これに必要な地方税・地方交付税等の地方一般財源を確保する」こととされていたものであり、適切な財源措置が講ぜられるべきことは当然である。
(2) 各種開発・整備計画の見直しについて
@ 国土総合開発計画等及び大都市圏整備計画・地方開発促進計画
第2次地方分権推進計画に対応した国土審議会政策部会・土地政策審議会計画部会審議総括報告(昨年11月)の趣旨を十分に踏まえ、引き続き国土審議会において検討を進め、結論を得て法制化を図るべきである。
大都市圏整備計画及び地方開発促進計画についても、上記報告の趣旨を踏まえ、関係都府県が計画に盛り込む内容の案を作成し、国がこの案に基づいて必要な追加及び修正を行い、決定する仕組みとすべきである。
A 条件不利地域振興計画及びモデル型地域振興計画
条件不利地域振興計画については、各法律の終期において、引き続き第2次地方分権推進計画を踏まえ、当該立法の意義・必要性の再検討を行うべきである。特に山村振興法については、旧市町村の区域を単位とする山村振興計画について、計画の作成は市町村が行い、この計画に対する同意を要する協議は都道府県が行う方向で検討することとすべきである。
同様にモデル型地域振興計画についても、施策の開始後一定の期間を経過した後に当該施策の在り方を再検討すべきである。
3 意見(平成12年8月8日)の措置状況について
(1) 国庫補助負担金の整理合理化と当面の地方税源の充実確保策について
@ 国庫補助負担金の区分の明確化と整理合理化
国庫補助負担金の区分について、一部未調整とされていたものについては、委員会の意見において国庫補助金として判断しており、これに従って整理を終えるとともに、区分の結果について、速やかに適切な方法により明記すべきである。
また、区分に応じた国庫補助負担金の整理合理化を早急に進めるとともに、制度的に検討すべきものとされた補助金を除いた国庫補助金を対象として、一定期間、各年度の国庫補助金の削減率を定める国庫補助金削減計画を策定し、同計画を早期に実施すべきである。制度的に検討すべき国庫補助金の範囲については、引き続き必要最小限度のものとするよう努めるべきである。
A 維持管理費に係る国直轄事業負担金の見直し
維持管理費に係る国直轄事業負担金について、2度にわたる地方分権推進計画及び委員会意見において、再三にわたって、同種の地方公共団体の行う事業に対する国の負担との均衡、建設事業費と維持管理費の均衡、維持管理の形態、地域の受益と広域的効果等を総合的に勘案し、段階的縮減を含めた見直しを行うとしている点を十分に踏まえ、早急に見直しを行うべきである。
また、負担金に関する透明性を高めるため、負担金の内容、特にその積算内訳について積極的に公開していくべきである。
B 国庫補助負担金の運用等についての改革措置
超過負担の解消に向けて、補助金等適正化中央連絡会議などを活用して情報交換を行い、各省庁自らが、それぞれ所管する国庫補助負担金の運用等の実態を把握し、早急に具体的な改革措置を講じることのできるような実効性ある仕組みの構築を行うべきである。
(2) 法令による条例・規則への委任のあり方について
法律改正に続き、委員会意見において示した基本的な考え方に基づく所要の政令改正を速やかに行うべきである。また、政府の取りまとめにおいて別途検討するものとするとされていた都道府県公安委員会の規則等への委任についても、個別の法令により権利義務規制を行うための基本的な規範の定立を地方公共団体の法規に委任する場合には、規則等ではなく条例に委任することを原則とするとの考え方を十分に尊重し、今後の検討を進めるべきである。
(3) 個別法に関する諸点について
廃棄物の処理及び清掃に関する法律については、処理施設の不足や不法投棄の多発など廃棄物処理が喫緊の行政課題となっている現状を直視し、廃棄物処理行政の抜本的な見直しを行い、国、都道府県、市町村のそれぞれの責任分担の明確化を図るべきであるとした委員会意見を踏まえ、早期の対応が必要である。
V 今後の監視活動のあり方
以上指摘したとおり、現時点において十分に措置がなされていない事項があるので、これらの点については、今後政府による取組みを促していくための仕組みが必要である。
また、地方分権推進計画上、平成13年度以降に措置されることが予定されていた事項(暫定法定受託事務の取扱い等)については、然るべき時期に政府による取組みを促していくことが必要である。
さらに、今後法律、政令、更には処理基準等が制定、あるいは改正される場合には、新たな法定受託事務や国の地方公共団体に対する関与等が設けられるケースが多々想定される。その場合には、累次の委員会の勧告や地方分権推進計画で示されている考え方が適切に尊重される必要があり、法定受託事務が創設される場合にそれがメルクマールに則っているかどうかなど、監視していくための体制が必要である。
従前の通達等の取扱いについても、今回地方公共団体側からの意見をもとに、所管省庁に対して改善を求めてきたが、今後も地方公共団体自身が適切な監視活動を行い、それをもとに問題点が提起される場合には、同様の働きかけを行っていくための体制が必要になる。
第3章 第2次分権改革の始動に向けて
− 地方税財源充実確保方策についての提言 −
T 地方税財源充実確保の基本的視点
1 地方税源充実への取組みに関する基本的方向
(1) 地方税源については、地方分権を更に推進するため、既に第2次勧告等で述べたように、地方の歳出規模と地方税収との乖離の縮小、住民の受益と負担の対応関係の明確化などの観点から、その充実確保を図っていくべきである。
地方歳出と地方税収の乖離縮小のためには、歳入・歳出両面の見直しが必要であるが、歳入面に関しては、基本的に歳入の質を第一に考え、歳入面での自由度を増し、地方歳入中に占める一般財源、特に地方税収入の割合を高めることで受益と負担の関係を強化することができる。地方公共団体の施策の実施に必要な財源の相当部分は当該地域からの税収で賄い、財政力の弱い地域には一般的な財政調整制度で対応し、個別事業に係る国庫補助負担金は真に必要なものに限るという方向が、望ましい方向である。
(2)
歳入面での自由度を増す観点から、地方税収入の割合を高めていくことは、現在の国・地方を通ずる厳しい財政状況等を踏まえた観点に照らしても、必ずしも地方公共団体の歳入の量自体を増やすことを意味するものではない。国・地方を通じた現在の租税負担率に制度的変更を加えない前提で地方税源の充実を行うためには、国から地方への税源移譲により地方税源の充実を図っていく必要があり、その際には、税源移譲額に相当する国庫補助負担金や地方交付税の額を減額するなどにより、歳入中立を原則とすべきであると考える。
(3)
また、歳入面の見直しと併せて、歳出についても、国の関与の廃止・縮減や法令等による歳出や事務事業の義務付けの見直しを行い歳出の自由度を高めていくことが必要であり、これにより歳入・歳出両面の自由度を併せ増していくことが地方分権の実現にとって不可欠な要素である。
2 地方税源充実の理由と考慮すべき事項
(1)
このように地方の自主財源である地方税源の充実を必要とする背景としては、画一から多様へという流れの中で、自立性を高める方向での制度設計の選択が迫られていることが挙げられる。また、真の意味の地域社会の活性化も、こうした自立性を高める制度改革により促進されることになる。
(2) わが国は、国・地方を通ずる長期債務残高が平成13年度末で666兆円に達することが見込まれるなど、国・地方ともに極めて厳しい財政環境にあり、財政構造改革の実現が大きな課題となっている。また、わが国の置かれている経済環境を見た場合、右肩上がりの経済成長の終焉、少子高齢化の進行を考えれば、国全体の資源配分という観点からも、新たな国・地方間の財政関係の仕組みの構築が必要とされている。地方税源をより多くすることで、受益と負担の意識が高まり、その結果、国全体の資源配分も適正化されていくものと考えられる。
行政サービスの受益と負担の関係を明確化するほど、地域で求められる福祉水準をいかに効果的に達成できるかという自治体間の知恵の競争が活発化することになる。また税財政面の自己決定権の拡充及びその発揮により、住民の声が地域の行政サービスのあり方に反映されやすい仕組みができあがることにもなる。
(3)
他方で、障害者福祉、生活保護、義務教育など国がどこまで画一的に基準を定めるべきかという点について見直しの必要性はあるにせよ、そのコストについて社会全体で支えるべき分野もある。また、地域によっては、自主税源だけでは地域の最小限の行政水準さえ賄えない地方公共団体が出ることが予想されるため、地域社会の存立という理念にも配慮し、財政調整制度を活用していく必要がある。
(4)
なお、地方分権時代の行政の主役である地方公共団体の側においても、少子高齢社会を迎える中、合併及び行政改革の推進等により、新しい時代の地方自治の担い手としてふさわしい行政体制を整備することが併せて必要であることはもちろんである。また、地方行財政運営についても更なる厳しさが求められている。
3 地方税源の充実と財政構造改革
(1)
地方財政の急速な悪化は、個々の地方公共団体の財政事情については、個々の地方公共団体の財政運営の取組みによる場合もあるが、地方財政全体としては、国の経済政策の中で、公共事業の拡大や減税に対する協力を求められ、地方公共団体もこれに応じてきたことが主要な要因となっており、他の先進国において、地方公共団体がわが国のような規模で財政赤字と借金を背負っている例はない。
(2)
今回委員会で検討の対象とした地方税財源の確保方策の基本的目的は、地方の収入を増やすことではなく、収入の質の転換を図ることにある。収入の質の転換を図ることにより、住民に身近なところで歳出チェックがより厳しくなることもあって、国・地方を通じての歳出抑制効果が働き、国民全体の負担もむしろ軽減されることになる。したがって、税財源の地方分権は、国・地方を通ずる行財政全体の構造改革にとっても重要な要素であり、むしろ不可欠の手段だといえる。
その意味で、今後その具体策の検討に当たり、少なくとも地方税源充実の選択肢とそれに対応する留意事項などについて、財政構造改革の議論等との整合性も踏まえつつ、十分に検討しておく必要がある。
(3)
なお、国・地方を通ずる構造的財源不足の解消方策について、今後、財政構造改革の議論の中で検討していく必要があるが、今後21世紀において地方公共団体が果たしていく役割の重要性等に鑑み、地方歳出と地方税収の乖離の縮小、今後の国と地方の役割分担のあり方、財政状況等を踏まえつつ、租税負担率を見直す際には地方税源への配分について特に重視していく必要があると考える。
U 地方税源の充実策
1 地方税充実確保の方向
(1)
地方税源充実は、税源の偏在性が少なく、税収の安定性を備えた地方税体系を構築していくという方向で考えるべきであり、特に税源移譲に伴う地方財源の偏在を抑制するためにも、地域的偏在の少ない地方税体系構築が必要である。
(2)
この場合、地方公共団体の自己決定、自己責任の拡充及びその発揮を税財政面において適切に担保していくためには、地方税の中でも特に基幹税目の更なる充実が不可欠である。
地方税の基幹税目の充実に当たっては、個々の税目の充実方策を検討することが必要であり、実際にそれらをどのように組み合わせどのようなタイミングで地方税源充実を図るのかが重要な課題である。
(3) 3300弱の地方公共団体のうち、不交付団体が数えるほどしかないということは、現在の地方自主財源の乏しさを象徴している。地方税源の充実により、地方公共団体の自主税財源比率を高めることは望ましいが、一方でその具体的目標数値を計数的に示していくのは困難でもある。また、不交付団体数の目標設定も困難ではあるが、少なくとも、できるだけ不交付団体の数が増加するような姿が望ましい。
(4)
以上のような観点を踏まえ、地方分権を更に推進するため、個別税目について次のような具体的充実の方向が必要であると考える。
(個人住民税)
個人住民税については、都道府県、市町村にとっての基幹税目として更なる充実を図るべきである。国・地方の個人所得課税のあり方については、国の所得税が所得再配分機能などを担う基幹税であることに留意しつつ、全体としての個人所得課税の税負担に変更を加えないとの前提の下で、税源移譲により、個人住民税の最低税率を引き上げることにより、個人所得課税に占める個人住民税の割合を相当程度高めていくことが望ましい。その際には個人住民税のより比例的な税率構造の構築と課税ベースの拡大により、広く住民が地域社会のコストを負担する仕組みとすべきである。また、均等割の水準についても、過大な負担とならないよう配慮しつつ、見直しを図る必要がある。
(地方消費税)
地方消費税については、今後の消費税のあり方の議論の中で、福祉をはじめとする幅広い財政需要を賄う税として、その位置付けを高め、その充実を基本に検討することが適当である。この場合、地方交付税原資として組み入れられている消費税の一定部分を地方消費税に組み替えることも検討すべきである。
(固定資産税)
固定資産税については、資産の保有と市町村の行政サービスとの間に存在する一般的な受益関係に着目して課税されるものであり、応益性という地方税の基本的性格を具現したものであるとともに、市町村財政を支える基幹税目であり、引き続きその安定的確保に努めていくべきである。
(法人事業税)
法人事業税については、税負担の公平性、税の性格の明確化、基幹税の安定化、経済の活性化等の観点から、外形標準課税の導入が必要であり、昨年11月自治省から提示された具体案は、課税標準として法人の生み出す付加価値を的確に捉え、現在の所得課税に比べ、薄く、広く、公平な課税を図ろうとするものであって、現行の所得課税よりも優れている。今後、これまでの議論を参考にしつつ、外形標準課税の早期導入を図るべきである。
(個別間接税)
たばこ税などの個別間接税については、偏在が少なく地方税になじむ税源であり、国税からの税源移譲を含め、その充実を図るべきである。
(環境関連税制)
国・地方を通じた環境関連税制の検討に当たっては、地方公共団体が環境対策面において果たしている役割を踏まえた対応が必要であり、地域的環境問題はもとより、地球環境問題についても、地方公共団体が地球温暖化対策の面でも相当な役割を担っていること、流通・消費段階で課税される場合に、用途に応じた課税措置が可能となること、さらに消費者へのインセンティブ効果が期待されること等の観点から、地方税での対応も考えていくべきである。また、課税自主権の活用により、有効に対応できる分野もあると考えられる。
2 課税自主権の尊重と租税原則
(1)
地方税源の充実・確保のためには、法定税の充実を図るとともに、自主課税の努力が必要である。この自主課税については、法定外税のほか、超過課税などの活用についても幅広く検討していくべきである。
国・地方を通じ主要な税源は法定税目とされており、課税自主権の発揮のみで地方税源を量的に拡充することには限界もあるが、独自課税については、制度立案の過程で、納税者を含めた関係者の意見を聞き、受益と負担の関係をより意識する議論が行われるという意義も評価すべきである。地域の特色を踏まえた独自税源の充実が、地方公共団体の行政運営に対する住民の参加と関心を呼び起こす契機ともなる側面を考えれば、地方独自税源開拓の意義は大きい。
(2)
自主課税の実施に当たって、対象を法人等に限定して負担を求めるという傾向には留意が必要であり、また、独自課税を検討する場合にも、負担の公平等の租税原則等との関係を十分に踏まえ、納税義務者等に対する十分な説明を行い、理解を得るように努める必要があることは言うまでもない。
3 地方税務執行面の機能の充実
今後の地方税源充実を考えるに当たり、地方税務執行面のサポートを強化するための研修・執行機能の充実についても検討を行っていくべきである。
V 地方税源充実に伴い発生する偏在問題
(1) 地方税源の充実を行う場合、地域ごとの税収の偏在は大きな問題となる。歳入中立の前提で税源移譲を行うこととすると、財政力の高い団体に帰属する税収分についてはそれ以外の団体に回る収入が減ることとなる結果、団体によっては、全体としての財源が減るということになる。もちろん個々の団体の増減は、歳入中立の下でも設定条件の置き方次第で異なってくる。
(2)
税源移譲による地方税の増収がある程度地域的に偏在するのは不可避であるが、できるだけ偏在の少ないものとする必要がある。税制面においては、偏在の少ない税目を中心に税源移譲を考えることが重要であり、また法人事業税の外形標準化により税収の偏在が緩和される効果も期待できる。
(3)
また、財源面の格差については、従来の財政調整制度による対応に加え、税源移譲の規模によっては、さらに、新たな財政調整の仕組み、巨大都市の地方税財政制度のあり方などの検討も今後考える必要がある。
W 地方税源充実に対応する国庫補助負担金、地方交付税等の改革
1 基本的考え方
税財政面での地方の自己決定権の拡充には、地方税源の充実を図る一方で、地方歳出に対する国の関与や法令等による歳出、事務事業の義務付けの廃止・縮小が必要であり、歳入・歳出の両面での自己決定権の拡充及びその発揮こそが真の意味での地方自治を可能ならしめるといえる。そして、地方税源充実に伴う国の地方への移転的支出の削減に当たっては、まず国の関与の強い特定財源である国庫補助負担金を対象にすべきである。
2 国庫補助負担金の改革の方向
(1)
国庫補助負担金を通じて、これまで、全国くまなくナショナルミニマムの行政水準を浸透させてきた効果は認められる。一方で、国庫補助負担金は、コスト意識の希薄さや責任の所在の不明確さなど様々な問題を発生させており、また、受益と負担の乖離により、中には必ずしも地域の行政需要に合致しないものも行われてきている。
(2)
国庫補助負担金は真に必要なものに限定し、それ以外のものは廃止することを原則とした上で、引き続き当該事務事業の実施が必要な場合には、所要の財源を地方一般財源に振り替えていくべきである。そのうち国庫補助金については、第2次勧告等に沿って整理合理化を行うべきである。国庫負担金については、国と地方の役割分担を整理する中で、対象となる分野の限定、あるいは事業の重点化を図っていく必要があり、大幅な整理も視野に入れるべきである。
国庫補助負担金の内容の改善として、包括交付金化、統合補助金の大幅拡充などについても広く検討すべきである。
(3)
国庫補助負担金の抜本的な整理合理化により、各種補助金関連業務の縮減、簡素化等が図られ、国・地方を通じた行政のスリム化にも大きな効果をもたらすことが想定される。
3 地方交付税の改革の方向
(1)
税源移譲による歳入中立の前提の下での地方税の充実に伴い、地方交付税の総額は減少することが見込まれるが、地域間の税源の偏在により、財政力の格差が拡大する可能性があることから、財政力の格差を是正するという地方交付税制度の役割は依然として重要であると考えられる。
(2)
これまで地方交付税は、国で定めた一定水準の行政サービスを国民が全国どこで生活しても享受できるようにし、その結果として地域社会の存立基盤を守ってきた。
その一方で、行政サービスと自己負担の間の緊張関係が損なわれ、地方歳出の拡大を招いているのではないかとの指摘がなされ、地方交付税を大きく縮小すべき、あるいは現行の地方交付税制度による財政調整は手厚すぎるものとなっているので、人口一人当たりの税収格差の是正のレベルに留めるべきではないかとの指摘が行われている。
これらの指摘に関しては、地方交付税の主要な機能は、国が法令や予算により定めた政策を財源的に担保することであり、この財政需要は必ずしも人口比例ではない以上、一人当たりの税収格差是正では不十分であるという問題がある。このため、地方交付税の総量の縮小や配分基準の簡素化の議論は、法令による歳出や事務事業の義務付け、補助負担金等による国の関与の廃止・縮小と一体として検討していかなければならない。
(3)
このような観点を踏まえ、社会経済情勢の変化に対応して、地方交付税の算定については、次のような見直しが必要であると考えられる。
・ 国による歳出や事務事業の義務付けの廃止・緩和を進めるとともに、地域の実情に即した地方公共団体の自主的・主体的な財政運営に資する方向で、基準財政需要額の算定方法のあり方の検討を行い、その一層の簡素化等の見直しを図るべきである。
・ 事業費補正による算定については、対象となる事業の範囲を見直し、特に必要なものに重点化していくべきである。
・ 行政運営の効率化・合理化の要請を的確に反映するよう見直しを図るべきである。
・ 地方の課税努力、税源涵養努力、独自税源充実の自助努力を更に促すような仕組みの検討を行うべきである。
(4)
また、地方交付税について、国の一般会計を通すことなく、国税収納整理資金から地方交付税特別会計に繰り入れる措置については、国の一般会計において主要税目の状況を一覧性ある形で示す必要がある等の観点から問題があるとの意見もあるが、地方の固有財源としての地方交付税の性格を明確化するために、この際検討を行うべきである。
4 地方債資金の円滑な調達
地方税源の充実確保によるこれからの税財政面での地方の自己決定権の拡充に伴い、地方公共団体が資金を安定的・円滑に調達できるよう、地方債の共同発行機関の重要性が増していくものと考えられるので、その問題についての検討が今後必要であると考えられる。
X 今後の検討に当たって
地方税源の充実策については、現実的には、国・地方を通ずる財政構造改革の際に実施することになるものとも考えられるが、既に述べたとおり、少なくとも地方税源充実の選択肢とこれに対応する留意事項などについて、財政構造改革の議論等との整合性も踏まえつつ、十分に検討しておく必要がある。そしてその際には、国と地方の事務配分のあり方、国による地方への歳出や事務事業の義務付けのあり方も含めた地方行財政制度全般について、画一から多様へという時代の流れを踏まえつつ、地方分権推進の視点に立った具体的かつ専門的な検討を行う場が必要である。
第4章 分権改革の更なる飛躍を展望して
委員会が推進してきた今次の分権改革は、既に第1章で述べたように、第1次分権改革というべきものにとどまっている。この未完の分権改革をこれから更に完成に近づけていくためには、まだまだ数多くの改革課題が残っている。
これらを大きく分類すれば、以下の6項目に整理することができると考える。
T 地方財政秩序の再構築
まず第1に、地方財政秩序を分権型社会にふさわしい新しい姿に再構築することである。
分権型社会にふさわしい新しい地方財政秩序を再構築していくためには、今回の委員会の提言に示されている基本的な方向、すなわち、自己決定・自己責任の原理を地方税財政の領域にまで推し広げて地方公共団体の財政運営の自由度を高めるとともに、地域住民から見てもその受益と負担の関係が分かりやすい税財政構造に改めることをもって、改革の大方針としなければならない。
このためには、現行の国税と地方税の税源配分を改め、地方公共団体の自主財源である地方税収入を充実し、その反面で国からの財政移転に依存した依存財源の規模をできるだけ縮減していかなければならない。その際、依存財源のなかでも、使途の特定された財源であるところの国庫補助負担金の縮減を優先し、ついで使途の特定されていない一般財源であるところの地方交付税の縮減を図る方途を探っていく必要がある。
地方公共団体は、自主財源である地方税収入についてその税率設定権を含む課税自主権を積極的に行使し、行政サービス水準と地域住民の地方税負担のバランスの当否を地域住民に問いかけていくべきである。わが国のこれまでの地方自治は、国の地方税法に定められた法定税をその標準税率で課税して得た地方税収入に、国から配分される地方交付税収入や国庫負担金収入、国に申請し交付を受けた国庫補助金収入などを追加した歳入の総額を、いかなる行政サービスに配分するかという「歳出の自治」にのみ専念してきた観があるが、これからの分権型社会の地方自治は、地域住民にどれだけの地方税負担を求めるのかという「歳入の自治」まで含むものでなければならない。
U 地方公共団体の事務に対する法令による義務付け・枠付け等の緩和
ついで第2に、地方分権を実現するには、ある事務事業を実施するかしないかの選択それ自体を地方公共団体の自主的な判断に委ねることこそが最も重要であるため、地方公共団体の事務に対する国の個別法令による義務付け、枠付け等を大幅に緩和していくことである。
第1次分権改革の主要な成果の一つは、国の通達等による関与を大幅に緩和したことであるが、国の法令等(法律・政令・省令・告示)による事務の義務付け、事務事業の執行方法や執行体制に対する枠付けの緩和については、ほとんど全く手付かずに終わっている。地方公共団体の事務を文字どおりそれらしいものに変えていくためには、国の個別法令による事務の義務付け、事務事業の執行方法や執行体制に対する枠付け等を大幅に緩和する必要がある。
また、自主財源である地方税収入をこれまで以上に充実確保したとしても、その反面で国からの依存財源が縮減され、しかも国による事務の義務付けは従前どおりに続くことになれば、地方税収入はこれをすべて国から義務付けられている事務の執行経費に充当せざるを得ないことになりかねない。これでは、地方公共団体には単独事業を行う余裕がなく、独自の個性的な自治体政策を展開することは不可能になる。
さらに、国からの依存財源を縮減する方策の一環として地方交付税の大幅な減額を行おうとすれば、義務的経費の縮減を図らなければならない。そのためには、これに先立って国の法令による事務の義務付けや事務事業の執行方法や執行体制に対する枠付け等を大幅に緩和することが不可欠である。それには、全国どこでも一律に最低限度確保されるべきナショナル・ミニマムとは何かを、個別行政サービスごとに厳しく見直す必要がある。その判断基準はその時代時代の社会状況によって変わり得るものであり、不断の見直しが求められるものだからである。
V 地方分権や市町村の合併の推進を踏まえた新たな地方自治の仕組みに関する検討
第3に、平成17年3月までの時限法である市町村の合併の特例に関する法律(昭和40年法律第6号)に基づいて進められている市町村合併の帰趨を慎重に見極めながら、道州制論、連邦制論、廃県置藩論など、現行の都道府県と市区町村の2層の地方公共団体からなる現行制度を改める観点から各方面においてなされている新たな地方自治制度に関する様々な提言の当否について、改めて検討を深めることである。
委員会は当初、地方分権推進法の制定以前の段階において隆盛を極めていたいわゆる「受け皿論」をこの際は一時棚上げにし、当面は現行の地方自治制度を前提にして、この体制の下で可能なかぎりの分権を推進することを基本方針としていた。地方分権推進法の制定に至るまでの論議の過程で、その旨の合意が関係者の間に概ね成立していたと理解していたためであった。
しかしながら、市町村合併については分権改革と同時並行して推進すべしとする声が各方面で高まるばかりであった。そこで委員会としては、第1次勧告を提出した時点、すなわち機関委任事務制度の全面廃止が政府内で合意が得られる見通しが立った時点で、市町村合併問題を地方行政体制の整備及び確立方策の重要な一環として調査審議のそ上に載せることとし、第2次勧告において市町村の自主的な合併の積極的な促進方策を勧告したところである。
これから平成17年3月までの間に市町村合併がどの程度まで進捗するのかによるが、その帰趨によっては基礎的地方公共団体である市町村のあり方にとどまらず、広域的地方公共団体としての都道府県のあり方の見直しも視野に入れた先に述べたような新たな地方自治制度に関する様々な提言がより現実性を帯びてくる可能性がある。そして、分権改革が次の第2次分権改革から更に第3次分権改革へと発展する段階になれば、地方自治制度の将来像を明確にする必要に迫られるのではないか。
W 事務事業の移譲
第4に、ヨーロッパ先進諸国に普及しつつある「補完性(subsidiarity)の原理」を参考にしながら、市区町村、都道府県、国の相互間の事務事業の分担関係を見直し、事務事業の移譲を更に推進することである。
すでに第1章で述べたように、第1次分権改革では事務事業の移譲方策の側面ではあまり大きな成果を上げられなかった。しかしながら、ヨーロッパ評議会が制定したヨーロッパ地方自治憲章や国際自治体連合(IULA)がその世界大会で決議した世界地方自治宣言では、事務事業を政府間で分担するに際しては、まず基礎自治体を最優先し、ついで広域自治体を優先し、国は広域自治体でも担うにふさわしくない事務事業のみを担うものとするという「補完性の原理」の考え方が謳われている。
わが国の事務事業の分担関係をこの「補完性の原理」に照らして再点検してみれば、国から都道府県へ、都道府県から市区町村へ移譲した方がふさわしい事務事業がまだまだ少なからず存在している一方、これまではともかく今後は、市区町村から都道府県へ、都道府県から国へ移譲した方が状況変化に適合している事務事業も存在しているのではないかと思われる。分権改革というと、事務事業の地域住民に身近なレベルへの移譲にのみ目を向けがちであるが、分権改革の真の目的は事務事業の分担関係を適正化することにあるのである。
X 制度規制の緩和と住民自治の拡充方策
第5に、住民自治の拡充方策として、地方公共団体の組織の形態に対する地方自治法等による画一的な制度規制をどの程度まで緩和することが妥当なのか、真剣に議論することである。
地方六団体から委員会に提出された改革要望事項のなかには、地方公共団体の組織の形態に関する画一的な制度規制の緩和を求めるような趣旨のものは皆無に近かった。委員会もまた、団体自治を拡充することこそ住民自治を拡充するための先決要件であると考えてきた。その結果、第1次分権改革では住民自治の拡充を直接の目的にした勧告事項はごく少数にとどまった。
しかしながら、最近は、地方自治基本法の制定を提唱する動きや地方公共団体で自治基本条例の制定をめざす動きが一部に現れ始めている。この種の動きのなかには、米国に見られる自治憲章制度(Home
Rule Charter System)に類似した発想、すなわち、地方議会議員の選挙制度及び定数、地方議会と首長の権限関係、執行機関のあり方など地方公共団体の組織の形態やその他の住民自治の仕組みを自由に選択する権能を地方公共団体に与えるべきだとする発想が窺われる。
わが国の地方分権が更に進展した状況においては、地方自治法等による画一的な制度規制の緩和を求める声は次第に強まるのではないか。第3次分権改革では、おそらく、住民自治の拡充方策が最も中心的な検討課題になるのではないかと見込まれる。
Y 「地方自治の本旨」の具体化
最後に、憲法第8章第92条の「地方自治の本旨」の内容を具体化し、分権型社会の制度保障を確固たるものにする方策を構想することである。
憲法に第8章地方自治が新設されたことはまことに画期的なことであった。しかし、その限界面にも目を向けなければならない。何よりもまず、この第8章には第92条ないし第95条のわずか4か条しか設けられておらず、先のヨーロッパ地方自治憲章や世界地方自治宣言に定められている地方自治の諸原理に照らせば、そのごく一部しか定められていない。一例を挙げれば、この第8章には地方公共団体の税財政制度を規律する基本原則を定めた条項は皆無である。
しかも、その冒頭の第92条では、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」とされていることから、地方自治制度の制度設計はあげて国会の立法に委ねられているかのような誤解を招きかねない。もとより、これは正しい憲法解釈ではあり得ないのであって、この条項の元来の主旨を生かすべく、「地方自治の本旨に基いて」を重視する憲法解釈がさまざまに積み重ねられてきた。そしてまた、このたびの地方分権推進一括法で改正された新地方自治法の第1条の2においては、国として、地方公共団体に関する制度の策定及び施策の実施に当たって、地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない旨を定め、また第2条第11項及び第12項においては、地方公共団体に関する法令の規定は、国と地方公共団体との適切な役割分担を踏まえるべき旨を定めるなど、いわゆる立法原則及び解釈・運用原則が新たに織り込まれ、「地方自治の本旨」の意味内容を豊かにする方向でそれなりの努力が払われてきている。
しかしながら、はたしてこれで万全なのであろうか。分権型社会の制度保障をより一層確固たるものにするには、この種の立法原則を更に一段と豊かに具体化していく必要があるのではないか。そうであれば、それはどのような立法形式によるべきなのであろうか。これこそ、将来の分権改革に託された究極の検討課題であろう。
お わ り に
委員会は、第5次勧告を提出して以降、ほとんど専ら監視活動に従事してきた。この監視活動はきわめて地味で根気を要する作業であり、これにはマス・メディアの関心も高いとはいえず、その成果が広く世間に報道されることも少なかった。しかしながら、この監視活動が行われてこなかったとすれば、第1次分権改革の完全実施などおよそ望むべくもなかったと言っても、決して過言ではないであろう。委員会は、みずからの体験をとおしてこのことを痛感した。
地味ではあるが根気を要するこの監視活動を支えてきたのは委員会事務局の職員たちであった。職員の地道な補佐、補助なしに、委員会の監視活動が成果を上げることはあり得なかった。委員会の解散を前にして、歴代の事務局職員に深く感謝の意を表したい。
政府においては、すでに委員会の解散に備え、後継機関の設置に向けた準備が着々と進められていると聞く。まことにわが意を得たことで、その判断に深く敬意を表する次第である。第2章の末尾および第3章の末尾に述べておいたように、第1次分権改革を完全実施するためには引き続き監視を要する若干の事項が残存している。これに加え、地方税財源の充実確保方策に係る委員会提言を地方分権推進の視点に立って更に具体化し、第2次分権改革を始動させていくためには何らかの専門的な検討機関の設置が望まれるからである。
この後継機関の設置に関して、委員会の体験に基づく助言を申し述べることが許されるならば、今後の監視活動を引き続き実効性のあるものにするために後継機関に独立の事務局を設置すること、そしてこの後継機関と地方公共団体の間の意志疎通を円滑なものにするためにこの事務局の職員に地方公共団体からの派遣職員を加えることを強く勧めたい。
委員会の発足当初の委員7名のうち、長洲一二氏と山本壮一郎氏の両委員が在任中に逝去された。
「燈燈無盡」と「耕不盡」はそれぞれ両氏の座右の銘であった。その意を偲び、本報告の結びに代えたい。委員会がここまで掲げてきた分権改革の灯火が志を同じくする人々に次々と受け継がれ、やがてこれらの無数の灯火が万灯篭のごとくに延々と連なり、分権型社会への道筋を明々と照らし出すことを、そして、分権改革の成果が各地域で深く耕され、将来のわが国に豊かな稔りをもたらしてくれることを切望してやまない。
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